labyrinth 【H-side】 |
“ 間違っているのかもしれない ” 100万回も繰り返した自分への疑問。 自分の中の何かが壊れそうなのに、それがなんだかわからない。 わからないから不安が膨らんで、すべてから目を逸らせたくなる。 ダイスケに言われた言葉が、頭の中をグルグル回っていた。 “ ヒロがどっかの綺麗なお姉さんとやってんだったら、 僕が誰かとやったって構わないはずだよね? ” 正論だった。 どうして今まで考えなかったのだろう・・・・。 でもそれ以上に、ダイスケが自分以外の誰かと・・・・ そう考えただけで胃の辺りが熱くなってしまう自分自身に戸惑っていた。 もちろん、ダイスケのことが好きなのだから、そう思うことは当然なのだが ・・・・・・・・想いが強すぎる。 ヒロの戸惑いはそこにあった。 こんなに強く、誰か一人に執着したことは、今までになかった。 浮気されたら別れればいい、自分と彼女は縁がなかったのだ・・・・ そう簡単に結論を出してしまえるそんな恋愛を繰り返してきた。 でも、その都度本気だったはずだ。 会いたくて会いたくて、毎日電話したり、 たった5分でもいいと、会いに行ったこともある。 そんな気持ちが “ 恋 ” だと思っていた。 ならばダイスケへの気持ちはなんなんだろう。 “ 信頼 ” 一番近いのはそれだと、ずっと思っていた。 なのに、気が付いたら肉体関係まで出来ていて・・・・・ でも恋愛じゃない・・・・そう思ってきたのに。 こんなドロドロした感情が自分の中にあるなんて知らなかった。 気付きたくはなかった。 いつのまに、こんなに好きになっていたんだろう・・・・ 誰にも渡したくないと思うほどに・・・・。 そして、いつもの疑問が顔を覗かせる。 “ 間違っているのかもしれない ” このままだと、この気持ちはもっと強くなるに違いない。 ダイスケ以外いらないと思うほどに気持ちが膨れ上がったら・・・・・・ どうすればいい? そんな経験はないから、どうしていいかわからない。 いや、そんなふうになっちゃいけない。 だって・・・・・間違ってる。 二人は同性同士なんだから。 ダイスケの自分への好意は、いつも感じていた。 戸惑いながらも、それを心地よく思っている自分にも気付いている。 でも、もし自分の気持ちが強くなって、ダイスケを縛り付けるようになったら・・・・ ダイスケだって、そんな重いもの、背負いたいとは思っていないはずだ。 こんな気持ちが、ダイスケの負担になる前に・・・・・ A*Sの活動の妨げになる前に・・・・・ ヒロは自分の気持ちに決着をつけることにした。 数日後、話があるからと、二人きりにしてもらったダイスケのスタジオの中。 『改まって、どうしたのぉ?』 いつもの笑顔でソファーに座ったダイスケに向かって、 ヒロは立ったまま、その言葉を告げた。 『もう、やめよう・・・・』 『・・・・・・やめるって・・・何を?』 『オレと・・・大ちゃんのこういう付き合い・・・・いや、こういう関係・・・・かな』 ダイスケの顔から、一瞬で笑みが消える。 『ヒロ? ご・・・めん・・・・・意味が・・・・よく・・・・』 言葉を詰まらせるダイスケから、ヒロは視線を逸らす。 『つまり・・・・男同士なわけだし・・・こういうのは不自然だろ? いつまでも、このままじゃダメだと思うんだよね・・・』 言いながらも、ヒロはダイスケを見る事が出来ないでいた。 不自然なんて・・・・・そんな理由の方がよっぽど不自然なのはわかっている。 男同士なんて、最初からわかっていたことだし・・・・・・。 言い訳めいた自分の言葉に、ダイスケは 悲しむだろうか・・・・それとも呆れるんだろうか・・・・・。 『好きな人でも出来た?』 少し震える声で訊ねるダイスケに、緩く首を振る。 『ア・・・A*Sは・・・どうするの?』 少しの沈黙の後、返ってきた言葉はそれだった。 『・・・・やめたくはないけど・・・・それは大ちゃんに任せるよ』 『・・・・そう・・・・わかった、考えとく』 思ったより張りのある声に目を上げると、ダイスケの笑顔とぶつかった。 『やだなぁ、ヒロ、なんて顔してんの?』 そういって、ふふっと笑うダイスケに、ヒロもホッと息を吐く。 『僕が泣くと思った?』 『うーー・・・、うん、ちょっとね・・・』 『ざーんねんでーしたっ、泣いてなんかやらないよ!』 イーッと、鼻に皺を寄せるダイスケが可愛くて・・・・・ いつもならここで抱きしめるのに・・・・・。 『うん・・・・大ちゃんは強いもんね』 オレなんかよりずっと・・・・・心の中で言葉を繋いでも口に出すことは出来ない。 『そ、だから大丈夫だよ。 僕の顔も見たくないって言われたら、さすがにショックかもしれないけど・・・』 そういった時、ダイスケの瞳に陰りを見たような気がして、ヒロは胸に痛みを感じた。 『そんなことあるわけないよ』 大ちゃんのことは、ずっと好きだよ・・・・・声に出来ない言葉が胸の中に溜まっていく。 『よかった・・・・じゃA*Sは続ける方向で考えとくよ。 いい?』 『もちろん』 ヒロは、笑顔で答えている自分が信じられなかった。 そして、同じく笑顔のダイスケにホッとしながらも、ショックを受けている自分がいる。 ダイスケにとって、自分との関係はそれほどのものではなかったのかもしれない。 仕事に支障がでなければ、それでいい・・・・それだけのことだったのかと。 『あ・・・そろそろ仕事に戻らないと・・・・』 言いにくそうに切り出したダイスケに、ヒロは笑顔のまま頷く。 『うん、忙しいのにごめんね・・・・じゃ・・・また・・・』 『うん、またね・・・』 ソファーから立ち上がることなく、ダイスケも胸の前で小さく手を振った。 後ろ手にドアを閉めると、ヒロは逃げ出すように自分の車に飛び乗る。 あのままだと、またドアを開けて、ダイスケを抱きしめてしまいそうだったから・・・・。 好きになりすぎて怖い・・・なんて、間抜けなことを言って縋ってしまいそうで・・・・。 本当は少しだけ、ほんの少しだけ、期待していた。 “ 別れたくない ” とダイスケが言ってくれるのを・・・・・。 そしたら、自分の中で何かが変わるかもしれないと、勝手に思っていた。 別れたい、別れたくない・・・・自分の中でせめぎあう二つの想い。 夜の道を走りながら、ヒロは片手で自分の胸を押さえた。 胸の奥の痛みを止めることが出来ない。 これが一番いい方法だと・・・・自分で決めたことなのに・・・・・。 自分の想いでいっぱいだったヒロには何も見えていなかった。 ダイスケが笑顔を作る前の切ない表情も、 小さく手を振るその指先が小刻みに震えていたことも・・・・。 ---------- next ---------- |
・・・・・・さて、どうしよう・・・・・・(ーー;)
流花☆2004/10/20
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