*** Noel ***






〃この素敵な夜景を貴方に見せてあげたい〃



起きてTVを付けた途端、こんなチープなCMのコピーがオレの耳に飛び込んできた

某ホテルのガーデンの中に日本一高いツリーを作って、今年はソレを目玉に集客を狙っているらしい

確かに画面に映っているツリーは夜の闇の中でまばゆいばかりの光の饗宴で彩られていた

これを見ながらクリスマスやニューイヤーをホテルで過ごせと促しているんだろう


「なるほど」

起きたばかりの身体に流しこまれる水の冷たさが心地良い

オレはボトルを持ったままTVと向かい合うように座り、そのコピーに頷いてやる

「・・・きっと混むんだろうな」

今頃、下心いっぱいの若者達が財布と相談しながら

彼女の為にこのホテルを予約しているかと思うとイジらしくも思える

オレだってそんな可愛い頃もあったんだぜと聞かれてもいないのを声に出してみた

「クリスマス・・・・ニューイヤー・・・」

どちらにしても恋人と一緒に過ごす時間など無かった

仕事として一緒にはいられるけれど『愛だの恋だの』を語る時間は無いに等しい

けれど・・・・何気にそのホテルの電話番号を目で追っていたらしい


数時間後

どうしても気になってとうとうホテルに電話した

「あの・・・クリスマスか新年の部屋の空きありますか?」

『申し訳ございません、すべて満室になっております』

なんてこった!さっきのTVのCMから数分しか経っていないというのに満室だって??

この国はなんて豊かでおろかなんだ

そんなオレもバカだけど・・・

〃貴方に見せてあげたかった〃んだよ

『今ならお部屋の空きがございますが・・・』

今???今、ツリー見せてどうなんるんだ??

そうか、クリスマスの為だけにそれは光っているんじゃない

「お願いします!」

オレは即答で答える

彼はアルバム作りで修羅場の真っ最中だけど、何も言わずにオレの手を握り締めてくれるはずだ

こうして欲しいと彼が望むようにオレはしてあげるだけ・・・

オレがピーターパンならキミはティンカーベルだよ

「違うから!」

きっと彼は違うキャラが好き

それでもオレにはティンクより可愛いんだけどね



「うわぁ・・・・すっごい疲れた顔してるよ・・・大丈夫?」

「また邪魔しに来たんでしょ?」

事務所に入るなりアベちゃんに止められた

きっと、この敏腕美人マネージャーには全てお見通しなのかもしれない

彼女はオレを彼に会わせたくないんだと思う、スタジオの前で通せんぼしてるよ

「そおゆう事言わないでよ、大ちゃんの様子見に来ただけじゃん」

「どうだか」

「あのさ、今夜連れ出したらスケジュールどうなる??」

恐る恐る・・・それも遠慮しながらそっと聞いてみる

「・・・・そう来ると思ったわ。ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

溜め息ってこんなに盛大に出るもの?

七色のアルバムの為に彼やスタッフが必死で夜も寝ずに頑張っているのは知っている

でも、あんな酷い顔色の彼をこのままカゴの鳥にしておいて良いのだろうか・・・・

「ヤバい?」

「物凄くね。でも、連れ出しても良いわよ、見て見ぬ振りしてあげるわ」

「ありがとう」

「ゆっくり休ませてあげてね。・・・・無理だろうけどね」

皮肉な笑顔が逆にとても痛々しかった

彼女が彼を守ってきた歳月はオレより遥かに長いのだから無理させたくない気持ちは誰より強い

だからこそ・・・オレが彼を守ってあげなくちゃいけない

きっとアベちゃんにもあの素敵な景色を見せてあげるからさ

でも、オレが誘ったら「後で何を強請られるかわかったモンじゃないわ」って言われそうな気がするな

早く素敵な白馬の王子が彼女にも現れますように

って、それはひとまず置いといて・・・

オレの「お姫様」を連れ出す用意をしなくちゃ


「大ちゃん」

ゆっくりと振り向くその笑顔がとても痛々しい

大好きな仕事の為とは言え、こんなに身体を駆使していいものなのか?

