☆☆☆　With your wish　〜あなたの望むまま〜☆☆☆






星明かり　　　色とりどりの飾りつけ　　細長い紙に書かれた願い事

幼い頃の記憶の中で・・・

まだ若い母に手を引かれて町内の子供会の行事に連れて行かれた

慣れない浴衣を着せられ、下駄の鼻緒が足の親指の腹を擦って少しだけ痛い

それでも小学生にならないと参加出来ない子供会に入った事でボクはちょっぴり大きくなったような気がしていた

公民館の玄関を入ると上級生のお姉さんから手渡された飾りを自分で付けなければならない

でも、そこにあるのは自分の背より遥かに大きな笹竹

どこに付けていいのか分からずに涙目になって母の姿を探した

見つけた母は同じように子供を連れて来ているお母さん達と楽しく話をしていた

何故か・・・ボクは母を呼ぶのを躊躇った

手の中の色鮮やかな飾りが所在無く揺れている

見上げた笹竹が涙で滲んで見えた



そこに吊り下げられた短冊に書かれた願い事たち

「ちょうごうきんのマジンガーぜっとがほしい」

「うるとらマンになりたい」

「ながしませんしゅにあいたい」

男の子の願いはだいたいこんなモノだ

「お花やさんになりたい」

「アイドルにぜったいなる」

「リカちゃん人ぎょうがほしい」

女の子の願いは割と現実的



『すてきな恋ができますように』

難しい漢字を覚えたばかりの思春期の女の子が書いたのだろう

ボクは幼すぎて『恋』という字は読めなかった

それでも不思議とときめく気持ちを感じ取る

心臓の端っこがキュウ・・とせつなくなるような、見てはいけない扉を開けてしまったような・・・

「どうしたの？付けてあげようか？」

泣きべそをかくボクに気がついて上級生のお姉さんが声をかけてくれた

その人の顔を見つめながら　この短冊を書いた人かもしれないと思うと

ボクは急に恥ずかしくなってお母さんのいる方へ駆け出した



『恋』の意味も知らない頃





「・・・あ・・・」

瞳を開ければ　　見慣れた天井　　見慣れたカーテン　　見慣れた部屋の中

いきなり現実に戻されても、まだ夢の中にいるような感覚

「何で・・・？いきなり小さい頃の夢見たんだろう・・・？」

・・・・笑える・・・・

それでも

たまには実家に帰ってみようか？

あの公民館はまだ建っているんだろうか？

子供会の行事ってまだ続いているのかな？

なんて思ったりした



『すてきな恋ができますように』

そう願った少女の夢は叶ったのだろうか？

ボクはあれからいくつの夢を持ち、見えない短冊に願いを書いている

それは叶ったり　叶わなかったり　何枚破り捨てただろう

永遠に願い続ける事もある



『恋』という字も読めるようになったし、『恋』をした事もある

なかなか叶えたいと思うような『恋』には出逢えないよね？



カチャリ・・・

「あれ？大ちゃん。起こしちゃった？ごめんね」

ベッドの上でまだ寝惚けているボクの隣が空いている

ボクを起こさないように出て行ったままのソコへ、また当たり前のように彼は納まった

「大丈夫・・・ヒロの振動で起きた訳じゃないから。何だった？ 電話か・・・」

ヒロが手に持っていた携帯をサイドテーブルへ置いた

「今日の予定が少し変わったって連絡だった」

「こんな朝早くにね」

ヒロは驚いたような顔をしたあとプッっと吹き出した

ボク変な事言った？

「ゴメン・・・ゴメン・・・さっきねオレもマネージャーに〃こんな朝早くなんだよ！時間考えてよ〃って言ったら凄い怒られちゃった、

窓から外見てください！って。でさ・・・リビングのカーテン開けたらピーカンじゃん。　時計見たらお昼」

「嘘？！」

「ホント・・・・マネージャーもあきれてた。オレ達さ・・・世間から外れてるわ」

「そっか、て言うかボクね・・・まだ夢の続き見てるみたい」

視線が定まらない、どこを見ているのか自分でも分からない

「大ちゃん？？？マジでどうかしちゃった？」

ボクはヒロの腕に縋りつき、彼の胸にコトッと頭を持たせかける

「最近、睡眠時間が短かかったからさぁ、眠ればスッキリすると思ったのに逆効果だったな」

「時間があるなら無理しなくても良いじゃん。オレもまだ出掛けなくても良いしさ

　・・・このまんまいよう・・・・」

そう言ってボクの肩までブランケットを引きあげてくれた

そんな何でもないヒロの優しさに泣きそうになる

涙を隠す振りをしてボクはそっと目を閉じた

「・・・ボクの・・・願いは・・・叶ったのかな・・・」

「ん？何？大ちゃん」



一年に一度しか会えなくてもずっと愛し続ける自信はあるよ

でも、ボクは織姫と彦星のように忍耐強くない



毎日ボクの側にいて「愛している」と言ってくれる人が良い

ボクの願いを見えない短冊に書いて今年も神様に願ってみよう

確かにその人はいつも近くに居てくれるんだけど・・・・










＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ｅｎｄ










「七夕」で書いてみました♪
私は何よりもこう言うロマンチックな行事が好きだったりします(^_^;ﾃﾍｯ・・・似合わないけど。
大ちゃんとヒロは今年は何を願うのでしょうか？ってか、すでに願ってるのかな？（苦笑）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　suika