mischievous angel 【悪戯な天使】 U conception

【リクエスト内容・・・・・二人に子供が出来た!】

 

服を整えたダイスケとヒロユキはヤマモトを前にして並んで座っていた

あれからすぐにヒロユキもモニターを見せられて『胎児』と対面した

「うわぁ・・・本当に赤ちゃんだ・・・」

こんな緊張した空気の中でも無邪気さを見せるヒロユキにヤマモトは何故か苦笑した

 

そこで初めてヤマモトはダイスケとヒロユキが「夫婦」である事を聞かされた

男女の夫婦なら『子供』が出来るのは、至極当たり前な事ではあるのだが・・・

 

「で・・・どうする?」

「どうするって・・・?」

質問の意味が理解できないようにダイスケはヤマモトの言葉を繰り返す

「オレは今でも何かに騙されているような気分だ・・・大きいデキモノなんじゃないかと思いたい・・・

 卵子が無いのに子供が出来る筈は無いし・・・言い難いが人間じゃないかもしれないとまで思ってる。」

ヤマモトの言葉を聞きながらダイスケの身体が震えるのをヒロユキは繋いでいる手の平から感じていた

「今なら間に合う・・・・」

「何が間に合うって? ヤマモト・・・医者としてでも、友人としてでも良いからはっきり言ってくれないかな」

「今なら腹の中に出来たモノを誤魔化せば何とか処置できる・・・この世に無かったモノとして葬れる・・・」

「処置って?   殺すんですか?」

顔を背けたダイスケの肩をヒロユキは支えた

「生きているんですよね?「心臓」はちゃんと動いてるって言ったじゃないですか?!」

ヤマモトが2人を見て静かに言った

「じゃあ、聞くが。産むのは良い・・・

 でも男同士から産まれた子供が大きくなってソノ事実を知ったらどうなるか考えられるか?

 イジめられたり、絶望したり、苦しんだりするとは考えないのか?」

突きつけられる現実にヒロユキは唇を噛んだ

ダイスケが口元を押さえた

スズキが駆け寄って背中をさすってやる

「アサクラさん・・・気分悪いですか?」

「・・・大丈夫です・・・すいません」

 

−−−−−小さな診察室、4人は押し黙るしかなかった  答えが見つかる筈は無い

 

 

「大ちゃん」

そんな重苦しい雰囲気の中・・・声を出したのはヒロユキだった

ダイスケは縋るような眼差しを向けた

「何?   ヒロ  」

「オレ達の赤ちゃん産んでくれる?」

ヤマモトはその言葉にわが耳を疑った

「あのな!オレの話聞いてなかったのか?てめぇ!!」

「大ちゃんとお腹の中の子供はオレが絶対守ってあげるから!信じて・・・イヤ、信じろ!オレについて来い!」

端から聞いていたらそれはメチャクチャな言葉かもしれなかった

しかし、その一言でダイスケの気持ちは決まった

「うん・・・ヒロがいてくれたら大丈夫だよね」

「お前らな〜〜〜〜自分達が何言ってんのか分かってるのか?

もう一度だけ言うがソレが『胎児』じゃないかもしれない・・・大きくならないかもしれない・・・それでも?」

 

−−−−−それでも

「もし、ダメになったらそれは「運命」だって思うよ。でも、神様がくれた『奇跡』を信じてみたい」

「先生・・・すいません」

「ヤマモト・・・ごめん」

ダイスケとヒロユキは同じように頭を下げて静かに立ち上がった

「おい!?ドコ行く気だ?」

ヤマモトは慌てて2人を止めた

「これ以上は迷惑かけられないから、自分達で何とするよ」

 

「・・・・・・・・ダメですよ」

2人の前にスズキが立ち塞がった

「他の病院に行ったら、即〃実験材料〃として扱われます、

 それでも良いんですか?『子供』を守りたかったら逃げちゃいけません。

 アサクラさんの事が心配だから必死なんでしょ!、先生も素直になってください!」

 

