* STAY MY LOVE *
 
 T
 
『彼女とは別れる』
なんて、ヒロがすごいことを言ってくれたあの日から すでに1ヶ月がたっていた。
で、どうなったかと言えば・・・・・・どうにもなっていない。
もちろん あの後もダイスケはヒロと仕事で何度も会っている。 
でも それが仕事である限り いつもスタッフに囲まれていて二人きりになることはない。
二人きりで食事でも・・・・と画策したダイスケだったが そういうときに限って急な仕事が入ったり
スタッフがいっしょについて来てしまったりで、うまくいかない。
電話でもすればいいのだろうが、しなれていないダイスケは用事もないのに電話なんて・・・と思ってしまう。 それに・・・・
『ヒロだって、電話くらいくれればいいんだよ!』
ベッドに転がったまま、ダイスケは天井に向かって思いっきりしかめっ面をする。
昨日から、ずっとスタジオに詰めていてまったく寝ていなかったのだが、アベに言われて今から少し仮眠をとろうと
スタジオ内の仮眠室のベッドに横になったところだった。
でもなかなか睡魔は訪れてくれない。 ヒロのことを考えてると不安やら、腹立たしさやらが胸の中に湧き上がってくる。
正直に言えば「会いたい」気持ちが何よりも大きいのだけれど・・・・・・。  
(僕のことが好きなんて本当かな・・・・・だったら どうして電話もくれないんだろう)
(彼女と別れるって・・・・まさかね・・・・・)
(やっぱり あれは何かの間違いだったとか言われたら・・・・)
そんなことを考えているうちに 少しづつ夢の世界へ入っていく。
 
『大ちゃん』
ヒロが微笑みながら ベットの上のダイスケにキスを落とす。 
その温かさにうっとりしていたのに、ヒロの舌の感触でいきなり目が覚める。
『・・・・・んっ! ヒロ!?』
いったん唇を離したヒロの顔が再び近づいてきてダイスケはあわててベッドに起き上がった。
『い、いつ来たの?』
『たった今。 ノックしたけど返事なかったからさぁ・・・』
キスを拒まれて、ちょっと不満顔のヒロが、ベッドの端に腰掛ける。
夢だと思ってた・・・・・・とダイスケが呟くのにヒロがクスッと笑う。
『夢の中では いつもキスしてるの?』
『え? そ、そーじゃなくて! だから・・・ヒロが急に・・・』
頬を薄っすら染めて言い訳するダイスケを抱き寄せると 今度は逃がさないようにゆっくり唇を奪う。
角度を変えて何度も口づけを交わすうちに、ダイスケの腕はしっかりヒロの背中にまわってしまう。
『これ以上やっちゃうと収まりつかなくならない?』
半分夢見心地のダイスケの耳元でヒロが囁く。
『あ・・・・・うん・・・・・』
恥ずかしそうに身体を離すダイスケの唇にもう一度軽くキスをしてヒロがポケットから何かを取り出した。
『先週ね、彼女と別れた。 今日はその報告に来たんだけど・・・・』
『ええっ?!』
いきなりの言葉にダイスケは何を言っていいのか分からない。
『ええっ・・・って何? 俺、別れるって言ったじゃん。 ちょっと手間取ったけどさ・・・・ま、いろいろあったんで』
『・・・・本気・・・だったんだ?』
その言葉に ヒロが軽くダイスケを睨む。
『ひっどいなぁ・・・、嘘だと思ったの?』
『だって・・・・・・・彼女のこと好きで付き合ってたんでしょ?』
『うん。 でも大ちゃんの方が好きになっちゃったから』
あっさり言われてダイスケは返す言葉が見つからない。
『やっぱりさ、こういうのはケジメつけとかないとね。 はい、これ』
そういってヒロはダイスケの手に何かを握らせた。 手を開くと銀色の鍵。
『これ・・・・?』
『だから ケジメ』
ふっと微笑んでヒロは立ち上がる。
『寝てないんでしょ? 長居するとアベちゃんに叱られるから、そろそろ行くね』
今にも部屋を出て行こうとするヒロを、ダイスケは慌てて呼び止める。
『ちょ・・・ヒロ! 待ってよ、これ何? どうすればいいの?』
わかんないよ〜と、白旗を揚げるダイスケにウインクで返しながら
『また電話するから、それ持ってて。 俺の部屋の鍵』
・・・・・ヒロの部屋の鍵・・・・・・? ダイスケが唖然としてる間にヒロは部屋を出て行ってしまった。
追いかけることも忘れて、手の中の鍵を見つめる。
何がケジメで どうして鍵なのか よくわからなかったが、両手でその鍵をギュッと握って そのままベッドに転がる。
口元が綻ぶのを どうしても止められない。
彼女とは別れたらしい。 そして自分の手にはヒロの鍵。 何がなんだか分からないけど・・・・・嬉しかった。
先ほどとは違う理由で、睡魔が遠ざかる。 あと3日くらいは寝なくても大丈夫な気分のダイスケだった。

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