All This Heaven Too

* リクエスト内容・・・・・大ちゃんの泣き顔が見たい

 

「おっはよ〜う」

「あら?今日ってスタジオに来るスケジュールだったかしら?」

アベチャンがオレを見てからかい気味に笑った

「イヤ・・・オフなんだけどね・・・アベチャンに会いたくてさ〜〜〜」

「ありがと。  ダイスケはいないわよ」

「そうなの〜〜〜?何だ・・・」

オフ日の今日は朝からサーフィンに行き、帰りに大ちゃんのスタジオに寄った

・・・彼がそこにいないなんて・・・

「じゃあ、お休み?」

アベチャンは手にしていた資料から目をあげて答えた

「昨日、深夜に東京に戻ってきたから少しゆっくり来ればって言ったのよ。もうすぐ来ると思うけど・・・?」

「そっか・・じゃあ待ってよっかな」

「貴重なオフは無駄に過ごさないんじゃなかったの?」

アベチャンの嫌味は右の耳から左の耳へと聞き流していく

 

コーヒーを飲んだりMDを聴いたりして時間を潰していると・・・アベチャンがこっちを見ているのに気付いた

「・・・何?愛の告白?」

「ヒロ・・・事務所、こっちに移らない?」

「いきなり・・・何?どうしたの?」

「すぐには無理なのは判っているけど・・少しも考えてないの」

「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、またミュージカルの話が来てること聞いたんだね」

「やっぱり・・・スケジュール調整しようと連絡したら、チラッとそういう話が出たから

 私の思い違いなら良いんだけど・・・また歯車が違ってしまうと・・・ね?」

・・・あぁ、そうだった・・・・

大ちゃんとオレの、所属している事務所が違う事で出てくる小さなイザコザは少なくない・・・

それを一つ一つアベチャンは大きくならないようにしてくれていたんだよね・・・

その亀裂がどうにも塞がらなくなってオレ達はaccessを続けられなくなった

再始動する時一番心配していたのは、また同じ事を繰り返すのじゃないかという事

特に大ちゃんは何度も何度もアベチャンと話し合っていたっけ・・・

 

「まだ契約が残ってるし・・・大丈夫、あの頃はオレも若かったし・・・それに・・・」

バンッ!扉が乱暴に開かれてそこに大ちゃんが立っていた

「アベチャン!お金用意して!」

「ちょ、ちょっと、ダイスケ・・お金って?」

大ちゃんはオレの腕を痛いくらい強く掴んだ

「ヒロ!僕の事務所に移って来て!!お願いだから!ヒロの事務所への違約金だったらいくらでも払うから」

大ちゃんの取り乱しようは普通じゃなかった

「落ち着きなさい!まだ何も決まっていないんだから・・・そういう話が出てるって言うだけでしょう!」

「大ちゃん!違うから!」

オレとアベチャンの言う事なんて耳に入っていなかった

「だから、あっちとちゃんと話つけてって言ったよね?どうしていつもこうなるのさ?僕とヒロは一緒にいられないの?

・・・・・・・どうして!!アベチャンは何もしてくれないの!」

大ちゃんが机の上の書類を掴んで投げた瞬間、飾ってあった一輪挿しが倒れて蒼い破片を四方に飛ばした

「あ・・・」

数枚の破片が顔を庇ったアベチャンの二の腕に小さな傷を付け血が流れた

「アベチャン!大丈夫?」

「平気・・・」

 

 

アベチャンを見ようともしない大ちゃんにオレは・・・思わず頬をパシッと叩いてしまった

大ちゃんは驚きオレを見つめて・・・見る間に瞳から涙が零れる

「もう・・・二度とあんな思いはしなくていいと思ったのに・・・したくないのに・・・必死でヒロをつかまえたのに・・・

 ・・・ウゥ・・・・・・ウ・・・アベチャン、ごめんね」

「ダイスケ・・聴いて・・本当に何も決まっていないのよ。でもそう言う話が出てる事が私の力不足なのかもしれないわね」

「違うって!アベチャンが何もしていないなんて思っていないって!アベチャンがいなかったら何も始まらなかったよ

 それはオレより付き合いの長い大ちゃんが一番知っているから・・・こんな事を大ちゃんに言わせるオレが悪いんだって」

気付くとオレは泣いている大ちゃんを胸に抱きしめていた

オレの胸に顔を押し付けて泣き声を殺している大ちゃんの涙をオレのシャツが吸い込んでゆく

どんなに歯を食いしばっても嗚咽は漏れてくる、その声を聴く度にオレの心まで締め付けられる

アベチャンも涙で頬が濡れているのを見られないようにオレから顔を背けると「ダイスケを頼むわね・・・」そう告げて部屋を出て行った

何があっても弱音を吐かない、まして涙を見せる事など無い彼女が大ちゃんの一言でこんなに傷付いているんだ

 

