* その扉を開いて *





カチャリ・・・

彼の部屋だから彼が先に入る

そんな当たり前なルールなのに大ちゃんはいつもごめんね、ありがとう≠ニオレに言う

些細な事だけど今時の女の子は優しくして貰って当然だと顔に書いてある

だから、大ちゃんの奥ゆかしさが可愛くってたまらなくなるのだろう

食事に出ただけなのでアルとアニーは留守番をしていた

エサと水をあげながら、ごめんね、お留守番ありがと

あれ?オレってワンコと同等?

「大ちゃん」

「何?」

「いや・・・・・この部屋の香りキツクない?」

「くさい?」

「そうじゃない・・・・良い香りだよ。でもちょっとクラクラするみたいな」

「さっき出掛ける前にアロマ焚いていたからかな・・・それに、ファンの子が沢山送ってくれるんで

パッケージ開けなくても匂ってくるかもしれない」

そう言って大ちゃんはサイドボードの引き出しを開け中に入っている色んな種類のアロマを見せた

「スゲーー」

色とりどりのラップや包装紙やガラスの壜に詰められているモノや紙の様に薄いもの

一目見ただけでは名前も覚えられそうに無いアロマ達が引き出しの中でひしめき合っている

「これだけあると使い切るのに何年かかるかな〜」

極めてのん気に言うんだね


そう言えば・・・・と部屋の中を嗅ぎまわればそこここに香りが染み付いている

カーテンにも絨毯にも壁に掛かっている布で出来たタペストリーにも

オレはふと、大ちゃん自身にも香りが染み付いているのかと思い

紅茶を入れるためにキッチンに立っている彼の所まで行き、背中に鼻を寄せた

「くんくん・・・」

少し、気恥ずかしくて擬音を付け匂ってみる

「んあ?何やってるの?ヒロ???」

「ん〜〜〜ちょっと・・・」

今日の彼の香りはお気に入りのコロンだろうか?

仄かに甘酸っぱくて懐かしい香りがする

柑橘の爽やかさから何かの花の様な優しい香りだ

それは本能なのかも知れない

背中から首筋へ・・・・血流が誘うように、オレはずっとその香りを嗅いでいたかった

「いつまでワンコの真似してるのさ?!離れてくれない」

「あぁ!ごめん」

大ちゃんの困ったような怒っているような声にオレは我に返った

「せっかく紅茶入れたのに冷めちゃうでしょ」

「そうだね」

いきなり引き離されたオレはまだ夢見心地だ

あの香りの正体を知りたい気持ちが胸の中に渦巻いている


「今日は泊まってく?」

「うん」

そんな会話が自然に出来るようになったのはいつからだっただろう?

オレがワンコと対面してからだろうか

それとも、もっと前だったかな?

・・・オレ達はまだまだ発展の途中なんだ



「先に入って良いよ」

大ちゃんがタオルをオレに差し出した

「良いよ、先に入りなよ。あ・・・・それとも一緒に入る?」

「・・・・・却下」

「え〜〜〜良いじゃん!今更恥ずかしがる仲でもないのに〜〜〜」

「・・・・・少しは恥ずかしがっても良いんじゃない」

何か夫婦みたいな会話がスムーズに出てくる

それとも、本当に一緒に住もうか?

そんな言葉が喉まで出掛かったけど、もっと色っぽいシーンで言いたいと思いなおす

「じゃ、先に入らせて頂きます」

「どうぞ」



バスルームのドアを開けると僅かに鼻腔が捉える

「あ・・・ココにもアロマか」

お湯の色が綺麗なオレンジ色に染まり、バスタブの縁に小さなアロマキャンドルが焚かれている

その香りにオレはさっきの大ちゃんの背中の感触を思い出していた

肉付きの薄い華奢な背中を思い切り抱き締めたい

もう、香りがどーのこーのって問題じゃない気がする

「頑張ろう!」

その意気込みは何に対してなのか?と、オレはセルフ突っ込みしてみた


「お先に」

「じゃあ、ボクも入ろうかな」

立ち上がった大ちゃんがオレの脇を通り過ぎる瞬間

彼の方からオレに抱きついてきた

「クンクン」

「?」

鼻をオレの首筋に埋めるような仕草をする

「ほうら、ヒロだって凄くいい香りするよ。さっきの仕返し」

艶然と微笑みをオレにくれる

こんなに可愛い人は他に知らない・・・

オレはありったけの力を込めて大ちゃんを抱き締めかえした

今なら言っても許してくれるだろうか、笑い話≠カゃないと思ってくれるだろうか?

「大ちゃん・・・・一緒に住もうよ」

「ヒロ」

「ワンコも克服したし、他人の誹りや罵りなど怖くないから。むしろ・・・」

「他に何が怖いの?」

「大ちゃんがオレから離れて行くのが怖い」

こんな恥ずかしい言葉をオレが言う時が来るなんて

神様・・・・神様の今日の日記からこの言葉は削除して下さい

それでも真実には変わりなくて、オレの本心だから

手を伸ばしても届かなかったあの長い年月を今は思い出すことさえ怖くなる

でも、そんな想いは君が上書きしてくれた


「ヒロ・・・・恥ずかしい」

イヤ、言った本人が一番恥ずいからさ


「返事は今すぐじゃなくていいよ・・・・保留でも構わない」

「エッ?そんな軽い気持ちで言ったんなら断わる!」

拗ねた大ちゃんがオレの腕を払いのけようとするのを、しっかりと繋ぎ留め腰を引き寄せた

「そうじゃなくて!大ちゃんを困らせたくないから!」

思いやりって言葉にどれだけ人は惑わされるんだ?

時には、無茶言って相手を困らせても構わないんじゃないかと思うんだ

そこに確かに愛≠チてのが存在するなら、それは酷いことじゃない


「今すぐにオレと一緒に住もう・・・住む!決めた!」

「嬉しい、ヒロ」

少し強引に大ちゃんの唇を塞ぐと吐息からも香りは立ち昇り重なる口内に溢れる

オレはその淫靡さに目眩を起こしそうだった


出会えて仕事のパートナーになってそして人生のパートナーになりたいと心から思う唯一人の相手


オレはその小さな身体を抱きあげて寝室へと運んだ

「ヒロ・・・イヤだ、お風呂入らせて」

エ〜〜〜!もう待てないし・・・・とは言わない

「大丈夫。大ちゃん、綺麗だよ」

カッコよく決めてみた・・・何が大丈夫かオレにも分かんないけど




寝室のドアを開けるとすでに灯されていたアロマランプが僅かな風で違う世界に誘うように揺れた

オレはベッドの上に大ちゃんをそっと横たえた

彼の細い腕がオレに絡みつき確実にオレを誘って紅い唇へと辿り着ける

この漆黒の闇はどこに繋がっているのか分からないけど大ちゃんと一緒なら怖くない

お互いの温もりを確かめるように裸になって愛し合おう


そう言えば・・・アロマって催淫作用≠ェあるのが多いと聞いた事があるけど

この香りもそうなのかもって頭の片隅で思う

でも、今はそんなのどうでもいいや、やってやろうじゃないか!



・・・二人の部屋も探さなくちゃね



◆◆◆◆◆◆END


C
CAN-DEEさんのリクエストで書きました
  長々と待っていただいたのにコレ?≠チて・・・・すいません(^_^;
  エロばっかし書いていたので、お笑いヒロを目指してみました(苦笑)
  これに限り、苦情受け付けます(爆)


                    suika



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