Stardust 〜スターダスト〜  

 

 

 

カランッ・・・

ドアベルが早朝の暗く冷たい空気の中に響く

「うわぁ〜〜〜寒い!!」

「そりゃそうだよ、朝の6時だぜ。本当にこの中を歩いて帰る気なのか?」

この店のオーナーである友人はカーディガンを頬まで引っ張り上げてヒロユキに尋ねた

「あぁ・・・酔いを醒ますにはちょうど良いのかも知れない。それにオレ身体鍛えてあるから大丈夫」

「いくら鍛えてあるからって、無茶するなよ」

「まぁ、疲れたら車拾うから。・・・じゃあな、また」

ヒロユキはマフラーを巻き直した

「あぁ、また来いよ」

歩き出したヒロユキをドアを開け放したまま友人は見送った

 

 

昨夜は朝まで飲み明かす事が分かっていたので自分のクルマは使わずにマネージャーに送ってきて貰った

一緒にワイワイ飲んでいた友人達はひとり、ふたりと夜中のうちに家に帰って行き

結局は二人だけで朝まで飲んで語り明かしたのだった

酔いを醒ました友人が車で送ってくれると言うのをヒロユキが断わった

家にも事務所にも歩けない距離ではなかったからだ

今年の後半に待っている長期の舞台を思えばコレもトレーニングになるかもしれないと・・・

 

などと・・・軽く考えていた事を店から出て5分もしないうちに後悔した

朝というにはまだ早く薄暗い街を歩いているのは自分と同じような朝帰りの酔っ払いか真面目な新聞青年だけだ

世の中の大半の人はそろそろ起きようかと布団の温もりと闘っているのかもしれない

厚手のコートを着ていても首にマフラーを巻いても衣類から出てしまう顔の皮膚が冷気で裂ける様に痛い

「・・・車、通らないかな」

すでに弱気の虫がヒロユキの心の隙間から這い出してくる

ダラダラっと歩いていると目に留まったのは煌々と灯りを放つドリンクの自販機だった

通り過ぎようと思った足を止め、お金を入れて〃HOT〃のボタンを押した

何を押したかも知らない、熱いものなら何でも良かった

ガチャン

勢い良く落ちたのを受け取り口から取り出した

「熱ちっ!!ロイヤルミルクティーか・・・コーヒーの方が良かったかな」

それを頬に当ててみる

「うわぁ〜〜〜暖かいよ」

凍ったような頬に缶の暖かさが染みていく・・・

同じように少しだけ心の端っこも暖かくなったような気がした

「生き返るよ〜〜サンキュ!ロイヤルミルクティー」

交互に頬に当てて缶から暖を貰う

徐々に心が暖かくなると人は一番好きな人を思い出す

「・・・大ちゃんは寒くないだろうか?それとも、まだスタジオかな??」

同じこの街の下で頑張っている人へ思いを馳せる

歩いても車でもすぐに会える所にいると言うのに・・・

彼の事を思い出すとそれだけで心が溶けていく

 

 

太陽が出てきてやっと朝の清々しさを感じられる

道を忙しく歩く人の数も増え始めた

頬を暖めてくれてた缶もいつしか手の中で冷たくなっていた

それをコートのポケットに入れてから、ヒロユキは手を上げてタクシーを止めた

乗り込んで告げたのは自分の家のではなくて彼のスタジオがある場所

・・・きっとまだいる

 

 

