クリスマスなんていらない

 

 

大阪でのファンイベントが終わって、真夜中に自宅に着くとシャワーを浴びてベッドに倒れこんだ。

気分はすごくハイだったんだけど、明日は何も予定がなかったし、このまま眠ってしまおうとウトウトしかけた時

枕元のケータイに起こされてしまった。 だーれだよ、こんな時間に・・・。

いつもの飲み仲間の一人。 店貸切でクリスマスパーティーやってるから来ないかって・・・。

あぁ、そういえば以前そんなこと言ってたっけ・・・どうしよう・・・。

5秒ほど考えて “行く” と返事した。

なんか眠るのがもったいないような気分だったからさ。

 

 

顔見知りのマスターがいるその店は、クリスマスツリーやバラの花が華やかに飾り付けてあって、

男女取り混ぜて10人以上・・・知ってる顔や知らない顔・・・みんな出来上がってる。

オレもシャンパンで乾杯したあと、みんなに混ざって飲み始める。

ダーツをやったり、カラオケやったり・・・でも、時間が経つに連れ、ひとり、またひとりソファーに沈み始める。

 

そんな時、一人の女性が隣に座ってオレの腕に自分の腕を絡ませてきた。

『楽しんでる〜?』

オレと同じくらいの年齢に見えるその人に見覚えはなかった。

『うん、楽しんでるよ〜、え・・・と、誰だった?』

でも彼女はケラケラ笑って、名前は教えてくれそうにない。

『イブの夜にこんなとこいるってことは、現在フリーなの?』

その言葉に、ふと大ちゃんの顔が浮かんだ。 

明日は(正確にはすでに今日だが)コムロさんのイベントだって言ってたっけ・・・・。

『やーねー・・・フリーじゃないんだ?』

『え? なんで?』

オレ、今なんか言ったか?

『だって・・・今彼女のこと思い出してたでしょ? そんな顔したもん』

へぇ・・・この人、案外勘が鋭いってか・・・酔ってないのか?

『なんでこんなとこいるのよ? 彼女とクリスマスが世間の常識よ』

『そっか・・・常識なのか・・・』

オレの呟きに、彼女が笑う。

『そうよ、女の子はそういうのって拘るから』

女の子じゃないからなぁ・・・・とは言えないけど。

でも、大ちゃんはどうなんだろう。 クリスマスとかいっしょに過ごしたいって思うのかな。

『でも、仕事だから』

『へ? 彼女お仕事? キャリアガールってやつ?』

いまどき、キャリアガールっていうのかな? この人オレより年上かも・・・。

『ふぅん・・・寂しいねぇ・・・』

『・・・そうでもないけど・・・』

『あらぁ・・・そんなもの?』

『・・・だって、クリスマスに拘らなくても会いたいときに会えばいいし・・・』

うん、そうだよ。 大ちゃんだってきっとそう思ってるよ。

『今は “会いたいとき” じゃないってこと?』

『いや、そうじゃなくて何もクリスマスだからって無理に会わなくてもいいんじゃないかってことで・・・』

『だから、今は別に会わなくてもいいやってことなの?』

『え・・・?』

『だって、会いたいときに会えないなら、それは寂しいことでしょう? 

 今が寂しくないのなら、たいして会いたくないってことなんじゃないの?』

そう・・・・なのかな・・・・。

考え込んでるオレを肴に、彼女が美味しそうにワインを飲んでる。

ワインを見て、また大ちゃんを連想した。 

クリスマス・イブ、彼はどう過ごしたんだろう? 仕事かな・・・・それとも誰かとワインでも飲んだかな・・・・・誰と?

アベちゃんと数名のスタッフの顔が浮かぶ。 他に大ちゃんの友人を知らないから。

犬といっしょかも・・・・犬ってワイン飲むのかな。

酔っ払ってる大ちゃんと犬を想像したら可笑しくなった。

『あーー、また彼女のこと考えてる! やーねー・・・電話でもすればぁ? ほら、もう夜が明けてるし・・・』

彼女の視線の先にある小さな天窓が明るくなっている。 時計を見ると7時を回ったとこだった。

なんで眠くならないんだろう。 大阪での高揚した気持ちがまだ続いているんだろうか。

電話かぁ・・・・大ちゃん起きてるかなぁ・・・・。

突然、ぜんぜん電話なんてしたくない自分に気がついた。

電話じゃダメなんだ。 会わなきゃ・・・・そうだ、会わなきゃ眠れない気がする。

『帰る』

いきなり立ち上がったオレに彼女がびっくりする。

『ど・・・したの、急に・・・・あ、会いに行くんだ?』

ホントに勘のいい人だな。 彼女にしたら浮気は出来ないだろう。

オレはにっこり笑って、ありがとうと頭を下げて店を後にした。

きっと、彼女は何がありがとうなのかわかってくれるだろう。 勘がいいからね。

自宅に飛んで戻ると、身支度を整えてすぐに車で家を出る。

大ちゃんは家かな・・・・いや、スタジオか、事務所かも・・・・。

とりあえず一番近い事務所に向かうことにして、途中花屋でピンクのバラを買った。

クリスマスなんて、どうでもいいけど、大ちゃんが喜びそうだから。

事務所に近づいたところで大ちゃんに電話をしてみる。 ビンゴ!

