you are my everything

 

 

「おはっよう〜〜〜」

久し振りに大ちゃんの事務所を訪ねる

カウントダウンライブの為のリハーサルが始まったからだ

大きな会場で思いっきり「歌える」事は嬉しいけど、それよりも嬉しいのは・・・

「おはよう、ヒロ」

2ケ月前のラジオゲストで会ったきりだった大ちゃんが笑顔で迎えてくれる

会いたくなかった訳じゃない

お互いの・・・・特に大ちゃんのスケジュールが半端じゃなくて時間を合わせる事すら無理だった

電話やメールでは毎日通じ合っていても目を見て話す事が必要な夜もある

「お・は・よ・う」

ちょっと首を右側に傾けてオレの顔を見る

何かついてる?・・・あ!確かについてます・・・“髭之”がね

「髪伸びたね、あの頃の髪型を思い出すのがもう難しいくらい」

「そうだね、ファンの子に言わせれば“エッチ”だから早く伸びるらしいよ」

「・・・“エッチ”だもんね」

アラララ・・・そうきたか?

「良いよ、オレがエッチかどうか試してみる?」

スコーーーーン

紙コップが見事にオレに命中した

「バカな事言ってないで早く席に着く!ダイスケもよ!」

アベちゃんの言葉にオレ達は目を見合わせて笑い合った

うん・・・オレが欲しかったのはこうやって見つめ合える瞬間なんだ

椅子に座ろうと振り向きかけた時に大ちゃんがオレの袖を引っ張った

「何?」

小声で聞く

「今日・・・早く終わらせようね」

OK!言葉の代わりにウインクで大ちゃんに返事をする

 

ライブの話になるとやはり緊張が走る

他のアーティストと一緒でもライブの時間はオレ達のものだから完成形を披露しなければならない

45分をどう歌い続けるか? 曲目は? 大ちゃんのアレンジャーとしての拘りもあるだろう

二人の間に出来たさっきの甘い空気はなくなりアーティストとしての激論が始まる

「1曲が長いから45分思いっきり使っても6曲が限度でしょうか・・・」

進行表を見てスタッフが計算する

「ねぇ?ココにMCは要るのかな?」

大ちゃんがポツリ・・・

「入れた方が良いんじゃないの?ヒロだって久し振りに歌うわけだし。喉が持たないでしょ?」

「ヒロは?どう思う?」

大ちゃんの丸い目がオレを見てる

それって何かの返事を期待してるんだよね

MCをぶっ飛ばせば、あと1曲入れられるよ・・・って目が言ってる

「大丈夫・・・ツアーだって7曲以上続けで歌ったじゃん、全然、平気」

アベちゃんを含めて心配するスタッフに宣言してみせる

「流石!ヒロ。  ダメだったらみんなに謝れば良いモンね」

・・・そうじゃないでしょ、大ちゃん・・・オレ泣くよ

 

その後は曲目を決めて、と言っても決めるのは大ちゃんだけど、ざっと紙の上で流れをなぞる

「じゃあ、明日から立ちでやりましょう」

監督の声で今日は終わりの合図になる

大ちゃんは数曲アレンジしたいからとスタジオに残った

もちろんオレも大ちゃんが終わるまで一緒にいるけどね

「新しいアレンジ思いついた?」

「じゃなくて・・・7曲歌う為には曲同士を繋がないと無理だからね」

「それって自分に仕事を増やしちゃったようなモンじゃん!分かってたらオレ歌えるなんて言わなかったのに・・・」

「何で?」

マジで不思議そうにオレの顔を見あげる

「何で・・・って?」

「ボクはヒロに何曲でも歌って欲しい、その為ならどんなアレンジだってやるよ。ヒロは嫌なの?」

大ちゃんの細い身体を抱きしめる

・・・気を張るイベント続きでまた痩せちゃってる

「アレンジ今作らないとダメ?」

「頭の中に完成してるから良いけど・・・」

「決まり!・・・・・帰ろう」

オレの腕にすっぽり収まって大ちゃんは目を閉じている

いつ抱いてもドキドキするんだ、きっと聞こえちゃってるよ

「そうだね。   帰ろうか」

「オレん家来るよね」

「うん。行く  大晦日までずっとリハーサルで一緒だから、ヒロの所に泊まって良い?」

「良いよ、何日でも。  何なら一緒に住む?」

腕の中の君を見つめる

大ちゃんはクスッって笑うだけでオレに抱きついた

・・・・オレ的にはかなり本気モードだったのにな

 

 

いつもなら獣のように肌を貪りあうのだけれど、今日は何故かずっと話していたかった

泉のように後から後から話したい事が溢れてくる

オレ達は会えない日々の記憶の隙間を埋めたかった

楽しい事は何倍にでもしてあげる

悲しい事は全部受け止めてあげる

だからオレに話して・・・

 

