love bird
近頃の大ちゃんはとても疲れている
育児と仕事でかなりなストレスを溜め込んでいるのかもしれない
〃世の中の母親は誰だって育児と仕事を両立しているわよ〃と言われるだろうが・・・
「あとちょっとだからね。 コレを食べたら遊べるよ」
小さなお茶碗に残っている二口分の離乳食
スプーンを口元に持って行ってもガンとして食べないのが大ちゃんの神経に触っているようだ
そんな些細な事・・・
２日ばかり前には気にも留めなかったのに
娘はお腹いっぱいになったのだから遊ばせてとイスの上でぐずっている
「全部食べたら補助ベルト外してあげるからね・・・食べなさい！」
今まで聞いた事がないママの怒った声に娘は動きを止めた
「大ちゃん・・・そんな無理強いしても・・・」
思わずオレが大ちゃんを宥める
娘の大きな瞳からポロっと涙が一粒零れるのを見て大ちゃんは我に返ったようだ
「あ・・・・ごめんね・・・ボク・・・どうかしちゃったね・・・ごめん」
スプーンをテーブルに落として大ちゃんは顔を覆った
娘はそれ以上泣き叫ぶ事も無く小さな唇を震わせていた
「愛を向こうに連れて行くから・・・良いね」
「うん」
子供用のイスの補助ベルトを外して娘を抱き上げた
オレのシャツをキュウと掴むその可愛らしい手を見てオレは泣きたくなる
娘の為にと頑張る大ちゃん・・・・・
初めて怒られた娘のやるせなさ・・・
そんな二人は意地っ張りな所も似ていて
父親のオレは置いていかれるような一抹の寂しさを感じた
ソファに座ってオレの膝でウサギのヌイグルミと遊ぶ娘はさっきの事など無かったかのよう
キッチンから水音が聞こえているので少し安心する
「お腹一杯になっちゃった？でも、ママは君の為に一生懸命作ったんだから食べてあげないとね」
まだ理解出来るとは思っていないけど、娘に言って聞かせる
クリンとした瞳をオレに向けていた娘はウサギに何か話しかけた
・・・パパはどうなの？って言ってるのかな
待てども大ちゃんはリビングに姿を見せなくて
暫くすると膝の上でスースーと可愛らしい寝息が聞こえてきた
オレはそっと娘を抱えて子供部屋に向かう
「大ちゃん～～～愛、寝ちゃったけど～～」
小声で呼びながら子供部屋のドアを開けた
「大ちゃん・・・？」
娘のドレッサーの上に飾ってある産まれたばかりの頃から今までの写真を大ちゃんは見ていた
振り返るとオレの腕から娘を抱き取りベッドへ寝かせた
「さっきはごめんね。 愛してるよ・・・おやすみ」
娘の髪を撫でて白い額にキスを落とす
そのまま黙って部屋を出る大ちゃんの後をオレは追った
「離乳食を少し残しただけでこんなにイラつく、そんな親にはならないと自分で決めていたのに」
「疲れてるんだよ・・・最近、どっちにも手を抜かないから。大ちゃんはいい加減になっても良いと思うよ」
真面目で繊細な大ちゃんに〃手を抜け〃ってのは耐えられるも無く
オレの胸に持たれかかる大ちゃんの微かに震える肩を強く引き寄せた
「ヒロ」
「ん？」
「ボクは良いお母さんになれないのかな？」
「大ちゃん・・・良いお母さんって誰が決めるの？」
「・・・・」
「オレ知ってるよ。決めるのはオレと愛だと思う」
俯いていた顔が上をオレの顔を覗き込むように上がった
「ヒロが決めるの？」
「そう・・・だってオレの奥さんだから良いんじゃない」
「・・・何点くれる？」
アレ？ ちょっと気持ち、復活してるよね
「何点って・・・？」
瞳をキラキラさせながらオレの返事を待っている大ちゃんにクラッ・・・・
いきなり抱き締めてキスをしてあげる
「ヒロ！」
「点じゃなくて・・・キス１００回はどう？」
「それは・・・評価じゃなくてご褒美だよね」
あ・・・バレた
「わかった・・・大ちゃん。キス１００００回にしよう」
苦笑いを零しながら大ちゃんがオレを見つめる
「ありがとう・・・ヒロ。少し気が楽になった。焦らなくても良いんだよね」
「そうだよ。ゆっくり〝親〟になっていこうよ。愛の歩きと同じくらいにさ」
きっと、娘に追い越される方が早いと思うけどそんなのどうだって良い
大ちゃんが辛くない道をオレは一緒に歩いて行きたい
「でね・・・一日に１００００回？それとも、一日一回で１００００日？」
「やだな、一日に１００００回に決まってるじゃん」
君が笑ってくれるならオレは頑張るよ
濃厚なキスしようとした瞬間、子供部屋から可愛い泣き声が聞こえ出した
「ストップ！愛が泣いてる。行かなきゃ」
嬉々として廊下を走る後姿にオレは項垂れる
・・・・子供優先にされる旦那さんの嘆きが少しだけ分かるなぁ
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頑張れ！！ヒロパパ♪（*^_^*）
suika
