さくら色の夢







桜が満開。 

テレビからはそんなニュースばかりが流れてくる。

お花見にでも行こうかな。 やっぱり行きなれた浅草かな。

ワンコもいっしょに・・・・と考えて、髪の茶色い二本足のワンコを思い出す。

お花見に行かない?って、もし誘ったら、どうするだろう?

きっと微妙な顔でこう答えるんだ。

あ〜、いいんじゃない?

行きたくなんかないくせにね、だからその後きっとこう付け足す。

オレと大ちゃんのオフ時間がちょうど合えばね

そんな簡単に合うわけないじゃん、てか合わせる気ないでしょ?

僕と二人でそういう人ゴミに出かけるのって嫌がるよね。

もし、僕ら意外、誰もいないとこなら、お花見も喜んでくれるのだろうか?

そんな出来もしないこと考えたってしょうがないけど。


ふっと小さくため息をついて、僕はリモコンでスイッチを切った。

『仕事しよーっと』

隣の部屋にいるスタッフに聞こえるくらいの声を出して、ソファーから立ち上がる。

『えぇ〜? 仕事ぉ?』

すぐ後から聞こえた声に、びっくりして振り返ると見慣れた笑顔。

『ヒロ?! どうしたの? 来るなんて言ってたっけ?』

嬉しくて抱きついてしまいそうな気持ちをなんとか抑えて・・・・でもきっと顔はにやけてる。


『予告なしで来ちゃ迷惑?』

『そんなこっ・・』

そんなことないよ・・・と言い終わらないうちにヒロに抱きしめられた。

ヒロの肩越しに見ると、いつの間にか隣の部屋との境の扉はきっちり閉められていて

さすがヒロ、そういうとこは抜かりないよね。

僕も安心してヒロの背中に腕を回す。


『仕事するの?』

聞きながら耳朶噛むのは反則だよ。

ヒロの悪戯な指が背中を這う感覚に、思わずぞくっとする。

なんて答えたらいいのか迷ってるうちに唇が塞がれた。

鍵のない扉を開けて、スタッフが入ってくるのではとドキドキしながらも、ヒロの甘い舌が離せない。


『ねぇ・・・仕事するの?』

頭がボッとするくらいの深い口づけで息の上がっている僕に、ヒロは意地悪く囁いてくるから

悔しまぎれに、ヒロのほっぺたを軽くつねってやった。

『いたたっ・・・ヒドイなぁ、大ちゃん』

そういいながらも、僕が仕事をしないことを確信したのか、ヒロは楽しそうに笑ってる。

いや、仕事をしないんじゃなくて、出来ないようにしたんだよ、ヒロが!

『で、オレの部屋? 大ちゃんのとこ?』

コ・ノ・ヤ・ロー、やる気満々だなっ。

まぁ、僕の身体も非常にヤバイ状態ではあるんだけど、素直になれないのが僕の悪いとこ。

『う〜ん、お願いきいてくれたらね』

ヒロの胸に凭れかかって、甘えた声を出してみる。

『なぁに? なんでもきいちゃうよ・・・・ひとつだけなら・・・』

『なんでひとつなの? 昔から願い事って三つじゃなかったっけ?』

見上げた僕に、ヒロは相変わらずの笑顔。

『あぁ、アラジンの魔法のランプみたいな?』

『そうそう』

『オレのランプは省エネタイプだから』

何言ってんだか・・・とか、思いつつ笑ってしまう。

『で、願い事はなんですか? ご主人様』

お尻を撫でながら、そんなこというランプの精なんていないって。

ヒロの手をパシンと叩いて、身体を離すときっぱり一言。

『お花見に行きたい』

『・・・行けば?』

ちっが〜うっ!

