Prestuplenie i nakazanie   〜罪と罰〜 

 

 

“あぁ・・・ヒロ・・・ヒロ・・・”

 

「うわあ!」

オレは掛け布団を跳ね除けて起き上がった

「またかよ・・・」

ほぼ毎日 同じ夢の  同じ場面で目覚める

同じなら慣れてしまえば良いのに・・・・いつも心臓がドクンと鳴って跳ね起きる

あの日・・・音楽番組に初めて出演した時、偶然見てしまった楽屋での彼の自慰行為

男同士なんだから冗談で済ませようと思えば、

すでに過去の出来事になってしまっている筈なのに

「・・・ヒロ」と黒いシャツに顔を埋めてオレの名を口にしたあの姿が目に焼きついて離れない

うっすらと汗ばんだ額に張り付いた茶色の髪・・・上気した頬・・・白い歯が少し覗いた紅い唇

思い出すと下半身が疼いて来てしまった

「おいおいおい・・・相手は男だろ、おマエ!」

節操なく勃ち上がってくる自分自身を怒鳴りつける

 

あれから仕事の量が半端じゃなく増えた

TVだけじゃなくラジオ、雑誌、イベント等・・加えて彼が曲を作れば

オレは詞を書かなければならない

当たり前のように彼とは毎日、顔を合わせて言葉を交わしている

どんな時でも彼はポーカーフェイスを崩さない

・・・・・でもオレは知ってる

カメラマンに注文されて肩や腕や身体が微かに触れ合う時、彼が震えている事を

 

「オレさ・・・早く彼女作らないとやばい・・・」

身体の欲を男を思って処理するようになったらオシマイだよな

現にどんなに仕事が忙しくても遊びは怠らない、飲みにも行くしディスコにも行く

片目を瞑ってみせれば付いてくる女はたくさんいるんだけどな・・・・・・でも・・・

 

「さて・・・」

今日こそは遅刻しないようにと支度を始める

見て見ぬ振りしてくれる人のカミナリもそろそろ落ちてくるだろう

ベッドを降りて、目に入ったソレは・・・

あの日、彼が抱きしめたオレの黒いシャツだった

本番が終わったあとに何気に着替えて部屋に帰るなりハンガーに吊るしたままだった

シルクだから毎回洗う事もしないけど、それより・・・彼の香りや、せつない吐息や、

涙が染み付いている

「洗えないよな・・・・」

 

 

「やっべえ〜〜〜〜」

余裕で支度を始めた筈なのに何故か部屋を出る時間ギリギリなんだろう?

マネージャーからのモーニングコールにも「今日は大丈夫だよ」って言ってしまった

・・・絶対、怒られるよな・・・・

自分の車で事務所に行くのは禁止されているので、

渋滞にハマってしまったタクシーの運転手と一悶着起こしながら辿りついた

「おはようございます」

おそるおそる事務所に入ると   仁王立ちのマネージャーの姿

・・・は、無く。 奥から笑い声が聞こえていた

「あ・・ヒロ。おはよう」

彼がスタッフと和やかに笑い合っていて、いつものように穏やかに迎えてくれた

「ア・・・アベちゃんは??」

見回してもどこにも怖いマネージャーの姿は無かった

「今日の現場に先乗りするって、さっき出て行ったよ。後から二人で来るようにってさ」

「だから・・・こんなに和やかだったんだ」

彼の目がスーーーっと細められた

「今の言葉さぁ・・・アベちゃんに言っても良い?」

「そんな怖い事・・・やめてよ、大ちゃん」

きっとオレの顔が恐怖に引き攣って居たんだと思う  笑の種にもならなかった

 

 

「あっははは・・」

彼だけは笑いのツボに入ってしまったのか、現場に向かうタクシーの中でも

笑いが止まらずにいた

「大ちゃん?そんなに面白かった?」

「ウン・・・・・・」

声にならずに首を動かすだけで涙流して笑うって・・・・

その時、車がいきなり急カーブを回った

笑っていた事で油断していた彼の身体がおれの身体にぶつかるようにしながら

膝の上に倒れこんでしまった

オレはとっさに彼の身体を庇うように抱きとめた

「何やってんだよ!」

運転手に声を荒げる  今日はロクな運転手に会わない

「スイマセン・・・急に横道から学生が飛び出してきたものですから。

 お隣の方大丈夫ですか?」

オレに抱きとめられたまま、大ちゃんが動かない

「大ちゃん?大丈夫??」

オレが覗き込んで大ちゃんが見上げればぶつかる瞳と瞳  何かに怯えるように揺れている

「うん・・・大丈夫」

声が震えている事は気付かないであげよう

すぐに身体を元に戻して、何事もなかったかのように前を見つめる

「気をつけて下さいね」

冷静を装って運転手に注意している

・・・無理してるの?