ベッドで横になりながら話すうちに二人共眠ってしまったらしい

オレが目を覚ますと大ちゃんがオレをじっと見ていた

「ん?何?」

「おはよう・・・何かこんな朝の迎え方も久し振りだなぁって思ってさ」

枕元の時計を見ると朝と言うよりはすでに昼を過ぎていたけれど・・・

「でもさ〜〜違う事もあるよ」

「ナンだろう?」

オレの胸元にそっと頭を乗せて大ちゃんは目を閉じた

金色の髪が広がってオレの素肌を撫でる、まるでオレの頭の中の欲望を刺激しているみたいだ

「分かんない?」

「ん・・・分かんない」

「してないじゃん・・・・」

言うなり身体を起こし、驚いている大ちゃんを抱きしめて唇を重ねる

何度も何度も君の息が出来なくなるくらい口づけを繰り返す

「・・・こういう事・・・・してないじゃん」

「明るすぎて恥ずかしいよ」

「大丈夫・・・誰も見てないって」

恥ずかしがっている割にはシャツのボタンを外しても嫌がらないんだね

「ヒロ・・・・」

・・・このまま君に絡めとられたいからオレの名をもっと呼んで

大ちゃんはオレの腕の中で喜悦の声をあげた

 

 

リハーサルは毎日順調に進んでいて、今日はHP用のビデを撮る為にとちょっと小綺麗にしてみた

「アラァ〜〜」

って・・・大ちゃん、オレが髭剃るの見てたでしょ?

ビデオを録り終わってからそう言うと

「だって〜〜知ってたらヘンでしょ」

可愛くそう言われたら何も言い返せないよ

「ダイスケはね・・・ヒロがいつも何しでかしてくれるか、とっても楽しみにしてるのよ。こっちは冷や汗モノだけどね」

アベちゃんにチクリと釘を刺されちゃった

「カウントダウン、いよいよ明日だね」

「すっごく楽しみだね。でもさ・・・一年って早いなぁ」

「本当にアッって言う間だよね。これからドンドン早く感じるのかな?」

「ダイスケ・・・それって年寄りの繰り言だわよ」

「アーーーハッハッハッ」

アベちゃんのイヤミは大ちゃんにまで容赦無く発せられる

 

 

今夜も大ちゃんはオレの部屋にいる

さっきまで熱く快感を分け合った身体を今は隣に感じながら眠りにつくけれど

眠っている瞼の裏にも君の艶やかな身体が甦ってオレの神経に触れてくる

痛いくらいに君が好きだと骨や肉が軋んでいるのが分かる

声が出そうになって目が覚めた

闇の中に大ちゃんの寝息が聴こえる

君が安らかに眠れるならオレの不安などは小さなモノだと思う

「・・・大ちゃんはオレをどう思ってる?」

 

 

カウントダウンライブの当日が来た

午後から会場に行って本番さながらのリハーサルをした

久し振りに大ちゃんの音で歌う事はこんなにも心地良い

「この曲のこんな振り付けってみんな驚くよね」

一段高いキーボードブースから大ちゃんの昂揚した声がオレに届く

君もこのステージを楽しみにしているんだと伝わってくる

でも・・・これが終わったら・・・オレ達は・・・

 

一緒にカウントダウンするアーティストとのリハーサルまでゆっくりするように隣のホテルに部屋を取ってくれた

ホテルまで外を出ずに行けるからと二人で行こうとした時にアベちゃんが声をかけた

「ダイスケ、明日のクラブイベの最終打ち合わせもあるからグッスリ寝ないでね」

「ひどいよ、アベちゃん。あと少しでカウントダウンだってのに眠れる訳ないじゃん」

「なら良いけど。  心配なのはヒロの方かも」

「おいおいおい・・・オレだって興奮してるんだよ」

答える声が震えていなかっただろうか・・・

明日・・・明日からオレ達は・・・

 

ホテルの部屋から見える景色は大晦日の慌しさでは無く、普段と変わらない人々の行き交う姿がそこにある

オレにとっては時が止まって欲しいくらいだ

ライブ時間が近づいたら吸わない筈のタバコについ手が伸びてしまった

「ヒロ・・・・ずっと何を気にしているの?」

大ちゃんがオレの唇からタバコを取り上げた

「別に。久々だから緊張してるんだよ」

「ウソ。  ボクは毎日考えているよ」

「大ちゃんが?何を?」

オレの腕が無意識に大ちゃんを抱きしめた

「ヒロはボクをどう思っているんだろう・・・ヒロがボクの側からいなくなったらどうしよう・・・

いつもいつも考えてる。ヒロの気持ちが知りたくて、でも怖くて聞けないんだ」

「そっか・・・同じ事考えてるんじゃん。バカみたいだね」

「ソロが忙しくってもヒロに会いたい」

「うん」

「キスして貰いたい」

「うん」

「抱きしめて貰いたい」

「うん」

「・・・愛して貰いたい」

「うん」

大ちゃんを力一杯抱きしめる

こんなに愛しく思える人はきっと他にはいない

一年の最後の日に誓うよ  そして・・・一年の最初の日にも誓うよ

「大ちゃんはオレのすべてだよ」

「ヒロもボクのすべてだからね」

離れていても心が通じていればどんな距離も関係ない

君と同じ未来を見つけたから、きっと一人で闘う事も怖くは無い

今夜のステージは君から目を離さずにいよう

新しい年にもオレ達は一緒だからね

 

 

 

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久し振りすぎて・・・どうしよう (ーー;

                          【suika】

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