V
 
ヒロの部屋はダイスケの予想通り、モノトーンで統一されたシンプルなものだった。
そんな中で、無造作に壁に立て掛けてあるイラストのパネルだけが鮮やかな色をしている。
誰が描いた物なのかダイスケにはわからなかったけれど、ヒロらしいな・・・と思う。
隣の寝室との区切りになるドアがない。 最初からないのか、ヒロが取り外してしまったのか。
その部屋に、また不釣合いな色の物を見つける。
オレンジを基調にした派手な花柄のベッドカバー。
一瞬、見たこともないヒロの “彼女” が過ぎって胸がチクリと痛んだ。
エアコンのスイッチを入れていたヒロが、ダイスケの視線の先に気づく。
『何?大ちゃん』
不意に訊かれて、無防備状態だったダイスケは
『派手・・・・・だね』
と、ベッドを指差してしまう。
『あぁ、嫌い? ハワイに行ったとき雑貨屋で見つけて・・・・いかにもって感じが気に入って買ったんだけど』
言いながら、ヒロが寝室の照明を点けて、そのままストンとベッドに腰を下ろした。
『ヒロが・・・・買ったの?』
そう分かったら急に、南国っぽくていいかも・・・・とか思ってしまう現金なダイスケだ。
『うん。 俺のベッドだもん。 他に誰が買・・・・・・は、は〜ん?』
ヒロが目を細める。
『だ〜れが買ったと思ったのかなぁ〜?』
『もちろん、ヒロが買ったと思ったよ!』
すかさず答えるダイスケの耳はほんのり赤くなっている。
ヒロはクスクス笑いながら、こっちにおいでというようにダイスケの方へ片手を差し伸べる。
ダイスケが近づくと、その腕で絡めとられるようにヒロの隣に座らされ、そのまま腰を抱き寄せられて、唇を奪われる。
深く口づけられて、ダイスケの意識がぼんやりした瞬間、ふわっと身体が浮いたと思ったらベッドの上に押し倒されていた。
『ヒ・・・ロ・・・?』
見下ろしてくるヒロの顔が、色っぽいな・・・と見惚れていると、その唇が
『いい?』
と、動く。
『何が?』
ダイスケの間の抜けた返事に、ヒロが苦笑いする。
『あのね・・・この体制で “何?” はないと思う・・・』
だって・・・・と抗議しようとするダイスケの唇を塞ぎながら、ヒロの手はダイスケのシャツのボタンにかかる。
それに気づいたダイスケが、慌ててヒロの手を押さえた。
『・・・・大ちゃん? 嫌なの?』
ちょっとじれた感じで、ヒロの声に不機嫌さが混じる。
『そ・・・じゃなくて・・・・だって、僕 男だよ?』
『だから?』
『ヒロ、男とは・・・・したくないって言ったよね?』
『うん・・・したくない』
そう言われて、自分で訊いたくせにやっぱり悲しくなってしまうダイスケの瞳が潤む。
目じりから零れそうになっている雫をヒロが舌ですくって・・・・
『でもね・・・・大ちゃんとは、したい・・・・。 大ちゃんは特別だから・・・・』
その優しい声で、ダイスケの身体から力が抜ける。
1枚、1枚着けているものをヒロが剥がしていくのを、さりげなく手伝いながらダイスケもヒロの服に手を伸ばす。
『大ちゃん、白いね・・・』
あらわになったダイスケの胸に指を這わせながらヒロが呟く。
『そぅ? お日様に当たってないから・・・・ヒロみたいな色にはなら・・ぁ・・・・・・』
ヒロの指が胸の突起に触れて、言葉が途切れる。 
反対側の突起を口に含まれて思わず声が出そうになるのをダイスケは唇を噛んで耐えた。
ヒロの愛撫に、いちいち反応する自分の身体が信じられない。
『・・・・ん・・・・・・』 
脇腹から腰へと滑っていくヒロの指に また声が出そうになるのを辛うじて止める。
耳朶を甘噛みされ、ヒロの声が吐息のように流れ込んでくる。
『どうして声出さないの?・・・・気持ちよくない?』
『そんなこと・・・ない・・・・・ただ・・・・』
『ただ?』
『僕の声なんて聞いてもつまんないよ・・・・・きっと・・・・』
その言葉にヒロは動きを止めて、ダイスケを見下ろして言った。
『俺が聞きたいの、大ちゃんの声・・・・・・いや?』
『こんな声・・・・・なのに?』
戸惑い顔で見上げるダイスケの髪を片手で梳きながらヒロが微笑う。
『いいよ、大ちゃんが出したくないなら・・・・・・・ 俺が無理やり・・・出させる・・・』
言い終わらないうちにヒロの手はダイスケ自身を包み込んだ。
『あっ・・・・』
ダイスケの身体が跳ねる。 それを身体全体で押さえ込んでヒロは指を動かした。
・・・・・あ・・・・だ・・・・・・・だっ・・・・・・て・・・・ヒ・・ロ・・・』
ヒロの腕を掴んで抵抗しても指の動きは激しくなるばかりで、ダイスケも意識が快感の方へ傾いていくのを止められない。
『・・・・あ・・・・・・あぁ・・・ぁ・・・』
声を止めることなど忘れて、潤んだ目でヒロを見上げると、その行為とはかけ離れて意外なほど優しい瞳とぶつかる。
『ヒ・・・ロォ・・・』
縋るようなダイスケの声にヒロが囁くように答える。
『大ちゃん・・・・好き・・・だよ・・・』
その瞬間、目眩のするような幸福感にダイスケは達してしまっていた。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送