〜春風〜






「ケホッケホッ」

軽く咳をしながら瞬時に計れる体温計を耳にあてた

ピッ

「どう?」

薄く目を開けて表示を確認する

「あぁ…ダメだ、38℃越してる。本格的に風邪引いたみたい」

2日前から喉の奥が痛いと言っていたし見事な鼻声で風邪だとわかる

おまけに恒例の花粉症も加わり大変だ

「花粉の為のマスクが予防になったかな」

熱い額に手を当て彼が目を瞑る

「愛にうつしたら大変だもん」



そう・・・彼とオレの間には可愛い子供がいる

最近は言葉もしっかりして会話も成立し始めた

そんな娘の心配を最初にする彼が愛しい


「誰よりも健康に気を使う大ちゃんがかかるなんて皮肉だね」

オレは冷たいゲル状のシートを彼の額に貼ってやる

「あ…気持ち良い。ありがとう。ボクの健康おたくは偽者だから。

 やっぱりヒロは鍛えてるもんね・・・ケホッケホ」

自嘲気味に笑いまた咳き込む

「ほらっ、薬飲んだらもう寝なきゃ」

羽根布団を肩まで引き上げてやりポンポンと撫でてあげる

「しばらく愛はこの部屋に立ち入り禁止だね」

「え〜〜〜〜〜」

掠れた声で抗議しながらあきらめざるを得ない

「愛の世話、ヒロに任せて良い?」

「あったりまえじゃん・・・大ちゃんはゆっくり寝てて良いからね」

食事とか洗濯とかは手抜きしても許されるけれど父親として子供にしてあげられる事は限り無くある

と言いながら少し不安だ・・・


「じゃあ、オレ向こう行ってるね、ママが元気じゃないと愛の元気もなくなっちゃうな」

「ヒロ?」

ベッドから離れかけたオレを引き止めた

「ん? 何か欲しいの?」

「寂しい・・・」

「愛がお昼寝したら様子見に来るから待っててね。寂しがりなんだから」

「・・・ヒロは寂しくない?」


あぁ、そう言う事かと起き上がれる気力も無い彼が見せる甘え

カーテンを引き部屋を薄暗くしてから、彼の側に戻る

白く細い手を包み込むとオレにまで伝わる高い体温

「言わなきゃわかんない? 心配で心配でオレが病気になりそう」

彼の風邪なら貰っても良いかと納得して彼の唇にキスをした

触れる頬も唇も零れる吐息さえ熱っぽくて可哀想だと思いながら

頭の片隅でセクシャルな事を考えてしまった

見つめあい微笑むと彼の瞼がゆっくり降りた

「大ちゃん、愛してるよ」

そっとベッドから離れドアを出た


リビングでは娘が優しい材質で作られた木のおもちゃ遊びに夢中だった

「ママは?」

一人で部屋から出て来たオレを見て娘が不思議がる

それだけ毎日イチャイチャしてるって事だろうか

抱っこと甘える娘を抱き上げる

子供ってどうしてこんなに暖かくて柔らかくて優しいんだろう

「あのね・・・ママは咳がケホッケホからゴホッゴホになってお薬飲まなきゃならなくなったんだよ」

「おくしゅり?」

「そう。愛の苦手なお薬飲んでママは頑張ってるよ。だから、今日はパパと良い子にしてようね」

小さいながら何かを感じているんだろう

不安げに瞳を揺らしオレに強く抱き付いた

「ママ・・・ねむねむしてゆ?」

「大丈夫・・・大丈夫」

娘に・・・そして、オレ自身にも言い聞かせるように愛しい我が子の背中を撫でる


3人だけの家族

・・・ひとつの宇宙


さぁ

娘を連れて街へ飛び出そう

柔らかい日差しも咲乱れる花々も眩しく見えるだろう

そして、きっと気付く

ママが一番優しい事に






♪♪♪♪♪♪終





東京では春一番が吹いたそうですね

私が住んでいる所はまだですがきっともうすぐですね〜

春風って名前が優しいイメージなのは私だけでしょうか?

また少し愛ちゃんが成長しました

ヒロもパパとして成長してます(苦笑)


suica

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