5分で着くからと、大ちゃんの返事も聞かずにケータイを切る。

 

予告通り5分で事務所に着くと、そこには可愛い大ちゃんとうんざり顔のアベちゃんが待っていた。

バラを渡すと、案の定嬉しそうな大ちゃん。 買ってきてよかった。

『ありがとう、ヒロ。 綺麗だね〜』

いやいや、君の笑顔には敵わないよ。

『大ちゃんのほうが綺麗だよ〜』

嘘ばっかり〜・・・と言いながら照れてる大ちゃんはやっぱり可愛い。

そばで、嫌な顔してるアベちゃんは無視して、大ちゃんとソファーに座る。

『昨日のクリスマスイベントはどうだったの?』

大ちゃんの質問に、ひとつひとつ答えながら、頭の中では別なことを考えていた。

この可愛い生き物を、どうやったらここから連れ出せるのか・・・。

とりあえず、この唇は今ここで食べちゃってもいいかなぁ・・・・。

『ちょっと、コンビニ行ってくるわねっ』

アベちゃんの声にそっちを見ると、すでに出て行った後だった。

『気を利かせてくれたんだよね?』

オレの言葉に大ちゃんは、そうかなぁ・・・と首をひねったけど、こんなチャンスを見逃す手はない。

心の中で、いただきますと手を合わせて目の前のピンクのバラより美味しそうな色の唇を奪う。

考えたらもう長いことキスしていないことに気付いて、その分を取り戻すように口づけは深かくなった。

片手で大ちゃんの肩を抱き、空いてる方の手で、大ちゃん自身を服の上からそっと触ると、

大ちゃんはビクッとして、身体をずらす。

『んっ・・・ヒロ・・・ダメだよ、こんなとこで・・・』

『じゃ、どこならいい?』

大ちゃんの耳にキスすると、その唇から小さな吐息が漏れる。

『あ・・・だめだって・・・・今からお仕事なんだから・・・・あっ・・・』

耳朶を軽く噛んで抗議する。

『仕事って・・・あとどれくらいで行くの?』

『あと・・・2時間くらいで会場行かなきゃ・・・』

オレの肩越しに時計を見た大ちゃんが拗ねたように言う。

『場所どこ?』

『新高輪プリンスホテル』

・・・・・・・・・・・・・・・オッケー!

『わかった、今すぐ行こう!』

『ええっ?』

『きっと一部屋くらい空いてるよ。イブも終わったことだし』

『借りるの?』

『いやなの?』

きっと、下心ありありの顔をしているオレを見上げて大ちゃんが困ったように微笑む。

『それは・・・お仕事前に・・・・する・・・ってこと?』

『もちろん! できればお仕事後も・・・ね』

大ちゃんは一瞬ポカンとして、そのあと爆発したように笑い出した。

『もう〜〜〜、ヒロっていっつも突然なんだから〜〜〜』

『そう? でもエッチするのに予告するのも変でしょ? 手帳にメモったりして?』

すっかりツボにはまったらしい大ちゃんは涙を流して笑ってるんだけど、オレはちょっと余裕なし。

アベちゃん、どうすんのさ〜と、躊躇う大ちゃんの手を引くようにして車に乗せた。

アベちゃんには後で電話しておけばいい。 オレが怒られればいいんだから。

ボクもいっしょに怒られてあげるよ・・・・って言ってくれた大ちゃんだったけど・・・・。

 

 

その後、会場入りはきっちり1時間遅れた。 

・・・・・・・・・・・・ごめんなさい、ブレーキきかなくて。

大ちゃんの仕事あとは、自制しようと思っていたのに部屋に戻ってきた大ちゃんが

『なんか、ヒロがそばにいるって思ったら身体がふわふわしちゃって・・・ちゃんと演奏出来てたかなぁ』

なんて、可愛いこと言うもんだから、再び自制心が吹っ飛んじゃって・・・。

次の日の演奏、マジで大丈夫なんだろうか状態にしてしまった。

アベちゃんには、きっちり2発殴られた・・・大ちゃんも一発殴られてたけど。

そのあと、オレたち二人を前に吐き捨てるように言ったアベちゃんの一言に妙に頷いてしまった。

『あんた達は会うたびにクリスマス気分なんだから、クリスマスなんていらないわね』

 

------ そうだね、ヒロがいればいつでもクリスマスみたいだもんね ------

 

オレを見上げて微笑う大ちゃんに我慢できなくて、その場で抱き寄せたら・・・・・アベちゃんに もう一発殴られた・・・。

 

 

 

---------- end ----------

 

 

 

忙しいんですよ、私。 なのに寝ないで書いてます。 バカです(_ _;)

「いつか王子様が・・・・(ε)」のヒロサイドのお話です。

                          流花

 

 

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