秘 密

    U

 

  「アベちゃん・・・どんな子なの?プロフィールとかは?」

  《えっ・・・と、***レコード会社のヴォーカリストコンテストで特別賞を貰っているわね。

   ルックスも良いから、+++プロダクションがスカウトして、まず歌手として売り込みたいって。

   そのプロダクション社長直々のオファーで「この子に社運がかかっているから」・・とか言われたわね。 その彼が浅倉大介さんをご指名したみたいよ・・・》

  「ふぅ〜〜〜ん・・・」

  《写真、見る?》

  「別にいいよ・・・・すぐに来るんでしょう?

   コンコン。

  《噂をすれば・・・どうぞ》

  〃失礼します〃

  すりガラスの向こうに2つの影が見えている。

  〃この度はご無理を聞いて頂き、ありがとうございます。私、マネージャーの小林と言います。〃

  《アベです。こちらこそよろしくお願いします。浅倉はそちらにおりますので、どうぞ・・・》

  〃は・・・失礼いたします〃

  小林と言うマネージャーと共に自分の前に立った青年を見た瞬間・・・ダイスケは息を飲んだ。

  今時にしては珍しく色を抜いていない、少し長めの髪・・・・

  細面の輪郭に目鼻立ちの通った綺麗な顔・・・・

  まだ少年ぽさを残す細い肩と身体の線・・・・

  そして、何より印象的なその大きくて、くっきりとした瞳・・・

  黒目が大きくて・・・誰もが魅了されてしまう瞳。

  マネージャーが紹介しようとした瞬間、自ら口を開いた。

  〃はじめまして。岡田瑞樹と言います。浅倉さんの曲が歌いたくてこの世界に入りました。よろしくお願いします。〃

  そっと差し出された右手にも気付かないほど、ダイスケは彼の瞳を見つめたままだった。

  《ダイスケ・・》

  アベの声で我に返ると、軽く握手を交わした・・・。

  「よろしく」

  〃ハイッ〃

  離した手が熱く感じられる事にダイスケは戸惑わずにいられなかった。

 

  《11年前・・・初めてヒロを見た時の事を思い出したわ。》

  瑞樹との対面を終えてアベが言った。

  「そう・・・」

  《そう・・・ってダイスケは何にも思わなかったの?でも、今日の彼の方が度胸が座っている気がしたけど。 あ〜〜〜でもあんな綺麗な子がまだまだいるのね〜〜〜〜》

  アベの口調はどこまでも楽しげだった。

  瑞樹はダイスケのスタッフ達とすぐに仲良くなって行った。

  見た目の可愛らしさは元より、性格も明るくて、物事の飲み込みも早い。

  おまけにアルとアニーとも仲良しである。

  《ヒロが来るとアルとアニーは別室に移動だから・・・瑞樹くんは犬、好きよね・・》

  〃実家でも3匹、買っていますよ。可愛いですよね〃

  そんな中・・・ダイスケだけは瑞樹と打ち解けずにいた。

  曲はとっくに出来上がって、完パケの状態でMDになっている・・・でもそれを作詞家の手に渡せずにいた。

  一つの作品に仕上がってしまったら、嫌でもレコーディングが始まって、瑞樹と顔を合わせなければならなくなる。

  ・・・・ダイスケは気付いていた・・・・

  毎日、スタジオに来る瑞樹の姿を自分が目で追っている事に・・・。

  ヒロユキに会いたくて、会いたくて、仕方が無い気持ちを抱きながらも、目で追ってしまっている事に。

  「僕・・・どうしてしまったんだろう??僕にはヒロがいる・・ヒロがいる」

  ・・・・・恋をするのに一秒いらないからね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  あの日のヒロユキの言葉が甦る。

  「・・どうしよう・・・ヒロ・・・・」

  《浅倉さん、大丈夫ですか?》

  スタッフの心配そうなダイスケの声も届いてはいなかった。

 

