秘 密
Y
『・・ちゃん・・・大ちゃん・・・?』
うっすらと目を開けたダイスケを心配そうに見つめるヒロユキだった。
「なぁに?ヒロ・・・」
『良かった〜〜・・・水・・・飲む?』
「うん、ありがとう」
『ごめんね』
手渡してくれたマグカップから冷たい水を飲みながらダイスケはヒロユキを見上げた。
「何が・・・ごめんなの?」
『えっと・・・あのさ・・・その・・・・久し振りだから・・・・無茶しちゃって・・・ゴメン!』
「フフフ・・・本当だよ。凄かったね、まだヒロが中にいるみたい・・・・・」
『大ちゃ〜〜ん、そんな直接的な言い方・・・』
マグカップをベッド脇のテーブルに置いて、ダイスケはヒロユキの胸に寄りかかった。
ロスに行って少し日に焼けたのだろう・・・また一回り逞しくなったような気がする。
「嬉しいんだよ・・・ヒロがね、何度も求めてくれる事が・・・僕だけがヒロに飢えていた訳じゃないんだって、ヒロも同じだって事が凄く嬉しい」
『大ちゃん、積極的だったよね。上に乗っ・・・イテッ』
ダイスケがヒロユキの前髪を引っ張った。
「そーゆー事は言わなくても良いの」
顔を真っ赤にして文句を言うダイスケをヒロユキは愛しかった。
髪に・・・頬に・・・キスをすると、ダイスケも髪に・・・頬に・・・キスを返してくれる
何度も何度も飽きる事無くそんなキスを繰り返す・・・・
「ねぇ?ヒロ・・・僕、しばらくヒロの部屋にいても良い?」
『いる・・・って?』
「ヒロと暮らしたい・・・。一緒の仕事じゃない日でも僕はここに帰って来てヒロといたい・・ダメ?」
『わぁお・・・大ちゃん、良いの?本当に?ダメなんて・・・・でもわんこ達は? 長い間、大ちゃんと離れていたら可哀相だよね・・・
うう・・・・思い切って・・・・いや・・・流石にそれは・・・でも・・・男なら・・・決めた!寝室以外ならわんこ達を連れて来ても良いよ。オレ・・頑張る!!!』
「ありがとう・・・ヒロ。わんこ達の事まで考えてくれて。嬉しい。 でもね、今回はわんこ達には我慢してもらうから。
本当に、いつか一緒に暮らす事になったら考えよう。 今は・・・今だけは・・・ヒロの事だけ見てても良い?」
『うん・・・いくらでも見て・・』
ヒロユキがダイスケの耳元で囁く・・・
・・・触って・・・舐めて・・・しゃぶって・・・味わって・・・感じて・・入れさせて・・・
「あ・・・ん・・ダメだよ・・その声は反則、う・・ん・・その指も反則・・あ・・・」
声で狂わされて、長い指で胸をまさぐられて・・
・・・優しいだけじゃない、野生のヒロユキがここにいる・・・
噛み付くようなキスを受けながら、ダイスケの快感が引き摺りだされていく。
《あら・・もう下にいるの?もっと早く電話しなさいよ。・・わかった。じゃね・・・》
アベは電話を切って、アルとアニーと遊んでいる瑞樹に声をかける。
《わんこ達を、隣の部屋に連れて行くの手伝ってくれる?一人じゃ大変だから》
〃・・・何故ですか?・・・〃
《今にわかるわ・・・さあ・・おいで》
わんこ達を入れて部屋のどあを閉めた時、
《浅倉さん、貴水さん、入ります》
スタッフの声と共に2人が姿を見せた。
《セーフ・・・》
〃貴水・・・さん・・・・?〃
ダイスケとヒロユキが一緒に入ってくると、スタッフのみならず、その部屋の空気が変わる事を瑞樹は肌で感じた。
〃・・・すげぇ・・・・〃
貴水博之と言う男が纏っている空気が違う・・・・
一緒にいるダイスケの表情までも、普段とは全く違う人間に見せてしまう。
《久し振り〜〜ヒロ》
