ohana(=オハナ) marriageシリーズ】   

 

 

「これで準備完了!」

大きなトランクに家族3人分の荷物を詰めてダイスケは蓋を閉めた

「終わった?」

ヒロユキはテーブルにパスポートや航空チケットを広げて確認している

ダイスケがヒロユキの隣に座って大きく息を吐いた

「ふ〜〜〜一人で旅行するのとは全然違うから大変だよ」

「ホント・・・オレ一人だったらトランクいらないもん。必要最小なモノしか持って行かないからさ」

「知ってる。でも今度は愛を連れて行かなきゃいけないんだからそう言う訳にはね」

 

 

娘を連れて初めての家族旅行に行くのを決めたのは1ケ月前だった・・・それも突然

ヒロユキがダイスケに聞いた

「大ちゃん・・・3人でハワイ行かない?」

「・・・・えぇ?3人って愛も??」

「もちろんでしょ!家族なんだから。行きたくない??」

ヒロユキの瞳がキラキラしている・・・こう言う時ほど気を付けなくてはならないのは今までの経験で分かっている

「ヒロ??何か隠してるよね?」

「じゃーーーん」

後ろ手に隠していたのはすでに手配済みの航空チケットとマウイ島にある貸別荘の予約証だった

「・・・え?だって・・・だって・・仕事はどうするの?えぇ〜〜〜」

「もちろんアベ様に頼み込んで休み貰ったよ、それにまだ本格的に復帰してないから今ならOKだって。

オレの方は〃充電〃しないとパワー出させないって言ったらOKしてくれた」

「強引だね・・・でも、本当に良いのかな?」

ヒロユキはチケットを見つめているダイスケの肩を抱き寄せた

「オレ達さ、ずっと大変だったじゃん。まっ・・・自分達が撒いたタネだから仕方ないんだけど。

ここらへんでちょっとだけ息抜きしようよ。愛も旅行出来るくらい大きくなったんだし・・・ね?」

ダイスケの髪にキスをして、そのまま唇をずらし頬にもキスをする

「新婚旅行してないし・・・・大ちゃんへの御褒美ってか・・・その・・・」

ちょっと恥ずかしそうな様子が可愛くてダイスケはヒロユキの頬へお返しのキスをした

「ありがと、すっごいサプライズだね・・・嬉しい」

「どうせキスしてくれるならココでも良いのに」

そう言ってウン・・と唇を突き出した

ダイスケはあきれながらも軽くチュッっと唇を重ねた

「ホテルじゃなくて貸別荘なの?」

「ほらっ、愛が夜中にぐずって起きたりするじゃん、ホテルだと部屋以外は自分のテリトリーじゃないから出られないし。

〃自分の家〃って感じでリラックス出来ると思ってさ、ハワイにいる友達に頼んで探してもらったんだよ。

ゆっくりしたいからオワフ島じゃなくてマウイ島にした・・・、日本人が少ないからね。

第一にセキュリティーがしっかりしてて、プライベートビーチが付いていて、空港から近くて、景色が綺麗で

・・・・ベッドルームが2つ以上ある所・・・」

「ビーチや景色は分かるけど、ベッドルームが2つ以上は何故?」

ヒロユキはやんわりとダイスケの身体をソファに押し倒した

「愛と同じベッドだとこう言う事出来ないじゃん」

「何、、、言ってるの」

苦笑しながらもゆっくりと降りてくるヒロユキの唇に濃厚な夜を感じてダイスケは目を閉じた

彼に抱かれているとすぐそこに海の波音が聴こえるような気がした

 

 

 

7時間と言う長い飛行時間を娘が耐えられるだろうかとダイスケは心配していた・・・が・・・

飛行機が離陸するなりヒロユキと共に眠りにつくその神経には驚いてしまった

「こう言う物怖じしない所も似てるんだよな」

アサクラ家のお姫様はかなりパパに似ているようだ

小さな窓から見下ろす日本の夜景は闇に金の粉を撒き散らしたように見える

それをかなり小さくなるまでダイスケは見つめていた

食事や飲み物のサービスが一通り終わると機内の明かりが落とされて眠りを促される

なかなか寝付けずに音楽を聴いていたが次第に眠りの中に入っていった

 

