君と・・・・・




  * 6 *




分かっていたの…

こんなことしたら、あなたに嫌われるって

それでも、優しいから苦笑いして許してくれるって


胸の中で祈っていたのに…

あなたは優しい

優しすぎるの


こういうの修羅場って言うのかな…

違う

あなたが必死で引き留めているのが私なら、あぁ…アサクラさん何騒いでいるんだろうって余裕見せられるのにね


邪魔者は私なんだ…


「ヒロ…」

呼んでも無駄だと分かってる

「何で?あの時、いつでも会ってくれるって言ったじゃない!」


…言っても無駄だと分かってる


…ヒロがアサクラさんに叫んでる

『あの子は友達だから!』


そうよね…友達だから一緒にクリスマスツリー見に行ってくれたのよね


私、きっと友達の座を自分から手放してしまった


「ヒロ…彼女寒そうだよ、中に入れてあげなきゃ」

「何言ってんの?大ちゃん」


「だって、ヒロの携帯に出て、バカラのツリー一緒に見に行って…」

「やっぱり恵比寿に居たんだ。あれっ…あの日オレに電話したの?」

「したよ」

「着歴無かった…あっ…」


「ユリ…オレの携帯に何した?」


…そんな冷たい目で見ないで

「ごめんなさい…電話に出たらアサクラさんだったから…私驚いて…着歴消してしまったの

 自分でも、どうしてそんな事したのか分からない」

「最低だ…お前」

「ごめんなさい…」

「謝って許せる事と許せない事がある…社会人なんだから分かるよな

 帰ってくれ…もう二度と会わない」


…あなたは優しいのよね

…違うの?

「きみ…風邪引いちゃうよ」

アサクラさんが私に話かける


…そんな優位に立った慰めは止めてよ

「別に寒くないですから」

言いながら歯の根が合っていない

…バカみたい

泣きそうになった時、フワッと肩に暖かさを感じた


アサクラさんが自分のカシミヤのマフラーを私にかけてくれた

「いりません」


「後で捨ててくれて良いから」

「大ちゃん、そんな事しなくていいよ」


「ごめんね」

…どうしてアサクラさんが謝るのよ


私がフラれたのが面白かったから?

ヒロが私に酷い事を言ったから?

あなたがヒロに守られているから?


「アサクラさん、ごめんなさい。ヒロ…ストーカーみたいな事してごめんなさい

 コレお借りします…ありがとう」


ヒロに出会えて幸せだった

涙なんか見せちゃダメ!

カッコよく歩いていくのよ

次はもっと素敵な恋をするわ




「彼女、本当にヒロが好きだったんだね」

「…」

「だから…いつも言ってるのに。優しすぎると相手は誤解するよって」

「自分ではそれが普通なんだけどね」

「これからも沢山の女性が惑わされる訳だ…可哀想だよね」

ヒロユキがダイスケの肩を抱き、エントランスを抜けてエレベーター前へ誘う


「で?一番惑わされているのは大ちゃんなんだ」

「な!何、それ?」

「それで…暫くはオレが電話しても出なかったのか」

「ヒ……」


エレベーターが閉まった瞬間、ダイスケの抗議はヒロユキの唇に吸い込まれた

抱き合い…

求め合い…

吐息を絡ませて…

お互いを分かり合う


心地よい余韻が身体の奥から湧き出て眠りを誘う

「だあいちゃん」

ヒロユキの甘えた声が耳にくすぐったい

「ん?」

「気持ち良かった…?」

「ストレートだね」

「たまには聞きたいじゃん」

「全然、気持ち良くなかった」

「うっそ…」

「て、言ったらどうする?」

「そりゃあ、もっと気持ち良くなるまで励みますよ。今すぐに!」

「あ…それは身体保たないかも 嘘だよ。ヒロは最高だよ」

ヒロユキの裸の胸に顔を埋め、心臓の上に手を当てた


「ヒロのココにボクはいる?」

「いるよ」

ダイスケの長くなった金の髪を撫でてやる

「大ちゃん、大ちゃん、って鼓動打ってるよ。聞こえない?」

「…ホント」


ディナーショーの緊張とユリへの嫉妬

そして…ヒロユキへの尽きない愛しさ

ダイスケは鼓動を聞きながら、いつしか眠りの淵へ落ちていった

「寝ちゃってる。オレが疲れさせた? お休み……ダイスケ」

細い身体を抱きしめ、頬にキスをする

ダイスケの穏やかな寝息にヒロユキも眠りに誘われていく


いよいよカウントダウンライブのリハーサルが始まる



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