蒼の睡蓮(後編)





「んぅ」

内腿に舌を這わすとくぐもった喘ぎがダイスケの口元から零れた

「あ・・・」


ダイスケが快感を我慢する姿にヒロユキの雄も猛っていく

すぐにでも吐き出したい気持ちが募り

性急にダイスケの秘部を探り当てた


「・・・?何?やだ」

ダイスケが身を捩って嫌がった

しかし・・・

怯える声もヒロユキには媚びをうっているとしか思えなくて


「そうやっていつも恥ずかしがって見せるんだ」


ダイスケの耳元で囁いた

「いいよ・・・最初はココで咥えて貰おうかな」

ヒロユキの長い指がダイスケの唇をゆっくりとゆっくりと開いてゆく



『貴方の全てにオレを注ぎたい』


21


「うぅっ」

ヒロユキはダイスケの口腔で精を吐き出した

ダイスケはキツく結ばれた口の端からだらしなく零れる白い液体を縛られた両手で拭った

「ヒロの・・・たいした事ないね」

半ば悔しそうにダイスケは言い捨てた

その言葉が更にヒロユキの触れてはいけない感情を刺激した


抜いたばかりの雄をもう一度ダイスケの口腔に差し入れる

「んううう」


「こうやっていつも誰かと比べてるんだ・・・オレのが一番良いってわかるまで咥えててよ」

ダイスケの可愛い口へと・・・

乱暴に抜き差しを始めた



『貴方の深い部分がオレを挑発している』


22


もし、出会わなかったら


貴方は天才的な音楽プロデューサーで

オレはちょっと頼りないボーカリストで

同じ世界にいるのも知らずに必死で、それでも楽しく過ごしていたんだと思う


ヒロユキは怯えるダイスケの口から自身の雄を引き抜いた

口の中のモノを手で受けようとしたダイスケにヒロユキは告げる

「飲み込んで・・・」

口元を押さえ動きを止めていたダイスケがヒロユキを見上げると

『ゴクリ』と喉を上下させた


ヒロユキはうっとりと見つめられて、すぐに血液が身体中を巡る感覚に襲われる




『貴方を傷つけてしまいたい』


23


男同士がドコをどう使うのか・・・知識としてはある

ためらいも・・・無い訳じゃない

それでも、深く繋がりたい


縛った腕を上げさせてダイスケをそのまま俯せた

「な・・・何?」

後ろ向きでくぐもった声が不安げに呟く

「ココってさぁ・・・ほぐさなきゃ挿れる時痛いんだよね」

白い柔らかな双丘の深くにヒロユキは手を滑らせる


「やだっ!そこは・・・いやだ!」


その必死さが返ってヒロユキを駆立てる事にダイスケは気付かない

「ふぅん・・・そんな必死で嫌がるなんて、ココだけはもう誰かのモノなんだ」


ヒロユキは無遠慮に指を一本突き入れた



『貴方を抱いた全ての人間を殺したい』



24


自分と同じ機能を持つ目の前の細い身体にこんなにも欲情している

ヒロユキが突き入れた指を性器のように動かすと、粘膜がひきつれながら包みこんできた

「あぁ、ヒロ・・・いや!やだ」

ダイスケは眉根を寄せ何かに耐えているようだ


「ヤダじゃなくてさ・・・」


ギリギリまで引き抜いた後、強く押し入れる

プライドの高いダイスケが声を押し殺しているのが背中を向けていてもわかる

「あっ・・・」

指の抽挿を繰り返すうち、ダイスケの身体から力が一瞬抜けた


「大ちゃん感じてるんだ、指じゃ物足りない・・・欲しい?」

ダイスケが金の髪を揺らす

「や・・違う・・」


抗うその姿にヒロユキの快感が増し、少し焦りながら己の雄をダイスケの秘部に当てがった

「あぁ!!」



『本当は貴方に優しくしたいんだ』



25


推し進めてもダイスケの秘部はすぐにヒロユキの雄を呑み込む事は出来なかった

「痛い・・・ヤダ・・・」

無理やり腰を押しつけると更に身体を固くして秘部は拒んでゆく

「うっ」

ダイスケの痛みとは反対にヒロユキの快感は増していく

