*** LOVE FOR NOW ***

 

 V side-HD

 

ヒロがリビングに入ると、ダイスケが居心地悪そうにソファーの前に立っていた。

『おかえり・・・』

俯き加減で言うダイスケが可愛くて、そのまま抱きしめて “ただいま” と言いたくなるのを、足を一歩踏み出したところで留まる。

緩みそうになる口元を引き締めてダイスケを見つめた。

『勝手に入ってごめんね・・・』

何も言ってくれないヒロに不安を感じながら小さな声で続ける。

“ごめんね” は、そこじゃないでしょ・・・と思いながらヒロはダイスケに歩み寄る。

『勝手に入るための合鍵なんだから、いつでも使ってよ・・・・・・・・・・・で?』

ちょっと屈んでダイスケの顔を覗き込むようにしたら一歩さがって目を逸らした。

『で・・・・・って・・・・・だから・・・・・あれは・・・』

『あれは?』

『あれは・・・だから・・・ち、違うんだからね?』

その言葉にヒロが笑い出す。

せっかく我慢していたのに、ダイスケの予想通りの返答に気持ちが緩んでしまった。

なんで笑うの〜と、ダイスケもヒロの笑い声に少しホッとする。

『ごめ・・・ん、なんでもない。 で、何が違うの?』

無理やり笑いを収めてヒロがなおも詰め寄る。

『だから・・・不可抗力っていうか・・・あれはニシカワが勝手にやったんだ・・・よ?』

『だから大ちゃんは悪くないって?』

ダイスケは一瞬怯んだもののヒロの目を見て言い切った。

『うん、悪くない。 あれは・・・事故!』

あらら、ニシカワくん事故にされちゃったよ・・・・・彼にちょっと同情を覚えつつもヒロには まだ納得いかない部分がある。

どう切り出したらいいものか考えてるヒロにダイスケの不安は募っていく。

どうして黙ってるんだろう・・・・・やっぱり謝るべきかな。 

でもここで謝ってしまうと自分が悪かったことになるし・・・どうしよう。

二人、それぞれの想いに睨みあうようなカタチになってしまう。

そこにヒロの携帯が鳴り出した。

おかげで張り詰めていた感じはなくなったもののダイスケは、また女の子かな・・・・・と眉を寄せる。

ヒロは相手の名前を確認して、少し躊躇ってからダイスケに背中を向けて電話に出た。

『・・・・・うん、どうしたの?』

そのやさしげな口調から やっぱり女性だと確信したダイスケはちょっと不貞腐れ気味にソファーに腰を下ろした。

“あのね、どうせまだ彼女に会ってないだろうなぁって思って、私からアドバイス〜!”

アヤの元気な声に ちょっとめげる。

『なに?』

“あれ・・・・・まだ元気ないね。 あのピアスなんだけど〜彼女に渡すんでしょ?”

『うん』

“その時 交換条件出すのよ”

『はぁ?』

“だーかーらー、ピアスあげる代わりに、もう元彼と会うなとか、その部屋に男入れるなとか・・・”

そんなものが交換条件になるんだろうか・・・・・ヒロが疑問に思っていると・・・・・

“女なんてプレゼントには弱いもんなのよ。 目の前のものに釣られて、とりあえずOKするって、絶対!”

アヤは言いたいことだけ言うと、頑張ってね〜と一方的に電話を切ってしまった。

女じゃないんだけどね・・・・・・・振り返るとダイスケが面白くなさそうな顔でソファーに座っている。 まずい・・・。

こうなったらアヤのアドバイスに縋ろうとポケットからピアスの入った袋を取り出してダイスケの隣に座りながら、それを渡した。

黒いビロードの袋を手のひらに載せたまま、ダイスケが首を傾げてヒロを見る。

『これ、なに?』

『プレゼント、開けてみて』

なぜ ここでプレゼントなのかダイスケにはさっぱりわからない。

怒っていたのはヒロのはずで、ご機嫌取りのプレゼントなら渡すべきなのは自分のほうじゃないのか?

ダイスケが恐る恐るという感じで袋を開くと、ピアスが出てきた。

淡いブルーの石がアンティークな銀の細工に包まれていて、小さいけれど地味な感じはなく、

ダイスケはひと目でこのピアスが気に入っていた。

ダイスケから笑みが零れるのを見て、ヒロは今から交換条件を出そうとしている自分がとても悪いことをするようで胸が痛んだが、

このもやもやを抱えたままでいるのも嫌だった。

ダイスケの口が ありがとうの「あ」の形になったところでヒロはダイスケの手をピアスごと握った。

『これをね、大ちゃんにあげるんだけど・・・・・』

ダイスケが何を言われるのかと不安そうな目でヒロを見上げると、ヒロはそれ以上何も言えなくなってしまった。

そんなことの為に このピアスを選んだわけじゃなく、ただダイスケの喜ぶ顔が見たかっただけのはずだ。

だから 用事もないのにわざわざダイスケのスタジオまで足を運んだんじゃないか。


『ヒロ?』

このピアスに何か意味があるみたいで、ダイスケは嬉しいのに不安が拭えない。

瞬間、一番怖い想像が心に浮かんで、思わず口に出していた。

『ねぇ、これが最後じゃないよね? これ・・・お別れの・・・・・・・とかじゃないよね?』

ダイスケの突然の言葉にヒロがびっくりする。  どこからそんな考えが・・・・と思ってスタジオでのことを思い出した。

そうだ、キスしてたんだっけ・・・・・、しかし そんなことぐらいで別れるって男がいるんだろうか?