それから現場に着くまでオレの方を一度も見なかった

 

 

「遅い!!」

撮影スタジオの玄関でマネージャ−が待っていた

チラッとオレを見ると

「まぁた・・・遅れた?」

「ううん・・・ヒロは今日は遅れてない。タクシーがね、ちょっとトラぶったの。ネッ?」

オレが言い訳するより早くマネージャーに彼が言い訳をしてくれてた

「ホント?」

きっと彼が庇ってくれた事なんかはマネージャーはお見通しだろう

「分かったわ。さぁ、支度して。カメラマンさんが待っているから」

彼が少し微笑んでオレの顔を見る

3人でエレベーターに乗り上の階を目指す

マネージャーから今日の撮影のコンセプトを説明してもらっているけれど

オレは殆ど聞いていなかった

「ヒロ、聞いてる?」

隣に立って時々オレを覗き込む彼の瞳にはアノ時の怯えた様子は僅かも読み取れとれない

そのスマシタ横顔がオレの中の悪ヒロを呼び起こさせたのかもね

 

エレベーターが3階に着くとオレ達だけが降ろされた

「先にスタジオに寄ってから、メイク室に行くから。ちゃんと支度始めているのよ」

長い指が上の階のボタンを押した

 

「おはようございます〜〜今日はよろしくお願いします」

メイク室に待機していたヘアメイクさんやスタイリストさんへ新人っぽく頭を下げて挨拶をした

壁一面に下げられた衣装の数を見て、今日は何百枚写真を撮られるのだろうかと

気が遠くなった

この雑誌では御馴染みのヘアメイクさんに手を上げて鏡の前に座った

「タカミさん、上着脱いでくれないと・・・首にタオルかけられないんですが・・・」

「あぁ・・・ゴメン」

オレが立って上着を脱ぐと、隣に座っていた彼がハッと息を飲んだ

それはきっとオレだけが感じられた音かもしれない

彼にとっては二度と見たくなかった黒いシャツだっただろう

朝、ソレを手にとって着るつもりなどなかったのだけれど・・・

遅刻寸前の時計に急かされて結局持っていたシャツを着てしまった

本当は・・・彼に見せつけたかったのかもしれない

「タカミさん、それ素敵ですね。シルクですか?」

ヘアメイクさんの好きなデザインだったのかもしれない、

偶然にもオレのシャツの話になってしまった

「うん。100%だから、なかなか洗えなくてさ。2,3回着たけどそのままだよ」

今日のコンセプトが『宇宙っぽい』なので、流石に自分ではメイク出来ずに

任せっぱなしにしている

「そうですよね。間違ってクリーニングに出したら縮んじゃったって話 聞きますから」

会話をしながら隣の鏡に映った彼を横目で見る

目を瞑ってメイクされているので何も聞いていないふりをしている

・・・忘れたなんて言わせないよ

「ねえ?大ちゃんはさ・・・シャツ自分で洗ったりするの?例えば・・・シルクはどう?」

いつもより濃いシャドーを瞼に塗られた瞳がゆっくりと開かれてこちらを見つめる

「シャツ?・・・うん。難しいよね」

答えが上滑りになってるよ、てか何も見てないでしょ?

 

いつも明るい彼が無口になってて、途中でメイク室に入って来たマネージャーも

「どうしたの?」って心配していた

「何でもないよ」

答える声にも元気が無い  そう言えばあのタクシーの中からオレの顔を見ていないね

もっとシャツの話を引っ張ろうかと思った  君の困る顔がもっと見たい

 

「支度が出来たら、お願いします〜〜〜」

カメラのアシスタントさんがオレ達を呼びに来た

「行こうか・・・ヒロ」

「うん」

宇宙服っぽいデザインの衣装を着せられてエレベーターで上の撮影スタジオまで向かう

裾が思ったより長くて歩くのにも一苦労だ

ブランド品を着こなすより、こう言う特殊な衣装の方が何倍も疲れる

「よろしくお願いします」 

もう何度目の『お願い』、芸能界は『お願い』で作られてるんだろうか?

床にキラキラした砂が敷き詰められて、バックにも光るフィルムが貼られている

ココに立てばオレ達の衣装も浮かないから不思議だ

でも後で聞いたら半分以上CG合成になるという

 

初めにオレ一人の撮影

マネージャーに言わせると『ヒロはすぐに気崩してしまうから・・・』らしい  

失礼だよなぁ・・・当たってるけどさ

デビューして数ヶ月

最近、やっと撮られることにも慣れて来た

元々目立ちたがりやだから、むしろ好きなのかも知れない

どのカメラマンにも言われる  『タカミくんは目が印象的だよね・・・思わず見入ってしまうよ』

・・・それからかな、女の子を堕としたい時は まず見つめる

余分な言葉は言わない それで殆どの女の子は堕ちる・・・

ふと、スタジオの隅でマネージャーに何か一生懸命話しかけている彼を見ていたら

彼もオレの方に目をやって自然と見詰め合うかっこうになってしまった

どちらともが目を逸らせずにいる  

何を思っているんだろう? 声を出さずに唇だけで形を作る  『ダ・イ・チ・ャ・ン』

それに気付いたのか?気付いていないのか?

彼の目が僅かに見開かれる

 

「ちょっと視線こっちに貰えるかな?」

カメラマンの注文に我に返る

「はい」

ライトの強い光が目の奥に差し込んで痛いくらいだ

同じような光を胸に差し込んだら、汚いこの思いを焼き尽くしてくれるんだろうか?

オレの中の・・・君に残酷な事をしたいと思っている この心の闇を・・・

 

 

 

*****************************to be continued

 

 

 

〜Close-to-you〜が素敵に(?)ダークで終わったので、続きを書いてみました。

そして・・・ヒロもダークです(^_^;  少しだけ続けてみようかと思っていますが、どうなることやら・・・。

(タイトルはロシア語なので読み方は分かりません・・・ってか、誰も聞かないよね(苦笑))

                                       suika

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送