pi-a-su

「ねえ？このピアス誰の？」

掃除を始めた彼女が見つけてしまった。

「だ、誰のだろう〜」とぼけるしかないじゃん・・・まさか大ちゃんのだなんて言えないし・・・

「ふ〜ん、ＨＩＲＯは嘘がつけないものね。いいわよ、誰のだって」

・・・じゃ、わざわざ聞くなよ

「ハイッ・・・コレ彼女に返してあげて。こんな高そうなピアス捨てられないから」

「あぁ・・・うん。ごめんね」

「ＨＩＲＯって素直すぎてイジめ甲斐がないわね」

オレの手の平で綺麗に光っている片方だけのピアス・・・

もう片方は今も君の耳で光っていますか？

大ちゃん・・・

「ねぇ？最近、あのピアスしていないのね？誰かさんがくれて、もの凄く気に入っていたのに」

年末に予定されている僕のソロディナーショーの打ち合わせを終えて、不意にアベちゃんが聴いてきた

「な、、、何？急に？」

「あんなに大事にしていたのに付けなくなってしまったからどうしたんだろうって思っただけよ」

やっぱり・・・女性って凄いよね

あのピアスの代わりに似たようなモノを探して付けていたのに判ってしまうんだ・・・

一番大事な人から貰ったモノ・・・

ヒロ・・・

ライブが終わってしまったらそれぞれの活動に力を入れなきゃならないから連絡もままならない

・・・片方のピアスは君が見つけてくれただろうか？

宝石店でこのピアスに一目惚れした

目的は彼女に誕生日のプレゼントを買って〜〜とせがまれたからだったけど

そうでもなけりゃオレが宝石店なんかに入る訳がない

彼女は、絶対買って貰うと決めていた指輪のケースに一目散に走って行った

決めていたわりには買って貰えるとなると色々と迷うものらしい

何気に覗いたピアスばかりが入っているケースのなかで、それしか目に入らなくて

他のものも見ようと思うのに・・・

彼女に他のアクセサリーを強請られている間も気持ちはあのピアスへと向いてしまう

気付けば透明なダイヤの輝きに彼の姿をダブらせてしまっているし

「そう言えば大ちゃん・・・ピアスの穴開けるとか何とか言ってたよな」

・・・贈ろうかな？

・・・貰ってくれるかな？

例え、つけて貰えなくてもアクセスを再び始めた記念に彼に贈りたいと思った

店員にもう一つラッピングしてもらう様そっと頼む

「内緒ね」きっと浮気者だと思われているんだろうなぁ

浮気・・・なのか？

会計を聞いてちょっとぶっ飛んだ！彼女のより３倍くらい高いんだ・・・・・・・・

大ちゃんは凄く喜んでくれたけど、でもまだ穴は開いていなくてつけてもらうのをあきらめていた

その次に会った時ダイヤのピアスは大ちゃんの耳で綺麗に光っていた

「痛くなかった？」

「ヒロから貰った瞬間にそんな事思う気持ち飛んでしまったみたい」

「オレが無理やりさせたかもしれないの？」

「ううん、すぐにつけたいって思ったよ。だって・・・綺麗だしね」

「これ？僕に」

珍しく二人っきりで食事をした時、ヒロが手渡してくれた綺麗にラッピングされた箱

開けて見ると、大粒のダイヤのピアス

「どうしたの？コレ・・・」

誕生日でも無いし・・・デビューした日でも無いし・・・

「大ちゃん、この間ピアスの穴開けるって言ってたじゃん」

「言ったけど・・・まだ開けてないよ。それに何かの記念日だっけ？」

「別に・・・・しいて言うならアクセス復活おめでとう記念・・・かな」

「ヒロってば・・・とっても嬉しいよ・・ありがとうね」

何年経ってもヒロは変わらない・・・真っ直ぐで素直で判りやすくて、なのに考えられない事を平気でやってしまう

そのギャップを愛しいと思ってしまうんだから僕もおかしいのかもしれない

ヒロから貰ったピアスを一秒でも早くつけたくて僕はすぐに穴を開けた

最初にスタッフの女性陣が騒ぎ始めた

「これ・・・凄いですね・・お値段て聞いて良いですか？」

プレゼントされたモノだから判らないと答えると違う意味で女性陣が色めきたったでもアベちゃんは事も無く言い放つ

「どうせ・・・相方からでしょ・・・彼ならやりそうな事よ」

「そんな事ないよ」

実際、穴を開けるとプレゼントの殆どがピアスなのには驚いたけど僕が開けたことに賞賛と戸惑い？なんで〜〜〜〜〜？

ヒロが一番初めにくれたから付けただけ・・・だよね

それからは普段でも撮影でもプロモでもライブでだって外した事はない

あの日ヒロに誘われて初めて自分の部屋以外でピアスを外した

ベッドサイドのテーブルに置くわずかな時間も惜しくて抱き合った僕の手の平から・・・

月の明かりだけを受けてキラキラと光りながら床に落ちたピアス

ヒロの腕にすくい上げられて唇を身体中に押し当てられて自分の感じる所をすべて探し当てられて何もかんがえられなくなってしまった。

ヒロをこの身体に受け入れる事なんて・・・出来ちゃったけどね・・・

ヒロは隠し事が出来ないから、部屋の中を見ただけで彼女がいるって判ってしまう

・・・僕の事は遊び？・・・そんな事は聞かない

・・・遊びだったらもっと楽なのに・・・そんな事は言わない

目が覚めてからピアスを探したけれど片方が見つからない

ベッドの下の奥深くに転がってしまったのだろうか？

二人で必死に探したけれどダメだった

「彼女に見つかったら何て言うつもり？」

「う・・・ん、本当の事を言うしかないかな・・・」

「本気？」

「大ちゃんの事は知られても構わないって気がするんだよね〜」

「いや・・・構うと思うよ」

「大丈夫・・・何も言わない」

どうか君が最初に見つけてあげて・・・可哀想な方耳のピアスを

身だしなみを整えた彼女がソファーから立ち上がった

「じゃあ・・・もう行くわ」

「送って行くよ」

「ううん・・大丈夫・・・・ヒロ・・・これ返しとくわ」

ガラスのテーブルにカチャリと置かれたものはオレの部屋の鍵

「え・・・・」

「もう使わないから・・・じゃあね」

修羅場でもない、愁嘆場でもない、オレの別れっていつもこんな感じ

あっけない・・・・オレってサイテー

彼女との昨夜の余韻より、数日前の大ちゃんとの出来事の方がスリリングでエキサイティングでセクシーだった

女性って男には無い「第７感」ってあるって言うじゃん、きっと何かを感じ取ったんだと思うよ

ちょうど良かった・・・とは彼女に失礼だから言わないけどね

机の引き出しからティシュにくるまれた大ちゃんのピアスを大切に取り出した

それをポケットに入れて、車のキーを掴んでから部屋を出た

大ちゃん・・・待っててね

２度目の贈り物を届けに行くから

今度はもれなく『貴水博之』が付いてくるよ

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ＥＮＤ

他の方々が「ピアス」のお話を書いている時は関心が無かったのに、いきなり書いてみたくなりました。

片方・・・って所が私のツボなんですが・・・・変なツボ(ーー;) 　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　suika