***** selfish my sweetheart *****

 

 

 

『ディズニーランド、行こう!』

いきなり切り出した僕に、ヒロが目を丸くする。

桜の花がやっと咲き始めた春の日・・・・・僕の我儘な一日が始まった。

 

 

珍しく、二人ともオフだった。

いや、正直に言えば、ヒロがオフだって言うから、アベちゃんに頼んで無理やりオフをもらってヒロの部屋に押しかけた。


     これが最初の我儘。


もちろん、あとからツケがまわってくるのは分かってるけど・・・・・・ヒロに会いたかったから。


合鍵をくるくる回しながら、ヒロの新居に初訪問。

結局、鍵は使わずにヒロが玄関まで迎えでてくれたけどね。

多分、そうなるだろうと思っていたとおり、僕はそのままベッドに直行。

まだ昼過ぎたばっかりだよって、言ってみたけど・・・・・キスしながらの抗議はまったく効き目なし。

ブラインドを下ろしても薄っすら入ってくる陽の光のなかで抱き合うのも悪くないかな・・・なんて、最近思い始めてる。

だって、大好きなヒロがはっきり見えるから・・・・。

顎を伝ってキラキラと流れ落ちる汗の雫も、時折見せる柔らかな微笑みも・・・・。

同じように、僕の恥ずかしいとこも全部見られてると思うと、ちょっと参るけどね。

でもヒロに “ 可愛いよ ” って、言ってもらえるの好きだったりするから、そこはmerit・demeritってことで。

 

まだ荒い息を整えながらヒロの腕の中で目を閉じていた。

ヒロの胸の鼓動も早くて・・・・あぁ、なんかこれで曲が作れそう・・・・

そんなこと思ってたら、どこからか、音楽が聞こえてきた。

外かな・・・・隣の部屋かな・・・・上の部屋かも?

『あ・・・』

それは、僕の好きなディズニーの映画音楽だった。

『何? どうかしたの?』

ヒロに訊かれたときには、僕の心は決まっていた。

急に思っちゃったんだよね、ヒロとディズニーランドに行きたいって。


     これが今日2度目の我儘


『ディズニー? これから?』

頷く僕を、ヒロは呆れたような、少し困ったような顔で見ていたけど・・・・。

そう、いつもの僕なら、ヒロを困らせたくなくて冗談にしていたかもしれない。

でもさ、ヒロ・・・・たまにはいいよね、困らせても・・・・・・ねぇ、いいって言ってよ。

ヒロの腕の中から、黙って上目遣いに見上げている僕を、しばらく見つめてたヒロだったけど根負けしたように、微笑う。

『オーケー、大様のお供しましょう』

『ホント? ありがと!』

ヒロの首に抱きついて、その頬にキスをする。

『じゃ、オレ先にシャワー浴びてくるよ』

ベッドから飛び出そうとするヒロの腕を取って引き止める。

『いっしょに入らないの?』

いつもなら、いっしょに入ろうってヒロの方から誘うくせに・・・・。

『大ちゃん、ディズニーランド行きたくないの?』

『・・・・行きたいよ?』

不思議そうにしている僕の耳に顔を寄せて、ヒロが囁いた。

『いっしょにバスルーム行ったら、ディズニーに行く時間と体力は確実になくなると思うけど・・・?』

僕が慌てて手を離すと、ヒロは笑いながらバスルームへと駆け込む。

それはそれで、ちょっと魅力的なんだけどね・・・・・。

 

ヒロってば僕より先にシャワー浴びたくせに、服選びに時間がかかって用意が出来たのは僕よりあとだった。

ヒロは何着たって似合うのに・・・・・って、以前アベちゃんに言ったら鼻で笑われたっけ。

今日はTシャツにカジュアルなコットンパンツとお揃いのジャケット、ほらね、似合ってる。

車に乗って、駐車場を出ようとしたところでヒロのケータイが鳴った。

着信の名前を見て、ヒロが留守番電話に切り替える。 女・・・・だよね。

『ねぇ、ヒロ』

『ん?』

『ケータイの電源、切って』


     言っちゃいけない我儘


ほら、ヒロがびっくりした顔してる。 どうしよう、怒っちゃうかな。

『今日の大ちゃん、可愛いね』

え? どういうこと?