「ヒロ、今来たの?」

そんなに辛そうな笑顔なんて見たくないよ

「そう・・・アベさまにはちゃんと許可貰ったから。・・・大丈夫?って聞くのも痛々しいよ」

「まぁね。でも今無理しなきゃいつするのって感じ。出来上がれば休めるんだから大丈夫だよ」

「ここに居ても良いよね?」

「うん」

隣に座るとそっと彼がオレの肩に頭をもたげて来た

何も言わずそのままにしてあげる

・・・疲れているんだ

・・・やめた方が良いよ

・・・無理するな

何をどれだけ言っても彼は自分のやるべき事を放棄しない

「ヒロ・・・・」

「何?大ちゃん」

「一秒でも良い・・・どっか連れて行って」

彼の肩にそっと手を置くと小刻みに震えている

・・・そんなに辛いの?

「分かった。大ちゃんの魔法の粉、オレにふりかけてくれたらどこへでも行けるからさ」

「ボクはヒロのティンク?」

「そう。オレがピーターパンだよ。OK?」

「ボクもピーターが良いな」

「・・・分かった。二人共ピーターパンって事でどう?」

彼が嬉しそうに笑った


アベちゃんに見送られオレは車を走らせた

助手席の彼はすでに眠り始めている

都会の夜景はすでに見飽きているんだろう

この先に彼を唸らすような景色は待っているんだろうか?

有名な通りはすでにライトアップされてクリスマス気分一色だ

今年も彼はディナーショーでファンの子と過ごすと言う

オレは特別そんな行事を大事にはしない

それでもクリスマスになると心が浮き立つのはどうしてなんだろう

そう・・・・その為にオレは今車を走らせているんだから


そんなに長い時間を走ったわけではないけど、隣では彼の寝息が聞こえる

もう何分ホテルの駐車場に車を停めているだろう?