・・・「あーーーあぶっ」

まどろみの中で娘の声に少しだけ意識を呼び起こされる

・・・起きなくちゃ・・・・

「愛ちゃん、ママはぐっすり眠っているから起こしちゃダメだよ」

ヒロユキが娘の相手をしているのが聞こえる

「うん?開けるの?コレはね・・・寝ている人が眩しくないように閉めてあるんだよ」

ヒロユキの膝に抱かれて窓を開けろと手を叩きつけながら強請っているようだ

「朝になってみんなが起きたら開けようね。今はダメ」

優しく諭すパパの言葉を理解したのか愛はお気に入りのスヌーピーの人形で遊び始めた

「・・・・結局、スヌーピーなんじゃん」

いつかファンに言った言葉はなんだったんだ??とヒロユキは苦笑せずにいられない

両親や友人達が娘にと持ってくるのは ほぼミッキーかスヌーピーだった

 

そんな二人のやりとりを目を開けずに聞いていたダイスケは幸せだった

・・・・ヒロがいて・・・可愛い娘がいて・・・

 

飛行機は無事にホノルル空港に着いた

降りるとすぐに南国の熱気と香りが身体を包み込む

湿気を帯びた暑さではなくこの国自体が持っているパワ−のようなものだとダイスケは思う

入国審査を終えて荷物を受け取りシャトルバスでマウイ島に行く為のターミナルへ向かう

ホノルルからマウイ島のカフルイ空港までは約30分で到着する

陽射しが強いけれど、オワフ島より自然が残っている気がした

ヒロユキは空港カウンターで予約していたレンタカーを借りてそのまま別荘へ向かう

途中にカフルイ市内のスーパーに寄って2,3日分の食料を買った

食料さえあればすぐに日常の暮らしが出来るのが貸別荘の利点だ

20分ほど走らせると次第に右に左に色んな別荘が建っている場所に入った

「ちょっと待っててね」

二人を残して管理事務所にヒロユキは入って行った

すぐに何かの鍵を手にして戻って来た

「ハイ、これが今日からオレ達の別荘の鍵」

それは・・・・数日間の楽しい夢を叶えてくれる鍵だった

 

うっそうとした緑の木々に囲まれたモカブラウンの別荘の前に車は停まった

「うわぁ・・・何か本当に自分の家みたいな気分だね」

ダイスケは溜め息を零した

しかし、その溜め息は中に入るともっと盛大なものになる

玄関を抜けてリビングの扉を開けると3人は声も出なかった

リビングに面した大きな窓の向こうにはさっき見ていたコバルトブルーの海が目の前に広がっている

それは大きな額に納められている一枚の絵のように他に邪魔するものは何もなかった

・・・それを荘厳と形容すべきだろうか

「すげぇ・・・」

「凄いね・・・」

「あぶっ・・・・」

思いっきり感動した後で家の中をぐるりと一回りして間取りを覚える

ついでに荷物も解いて洋服を備え付けのクローゼットへと仕舞ったり、部屋着に着替えたりした

2つある寝室の小さい方を娘の部屋に決めた

窓辺にレースのカーテンが下がっていて、青い小さい花の模様が散りばめられた壁紙の可愛い部屋だった

「何か愛の為に誂えてある部屋みたい、ヒロのお友達は趣味が良いんだね」

「そう言う仕事をした事もあるらしい・・・

今回はどうしても会う時間が取れないんで〃パートナーによろしく〃ってことづけられたよ」

「残念、一緒に食事でもしたかったのにね」

「そう??オレは誰にも邪魔されたくないけど?」

薄手のシャツとルーズなパンツに着替えたダイスケの素肌を探り出す

「あのさ〜〜〜さっき着いたばかりでしょ!」

軽く睨まれたヒロユキは下のリビングへと逃げて行った

「仕方ないパパだよね・・・愛も着替えようか」

 

