『柔らかな灯の下で』





家にぬいぐるみが増える

娘のでは無くオレの誕生日に大ちゃんがくれたものだ

生番組にサプライズとして渡すために事務所に隠していたのだと後で知った

家路に付く車の中でオレは貰ったライオンのぬいぐるみを膝に抱えながら、留守番をしている娘に思いを馳せる

「これ見たら驚くかな?」

隣りに座る彼にそっと尋ねる

「可愛いからきっと気に入るだろうね」

「だよね〜あ!でも、これはオレのだから」

娘の柔らかさとは全く違うふさふさのたてがみを撫でてみる

「また・・・」

大ちゃんがフッと笑った

見慣れたはずのそんな表情も良いなぁと・・・何より、最近 同じような表情を娘がする事に気付き 

“DNAってすげー” と思ってる



「お疲れ〜」

「お疲れ様・・・気をつけてね」

送ってくれたスタッフに手を振りオレ達は少し早足になる

一秒でも早く娘に会いたい

ドアフォンを鳴らし鍵が開く前にオレはぬいぐるみを背中に隠した

「すぐに見せてあげないの?」

「愛にもサプライズ」

「・・・BBN見てたよ、きっと」

「あぁ?!」

今夜だけはネットが繋がらなくて見てませんようにとオレは心の中で祈った

カチャリと内側から鍵を開ける音がして、それに続きパタパタと軽快な足音が近づく

可愛い可愛いオレの娘が両手を広げ抱き付いて来た

「ママ!なちゃい」

「ただいま。イイ子にしてた?」

「あら?」

・・・・結局、最初はママなんだよな

「おかえりなさい」

「ただいま。いつもありがとう」

娘にフラれて手持ち無沙汰なオレに愛と一緒に留守番をしてくれた大ちゃんの妹に挨拶をした

「ヒロさん・・・ほらっ、背中の見せてあげたら?」

小さな声で彼女が助言してくれる


そっと、隠していたぬいぐるみを愛の目の高さに持って行き左右に振ってみた

『愛ちゃん、コ・ン・ニ・チ・ワ』

「ライオンしゃん!!!!

大ちゃんに抱かれながら目を真ん丸に輝かせた

「そう来たか・・・ヒロずるい」

「作戦、、作戦」

大ちゃんは足をバタつかせる娘を廊下に降ろした

「ライオンしゃん、可愛いね」

「ね〜〜」

ライオンのぬいぐるみ付きだが狙い通りにオレは可愛い娘を腕に抱きしめた




妹が帰り自分たちの夕食を終えても愛の興奮は治まらなかった

リビングでくつろぐオレ達にぬいぐるみを見せる為行ったり来たりしている

ふと、オレの顔をじっと見て聞いた

「ライオンしゃん・・・・あいの?」

「パパがママから貰ったからパパのだよ」

「あいの?」

「パパの」

「あいの・・・! うえ〜〜ん」

とうとう大きな瞳から涙が零れて大ちゃんの膝に泣き崩れた

「ヒロ・・・そんな事子供に主張してどうするの?もう・・」

苦笑しながら大ちゃんがあきれてる

「ゴメン、ゴメン、このライオンしゃんは愛ちゃんのだよ」

「あいのライオンしゃん?」

まだ流れる涙のままオレに擦り寄ってきた

「パパが悪かった、ゴメンネ」

イジワルしたってパパは優しいと信じてくれるこの愛しい娘を抱きしめた

「みんな愛のモノだよ」

「ライオンしゃんは?」

「愛の」

「アルたんは?」

「愛の」

「アニたんは?」

「愛の」

これは? これは? と家中のモノを指差されて、オレは笑いながら君のモノだと答えてやった

「パパは?」

鼻先を小さな指で突付かれた

「パパ?!もちろん、愛のだよ」

「ママは?」



「ママは・・・・・・パパの」

大ちゃんがソファから転げ落ちんばかりに笑っている

「ママは?」

かなり頑固な性格をママから譲り受けた娘は一歩も引かない

「・・・・・パパの」

「ママは?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・パパの」

「ママは!!」

「パパの!」

「ママは? うえ〜〜ん」

再び、大ちゃんの膝で泣き崩れてしまった

「ヒロ! イジワルしちゃダメだって言ったじゃん! 自分の娘をイジワルな子に育てたいの?!」

「だって〜〜〜大ちゃんはオレのでしょうが!!」

「ヒロってば、もう・・・しょうがないな」

「だってさ」

「ママは愛とパパのモノだよ・・・愛はパパとママのモノ、パパは愛とママのモノ。独り占めはしちゃダメなの。ね?」

大ちゃんが娘を胸に抱きしめて背中を撫でながら語りかける

「誰が欠けても幸せにはなれないんだよ」

「ママしゅき(好き)」

「パパは嫌い?」

「パパもしゅき(好き)」

「パパも愛が大好きだよ」



3人でいる事の大切さ

3人でいられる幸せ

そっと照らしてくれるのは愛と言う灯火



「ヒロ」

愛を抱いた大ちゃんが小声でオレを呼ぶ

「ん?」

「ママとしてのボクは愛のモノだけど・・・ダイスケはヒロのだからね」

「うん、オレも・・・」

「でもさぁ、子供ってびっくりする事言うね」

「成長って凄い。・・・・あ、バースデイの御礼は今晩たっぷりするから」

「ばぁか」

真っ赤になった大ちゃんが寝入った娘をベッドに運んで行く


「よっし、今夜は頑張るか!!!」






@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@終





ヒロ、頑張らんでもいいぞ!(爆)

なかなか書く時間が取れないのですがBBNのぬいぐるみを抱きしめるヒロの姿に触発されました

古いネタにならないうちに書けて良かった(^_^)

「愛ちゃん」楽しんで頂けたら幸いです。


                        suica
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送