彼の目が覚めるまでオレは一日中でもココにいるつもりだ

宿泊代よりも彼が目覚めてしまうの事の方がオレは怖かった

何よりも・・・安らぎはオレの隣にあるのだと思える瞬間に感謝したい


「あれ・・?ヒロ?」

「おはよう・・・外は真っ暗だけどね」

「ごめん。車に乗ったまでは覚えてるんだけど・・・本当にごめんね」

「別にいいから。眠って貰えるって言う事はオレの運転は素晴らしいって事でしょ」

クスッて笑って彼が伸びをする

その手を素早く取り引き寄せた

「何?」

「起きたら、まずはお目覚めのキスだよね」

「ティンクの次は眠り姫なの?」

乾燥して少しカサついた唇にオレはキスのついでに舌で濡らしてやる

唇の輪郭のリアルな感じが妙に心地良い


「早く部屋に行こう・・・0時回ったらシンデレラになるかも」

整然と並んだ駐車場から出るまではしっかりと彼と手を握り合っている

人のいる所や明るい場所では決して繋ぐ事はしない

それが二人の暗黙のルール

フロントへ行き、カードキーを貰う

少し離れた所で待っていた彼をエレベーターへと促す

きっと彼はいつもと同じように部屋に入ったらすぐに洋服を脱いで抱き合って・・・って思っているんだろう

それはそれで良いのかも知れないけど今夜はそれだけでは無いんだよ

喉まで出そうになる秘密をオレは無理やり飲み下す

「何?今日のヒロ変じゃない?」

「そ、そんなこと無いよ。やだなぁ・・・・ハハハ」

って・・・今のオレ、めちゃくちゃ怪しいよ


オレがカードキーでドアを開けて彼を先に部屋に入れる

当たり前だが部屋の中はカーテンが引かれていて外の景色は見えない

いつものクセで窓に近寄ろうとする彼を引き留める

「待って、大ちゃん。あのさ・・・目、瞑ってて欲しいんだけど」

「目?何企んでるの?」

「良いから・・・ちょっとだけ」

安心させるように彼の肩に手を置いた

「・・・ヒロ、ボクを置いてどこにも行ったりしないよね」

寂しげな少年のように彼の瞳が揺れる

「そんな事心配してたの?おれが大ちゃん置いてドコ行くって言うの・・・」

彼はいつだって強いと思っていた

いつだってオレが励まされていると思っていた

細い彼の身体がまた細くなった事に今気付いた

・・・オレはバカだ

「分かった」

素直に目を瞑ってくれた彼から離れてオレは部屋の電気を切り、カーテンをそっと開けた

「大ちゃん、目開けて良いよ」

「ウワァ・・・・・・」

知らずに口から感嘆の声が漏れてしまうほど、それは美しかった

ホテルの中庭に立てられたクリスマスツリーのちょうど天辺がオレ達の部屋から見えるようになっている

大きなクリスタルの星が色取り取りの光を集め、そして四方へと散らして行く

数え切れ無いほどの様々な飾りたち、夜空を焦がすかと思えるほどの光の饗宴

「凄い・・・・綺麗だね。なんか・・・夢の中みたい」

ガラス越しのツリーの輝きが彼の顔を照らしている

「少し季節は早いんだけど・・・どう?気に入った?」

「うん、とっても。そっか本当のクリスマスはお互いバラバラの仕事だもんね」

「たまにはこんなロマンチックな気分になるのも良いかなぁって」

「こんなシチュエーションでプロポーズされたら誰でもOKしちゃうよね」

「大ちゃんも?」

「もちろん・・・」

オレは彼を強く引き寄せて、そのまま胸の中にスッポリと納めた

言葉なんかじゃきっと伝えられない事を彼だって知っている

「あ・・・」

「何?あ・・・」

気付けば部屋中に色の光で彩色されているみたいでこのまま眠るには煩い気がする

「部屋の中まで綺麗だね」

「でもさ・・・ラブホのミラーボールみたいで落ち着かないよね」

「・・・ヒロ、そうゆう所に行った事あるんだ」

雑誌やTVの中で見ました・・・なんて言い訳この年になって通用しないよな

「綺麗だね」

「いきなり何言い繕いしてるの?」

ふざけたように笑う彼をオレは見つめた

「綺麗でしょ?」

「そうだね。こんな素敵な夜景見せてもらって癒されたかな。ありがとう」

オレは彼をベッドに横たえて上着を脱がせた

「ヒロ?」

「オレが綺麗って言ってるのはツリーじゃなくて・・・大ちゃんが」

「エェ?」

シルクのシャツの手触りを楽しみながらボタンを一つずつ外していく

カーテンは閉めずに部屋の中には色の光の洪水

「あ・・・ヒロ・・・外から見えるって・・・ヤダってば・・・」

「大丈夫・・・見てるのは星だけだから」



〃この素敵な夜景を貴方に見せてあげたい〃



今夜、君に数え切れないほどの幸福の星が降り注ぎますように・・・・