ダイスケに睨まれて階下へ降りたヒロユキは庭に出てみた

白いガーデンテーブルと椅子が置いてあり芝の手入れも完璧にされている

朝食はココで優雅に食べられそうだ

その向こう・・・低い木が綺麗に切り揃えられている垣根を越えるとすぐ目の前にヒロユキが大好きな青い海が広がっている

5段ほどの階段を降りると灼熱の太陽に熱せられた砂が痛い・・・何分とはジッとしていられない

でもそれもすぐに打ち寄せては引いて行く波の冷たさに忘れてしまう

「凄いよね・・・プライベートビーチなんてさ」

「ヒロ〜〜〜」

呼ばれて降り向くと垣根の上からダイスケが上半身を見せてこちらに手を振っていた

「大ちゃんもこっちおいでよ」

「うん」

砂浜に降りてきたダイスケを見てヒロユキは笑ってしまった

「ちょ・・ちょっとどうしてそんなに重装備な訳?」

長袖の白いシャツに、流石に短パンではあるが帽子の上にタオルを被せて、海を楽しんでいる様子ではない

「昔、いっきに肌を焼いて辛い目にあったからね。もうしないよ」

「あぁ・・・あの時ね・・・確かファンイベントだっけ?」

「知らない・・・」

「ねぇ?愛も日焼けさせちゃダメなの?」

「出発する前にスズキさんに聞いてみたんだ。赤ちゃんは大人と違って皮膚の面積が少ないから、

直射日光に当てすぎるとすぐに火脹れが出来るし、脱水症状も起こしやすいから素肌は出さない方が良いって。

出来たら日陰で遊ばせてくださいって言われたよ」

「そっか・・・子供って気を付けてあげなきゃならない事ばっかしだね、でもさ、それに気を付けてれば大丈夫なんだよね」

やれないのではなく・・・やれる範囲の事をさせる・・・それがヒロユキの育て方だった

「部屋で愛がパパを待ってるよ・・・長時間だから少し疲れているみたいなんだ」

「マジ?!」

娘の事となると心配で熱い砂も関係なく走り出すヒロユキだった

 

心配した割には娘は家の中が珍しいのかソファに座りながらアチコチを見渡している

「あれ〜〜〜何?この洋服!可愛い!!てか、可愛い」

愛は小さな身体に原色のサンドレスを着ていた

「でしょう?アベちゃんがね渡してくれたの、絶対、着るのよ!って念を押してね。

他にもたくさんくれたんだけどさ・・・だからデジカメで撮ってメールで送ってやろうって思う。見たいだろうしね」

「それでインターネットが完備されているか聞いてたんだ」

「休みをくれたんだからゴマすっとかないとね」

「よっし!今から撮影会するよ!ポーズとって、とって!愛、こっち向いて〜〜〜」

「・・・ヒロってメカ強かったっけ?」

「やだな・・・これくらいは・・・・アレ?」

「・・・・貸して。ボクが撮るから」

何枚か撮影して、軽い昼食を終えた後・・・愛は子供部屋で昼寝をしていた

別荘に着いてからはしゃぎすぎたヒロユキとダイスケもベッドの上で束の間の眠りの中にいた

カーテンを揺らして優しい陽射しと南国の花の香りが混じった風が部屋の中を通り抜ける

ダイスケはヒロユキの胸に抱かれながら楽園の夢を見た

 

 

南の島の夕景色は美しい

空を暁色に染めながら水平線に太陽が溶けていく・・・混じりあった瞬間、漆黒の闇に無数の星が現れる

その全ては自然の摂理で動いていて、決して人間が作れる事ではないのだ

娘を抱きながらダイスケはその美しさに見とれていた

「この景色を愛はまだ覚えていられないんだね・・・すっごく残念」

「大丈夫!これから何回でも見ればいいんだから、ハワイだけじゃなくて世界中の素敵を見せてあげようよ。ねっ」

「うん・・・」

 

夕食を終えるとダイスケがメールチェックをした

「ほらっ・・アベちゃんからメール来てるよ。さっき送った写真の返事」

「何?何?」

『可愛い〜〜それを選んだ私の目は間違ってなかったわ。この目でその姿を見られないのは悔しい〜〜

 愛ちゃん、アベちゃんを忘れないでね(泣)』

「オーバーだよね、忘れようとしても忘れないって・・」

「・・・アベちゃんに言うよ」

「降参!」

 

