Wonderful event 







PURURU・・・

PURURU・・・

今夜は携帯ではなく、家の電話を鳴らす

『はい、もしもし』

「アサクラです」

『大ちゃん・・・アサクラです、ってちょっと新鮮だよね』

「そうかな? たまには改まってみようかと思っちゃった」

『で、何?どした?』

ヒロはいつも屈託無く話す

ボクがこんなに緊張していると言うのに・・・

「あのね、新曲出来たよ」

『・・・・・・・・マジ?』

長い間の沈黙が彼の驚きを伝えてくれてる

「だって、カウントダウンライブで新曲歌うって、10月のラジオでみんなに言ったじゃん」

『だけどさ・・・だけどだよ・・・ついこの2,3日前まで大ちゃん他のアルバムのレコーディングしてたよね?』

ヒロの声があきれてる・・・

「作った。みんなに聴いて欲しくて、何よりもヒロが歌ってくれるって思って頑張った・・・ごめん」

『いやっ、そうじゃなくて! 怒ってる訳じゃない。オレこそごめん』

「・・・・」

『しかし・・・凄いよ、大ちゃん・・・・・大ちゃん? 怒った?』

ボクは相当疲れているようだ

受話器を持つ手が上に上がらなくなってる

「ううん、ちょっと疲れてるのかな。今日もアベちゃんに〃早く帰りなさい〃って怒られちゃったよ」

『大ちゃん。気をつけないと。無茶ばっかりするんだから・・・オレ、心配で仕方ないよ』

「出来た事だけヒロに言いたくて。MDは明日スタジオに取りに来てくれる?」

本当にそれだけ?

今すぐにでもヒロに会いたい・・・会ってこの曲を聴いて貰いたい

でも、叶わない事だから

家の電話にかけたのもヒロが部屋に帰っているか知る為だった

そんなに会いたいのに

『今、それドコにあるの? スタジオ? アベちゃんが持ってるの? それとも、大ちゃん?』

「ボクが持ってきちゃったんだ」

『それさ・・・今から取りに行って良い? 一秒でも早く聴いて、歌詞書きたい!

 時間が無いから・・・・・大ちゃん家に行っても良い?』

エェ〜〜〜〜ヒロ本気なの?

MD取りに来てすぐに帰るなんて、そんな野暮な大人じゃない

話したい事は山のようにある

「良いけど・・・良いけどね・・・ワンコいるよ。当たり前だけど。大丈夫?」

『・・・・グッ・・・・』

受話機の向こうでヒロが絶句している

「こんな時間ではアベちゃんに預ける訳にはいかないし。ボクがスタジオ行こうか?」

『ダメだってば! 疲れてるのを無理させるほどオレは大ちゃんをコキ使う気は無いよ。大丈夫、今から行くね』

妙に決心したようなヒロの声に苦笑が零れるのを押さえられなかった

頑張ってボクに会いにおいで・・・・ヒロ




「絶対、ヒロの前では喧嘩しない事! 良い? 分かった?」

ボクはワンコ達に言い聞かせる

これって端から見たら滑稽?

でも、構わない・・・ヒロを怖がらせるような事は全て排除したい


Pinpon


「はーーい、良いね? 大人しくしててよ」

ワンコにもボクの高揚感が伝わると良いのに!