I am happy if you are happy




*******************************END(?)




「大ちゃんごめ〜〜〜ん、怒った?もうしないから!ごめんってば」

カーテンを引かずにエッチになだれ込んでしまったオレに彼が少し怒っているようだ

「だって〜〜〜このまんまの方が気分が盛り上がるかと思ってさ・・・・ごめんって・・・大ちゃ〜〜〜ん」

「入って来ないでよね」

ピシャリとバスルームへの扉を閉められてしまった

「大ちゃん」

勢い良く水音が聞こえる

オレはその場から離れて部屋を見回す

シワひとつ無い片方のベッドに近寄り

「こう言う時はわざとシワを作っておくもんだよな」

まっさらなシーツをベッドの端から無理矢理引きずり出してその上に寝転んだ

裸のままの汗がエアコンで乾いていく

ふと、隣のベッドに目をやった

乱れたシーツのシワのひとつひとつがさっきまでの情事を鮮明に思い出させた

彼の身体の温もり・・・触り心地・・・体臭・・・甘い吐息までリネンの中に刻まれているようだ

意識無く指が雄の中心へと降りていく

強く握り締めれば快感が少しづつ沸いてくる

でも、それは一人では悲しい行為

彼の裡に埋めることで身体も心も満たされると知っている


閉ざされたバスルームへのドアを開ける

このホテルはバスタブとシャワールームが分かれている

彼がいるシャワールームを仕切っているのは磨りガラス

水のしぶきの向こうに肌色の彼の背中が薄ぼんやりと浮かんでいる


その仕切りをそっと開く

「わぁ!・・・ビックリした・・・何?ヒロ」

濡れた髪から覗かせたクリンとした瞳

「オレもシャワー浴びて良い?」

「良いよ、もう出る所だったから。代わるね」

「違うって・・・一緒に浴びよう」

「男二人じゃ狭いよ・・・ヒロ?」

出ようとする彼の細い身体を抱き締めた

オレの乾いた身体に彼の濡れた身体が重なりわずかな湿り気を帯びる

少し乱暴に口づけをする

髪から滴る雫が鼻を伝って唇へと落ち、行き場のなくなった雫はオレたちの胸へと・・・

彼の腕がオレの背中に回る頃にはさっきのオレの無茶が許されたと分かる

長い口づけは彼の方が離してくれない

すでにシャワールームも冷えてしまっている

でも、オレ達の熱が去る事は無かった


「大ちゃん・・・ココで良いの?ベッド行く?」

壁に手を付いた後ろ向きの彼の細腰から小さなお尻へとオレの手は容赦なく降りてゆく

片手で胸の可愛い蕾を摘み上げると彼の腰がオレに擦り付けられて雄を直撃する

「ダメ・・・ヒロの好きにして・・・良い・・・」

・・・・きっとオレの方がベッドに行く余裕無いと思う

気持ち腰を上げ気味に足を開かせて閉じた秘部へと指をあてがった

オレの欲望を咥え込むのは慣れているソコは指さえ妖しく招き入れる

「あ・・・」

指を出し入れするのに合わせて彼の身体が上下する

オレの雄が背中に擦り付けられているのも分かっているようだ

短い呼吸が吐き出す二人の息で狭いシャワールームの磨りガラスが雲っていく

「大ちゃん・・・大ちゃん・・・」

名前を呼ぶのは抱いているのがオレだと彼の身体に刻み込む為

「ヒロ」

答えてくれるのは待ち望んでいるから?

絡みつく彼の裡を宥めるように指を抜きとると自分の雄を秘部へと持ってゆく

慣らされた入口が誘うように僅かにひくつく

「・・・欲しい?」

コクンと頷く頬が紅潮している

「可愛い・・・」

ゆっくりとそして確かな重量感で彼の裡へと自分の雄を埋めた

「あぁん・・・・ヒロ」

濡れて滑る壁に手をつきながら頼りない風情で彼の身体が柔らかく撓っている

その手にオレの手を重ねて彼の身体を固定させる

「オレの手しっかり握ってて・・・」

確かめた彼の手がしっかりオレに絡みつく

それを待ってオレの腰が動き始める

「んあ・・・いやぁ・・・・」

金髪の後ろ髪を揺らして彼が快感をオレに伝える

オレもそれに答えるように大きく腰をグラインドさせた

彼の耳元で囁く

「一緒にイコウヨ」




・・・プロポーズなんてしない

・・・出逢ったのは運命だし

・・・隣にいるのが当たり前なんだ

・・・今この瞬間も運命は動いている







*********************************END





うお〜〜〜〜〜(叫)

久し振りに書いちゃった(^_^;

12月に入ったのでクリスマス意識してみました

                  suika


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送