白昼夢






傷付くのが怖いならボクを愛さないで・・・



タイルを繋ぎ合わせたようなデザインの天井

普段、気にもしない厚いカーテンのタバコ染み

エアコンの電源ライトは緑色

思い出せないのは壁の絵の名前


暗く淀んだ空気が支配する部屋の中で二人きり

「はぁ…んっ…」

ボクはヒロの熱い猛りを身に沈め、揺さぶられながら宙を見つめていた

感じていない訳じゃない

むしろ、感じすぎている自分が怖い


・・・愛さないで

ヒロに触れられる度に身体は心を裏切ってしまうから

・・・ボクを愛さないで


「大ちゃん?今日は乗り気しない?」

額にうっすら汗を光らせているヒロが瞳を開けてボクを見つめる

腰の動きが止まるとボクの中の猛りがとてもリアルに感じられる


・・・もっと愛して欲しい


「ボクを壊して」

ヒロに縋りついて懇願した

それは決して演技じゃない

でも・・・悲しい嘘


「続けて良いの?イヤならやめるから・・・」

そっとボクの額に張り付いた髪を上げてキスをした

そんな優しさをどこで身につけてきたの?

誰と出会ってそれを覚えたの?

ボクと出会う遥か昔からヒロはそんなに優しかったの?


聞きたい事は沢山あるのに、それを言葉に出来ない悲しさ

黒い想いが胸に溢れてボクは心が破裂してしまうよ


これ以上ヒロの事で苦しみたくない

でも、手離せないヒロだけは・・・

いっそこの手で二人の人生を止めれば

これ以上悲しい思いをしなくて良いのだろうか?


狂った心は走り続ける


もっと・・・

もっと・・・

うねる腰でボクを貫いてヒロの口から愉悦の声が零れたら、

そのまま時間を止めよう

枕の下に隠し持ったナイフのエッジは

鋭い牙となってその白い喉を掻き切るか・・・


その後でボクも行くから・・・

崩れ落ちる最後に見るものはボクの顔だよ

他の何も見ないように口づけでボクが視界の全てを覆ってしまうからね

安心してね


ボクだけのヒロ・・・


ボクの人生より大切なものがある事をヒロに出会って知った

この心も、この才能も、この身体も、ただ一人の人の為にある

他の誰も入れない領域にすんなり入り込んできたただ一人の人

驚きと戸惑いは・・・それでも甘美なものだった


ヒロを知ってからの人生が嫉妬と羨望と悲しみばかりだった

〃異性〃への嫉妬

〃抱かれたい〃羨望

〃言えない〃悲しみ


離れた数年がボクの背中を押してくれた

世の中の見方も少しずつ変わっていた


「愛しているよ」

告白は復活への切り札だったから?


抱いてくれたのは尊敬から?


それでも良いとボクは幸せだった

ヒロが側に居てくれたのだから・・・

これ以上何を望むのだろう


ヒロのいない時間を埋めたすべてのモノを排除してボクはヒロに溺れる

「誰もいない国に行きたいね・・・二人だけで」


そんな夢は長くは続かない

いつか目が覚めてしまう時が来る

近頃、眠るのが怖い

「ごめんね」

そんな簡単な単語でまたボクの側を離れて行くような気がする

またそんな夢を見てしまうから・・・


「そんな筈ないじゃん」

ヒロが笑って言えば言うほどボクは寂しくなっていく

「きっと大ちゃんの方がオレから離れて行くような気がするよ」

その時の寂しげな表情が唯一のボクの救いだなんて悲しすぎる




喉を裂かれたヒロは何を言いたかったのか・・・

二度、三度口をパクつかせたけど

ボクがすぐに口づけたから言葉にならなかった

真っ赤な血が流れ・・・・・

薔薇の刺繍のようにヒロの綺麗な裸身を彩り続けた

「あぁ・・・綺麗だ」

ボクはうっとりとそれを見つめる

「・・・・・・」


最後にそれを言いたかったの?

ありがとうね・・・

ボクの耳に最後に残るのがその言葉で良かった


息絶えるヒロの身体を受け止めて、今度はボク自身に刃を向けた

「すぐに行くからね・・・待っててね」

天国の階段を二人で登ろう


でも・・・ボクは罪人だからヒロとは同じ天国の門をくぐれないかもしれない

その時は神様にワガママを言って

ヒロと同じ場所に行けるようにお願いしよう


「I want to use a tear as the ticket and to see you and Heaven 」

涙をその切符にして君と天国を見たい・・・

「I love you 」

私はあなたを愛しています・・・






「大ちゃん??」

ボクを呼ぶのは?


ぼんやりと見えるのはヒロ

その顔が段々とハッキリしてくる

「ヒロ?」

ボク達はベッドの中で裸のまま

「良かった・・・気が付いて。

もう少し意識取り戻さなかったらアベちゃんに電話しようかって思ったよ」

「ボク・・・寝ちゃってた?」

「・・・ってゆーか、失神かな・・・」

意識を失う前の事が思い出せない

確かにヒロの熱い塊を受け止めていたまでは覚えているけど・・・

「そんなに良かったの?」


「バカ・・・」


あれは夢だったんだ・・・

今、彼はボクの側にいてボクを愛してくれてる

それは本当の事だ


「ヒロ?」

「何?大ちゃん」

「何でもない」


この他愛無い会話が出来る事に感謝しよう

「ゴメンね」

ヒロを夢の中だけでも悲しい目に遭わせてしまった事への後悔を口にした




でも・・・


油断しない方が良い


〃白昼夢〃は本当に起こる事への警告だから






*********END**********







「ダーク」でも、少し違った角度から書いてみました。
最後はTVの「恐怖特集」みたいな感じで自分でも恐い(T_T)
『大ちゃんのヒロへの究極な気持ち』みたいな感じ・・・・(汗)
 suika

   
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