Yearns for the sun 〜太陽に憧れて〜







水分をたっぷり含んだ分厚い雲が空一面を覆っている

気まぐれにつつけばそこから雨となってグレーの道路を濡らすんだろう

わずかに吹いている風の中にも湿ったイヤな雨の匂いがする

もうすぐ落ちるだろう水滴と競争するように早足になった女性に追い越された

一秒でも早く家に帰りたい程大切な人がいるのだろうか?

その人に冷えた身体を暖めて貰うんだろうか?

人は誰だって心安らげる場所が必ずあるのだから・・・


見慣れた道の両側に今まさに鮮やかな緑の葉を生い茂らせてる木々

その一枚の葉をポツッと大きな水の粒が揺らした

・・・雨

そう思った瞬間には耳が痛くなるほどの雨音が響き渡る

蜘蛛の子を散らすようにと例えられるけれど蜘蛛の子を見た事がないのでイマイチ理解出来ない

でも、自分も蜘蛛の子になって近くの店の軒先に逃げ込んだ

・・・すっごい雨

半ばあきれたように半ば感動しながら雨のカーテンの向こうの景色を見ようと目を凝らす

けれど勢いが凄すぎて何も見えない


きっと働き者の神様が雲をギュって絞っているんだろう

そして教えてくれる

・・・もうすぐ「梅雨」が来る


ボクの大好きな人は「梅雨」の時期に生まれた

誕生日が近づくといつも考える

・・・何を贈ったら喜んでくれるのか

聞けば笑って答えてくれる

『大ちゃんがいれば何もいらないから。  で、何くれる?  カッコ笑い みたいな 』

本当にボクで良いの?

側にいるのがボクで良いの?

何十回聞いただろう  何百回答えてくれただろう  何千回泣いただろう  何万回愛してると言っただろう

それでもこの気持ちは消えてくれない

あぁ・・・きっといつも彼の誕生日がこんな雨の季節だからなんだ

湿った空気は澱んだ考えにしか辿り着かない

雨が彼の生まれた日を教えてくれるから長く離れていた間も忘れた事は無い


・・・ホントは車が欲しいんだろうけど

車の事になると良い男が台無しになるんだと思う自分の口元が緩んでいく

こんなにも彼を愛している

後を向いてガラスに映る自分を見つめた

彼はボクを愛してくれてる・・・・?

そう問いかけてもガラスはボクではなく後にけぶる雨の粒を映し続ける


彼に相応しい贈り物をと思ってもソレはナンダロウ?

結局は自分で決めなければならないなんて事分かってる

言いたいだけなんだ

・・・ボクの彼はこんなに素敵なんだよ

きっと彼の存在に相応しいものなんてこの世に無い

真っ直ぐに降り続く雨の糸は途中で切れそうもなくて

いつボクはこの店先から抜け出して彼の胸に飛び込めるんだろうね

そして彼はボクを何時間待っててくれるだろう


待ち合わせの時間は刻々と過ぎて行ってる

日頃は待たせる側のボクも彼に会う時だけはせっかちになる

彼を待たせるなんて考えた事も無い・・・多分・・・たまには待たせてるかな?

でも  今日は  今日だけは  待たせる訳にはいかない

・・・彼が生まれた朝もこんな雨の日だったのかな?

そんな戯言を彼の親から聞く事はきっと一生無い

永遠を誓ったとしても誰にそれを言えるだろう

無限大のループのように命が続く事は無い

彼の遺伝子をどこかに残せるものならばボクはどんな事でもする

それが叶わぬ事だと分かっていても


・・・ほんの数秒だけ止んでくれないかな?

その間に大事な箱を上着で隠して彼の元に走って行くから

それくらい大目に見ても良いでしょ?神様

雨の勢いは緩くなる所かさっきより酷くなった気がしてボクは空を見上げた

・・・あっ?!

見つめる雲の遥か向こうに青空が一瞬見えた気がする

もう一度確かめようとしてもグレーはグレーのままだった

・・・見間違い?

あまりに彼に会いたいボクの思いが見せた幻の青空だったのかもしれない

きっと ボクの頭上に太陽はいない


そんなにまでして どうしてボクは彼が好きなのかな?

好きと言う想いが幻を見せるくらい彼に惹かれて行く訳を誰か教えて欲しい

答えが出るのならば・・・


握り締めた小箱の中は彼に一番似合うと信じて買い求めたモノ

きっと喜んでくれる筈

・・・優しいからね

誰にでも優しい彼はホントは酷い人かもしれない

・・・良いよ ボクの前でだけボク一人の彼ならば

強がりなボクをこの雨が洗い流してくれないかなと願う

待ち合わせの時間をからくり時計が綺麗な音色と共に告げた

・・・会える時間が減っちゃうよ 

忙しい仕事の合間に回りのスタッフに無理言って数時間だけもぎ取った

昨日も明日も仕事で会う時間を作れなかった だから今日だけはと思っていたのに

回りに迷惑かけてるからもう会うのはヤメロって事かな

それが出来るならどうして10年も彼を愛しているのか教えて欲しい

答えなんて出ないくせに!


・・・この雨の中を走っていけば良いんだ

彼は驚きながらも微笑んで胸に抱き締めてくれる

息を吸い込んで雨の中に足を一歩出しかけた時

「大ちゃん!」

・・・?

ボクを呼ぶ声が近くなって薄ぼんやりと見えてきたのは

「ヒロ!」

「会えて良かった・・・急にすっごい振って来たから大ちゃんが困っているんじゃないかと思ってさ」

傘を差してはいるけれどそれはあきらかに用を成してない

どんなスピードで走ってきたのか パンツの裾に飛び跳ねた水と泥がこびり付いている

「ごめんね・・・冷たいのに」

「そう?雨の中走るのって楽しいじゃん。スタジオへの道を逆に行けば途中で会えるんじゃないかと思ってさ」

「擦れ違うとは思わなかった?」

「どうして?会えるに決まってるでしょ?オレと大ちゃんだもん」

あぁ・・・

どうしてそんなに綺麗な顔で笑うんだろう

どうしてそんなに明るい声で笑うんだろう


ボクは彼に恋しています  きっと会った瞬間から彼を愛していました

「大好きだよ」

ココが店の軒先なんてボクには関係ない

今 彼に告げなければ いつ 告げる事が出来るだろう

「愛してる」

「うん。オレも愛してる あはっ・・・こんな外で照れるよね」

ホンの少し赤くなった顔を隠すように天を見上げる


彼が見上げる方へボクも目をやれば  

「太陽が・・・」

さっきまでの叩きつけるような雨は上がり  眩しい太陽が出て来た

・・・嘘

彼が来た瞬間から雨はその存在を隠しつつあった

そして太陽へバトンを渡す


「梅雨」に生まれたのに 彼からは「太陽」の匂いしか感じなかった

大地や作物や動物や人間が雨で喉を潤した後に 闇さえも 太陽の到来を待ち望むように


ボクには彼が必要なんだと

答えが出たような気がした


彼が「梅雨」の季節に生まれたのは  「太陽」を連れて来る存在だから



「ヒロ・・・お誕生日おめでとう」

「ありがとう」






そしてボクはいつまでも太陽に憧れ続ける







*********************************************END







貴水博之さま(今はHIRO☆TAKAMI・笑)お誕生日で書かせてもらいました。
が・・が・・かなり暗い感じでしょ?  
私的には【モノクロ】なイメージで書きました(強い雨が降っている時に書いたからこんな事に)(^_^;
何はともあれ!♪HIROお誕生日おめでとう♪そっか??歳なんだね・・・もう大人じゃん(爆)
                               suika
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送