そんなことを考えてるうちに、ダイスケの目が潤み始める。

ヒロは握っていたダイスケの手を身体ごと引いて腕の中に抱きとめた。

『だぁいちゃん、そんなことあるわけないでしょ。 オレそんなに心狭くないって』

ダイスケがヒロの胸に顔を埋めたまま、ほんとに?と呟く。

『ほんとほんと、キスはたいした問題じゃないって・・・・』

キスは・・・・・キスは・・・・ってことはキス以外の何かがヒロにあんな目をさせたんだろうか?

ダイスケがヒロを見上げた。

『じゃ、問題は何なの?』

目を逸らして言いよどむヒロに はっきり言えと食い下がると、渋々という感じでヒロが口を開いた。

『つまらないことかもしれないけど・・・・・・・・・・あの仕事部屋は大ちゃんが曲を作るとこだよね』

ダイスケがコクンと頷く。

『アクセスの曲も作るよね』

もちろん・・・・・・と再び頷く。

『だから、あそこはオレにとって神聖な場所だったりするんだよね、誰にも踏み荒らされたくないっていうか・・・・・・、

 でも・・・・・・大ちゃんの部屋なんだからオレがどうこう言え・・・・・大ちゃん?!』

いきなりダイスケが抱きついてきてヒロの身体が背もたれに押し付けられた。

『大ちゃん・・・・・?』

『・・・ごめん・・・ごめんね、ほんとにごめんね・・・・・・』

ダイスケはヒロの胸に頭を摺り寄せるようにして謝り続ける。

全部聴かなくてもヒロが言いたいことはわかってしまった。

そんなに大切に思っていてくれた場所なのに、自分はなんてことをしたんだろう。

もちろん自分が好きでしたことではないけれどヒロに嫌な思いをさせたことには変わりがない。

『あそこには もう誰も入れないから、ヒロ以外誰もいれない・・・・・・』

呟き続けるダイスケを強く抱きしめると、ヒロはその髪にキスを落とした。

 

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ダイスケはベッドの中で眠りかけたヒロの腕枕をそっと外そうとして、またその腕に抱きこまれた。

『・・・・・なに? 腕枕、いや?』

ヒロの匂いに包まれてダイスケが小さく笑う。

『違うよ、ヒロの腕が痺れちゃうんじゃないかと思って・・・』

『あぁ・・・、そんなの大丈夫だよ』

慣れてるから? という言葉をダイスケは飲み込んだ。

『ヒロォ・・・』

なぁに・・・・・半分寝ぼけた声でヒロが返事を返す。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでもない・・・・・・』

ショートカットの人は誰? なんて訊いたところでどうなるっていうんだろう。

ガールフレンドの一人に決まってる。 聴いたら自分が嫌な思いをするだけだ・・・そう思ってダイスケは口を閉じた。

そんなダイスケにヒロは、また何か考え込んでるに違いないと

『大ちゃん、溜め込んでると身体に悪いよ。 言ってみて、なんでも答えちゃうから』

少しおどけてダイスケを見ても、ヒロの胸に埋めた顔をあげようとしない。 

『・・・大ちゃん・・・』

『あっ・・・・・』

ダイスケが急にヒロを見上げて、あのね・・・・と遠慮がちに訊いてきた。

『今日スタジオでヒロ、ごめんって言ったよね?』

そうだ、あのごめんは何だったのか・・・・・ダイスケとしては かなりショックな言葉だったから

訊いておかなければ・・・・そう思ったのに・・・・・。

『・・・・・そんなこと言ったっけ?』

拍子抜けするようなヒロの返事に、言った、絶対言ったよ、と声を大きくしても

『ん〜、覚えてない』

一言で片付けられてしまい、力の抜けたダイスケは再びヒロの胸に顔を沈めた。

そんなダイスケを腕の中に引き寄せて、その耳元でヒロが囁く。

『何を言ったとしても大ちゃんが一番好きだから・・・・・』

だから安心して寝なさい・・・と。

ヒロ、それは自分が眠いだけでしょ? という言葉にヒロは薄く笑ってダイスケの背中をあやすように叩いた。

 

 

しばらくして聞こえてきたヒロの寝息を子守唄代わりに、ダイスケも夢の世界へ入っていく。

ショートカットの女だろうが、ロングヘアの女だろうが、誰が来たってヒロは絶対に渡さない。

夢の中でもヒロを護れるようにと、その手をしっかり握って・・・・・。

 

 


---------- end ----------




 

大ちゃんを泣かせたい! と書き始めたものだったのに大ちゃん強いわ(笑)

大ちゃんが泣かない時点で目的を見失った私・・・・(遠い目)

次こそは大ちゃんをダーダー泣かせてみたいです!

でも可愛い大ちゃんは好きだけど、女々しい大ちゃんは嫌なの。 紙一重(^_^;

(この4行で“大ちゃん”って6回も書いてる。そんな私はヒロファン)

そしてエッチはすっ飛ばす!(爆) だってここは“ほのぼのサイト”(言い訳;)

結局、甘くてごめんなさい(_ _;)

                                   流花

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