◇◇◇ 果てしなき・・・ ◇◇◇








毎日、忙しすぎるから余計な想いに捕らわれるのよ

と、優しいマネージャーの忠告もあり、スタジオに居ても気が散って作曲など出来る訳がないと家に帰った

くつろいで愛犬を撫でていると携帯がワンコールで切れた

「?」

無視すれば良いのだけれど得手していたずら電話より、こっちの方が気になるものだ

画面に出ている名前にダイスケは鼓動が急に速くなるのを感じる

「サイトウくんから?」

同時にアベが連絡を取りたがっていたのを思い出し、間違ってこっちにかけたのかもと…思い巡らした結果

ダイスケは慧にリダイヤルした


2回目のコールで通じた

「もしもし」

『はい』

違う、彼の声じゃないダイスケは直感した

「あ…これってサイトウさんの電話じゃ…」

『今ね、彼は風呂…』

聞き覚えのある声だった

優しいトーンも喋り方も、ダイスケのいつも近くにいる人のものだ

『……ヒロ?』


どうか、違うと否定してほしい

声が似ているなんて世間じゃよくある事だから

『大ちゃん?』


瞬間、ダイスケは携帯を切っていた

震えが止まらない腕を振り上げ、部屋の隅へ携帯を投げつける

壊れてすべてのメモリーが消えて無くなればいい


「そっか…そう言うことか」

今、聞いたばかりのヒロユキの声が離れない

それはきっとこの先も自分を苦しめるのだろうとダイスケは思った


愛したモノはいつか壊れてゆく

愛した人もいつか離れてゆく


「ヒロ……」


本当に悲しい時は涙も出ない






「…もっと強く」

慧のほっそりとした腕がヒロユキの背中に回される

抱き合う素肌の熱さに慧はヒロユキが自分に堕ちた事を確信した

セックスなんて、男も女も同じ事

どこをどうしたら快感を得られるかなんて簡単だ

感情がほつれても肉欲は正直なのだ

ヒロユキが慧の胸の小さなピンク色の突起を口に含み舌で転がせば自然と腰が跳ね上がり欲望の証が大きくなる

「んぅ…」

慧は口の中が乾き舌嘗めずりをした

その赤い赤い舌が暗闇の中でも鮮やかに浮き上がった

慧は抱かれ慣れているとヒロユキは思った

きっと…誰もが彼に魅せられるのだ

慧の欲望を強く握り上下させると、喘ぎ声が一際大きく高くなりヒロユキの手の中で果てた


「……キスして」

息を整えながらヒロユキに口づけをせがむ

どんなワガママでも自分に叶わない事はない

しかし、ヒロユキは聞こえない振りをした

優しい唇の代わりに慧が吐き出した精を指に乗せ口腔に差し入れた

うっとりと目を閉じていた慧は一瞬に状況を把握し目を開いて抵抗した

「やだ!気持ち悪い!」

「こういうの好きだろ?」

長い指で舌を愛撫する

「んふっ…やら…いや…」

ヒロユキが指を引き抜くと、閉じれなかった唇の端から唾液が伝う

「タカミさんが…欲しい…」


ヒロユキの汗の浮いた胸元にキスを落としながら

慧は下半身へと唇を這わせていった


己の欲望が暖かい口腔に導かれた瞬間だけはヒロユキも目が眩むような悦を覚えたけれど

クチュクチュと慧がたてる卑猥な音は、まるで他人事のように聞こえる


…大ちゃんは今頃、血の涙を流しているのだろうか


慧の舌技は最高なのかもしれない

でも、愛が足りない

…オレは君なんか愛しちゃいないんだ

「もう…やめよう」

ヒロユキの声に慧が咥えたまま見上げる

それを引き抜くとヒロユキはベッドから出た

「なっ!?…待って!どうしてですか?」

「やっぱ無理だ。出来ない、ってか…君じゃ勃たない」

「ボクに魅力感じないって事?」

衣服を着始めたヒロユキに縋るように慧は問いかけた

「君が女性なら、すぐに抱いたけど男である以上、やっぱり無理だ」

「アサクラさんに悪いから? そんなの仕方ないじゃないですか!」

「君にはオレ達の事は分からないよ」

「タカミさん…カッコ悪い」

「オレの事を“世界一カッコ良い”って言ってくれる人がこの世に1人だけいる。オレにとって特別な人だ。」

「何だ、それ…変なの」

悪態をつきながら慧は顔を伏せた

「何でも良いよ。気づかせてくれた君には感謝しなきゃね。サンキュ」


ジャケットを着終えて部屋を出る際、ヒロユキは後ろを見ず言った

「さっき、君がした事は全部忘れてあげるよ。でも、今度、彼にひどい事をしたらただじゃおかないからね…じゃあ」

ヒロユキはそのままダイスケの部屋を目指した



…大ちゃん

憎んで良いから嫌いにならないで


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