「大ちゃん・・落ち着いた?  叩いてゴメンね、でもアベチャンにあんな言葉を言ってはダメなんだよ・・・特に大ちゃんはダメ」

オレの胸でイヤイヤをするように揺れている金の髪に口づけを繰り返した

まだ乾かないままの涙を光らせてゆっくりと大ちゃんが顔を上げてオレを見つめた

「・・・・・ヒロはaccessを続けたくないの?今の事務所がaccess続けさせないって言ったらやめるの?」

涙は目尻を伝って頬に零れる、そんな悲しそうな顔をオレはさせてしまっているんだ

きっとあの時も・・・君は黙って涙を零していたんでしょう?

「オレ・・・そんな事一言だって言ってないよ」

オレの言葉が言い終わらないうちにまた涙が頬を伝う

「前もそう言っていた・・・事務所とは関係ねーよ!・・って、でもダメだった」

「あの頃のオレはさ〜芸能界の仕組みって何も知らなかった訳よ、事務所に〃ソロも成功するよ〃って言われたらそう思ったし・・

 accessは続けさせないって言われたら〃そんなモンなのかな〃契約切れたからって言われたら〃そうなんだ〃・・・って。

 結局は世間知らず・・・だったんだね。若造だから自分の意見も通らないし。

 でも、確かに一人でやってみたい気もどこかにあったんだよね。それが大ちゃんを傷つけるとは思わずに・・・」

「今度はそうならない?」

「オレも大人になりましたから・・ あそこには拾ってもらった恩があるし、後味悪く辞めたくないんだよね、

 とっても大事にして貰ってるけど・・でも言うべき事はちゃんと言うよ、自分の事は自分で決める」

「僕の事務所に来る事はイヤなの?じゃあ・・・accessだけの事務所作ったって良いんだよ?そうする?」

「大ちゃんは可愛い顔してるけどワイルドだよね・・・新事務所マジで作りそうで怖いよ」

少し大ちゃんが笑ってくれた

「大ちゃん・・・・長い目で待っててくれない?円満に辞めていつか大ちゃんの事務所に入れて貰う日が来るかもしれないから」

「・・・ヒロ・・・もう僕の事離さない?」

「離せ〜〜って言われても離さないよ。まぁね、大ちゃんから嫌い!って言われたら考えちゃうけど」

大ちゃんはキュウとまたオレの胸にしがみついて呟いた・・・ 

「・・・嫌いなんて言うわけ無いのに・・・ヒロってイジわるだ」

顔を隠してる部分のシャツが涙を吸い取っていく・・・また泣かせちゃったか・・・

「事務所がちがってもオレ達が結びついていれば何の問題も無いでしょ?〃見えない絆〃を今ほど感じる時はないんだけどね

 大ちゃんが隣にいてくれたら例え人生最悪の瞬間だってオレは笑っていられる気がするよ」

「ヒロが人生最悪の瞬間なら僕にとっても最悪の瞬間・・・?それって・・・嫌・・・かも?」

「大ちゃん・・・・・・・・」

真面目な顔で言うオレに真面目な顔で返してくる大ちゃん・・・二人で見合わせて大笑いをしてしまった

「後でアベチャンにちゃんと謝ろうね・・オレも謝る・・オレらどれだけアベチャンに迷惑かけてるか判らないね」

「うん」

 

『離さないよ』と言葉じゃなくて、腕の強さで彼に伝えたいから細い身体を強く強く抱きしめる

『離れないよ』と言葉じゃなくて、唇の熱さで彼に伝えたいから深い深い口づけを繰り返す

 

ここは天国・・・暗い事ばかりの起きる国でも悲しい事ばかり起こる時代でも君がいればココは天国

 

 

******END******

 

 

キリ番2345を踏んでしまった(爆)流花に進呈します。

いらなくても貰え!!かなりなショートですが・・・大ちゃんは泣かせられたでしょうか?

タイトルの訳は「凡てこの世も天国も」です・・・

ぶっちゃけると「この世も天国も変わりない」って意味かな?・・・間違ってるかも?(ーー;

    アバウトでスマン(^^ゞ              suika

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