意味不明の言葉を吐いたヒロは、ケータイの電源を切ったのを確認するように僕に見せてからポケットにしまう。

『・・・ごめん・・・』

謝る僕の頭をポンと叩いて、笑ってるヒロ。 怒ってはいないよね。

 

土曜日だったけど、道はそれほど込み合うこともなく、比較的スムーズにパークに辿り着いたんだけど・・・・。

駐車場に行く前に通ったチケット売り場は、長蛇の列で、とても夕方とは思えない。

そして、それを見たヒロは泣きそうな顔で僕を振り返った。

『これに・・・並ぶの?』

そんな顔しないでよ、僕だって鬼じゃないんだから・・・・でも、ヒロと行きたい。

そこで妥協案を出した。

『シーの方に行こうか?』

そういえば、随分前にシーに行こうとヒロの車で出かけたことがあったっけ・・・・。

あの時も、すっごい人で、ヒロがめげて結局帰ってきちゃったんだよね。

『シーだって混んでるんじゃないの?』

多分、ここよりは大丈夫だよと子供に言い聞かせるように微笑う。

車から見る限りシーは、びっくりするくらい空いていて、ヒロも安心して駐車場へ向かった。

『よかった・・・ヒロまた帰るって言い出すかと思った』

胸を撫で下ろした僕に

『帰るって言ってもよかったの?』

ヒロが意地悪く言う。

『やだ、絶対行く!』

言い切った僕の髪に、ヒロが素早くキスをした。

『ホントに今日はどうしちゃったのかな、大ちゃん』

『う・・・・やっぱり我儘かなぁ?』

反省しかけた僕の耳に、ヒロのくすくす笑いが聞こえる。

『そうじゃなくて・・・・・ま、いいや、早く行こう?』

 

ヒロの分もチケットを買って、二人でゲートを潜る。

それだけで、僕は嬉しくなっちゃうんだけどね・・・・・・・ヒロは?

大きな地球のモニュメントをじっと見上げたあと、振り返って僕を見たヒロが急に笑い出した。

『何? 何かおかしかった?』

『大ちゃん、子供みたいな顔してるよ』

・・・・どんな顔?

なんだか、今日のヒロは僕のわからないことでよく笑う。

でも、いいや。 ヒロが笑ってくれるならなんだって。

『さてと・・・・・ヒロは初めてだからグルッと一回りしてみる?』

 

ヒロと並んで歩くのがこんなに楽しいって忘れてた。

最近は、会うといっても室内が多くて・・・・・二人っきりで外を歩くなんてあまりなかったから・・・・・。

そう、ディズニーランドじゃなくてもよかったんだ。 ヒロと二人ならきっとどこでも楽しいに違いない。

 

空いてるように見えても、アトラクションはやはりいっぱいで、待ち時間も半端じゃない。

『ちょっと早いけど食事にしようか?』

僕の提案に頷きながらも、ヒロが不思議そうな顔をする。

『何か、乗らなくていいの? せっかく来たのに』

『す・・・っごく並ぶよ?』

『す・・・っごく嫌だ!』

二人で大笑いしながら、手近なレストランに入っていく。

ヒロはビール、僕はワイン。 乾杯しようって言ったのはヒロ。

『何に乾杯?』

『う〜ん、可愛い大ちゃんに?』

『え〜? じゃ、やさしいヒロに!』

自分で言って笑ってしまう。  同じように笑ってるヒロと乾杯!

 

レストランを出ると、今度はグッズを見るためにショップへ向かう。

いつものように、早足で歩き出し・・・・・あ、ヒロ・・・・・慌てて振り返ると、

ヒロが数メートル後ろで “ちゃんといるよ” って感じで小さく手を振る。

僕は安心して、またショップへ歩き出した。

なかに入ると、しばらく来ないうちに増えたものがいっぱいあって、あれもこれもと見て歩いてるうちに、

また、うっかりヒロの存在を忘れてしまう。

探さなきゃ・・・・と、振り返ったら、びっくりするくらい側にヒロは立っていて僕を見て微笑ってる。

『ごめん、夢中になってた・・・』

苦笑いする僕に、ヒロは小さく首を振る。

『いいよ、ゆっくり見てなよ。 久しぶりだって言ってたじゃん。』

『う・・・ん・・・、でもヒロ退屈じゃない?』

『オレは・・・・』

オレは? ヒロはそこで言葉を切って周りを見回すと、僕の耳元に口を寄せて・・・・

『楽しそうな大ちゃん見てるのが、楽しいからさ』

本当かなぁ・・・・・・。 でもヒロの言葉に甘えて、僕はふたつ、みっつと買い物を済ませてしまった。



店を出ると、外はもう暗くて、そろそろ水上でのショーが始まるとアナウンスが告げている。

これは、並ばなくても見れるから・・・・・と、絶好のポイント近くへヒロを引っ張っていく。

そこは、もう人がいっぱいだったけど、見られないことはないからね!と、ヒロに言ったら、また笑われた。

『ねぇ、さっきから何で笑ってんの? 僕、なんか変?』

答を聞く前に、照明が落ちてショーが始まってしまった。

煌めく照明の中、ミッキーが現れると

『あ・・・こんなところにいたのかぁ・・・』

ヒロの口から漏れたセリフに思わず笑ってしまう。

別に隠れてたわけじゃないと思うんだけどね。 

光と水のシンフォニーに見とれていたら、ヒロがそっと腰に手を回してきた。

誰かに見られたら・・・・と、周りを伺ったけど・・・・・そうだよね、誰も僕たちなんか気にしてない。

ヒロを見上げたら、やっぱり僕を見て微笑ってて・・・・・目が合った瞬間、ウインクしたヒロに

ショーを見なさいって意味で、ミッキーの方を指差したら、ヒロがポソッと何か呟いたけど音楽に邪魔されて聞こえなかった。

結局、ショーを見ている間も、気持ちの半分はヒロに向いてて集中できなかったにもかかわらず、

今まで見た、どんなショーより楽しいって思ってしまった自分に吃驚した。

 