カチャリ


「今晩は。こんな遅くにごめん」

「良いけど。初めてだね」

ヒロの横をすり抜けてドアのチェーンをかける

マンション住まいなら当たり前な行為なのに・・・

ヒロが居ると思うだけで胸が苦しくなるのはナゼなんだろう

「・・・上がったら?」

「う、うん。お邪魔します」

リビングに通じる廊下にワンコ達が出迎えに出てきた

身体を身構えたヒロの視線がワンコの上を彷徨う

「うわぁ・・・大きいね・・・・どうも、初めまして・・・・タカミです」

〃ウワン!〃〃ワン〃

「流石にユニゾンで吠えられると凄い」

「ごめんね」

「大ちゃんが謝る事ないよ。今まで避けてたオレが変だったような気がする」

「こっちが女の子でアニー、こっちが男の子でアル」

「よろしくね。あぁ、写真で受けたイメージ通り可愛いね」

「ありがとう」

二人と二匹が揃ってリビングへと歩いていくのは何とも不思議な感じだ

こんなシュチエーション今までも何回もあった筈なのに、きっとボクがその時と違う気持ちなのだろう

・・・ずっと、夢でこんな場面を見ていたような気がする


今日は最高に貴重な日になるのかもしれない

「どこでも良いから座っていて。今、お茶入れるね」

「お構いなく、MD貰ったらすぐに帰るから」

「何で?!」

自分でもビックリするような声が出てしまった

そして、何気に棘が含まれているようにヒロに届いたかも知れない

「何で・・・・せっかく、来たのに・・・そんなに慌てて帰らなくてもいいじゃん」

「違うから!そんな意味じゃないよ。長居すると大ちゃんが休めないって思ってさ」

「大きな声出してごめん、ともかくお茶入れるから待ってて」

「じゃあ、遠慮なく」


ヒロのちょっとした態度や仕草や行動に左右される自分が怖い・・・

お茶を出したら次はどうしよう、そんな事ばかり考えている


「大ちゃん・・・・」

「どうしたの?」

トレーを運んで行くと、ヒロがワンコ達の間に挟まって身動きひとつ取れなくなっていた

「イヤ・・・何かね・・・オレがココに座ったらお犬様たちもココに座ってさ。挟まれちゃってるね・・・」

ボクは笑いを堪えるのに必死だった

気の毒にと思いながらも、ヒロとワンコ達のスリーショットは嬉しくなる


ボクがヒロの向かい側に座ってもワンコ達はヒロの側を何故か離れない

それどころか、興味しんしんでヒロの匂いを嗅いだり、スリッパに手を置き掛けたり

その都度、ビクっと震えるヒロが可愛かったりする

「オレ・・・動物には無条件で好かれるんだよね」

「そうみたいだね、小さい頃から人には慣れる様にしてあるけど。こんなに興味持ったのは始めてかもしんない」

「にしても・・・大っきいね」

さっきからヒロの口を付いて出るのは〃大きさ〃ばかりだった

「可愛いねって言って貰えないと、アルはともかくアニーは機嫌治してくれないよ」

「そんなもんなの?」

・・・本気にしないでよ、ヒロ


「そうだ・・・新曲聴かなきゃ何しに来たのかわかんなくなるじゃん」

「そうだよ!」


ボクは立ち上がってMDをコンポに入れスタートを押した

静かなイントロの後に湧き上がるようなメロディ

目を閉じて音に集中しているヒロの口から今聴いたばかりのメロディが零れている

彼は言う・・・

最初に聴いたイメージを大事にしたいからと

その時はワンコが彼の足元で寝転がっていようと関係ないんだ



「凄いよ・・・大ちゃん。凄すぎ!」

「ありがとう・・・さあて、次はヒロの番だよ。詞、頑張ってね」

「う・・・ん、書くものある? 聴いていて少し閃いた・・・家まで覚えてられない」

ボクは書斎からノートとペンを持って来てヒロに渡す

受け取るなり白い紙の上にいくつもの言葉を並べ始めた

少し閃いた・・・数ではない気がする

ペンを滑らす横顔がいつもの穏やかな表情じゃなくて・・・

こんな事は今まで何回もあった筈なのにボクは見つめたまま目を逸らす事が出来ない

テーブルの上に乗ったお茶はすでに冷えてしまっている

でも、ボクは身動き一つ・・・指先一つ動かせずにヒロを見つめる

・・・今、君の心の中から何が沸いているのかを知りたくて


「何か書けそうな気がする。大ちゃんココで書いちゃっても良い?」

「良いけど・・・気が散っちゃうんじゃない? コレとかコレとか」

ボクはそう言ってグッスリ眠っているワンコを指差した

「忘れてた。全然、大丈夫だよ。そっか・・・・大ちゃんが言った通り、ワンコの寝息って癒されるね」

「ヒロ。ボクは?」

「大ちゃんがどうした?」

「ボクは側に居てもいいの? 迷惑じゃない?」

その時の自分の表情が見えなくて本当に良かったって思う

どんなにか切羽詰った必死な顔をしていたんじゃないかと想像もしたくない

「迷惑なわけ無いじゃん・・・横にくっついていたって平気だよ」

「ありがとう」

そんな存在に自分がなったのだろうか? それとも、関心が無いだけなのか?

でも、ボクは君の側に居たい

MDを何度も巻き戻したり、進めたり、ただ聞き流したり、そうやってヒロのペンが進む

文字を紙に書く少し固い音を聴きながらボクは幸せを噛み締める


無音の箱で曲を作るのは決して嫌いじゃない・・・


そして、ヒロとワンコ達と同じ空間でボーとする時間も嫌いじゃないと気付いた・・・


今日はボクの中の〃大切なモノ〃が増えた記念すべき日だ




・・・ねえ?ヒロ

この次、ワンコに会いに来てくれるのはいつ?

ボクは指折り数えて待っていても良いの?




「出来た!大ちゃん、出来たよ。読む?あれ?」

ダイスケはヒロユキの肩に凭れ掛かって眠っていた

二人の足元には大きなワンコが二匹丸くなって眠っている

「そうだ・・・疲れてるって言ってたっけ。ごめんね」

身体を離そうとした背中に引っかかる感じがしてヒロユキは気付いた


ダイスケの手がヒロユキのシャツの裾を握り締めてる事に・・・

「オレが怖がって逃げちゃうと思ったのかな・・・大丈夫だよ、どこにも行かないってば」


「起きたらすぐにコレ見せなきゃ・・・で、年末に歌うのかな?・・・オレ・・・」








      ☆☆☆☆☆END☆☆☆☆☆









カウントダウンライブで聞いた「ヒロ、ついにワンコに会う!」事件(事件なのか?)

書かなきゃウソって事で・・・・

すでにカウントダウンライブから遠く離れてしまいましたが(反省)(^_^;

何で本物のライブでは堂々としている大ちゃんを私は「不安」に陥れてしまうのか?

何でライブのMCでDKくんから逃げ腰だったヒロを書けないのか?

謎・・・・・・・(苦笑)

タイトルはそのものズバリ【素敵な出来事】
                      
                      suika
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