まだ閑散としたビルの玄関をくぐると事務所から出て来た彼とバッタリ顔を会わした

「ヒロ!!こんな時間にどうしたの?」

真ん丸い彼の目が更に大きくなってヒロユキを驚きながら見つめる

「間に合った〜〜ひょっとして、帰っちゃったかなって思ってた」

「また明け方まで飲んでたんだね?無茶するんだから・・・」

苦笑する彼は黒いファーの襟元とお揃いのつばのある帽子がとても可愛かった

「大ちゃんはこんな時間まで仕事してたんでしょ。それこそ無茶だよ」

「ボクはいつもの事だから」

ヒロユキは告げたかった

・・・君の顔が見たかっただけだよ と・・・

言いよどむヒロユキの頬に暖かいナニかが触れた

それが自分より一回り小さい彼の手だとすぐには気付かなかった

タクシーを降りてここに来るまでにまた冷たくなってしまったらしい

「・・・冷たいね。走ってきたの?」

彼の手は無機質な飲料缶とは違う熱い血が通っている

彼の中の血液が流れている音まで聞こえて来るようだ

・・・ここまでタクシーで来たんだ

そんな野暮な事は言わなくても良い

「うん。大ちゃんに会いたくて、大ちゃんの事だけ考えながら走ってきたんだよ」

「また・・・・嘘言ってる」

「ホントだってば、だからもっと暖めてくれる?」

ヒロユキは頬に添えられた彼の手の上から自分の手を重ねて、もう片方の手で細い腰を抱き寄せた

そっとついばむようなキスをすると、彼の襟元のファーがヒロユキの喉元をくすぐった

「唇は暖かいんだ」

唇が離れると彼は耳元にそっと告げる

「そう?オレは分かんなかったな・・・・もう一度しようか?」

「でも・・・ココじゃあ」

人が通らないとはいえ事務所の扉の前はキスをするには不似合いな場所だと思う

「中に入る?」

彼がドアの鍵をポケットの中で探し始める

「大ちゃん・・・部屋に行こう。じゃないとキスの先は出来ないよね」

ヒロユキの肩に彼が帽子を気にしながら顔を埋めた

「・・・もう・・・・」

「何?聴こえないよ・・・大ちゃん」

 

 

事務所を出る前に彼が呼んだタクシーに乗り込みヒロユキの部屋に向かう

部屋に入りすぐにエアコンを付けても部屋中は暖まる筈は無い

コートを着たまま二人は抱き合って何度もキスを交わす

「暖かい?ボクの唇」

「うん。熱すぎて火傷しちゃうかも」

「ヒロは・・・お酒臭い」

「あぁ!!ゴメンネ」

彼の手がヒロユキのコートのポケットの位置で止まった

「何か入ってるよ」

取り出すとソレはさっき入れたロイヤルミルクティーだった

「これってボクの好きな銘柄だ!凄く美味しいんだよ。でもヒロって紅茶好きだったっけ?」

「う・・・んと・・・大ちゃんの為に買ってきた。  すっかり冷たくなっちゃったけどね」

「飲んでも良いの?」

「モチロン。でもカップに移し変えて温めた方が良くない?」

「ヒロのポケットに入っていたんだからこのままが良い」

プルトップを引っ張って彼は白い喉を見せ飲み始めた

「うん・・・美味しい」

嬉しそうな彼の笑顔が眩しくて愛しい・・・

「そんな可愛い顔これから誰にも見せないでよ・・良い?」

「何、言ってるの」

彼はひとくちロイヤルミルクティーを含むとヒロユキにキスをした

合わされた唇から自分の口内に流し込まれたソレを飲み込んだ

・・・紅茶の甘さが舌を優しく刺激する

「ヒロは何にも分かってないんだ」

彼はうっとりとした表情でヒロユキを見つめた

目の縁が紅の刷毛でサっと朱をちらしたように艶っぽい

「だから!そんな顔を他の誰にも見せるなって言ってるじゃん!」

 

「ねぇ?ヒロ・・・

ボクをこんなにさせるのはヒロだけだって事に・・・まだ気付いてないんだね  おバカさん  」

 

彼がヒロユキの手を取ってベッドルームへと誘う

「もっと、もっと・・・ボクの全部ヒロに見せてあげるから・・・気持ち良い事シテ・・・」

まだ外には朝の眩しい光が振り注いでいるのに

そんな時の中を二人は快楽の果てを彷徨うようにお互いを求めていく

・・・ゴメンネ、大ちゃん

・・・オレは気付かないフリをするよ

目も眩むような快楽を彼と一緒に探せるなら一生気付かなくても構わない

 

もし、いつかまた身を切るような寒さを感じたら、今度はすぐに彼の元に行こうと決めた

この身体を暖められるのは彼だけなのだから・・・

 

 

 

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お誕生日おめでとう☆★流花さんのお誕生日記念に書きました♪

受け取ってくださいませ。

イチャイチャが少なかったような気もしますが・・まぁまぁ。。。(^^ゞ何か変だ・・・

ちなみにstardustは【うっとりさせる魅力】と言う意味もあるんですよ        

                       suika

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