見れば長旅の疲れや時差もあって愛はすでに寝入ってしまった

ダイスケがベッドに運んで「お休み」のキスを一つ娘のオデコに落とした

リビングで待っていたヒロユキが隣に座ったダイスケを抱き寄せる

「明日からどうする?海で泳いだり、街を歩いたり・・大ちゃんは何がしたい?」

「ヒロと愛がいれば何にもしなくても良い・・・」

「そうだね・・・オレも大ちゃんと愛がいれば良いや」

「ホントに?飲みに行かなくても良いの?」

悪戯っぽい目で見つめられてヒロユキは少しだけ体温が上がった気がした

・・・それは決して南国の気候の所為ではない

「ココには癒されに来たんだから、何もしなくても良いんだよ」

「んふっ、気が変わったら言ってね。ちゃんと送り出してあげるから」

「よく出来た奥さんを貰って・・・あれ?オレが貰われた??とにかくオレは幸せです」

そう言ってダイスケの唇に甘いキスを一つ落とす

「ありがとうね、ヒロ。3人で旅行するなんてずっと先の事だと思ってた。だから、まだ夢みたいだよ」

「オレさ、本当の事言うと・・・結婚したら自分がどうなるんだろ?ってちょっと不安だったんだ。

でも、どうにもなんかった。むしろ結婚して良かったと思う。

・・・離れていても心は通じる・・・けど、傍に居て心も身体も通じてる方がもっと幸せなんだよね」

自然と二人の手が重ねられる

ダイスケは俯いて話し始めた

「ヒロに初めて会った時から、ずっとずっと愛しているよ。

それが重荷になった時もあったね・・・無理矢理忘れようとした時もあった・・でも、ダメだった」

「大ちゃん・・・もう良いよ・・ごめんね、悲しい思い沢山させたもんね・・・ごめん」

宥めながら細くて華奢な身体を抱き締めれば、また体温が上昇する

「ヒロを忘れずにいたから、神様が〃家族〃をくれたんだよね」

「家族か・・・もう一人くれないかな・・・神様にお願いしようか?」

「ヒロ?」

見つめるダイスケにキスをして、そのまま抱き上げ自分達のベッドルームへ運ぶ

上がり続ける体温は美しい海でも鎮める事は出来ない・・・

 

ダイスケの身体をベッドに横たえて、その上に覆いかぶされば二人分の重みでスプリングが軽くしなる

薄い布地のシャツとルーズなパンツはすぐにダイスケの身体を離れた

ヒロユキはすでにコットンパンツだけだったので足で摺り下げるだけだった

「暑い国ってのはすぐにエッチし易いよね」

「ヒロってばムードない!」

「男はたまには野生になりたいモンだよ・・・ガオ〜〜」

叫びながらダイスケの胸元にむしゃぶりついた

「あぁん・・噛まない・・・・で・・・・」

いつもの優しい愛撫の代わりに歯を立てられてダイスケの息が荒くなる

庭から漂う情熱の島の花の薫りでいつもと違う抱かれ方を望んでしまうのかも知れない

「・・・ボクの事好き?愛してる?」

「愛してるよ・・・愛してるよ・・・これじゃ足りない?・・・愛してる・・・」

ダイスケの熟れた紅い唇へキスをする

何度も何度も・・・

言葉は意味を成さないから身体に刻み込んでしまおう

 

 

「愛してる」

 

 

「ん?待って・・・愛が泣いてる」

ヒロユキの手がダイスケの中心に届こうとした瞬間、ダイスケは起き上がりシャツを羽織って部屋を飛び出した

「ウソ!?・・・・おあずけなの?」

ヒロユキは自分の上がった熱を持て余したままベッドに突っ伏そうとしたが・・・・元気な自分自身に阻まれた

「早く来て〜〜大ちゃん〜〜!」

ヒロユキの虚しい声が夜の暗い海に吸い込まれた

 

・・・アサクラ家の新しい家族が増えるのはもう少し先になりそうだ

 

 

 

 

*************************************************END

 

 

 

20000番を踏まれた薫さまに捧げます。

遅くなりました<(_ _)>

最初のリクエストにお答え出来なくて申し訳ありませんでした。

で・・・(-_-;珍しくお笑いで終わるとは・・・(汗)

長くなりそうなのでココで終わりましたが「南の島」にいる間のお話を書いてみたいと思いました。

ohanaはハワイの言葉で【家族】の意味。

          suika。

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