ショーが終わって、ヒロの手が僕から離れていくのがすごく寂しくて、不覚にも帰りたいって思ってしまう。

車に乗れば、二人っきりだな・・・・とか。

『へぇ・・・この後、花火もあるんだね。 見ていくの?』

アナウンスに耳を傾けながら、ヒロが言ってくれたので我に返った僕は

『もっちろん! これは見なくちゃね』

そう言って、今度は花火の見える絶景ポイントへと歩き出そうとしたら、ヒロに止められた。

『どうしたの? ・・・・あ・・・・もう帰りたい?』

でも、ヒロの顔を見たらそんな感じではなくて・・・・

『あのさ、花火はどこででも見れるんでしょ? だったら大ちゃんの肩抱いて見られるとこがいいなって』

何言い出すんだよ〜・・・・・・とか、言いながら僕の頭の中は、すでに場所探しを始めてる。

うん、あそこなら・・・・・・花火はちょっと見えにくいけど人は殆どいないはず。

『大ちゃん、顔が企んでるよ』

そう言って笑い出したヒロに僕はちょっと拗ねてみせる。

『ヒロがリクエストしたくせに〜』

ごめんごめんと謝りながら、今日の大ちゃんは最高だねと、笑いはなかなか止まらない。

『わかんないよ〜、何が最高なの? 今日は我儘ばっかり言ってると思うんだけど・・・・』

そんな僕を引っ張り寄せてヒロがゆっくり喋りだす。

『だからね、我儘な大ちゃんも可愛いなって思ったんだよね。 それから・・・・・

 子供みたいな顔でグッズ選んでる大ちゃんも可愛かったし、ショーを見てる大ちゃんはミッキーより可愛かった。

 あの時、オレがそう言ったの聞こえなかった?』

あぁ、音楽に邪魔されて聞こえなかったヒロの声・・・・・・・そんなこと言ってたの?

『あ、企んでる大ちゃんもなかなか見ものだったし・・・・』

『企んでないってば!』

ヒロの頭を軽くはたいて・・・・・でも、それは照れ隠しだって分かっちゃったかな。

そっか、我儘でも許してもらえるの? それなら・・・・


     今日、最後の我儘


『ヒロのケータイ見せて』

手を差し出した僕にヒロが首を傾げながらポケットに手を入れる。

『電源なら切ってるよ?』

そうじゃなくて・・・・・・・受け取ったヒロのケータイに、今買ってきたばかりの小さなストラップをつける。

『あっ・・・・・』

分かってる。 ヒロがこういうのつけるの嫌いだってことはね。

『これ、家に帰るまで・・・・今夜だけでいいからつけといて。 もうこれ以上は我儘言わないから』

ケータイを返しながら上目遣いにヒロを見たら、ちょっと困ったような顔をして・・・・・・素早く、僕の髪にキスをした。

『!』

吃驚したのは僕だけじゃなくて、通りかかったカップルが目を真ん丸にして、こちらを見ていた。

 

『ごめん・・・・理性が焼ききれた』

って・・・・・・ええ〜〜〜? わかんないよ、僕が何したの?

文句を言おうとした僕の口をヒロの人差し指が止める。

『花火を見たいなら、これ以上喋ってオレを刺激しないでね』

 

わけが分からないまま、ヒロに肩を抱かれて見た花火は、とても綺麗だった。

ヒロが隣にいてくれれば、どんなものでもステキに見えるのかもしれない。

 

・・・・・そして、僕のポケットには、ヒロとお揃いのストラップをつけたケータイ。

これは、ヒロには内緒。

 

 

一夜の魔法がとけたって、いつかストラップがなくなったって、幸せな想い出はずっと消えないよね・・・・・・きっと。

 

 

 

 

---------- end ----------

 

 

 

お粗末様でした (^_^;

せっかくシーに行ったんだから・・・・・と、suikaと書いてみましたが・・・・・甘っ!

自分で書いてて、どーよ?って思ったわ(苦笑) 虫歯になりそうだ・・・・(-_-;

ま、どこに行ったってイチャイチャしてる二人ってことで・・・・ははは・・・・。

                                 流花

 

 

 

 

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