秘密 

   T

 

  「だから!違うって言ってんじゃん!」

  アベは思わず足を止めた。

  スタジオの中からダイスケの怒鳴り声が聞こえてきたからだ。

  ・・・あの温厚なダイスケが声を荒げる事などかってなかった。

  《どうしたの?外まで聞こえてきてるわよ》

  スタッフの一人がアベの所に駆け寄って来る。

  《良かった〜〜〜。アベさんがいなくて、みんなどうして良いか分からなくて・・・》

  ヴォーカルブースの中にはダイスケがプロデュースをする、男性ヴォーカリストがいた。

  ダイスケとガラス越しに睨み合っている。

  新人とは言え、度胸が座っているとアベは彼を見た瞬間から感じていた。

  ・・・・・誰かさんと似ているかも・・・・・・

  《ダイスケ?》

  「あ・・・ごめん、少し休もう」

  ダイスケは椅子に座り込んで・・・深い溜め息を漏らした・・・。

  《彼は良くないの?》

  熱い紅茶を持って、アベがダイスケの隣に座った。

  「いや・・・そんな事ないよ。リズム感も良いし、歌も上手だし・・・」

  《じゃあ、何が違うって怒鳴っていた訳?》

  「う・・・・ん、何かがね・・・」

  《それじゃあ、怒られた方はどうしていいか分からないわよ》

  彼がブースから出て来た。

  “スイマセン・・・僕が悪いんです・・・浅倉さんの望む通りに歌えなくて“

  「君が悪いんじゃないよ。少し、休憩してて良いから」

  “ハイッ・・“

  アベが彼に飲み物を差し出した。

  “ありがとうございます“

  人懐こい笑顔で彼はそれを受け取った。

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  「えっ!3ケ月ロスに行くって?!」

  さっきまで肌を重ねていた余韻を感じながらまどろみかけた時、いきなり言われた。

  『うん・・・accessのライブも大成功したし、そろそろソロの方も始めなきゃならないから。 いっそ、外国で作ったら・・って言われてね』

  「で・・・決めたの?」

  『次のライブをやる為には作らないとね・・・前の曲、全部封印しちゃたし。 それも良いかも?って思ったし・・・・』

  ダイスケはヒロの身体に腕を回した。

  『大ちゃん・・・・嫌?ダメ?心配?たったの3ケ月だって・・・。何かあったらすぐに帰って来るから』

  ヒロユキはダイスケの金の髪を愛しげに撫ぜた。

  「だって・・・だってさ・・・ヒロはすぐに向こうの女性と仲良しになっちゃうでしょ?」

  『あらららら・・・そっちの心配?!信用ないな・・・』

  「だって〜〜〜じゃあ、こっちはどうするの?我慢出来る?」

  そう言うと・・ヒロユキの下腹部に手を這わせた。

  『ちょっ!・・・・大ちゃん・・』

  「ヒロはカッコいいもん・・向こうの女性が放っておくはずがないもん」

  『それは・・・第3巻の彼女で済ませるよ』

  「・・・・ヒロ・・・「恋」は良いけど、「愛」はダメだよ。「愛」は僕だけだからね」

  『大丈夫だよ、大ちゃん。「恋」も無い。オレには大ちゃんだけだから・・信じて? どうしても我慢出来なくなったら、日本に飛んで来るよ』

  俯いているダイスケの顔をあげさせて、ヒロユキは深い口付けをした。

  『ところで、大ちゃんはどうなの?オレがいない間に・・・イテッ!殴らなくても良いじゃん』

  「僕にそんな事、ある訳無いでしょ!ずっと・・ヒロだけ見て来たのに」

  『ゴメン・・・。あ・・・アベちゃんから聞いたよ。 新人の子をプロデュースする事になったんだって?オレよりカッコイイ子だったりして〜〜』

  「あぁ・・・確か20歳だったかな・・・まだ子供じゃない。 そんな見た事も無い子供に妬いてるの?   可愛いよね・・ヒロ。」

  『どうせ、オレはガキです。 でもさ・・・恋って一秒あれば出来るから・・ねぇ』

  「僕がヒロに恋したみたいに? 大丈夫だよ、僕にはヒロしか見えていないから・・ヒロしかいらないから」

 

  その一週間後、慌しくヒロユキはロスへ旅立って行った。

 

  

 

  また・・・苦しみの「連続もの」を書きます(^^

  最後はやっつけになってしまうのでしょうか?(爆)

  今回は・・どっちが苦しいのかな?

  一番、苦しいのは私だけどね〜〜〜〜

                      suika

 

   

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