 

「・・・ったく!!分かったよ!分かりました!!やりゃあいいんだろう!!」

ヤマモトは立ち上がってヒロユキの側に来ると対峙する様に向かい合った

「お前・・・さっきの言葉、本当だな?」

「本当です」

「本当にアサクラと子供の事守れるんだろうな?」

「守れます」

「何があってもだな?」

「何があっても!」

「逃げ出したくなる時があるぞ?」

「逃げませんよ!」

「絶対だな?」

「オレの命かけて守ります!!」

「・・・・・・・・・・」

 

「分かった・・・オレも協力するよ。  でも、あいにく 命はかけないけどな・・・」

「流石!先生!!」

スズキがヤマモトの背中を叩いた

「痛いっす・・・・スズキさん」

「さあさ・・・そうと決まったら体重を計って、血圧計って、採血して、もう少しちゃんとエコーしないとね。

あ・・横になった方が楽よね。  向こうのベッドに行きましょうか?」

「ハ・・・ハイ・・・」

スズキは忙しそうにダイスケを簡易ベッドのある隣の部屋に連れて行った

 

 

ヒロユキとヤマモトは揃って診察室に取り残された

「あの看護師さん・・・何か楽しそうですねぇ?・・・」

「まぁな、元々が産婦人科にいたから手慣れてるし・・・女ってのは何事にも動じない生き物なのかも・・・」

「大ちゃんも動じませんけどね」

「今は母親だろ? 」

「母・・・あ〜〜そうだ!  エェ!って事はオレ・・父親ですか!?」

「お前・・・気付くの遅いよ。

それに・・・最近うちの病院に連れて来られる子供の背中に痣がある事が多いんだ、

 『子供が自分から落ちました』って口じゃあ言ってるけどあきらかに親が突き落としてる」

「・・・虐待?」

「親がそう言う以上は何を言ってもダメなんだ、医者は無力なんだよ。

 そんな子供を治療してるスズキさんは辛そうだよ、『子供が不幸な世の中は許せない』って・・・」

 

 

注射器に血が溜まっていく

「ハイッ・・・終わりました。少し横になってていいですよ」

「あの・・・さっきは止めてくれてありがとうございました。でも・・・本当に良いのかな?

 ヤマモトやあなたに迷惑がかかるんじゃないですか?男が・・・その・・・妊娠なんて・・・」

「私、ミーハーなんですよ、不思議なものが好きなんです。

 世の中には説明できない事がたくさんありますよね、男性が「妊娠」してもおかしくないって思いました。

 アサクラさんがおっしゃってた『奇跡』を私も信じてみようかな。

 あんなに頼りになるパートナーも側にいるんだから大丈夫ですよ。

 ・・・『幸せな子供』が生まれてくるのは、それだけで嬉しいじゃないですか?」

 

ヒロユキの言葉を聞いた時は驚きが先に立って実感がなかったけれど

今、やっと彼の言葉が身体に染み渡ってゆく

−−−−−ヒロが側にいてくれる、それだけで勇気が出る

−−−−−ねぇ?赤ちゃん パパの言葉聞こえた?

まだ薄っぺらなお腹を服の上からそっと撫ぜた

 

その素敵なパパは先生に食い下がっていた

「男の子か、女の子かわからないんですか??????」

「あのなぁ・・・まだ3ヶ月じゃ無理なんだよ!!」

「でも〜〜〜」

 

「・・・お2人共・・・何を遊んでいるんです?」

スズキがあきれていた

「ヒロ・・・」

「あ!大ちゃん〜〜大丈夫?歩ける?寒くない?」

ダイスケの身体に持っていた自分のコートを着せ掛けた

「バカ・・・過保護になりすぎるな」

「すいません」

「ヒロ・・・ありがとう」

 