ダイスケの白く細い指がシーツを強く手繰り寄せるのを見て更に高ぶった

「ダメだ・・・保たないや。一回イクよ」

ヒロユキは納まりきってない己の雄を引き抜いてダイスケの内腿を閉じて突き入れ

数回、ピストン運動をして精を吐き出した

「はぁ・・・」

中途半端な快感が溜め息になった

「汚れちゃったね」

ダイスケの肌にヒロユキの白濁した精が散ってヌラヌラと光っている



『貴方をもっともっと汚したい』



26


「ヒロ・・・」

ダイスケが弱々しい声でヒロユキの名を呼んだ

「ん?」


「ココに来てから何日経ったの?」

「わからない」

「ココどこ?」

「わからない」

「ボクをどうしたいの?」

「・・・」

そう聞かれるのがヒロユキは怖かった

どんな言葉も嘘になる気がして・・・

「大ちゃんはどうされたい?」

ヒロユキは俯せた身体をこちらに向け、ダイスケと向き合う

ココに来て初めて2人はお互いの顔を見つめ合った

「もう・・・やめて・・・ヒロ」

少し舌足らずな低い声で名を呼ばれ

ヒロユキは優しい気持ちになる

「ごめんね・・・大ちゃん」

そっとダイスケの身体に覆い被さり抱き締めた

「ヒロ?」



『貴方をこんなにも愛している』



27


「ヒロ・・・ボクはね」

続けられるだろう否定の言葉を聞きたくなくてヒロユキはダイスケの唇を乱暴に塞いだ

密着した身体が熱を高め、触れ合う性器のヌメった感触にダイスケが小さく喘ぐ

「・・・ぁん」

繋がりたい気持ちが再びヒロユキを襲う

ゆっくりとダイスケの両脚を拡げ指先に先ほど自分が放った白濁液を塗りつけ秘部に滑らす

「やっ!」

「大ちゃん・・・いい加減拒む演技止めようよ」

「えっ!?」

冷たく言うと埋め込んだ指を淫媚に出し入れし始めた

指を一本から二本に増やすとダイスケの腰が妖しく震え出した




『貴方の身体に刻みたい』



28


入口を解きほぐしてそそり立つ自身の雄をそこに押し入れる

「きつ・・・」

遊んでいるとは思えないくらいダイスケのソコは狭い

この狭さを知っている男に嫉妬しながら・・・

それすら己の欲を高める糧にして雄を挿れる

縛られた腕で目を隠したダイスケは、言葉を発するのをあきらめながら身体中で拒んでいた

「はぁ・・・」


時折しどけなく開かれた唇からピンクの舌が覗いて苦痛を吐息で漏らす

誘われるようにヒロユキはグッと腰を押し進め雄を納めた

「うぅ・・・ダイスケ」

ダイスケが愛しいと思う気持ちが下半身へと流れていく



『貴方を必要としているのはオレなんだと気付いた』



29


ダイスケの埋の温さに包まれてヒロユキは快楽の果てを見たかった

「オレのが入っているの分かる?」

ヒロユキはダイスケの秘部に雄を埋めて聞いた

あまり身体を揺すらないようにダイスケはコクンと頷いた

「・・・また誰かと比べてる? 大きさとか長さとか分かる?」

イジ悪く言うと一度雄を抜き差しする

「やっ!」

ダイスケは小さく叫んでビクンと身体を跳ねさせた

「うっ」

いきなりな締め付けにヒロユキ自身が持ってイカれそうになり慌てる

「わか・・・ん・・・ない」

「ん?何?」

ヒロユキはゆっくりと腰を動かし始めた




『貴方と同じ快楽を見つけたい』



30


「やめ・・・あぁ!」

何か言いかけたダイスケもヒロユキの快感に引き摺られるように揺さぶられている

少しずつ勃ちあがりかけるダイスケの雄、それを見ながらヒロユキはほくそ笑んだ

「大ちゃんも感じてるんだ・・・イッちゃって良いよ」

「見ない・・・で・・・やだ!」


深いなかを抉るようにヒロユキは腰を打ち付けた

「イキたくないの? じゃあ、手伝ってあげるよ」

ヒロユキはダイスケの雄を握りしめ手の平に納めた