《ヒロ、お帰り》
口々にスタッフと挨拶を交わして行く。
『アベちゃ〜〜〜ん、ただいま』
《お帰り・・・どうだった?ロスは?曲は出来上がった訳?》
「アベちゃん・・・いきなり・・」
《何、甘えさせているの!出来たんでしょうね?》
『2,3曲は・・・出来たのかな・・・?いや・・もう少し・・・』
《1ヶ月も行ってきた意味はどこにあるの?まっ・・・そんな事だろうとは思っていたけどね》
「帰ったばかりだから、イジめないでよ・・・」
《ダイスケもよ!2日休みが欲しいって言うから認めたら、あと1日追加って・・・スケジュール調節大変だわよ!》
「ゴメン・・流石にロスから帰ったばかりのヒロを連れ出す訳には行かないと思って」
《あ〜の〜ね・・この業界は地球の裏側から帰ったばかりだとしても、すぐに現場に行くのが鉄則。ロスくらい隣町だわ》
『まあまあ・・で、オレに紹介してくれないの?この綺麗な子を』
瑞樹は2人とアベの攻防合戦に見とれていた。
〃あ・・・すいません、おはようございます〃ペコンと頭を下げる。
「彼は岡田瑞樹くん・・・この人は・・知ってると思うけど貴水さん」
〃岡田です、よろしくお願いします〃
『貴水です・・・よろしくね』
「体調はどう?今日、ヴォーカル入れないと期限ギリらしいから頑張ろうね・・」
〃はい・・〃
先日の事なんて何も無かったような、平静な態度のダイスケに瑞樹は少し苛立ちを覚えた。
・・・ココであなたとキスした事、貴水さんに言っても平気なの?・・・・・・・
ヴォーカル録りが始まって、いつもの所でまたも曲が止められた・・・
「この間、僕が治したよね・・・でも歌いきれないのはどうして?」
〃・・・すいません・・・〃
『大ちゃん・・・ココさ、このままでいいから上のパート、コーラスで入れたら?凄い綺麗に聴こえると思うよ』
「う〜〜ん、本当はこの上のパートが主メロだったんだけど、彼には高すぎたみたい」
『でしょ?綺麗な曲だからさ』
「こんな高いの歌える・・・あ・・ヒロ歌ってくれる?それを加工する」
《最初から、機械で加工したの入れれば良いんじゃないの?》
あきれ気味にアベが言う。
「ダメ・・・ヒロが歌ったの入れる、決めたから」
『良いよ。浅倉さんの仰せならなんなりと・・。加工するなら歌詞カードに入れなくても済むよね・・・アベちゃん?』
《ハイ・・ハイ・・何とでもしますよ》
「今から・・・ヒロが歌うから・・瑞樹、戻って来て」
代わりにヒロユキがヴォーカルブースに入って、一回聴いただけの部分の歌録りを一発で終えた・・・。
それを見ているダイスケの優しい眼差し。
遊びだから・・・と、一曲歌い上げてしまった。
・・・悔しい・・・あまりの違いを見せ付けられて瑞樹は悔しさに身体が震えた。
ポケットの中で携帯が震えた・・・
〃まただ・・・もう許してくれよ・・・・〃
スタジオを逃げるように出て、携帯に出る。
〃もう連絡するなって言っただろ。約束してくれたよな・・そんな・・・してないって・・・ 300万なんて・・用意出来る訳無いだろ!おい!〃
・・・・こうなったら強請るしかないのかな??・・・・・・・・でも・・誰を??
瑞樹は自分ばかりがどうしてこんな辛い思いをしなくてはならないのか・・・しらず・・涙を流した・・・。
もうクライマックスです・・・
この後は・・まぁ・・すでに分かっていると思いますが。
コンナモンだよ!・・人生は←違う!!(ーー;
suika
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