『そうじゃなくて、ヒロと行きたいの!』

あぁ・・・と、やっと理解したらしいヒロが、ちょっと困った顔をする。

ほらね、思ったとおりだ。

『それは・・・桜が見たいの? それとも夜店に行きたいの?』

『へ?』

そうくるとは思わず、不覚にもマヌケな声を出してしまった。 

えっと・・・・

『両方・・・・かな』

ちょっと遠慮勝ちに言ったのに、ヒロはやれやれと言った感じで首を振ると胸に片手を当てて、僕の足元に跪く。

『願い事はひとつでございます、ご主人様』

片膝ついた姿がさまになってたものだから、思わず見惚れちゃったけど・・・・・・・なんだって〜?

『ええ〜? コレでふたつなの〜?』

こんなのひとつだよ〜とごねてみせても、意地悪なランプの精は、絶対に首を縦に振ってはくれない。

『じゃあ・・・桜だけでいい。百歩譲ったんだからなっ! 絶対、見に行くからね!』

膨れっ面の僕とは対照的な笑顔でヒロが立ち上がった。

『いいよ。今から行く?』

『へ?』

しまった、本日二度目のマヌケ声。

『だって・・・』

今からヤルんじゃないの? とはさすがに返せず口ごもる。

『お花見に行きたいんでしょ? それとも・・・楽しいことする?』

そう問いかけるヒロの顔が、とてもエロティックで思わず楽しいこと≠ニ答えそうになって、ぐっと踏みとどまる。

『楽しいこととお花見は関係ないでしょ?』

騙されないからなっ。

『もちろん、関係ないけどさ、桜なんてすぐ散っちゃうんだから今夜行かなきゃもう機会はないよ?

 だったら、楽しいことは我慢しなきゃね?』

う・・・・・そう来たか。 

いいさ、エッチなんて別に今夜しなくても・・・・って、言いかけた僕をヒロの腕が優しく包みこむと、

その熱い唇を僕の首筋に這わせて、囁く。

『そんなにお花見に行きたいの?』

こくっと頷くと、耳に辿り着いた唇がまた囁く。

『オレよりもお花見が好き?』

そんな聞き方、卑怯だよ。

そして、ヒロの指はもっと卑怯に僕の弱い背中を刺激する。

『ヒ・・ロ・・』

『ん?』

ひどく優しい声だけど、指も唇も、その動きを止めてはくれない。

『・・・お・・花見行ってから楽しいこ・・・とって・・選択・・はないの?』

いい案だと思ったんだけど・・・・

『そんな時間あるの?』

そうでした・・・仕事をちょっと抜けることは出来ても帰ってこなかったりしたら殺されるかも・・・。


んっ? 僕の腰に当たってる、この硬いものって・・・・・ヒロの、だよね。


・・・・・・・・・・・も〜〜〜〜、しょーがないなぁ〜、こんなの、放っておけないよ。

いいもん、お花見なんて、最初から期待してたわけじゃないしさ・・・。

『ヒロ・・・僕の部屋、行く?』

『うんっ!』

思いっきり頷く満面笑顔のヒロを見たら、拗ねてた気持ちもどこかに吹き飛んでしまった。

『じゃ、待ってて。みんなに断ってくるから・・・』

苦笑いしながら離れかけた僕を、ヒロの腕が引き戻してギュッと抱きしめられた。

『大ちゃん、ホント愛してる』

今更な言葉だけど、気持ちはすごく伝わったから僕も力いっぱい抱き返す。

『うん・・・僕も・・・』



お花見は、また来年の楽しみに取っておくよ。

いつかピンクの花びらの下をヒロと歩く・・・・なんて夢を見てるのも好きだから。

夢の中のヒロは、文句も言わないし、手も繋いでくれたりするんだ。


でもね・・・・


どこへも連れて行ってくれなくても、今僕を抱きしめてくれてるヒロの方が100倍好きだよ。


そんな想いも込めて、僕はヒロの胸に頬を摺り寄せるようにして、もう一度抱きしめた。








---------- end ----------





すみません、いつも通り甘々な二人でございます。
ほぼ、ず〜〜〜っと抱き合っております(^_^;
大ちゃん、お花見よりソッチのがいいんだよね? 正直になろうぜ〜(笑)

                              流花


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