「あ・・・」

眉根を寄せて快感に耐え始め、固く瞑った目尻からは涙が零れていた



『貴方の全てを手に入れたい』



31


あっけなく吐精して力を失ったダイスケの雄を弄びながらヒロユキは聞いた

「さっきさ・・・何言いかけた?」


ダイスケは涙を零しながら答える

「どうして・・・いいのか・・・わからない、初めて・・・だから」

「初めて・・・?」

ダイスケが小さく呟いた言葉にヒロユキは戸惑いながら打ち付ける腰を止める事は出来なかった

「やん、やだ!」


ヒロユキに揺さぶられながらダイスケは苦痛にも似た喘ぎを漏らす

強く打ち付け、弱く引くリズムを繰り返しながらヒロユキはダイスケに溺れた

それでもさっきの言葉が耳から離れない



『オレは貴方を汚してしまったのかもしれない』



32


「あっ・・・」

「うぅ」

二人ともに高みに上り詰めヒロユキはダイスケの埋へと精を飛ばして果てた

「大ちゃん・・・初めてって本当に?」

息を整える間もなくヒロユキは問いただした

「うん」

頷く度に涙が零れる

「だって・・・遊びまくっていたじゃん。なんで・・・?じゃあ、どうやって?」


「大人なのにってバカにしてる・・・?でも、気持ち良くなるだけなら口や手でもイケるし

誰と付き合ったって結局・・・遊びだから」


誤解していたと告げたい

でも、それすらダイスケには拒まれる気がした


「・・・どう?」

「なに?」


「犯されてる気分は」

再び激しい注挿を繰り返した


「んぅ!」



『貴方に愛される資格はない』



33


愛する事

愛される事

ヒロユキは全てを見失った


何度も何度も、イカせて喘がせて

疲れきったダイスケをバスルームで綺麗にし真新しいシーツを張ったベッドへ寝かせた

「・・・眠って良いですか?」

ダイスケが懇願する口調が可愛くて少し悲しい

「うん・・・おやすみ」

頬にキスを落とすと数分もしないうちに寝息を立て始める

寝顔を見ていたヒロユキはダイスケの腕を縛っていた紐を解いた

「ひどい事しちゃったね」

細い手首を彩っている痛々しい痣に唇を落とした


「好きだよ・・・」




『貴方はオレを許さないで』



34


「アベちゃん。オレ」

「うん・・・大ちゃんと一緒だよ」

「5日・・・そっか・・・5日しか経って無かったんだ」

そんな短い時間しかダイスケを独り占め出来なかったのかとヒロユキは苦笑いを零した

受話器の向こうではアベが叫んでいる

「今から言う住所に迎えに来てくれるかな・・・大ちゃん?今は眠ってるよ。大丈夫・・・」

ヒロユキは眠るダイスケを優しく見つめた

「でさ・・・大ちゃんとのユニットだけど・・・もう・・・出来ない」

アベの絶句がヒロユキに耳に伝わる

「大ちゃんの隣りにいるのはオレじゃない」



『貴方から離れる日が来るなんて』



35


「やあ・・・」

「やあ・・・じゃないわよ!何やってるの?!」

きっと全ての赤信号をぶっちぎって走って来たのだろう

ヒロユキの想像よりかなり早く教えた住所に着いた

本当は会いたくなかった

適当に郵便受けにでもカギを放り込んで行けば良かったのに・・・

アベは車から降りるとつかつかとヒロユキに歩み寄より頬を叩いた

パチン

乾いた音が辺りに響く

「こんなにやつれて・・・」

アベは怒りではなく慈しみのまなざしを向ける

「そう?この5日間飲まず食わずだったから」

「・・・」

「あれ?飲まず食わずで何してたか聞かないの?」

「聞いたら私が得する訳?」

「皮肉も聞き納めかな・・・ごめんね、アベちゃん」

「バカね」




『貴方を取り巻く全ての人に感謝している』



36


マンションのエントランスでヒロユキはアベにカギを渡す