「また来週来いよ・・・でも、異常があったらすぐに呼べ。前例が無いんだから手探りでやってくしかない

 それから、仕事は1年間は休んだ方が良い。今すぐは無理でも腹がデッカクなってから外に出るのは無理だろう。

 無茶なライブや公に姿を見せるのも不味いんじゃないか?どうなるか分からないんだから用心に用心は重ねた方が良い」

「・・・スケジュールだけはボク一人ではどうしようもないよ。マネージャーに相談しないと・・・」

ダイスケもヒロユキもアノ人の驚く顔を思い浮かべた  彼女の心臓がどうかなったらどうしよう?

「信頼が置ける人なら打ち明けるべきかもしれない。

ニセモノの診断書書くか・・・って? あぁ!!ついにオレも悪の仲間になってしまった〜〜〜」

 

 

玄関まで送ってくれたヤマモトとスズキにダイスケは神妙に頷いていた

「スズキさんが教えてくれた事ちゃんと守ります」

「いつでもお電話下さい、先生と駆けつけますからね。」

「じゃあまた。」

ドアを開けて車に乗ってから大変な事が自分達の上に起こったのだと改めて思った

 

−−−−−もう覚悟を決めて前に進むしかない

−−−−−だってお腹には『ヒロとボクの赤ちゃん』がいる

まず最初の関門は、やはりアノ人に本当の事を言うべきだろう

仕事の調整やスケジュール管理はアノ人しか出来ないのだから・・・

 

「でも・・・フフフ・・・」

ダイスケが思い出し笑いをした

「何?何?大ちゃん、どうしたの?」

ハンドルを握りながらヒロユキはダイスケの方を見る

「危ないよ、ヒロ・・・・じゃなくて  パパ?」

パパ・・・と言われて自分の顔がだらしなくなってくるのが分かった

「止めようよ・・・恥ずかしい。」

「ねぇ?ヒロ  ボクね、今何も怖いものは無い。ココに『守るべきもの』がいるってこんなに強くなれるんだね」

ダイスケは愛しげにそっとお腹を撫でた

「だから、お母さんって強いんだ    大ちゃんもすでにお母さんの顔してる」

ヒロユキは突然車を路肩に止めた

「ヒロ?」

「お腹・・・触っても良い?」

「まだペチャンコだよ」

「だってさ、大ちゃんばっかり話しかけてさ・・・オレの声も覚えてもらわないと不公平じゃない」

ヒロユキの訴えかけにダイスケは笑いを堪えられなかった

「触っても良いよ。でもさ、パパの声はちゃんと聞こえてると思うけど」

「いいの・・・いいの・・・。」

ヒロユキの手がお腹に触れる  

それだけで心地良い暖かさを身体中に感じた

「聞こえますか〜〜?パパはココにいますよ」

−−−−−オレはココにいて君が生まれるのを待っているよ

−−−−−オレ達が乗り越えなければならない事は山ほどあるけど

−−−−−すべては愛する大ちゃんと君の為に頑張るからね

 

ヒロユキは携帯を取り出すとアノ人に電話をした

「・・あ?アベちゃん・・・うん・・・今日はもうスタジオに行けなくなった。  ゴメン、色々あってさ。

 今夜、アベちゃんの部屋に二人で行くよ・・・うん・・・二人で・・・

             話したい事があるんだ             」

「やっぱりさ・・こう言う事はスタジオとか事務所じゃなくてちゃんと話さないとね」

携帯を切ってから、また車のエンジンをかける

ヒロユキは部屋に戻ってダイスケの身体を休ませてあげたかった

また・・・夜になったらアベと闘わなければならない

「うん・・・そうだね、きっとビックリするんだろうな・・・その前に怒られるかな?」

ヒロユキが苦笑いを零した

「・・・・・・多分ね」

 

 

 

************************************************************************************to be continued

 

 

またアベちゃんには悩んでもらいましょう(^^ゞ

               suika               

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