☆ MELE KALIKIMAKA ☆





ガタッ、ガタッ!

「おっと・・・」

ボコッ!

「あぁ〜〜〜」

情けない大声を出しながら、自分の部屋を目指している

あちらこちらへ盛大にぶつかりながら・・・ソレを時々床に降ろして・・・

マンションのロビーで出逢う人には〃大変ですね〃と気の毒がられ

エレベーターホールで待つ人には〃お先に〃と譲られて

苦笑しながら見送られる


「ふぅ」

何十分もかかってやっと玄関まで辿り着いた

「・・・着いた・・・疲れた・・・」

誰も聞いちゃいなのに思わず自分の行動を言葉にしてしまう

手の痺れを感じても、きっと家族が喜んでくれるだろうと・・・

それだけの為に頑張れる





眠っている家族を起こさないようにカギを開けて中に入る

ゴチッ!!

「あ・・・」

起こさないように・・・・したつもりだったが

「ヒロ・・・凄いね」

やはり、玄関まで出迎えてくれていた

こんな派手な音をたてていれば当たり前か

何やってるの?これは何?って聞かないのは見れば分かるものだから

「エヘ・・・・とりあえず助けてくれる?」

「そうだね」

ダイスケの手を借りてやっとソレをリビングに運んだ

「ふぅ」

小さな溜め息に

「ご苦労様」

2人・・・顔を見合わせて笑った

「もう少し秘密に出来ると思ったんだけど・・・無理だったな」

「かなり凄い音が廊下から聞こえてたよ。ぶつけたり、引き摺ったり。

 誰だって気付くと思うけど?」

「愛は??起きてないよね?」

「大丈夫、ぐっすり眠ってるよ。ヒロの子だもん。でもこのツリー立派だね」

木の隣に並んでみる・・・あまり大差はないようだ

「友達のツテで紹介してもらった店で一目惚れしちゃったよ。

 シーザーファーツリーって言うんだって。かなり本格的でしょ」

「うん。あまり見た事無いような綺麗な形だね。・・・で?

 ツリーに飾るオーナメントはこれから買いに行くの?」

流石にツリーだけでクリスマスを迎える訳じゃないだろう

「あ!忘れてた。玄関の前で運ぶの挫折したんだ」

裸足のまま玄関を飛び出す

引き摺られて紙袋の底はかなり危なくなってはいるが、

約100個のオーナメントは無事だった





「大ちゃん、見て」

リビングに戻りダイスケの目の前に広げた

「うわぁ!こっちも凄いね。何個あるのさ・・・可愛いね、コレ」

「でしょ?」

ヒロユキは至極ご満悦だ

こう言う時は褒めちぎるに限る

「ホント!きっと愛が喜ぶよ。もっとパパが好きになったらどうしようかな・・・」

「そう?そうかな・・・オレが飾り付けしておくから、大ちゃんは眠ってて良いよ」

「良いの?じゃあ、お願いしようかな。ありがとうね・・・ヒロ」

こんな事くらいで威厳が保てるなら・・・もっと世の中のパパは頑張ると思うけど?


その夜は遅くまでリビングの灯りが消える事はなかった


翌朝・・・ダイスケが目覚めるとヒロユキはすぐ隣で寝息をたてている

頑張ったのか寝顔の目の下に少し隈が出ていた

「ヒロ、ご苦労さま。今、愛と見てくるから待っててね」

ダイスケは優しいキスを頬におとした






子供部屋に娘を迎えに行く

すでにベビーベッドの中で目覚めていて、ぐずりもせずに

お気に入りのヌイグルミと話をしているようだ

「愛は本当に良い子」

我が子を見つめる自分の顔はかなりだらしないんだろうと思いながら

エェ、どうせボクは親バカですと開き直ってみる

抱き上げる為に差し伸べる手に自らも可愛い手を添えて身体を預けてくる

その愛しさに始まったばかりの今日が娘にとって幸福な一日であるようにと

願わずにはいられない

「愛・・・パパからの素敵なプレゼント見に行こうね」

リビングへのドアを開けた瞬間・・・足が止まる

灯りこそ点いてないが見事なディスプレイに圧倒された

「綺麗だね・・・これ全部パパが愛の為に一生懸命やってくれたんだよ・・・


 
凄いでしょ」

サンタクロース、トナカイ、ヒイラギ、雪の結晶、数種類の動物、男の子、女の子、

スティック型のキャンディ、おかしの家

ミッキーもミニーもドナルドもスヌーピーも・・・・

「頑張ったね、ヒロ」

ダイスケは眠っているヒロユキに感謝した

愛は言葉も無くツリーを見つめている

目の高さにあるオーナメントを触り、すぐに指を引っ込めた

「触っても良いんだよ」

壊れるからと子供を叱るのは大人のエゴだ

きっとヒロだって怒らないと思う

床に降ろすとよちよち歩きでツリーの方へ歩いていく

オーナメントよりツリーの尖った葉っぱに興味を持ち出す娘には少し苦笑だけど






「あれ?」

ツリーの真ん中に一際光るモノを見つけた

触ってみると他の飾りより重量感がある

「これって・・・スワロフスキークリスタルのピアノ」

同じスワロフスキーで作られたサンタや犬や猫がそこここに隠されていた

以前、雑誌で見ていたのをヒロユキは知っていたのだろう

ダイスケは胸が詰まった・・・きっとコレはボクへのプレゼント

「ありがとう。でも、これは愛に壊されたらシャレにならないな・・・ね?ヒロ」


自分の背丈より遥かに大きいツリーを好奇心一杯に見つめる娘へ

どうか・・・隠されているパパのプレゼントだけは見つけないでと

ダイスケは密かに祈った


頑張ったパパはまだ夢の中・・・


****************************END








12月になった途端に心が逸ったのは遠い昔(汗)

今じゃツリーも飾りません(^_^;

タイトルの「MELE KALIKIMAKA」はハワイ語で「メリークリスマス」の意

suika

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