エレベーターに向かうアベが立ち止まった


「一緒に行かないの?」

「オレは・・・」

「ヒロ」

「大ちゃんに聞けば・・・ユニットはもうやらないと言うと思うよ」

「それで良いの?」

「大ちゃんの言う通りにしてあげて」

ヒロユキはエレベーターに乗るアベを見送った

「終わりだね」



『貴方を一分前より一秒前より愛している』



37


貴方はオレの夢に咲いた幻の花

誰にも触らせたくなくて手折った悲しい花

はかなげにオレの中で咲きほこった花


そして一度も・・・

愛しているって言えなかった

貴方はオレをどう思っているのかを聞く事もなかった

どうせ嫌われるなら貴方の気持ちを聞きたい

「会ってくれるだろうか」


揺れる気持ちを抱えながら進む事も後ずさる事も出来ずヒロユキはマンションの入口で佇んでいた


「ヒロ!!!」

エレベーターから出て来たダイスケがヒロユキの名を叫んだ




『貴方を抱き締めたい』



38


「ヒロ!」


エレベーターを降りたダイスケは青白い顔をし、足下もふらつきがちだ

それでも、ヒロユキをしっかり見つめている

「大ちゃん・・・」

オレが悪いのだから‘大丈夫?’と聞くのもおかしなものだとヒロユキは思い

なかなか近付けなかった


「聞いた・・・やめたいってどういう事? 何でさ?」

問い掛けるダイスケの声が震える

「それは・・・あんなひどい事する奴とはもうやれないよね?」

「ボクの気持ちじゃなくて! ヒロは嫌なのか聞きたいんだ!」

「オレは」



『貴方に本当の気持ちを伝えて重荷にならないだろうか』



39


ダイスケを追ってエレベーターからアベが出て来た


「私、お茶してくるから・・・もう一度ちゃんと話し合いなさい」

微笑みながら通りの向こうへ歩くアベを見ながらダイスケとヒロユキは部屋に戻った

さっきまでの澱んだ空気はすでに無く、無機質な白い壁が朝の光を反射していた

「オレは・・・大ちゃんが好きだよ」

もう、隠す事はやめよう

ダイスケは黙って聞いていた

「オレ以外の誰も見ないように独り占めしたかった、オレだけのモノにしたかったんだ」

「だからって・・・ひどくない?」

ダイスケは両手首をブラウスの袖の上から撫ぜた

「あ・・・ごめん」

「謝んないで」

ダイスケに触れようと伸ばされたヒロユキの手

それをダイスケは握り締める




『貴方の指先の冷たさが愛しい』



40


「ヒロが好き」

「大ちゃん」

「きっと会った瞬間に惹かれてたんだと思う。好きになって行くのが怖かったんだよ

怖くて怖くて・・・他の人と遊ぶ事で忘れようとした」

二人は悲しいくらい似ていて愚かだ

傷つけ合わなければ想いに辿り着けなかった

ヒロユキはダイスケを抱き締める

「オレ達はバカだね。凄い遠回りしなきゃ気付けなかったなんて」

「ヒロと一緒に音楽やりたい、ヒロの声に曲を乗せたい

この部屋に閉じ込められていた間もずっと思ってたのに・・・離れるなんて言わないでよ」

すがりつく腕に強さを感じた


「音楽だけ・・・?」

ヒロユキはダイスケの髪を撫でながらそっと聞いた


「うっ・・・言わなきゃダメ?」


「ちゃんと言って」


吐息と一緒にダイスケの耳に囁く


「声だけじゃなくてヒロユキが全部欲しい」

「愛してるよ」


ダイスケの閉じた瞳から涙が一筋零れる

それをヒロユキは唇で受け止めた




透き通る事の無いこの泥土(世界)で、オレは幻の花(貴方)を手に入れた



**** 終 ****
 


毎日、読んでいただいて、本当にありがとうございました。

感想などいただけたら嬉しいです。    suika
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