  しかし、これ以上曲の出来上がりを延ばせない。

  ダイスケはMDをアベに渡した。

  「詞が出来次第、レコーディングを始めるから。それまでに曲だけでも覚えておいて」

  曲が入ったダビングしたMDを瑞樹に渡した。

  〃ハィ!わぁ・・・僕の曲ですよね・・・浅倉さんありがとうございます〃

  瑞樹は嬉しそうに無邪気な笑顔をこぼした。

  「まだ、君のじゃないよ。ちゃんと形になってから初めて君の曲だから」

  〃ハイッ、頑張ります〃

  ダイスケはそう言うとスタジオを出た。その後をアベが追って来ていた。

  《どうしたの?ダイスケらしくないわよ。そんなに彼とは反りが合わない? 苦手でもお仕事だと割り切って貰わないとダメだけど・・》

  ダイスケが何も言わないことを肯定と受け取ったアベは・・・

  《詞が出来るまでは暫くお休みを取ったから・・連絡が行くまでゆっくりして・・。 本当はもう少し、瑞樹くんと打ち解けて欲しいんだけどね》

  「大丈夫。」・・・・・自分が自分に聞く・・・何が大丈夫なんだよ?

 

  部屋に戻って留守番電話を確認する。

  愛しい人からの伝言は入っていない・・・・。

  「ヒロ・・・ヒロ・・・会いたいよ。一ケ月も顔を見ていない・・2週間も声を聴いていない・・・」

  「ヒロ!!!」

  ダイスケは叫びだしそうになる気持ちをかろうじて抑えた。

  取り乱すなんて、アサクラダイスケには似合わない。

  「ヒロ・・・助けて・・・」かろうじて出た声はシーツに吸い込まれた・・・。

  ピピピピ・・・

  「ヒロ?!」

  〃あ・・・すいません・・浅倉さんですか?僕・・瑞樹です。夜分にすいません。〃

  「どうして・・僕の携帯の番号を?」

  〃アベさんに教えて貰いました。あの・・どうしてもお話したくて・・・〃

  ダイスケは苛立っていた。

  ・・・・こんな時に聴きたいのは君の声じゃない・・・・・・・

  「何?」

  〃えっと・・・明日、ヒマですか?〃

  「はぁ〜〜〜〜?」

  女の子をナンパするような、そのセリフって・・・・・?

  〃えっと・・・何か浅倉さんと距離を感じるんです。僕・・・もっと浅倉さんと・・・その だから・・・Dリゾート連れて行って貰いたいんです!!〃

  「・・・Dリゾート???」

  〃僕、地方出身者だから・・・実は一度も言った事が無いんですよ。明日、オフ貰ったし・・浅倉さんさえ良ければ・・・なんですけど。でも最近忙しかったから無理かな?〃

  猫にマタタビ  馬にアケビ  アサクラダイスケにDリゾート

  「良いよ・・・僕も息抜きがしたかったから・・・行こうよ」

  〃うわっ〜〜本当ですか!約束ですよ!〃

  「でも・・どうやって行くの?電車とかだと人の目がねあるから・・・」

  〃僕の車でいきましょう。どこに迎えに行けばいいですか?〃

  「車・・・・じゃあ、スタジオまで**時に迎えに来てくれる?朝早いけど大丈夫?」

  〃スタジオ・・?マンションまで迎えに行きますよ〃

  「うん・・・行く前にスタジオに用事があるんだ・・・」

  微妙な空気が流れている・・・・

  〃分かりました。じゃあ、**時に迎えに行きますから〃

  わだかまりの一欠けらも感じさせずに、瑞樹は電話を切った。

  「ゴメン・・・まだ君が分からない・・・怖いんだ・・・」

  右手に嵌めたヒロとお揃いの指輪にダイスケは口ずけた・・・・。

  「ヒロ・・・会いたい・・ヒロ・・・」 

 

  

 

  大ちゃんはこのまま惹かれていってしまうのでしょうか?20歳のヴォーカリストに!

  「一途」でいるのは無理なんですよね(ーー;)←お前がな!

                                    suika

       

     

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