★ ライバル ★

 

ヒロは犬が苦手だ。

いや、正確に言うなら大型犬は苦手だ。

子供の頃、友人が犬に咬まれたのを目の前で見て以来、トラウマになっている。

だから 出来る限り犬には近づかないようにしている。

普通に生活していれば、犬を避けて生きていくことは可能だし、今までもそうしてきた。

なのに よりによってダイスケは大型犬を2匹も飼っている。

仕事の絡みだけなら徹底的に避ければいいし、相手にもそう伝えればいい。

現にダイスケはヒロに気を使って、彼が来る時は犬を別室に閉じ込めてくれている。

おかげで仕事はスムーズに進んでいるし、なんの問題もない。

仕事だけなら・・・・・だ。

しかし、神様のいたずらなのか ダイスケとは仕事だけの付き合いではなくなってしまった。

このままでは彼の部屋にも行けない状態で、非常に不便を感じている。

それなら犬に慣れればいい。 言うは易し行うは難し。

犬の匂いだけでお腹いっぱいになってしまうヒロにそれは難題だった。

ダイスケは、別に無理に慣れなくても・・・・と笑っているが慣れて欲しいと思っていることは痛いほどに伝わってくる。

“あなたのことは愛しているの。でもお義母さんは好きになれなくて” という嫁の心境だ。

いっそ催眠術か何かで犬好きにしてもらおうかとさえ思う。

 

RRR・・・・・

 

“ヒロ?”

『大ちゃん、どうしたの、仕事中じゃないの?』

“うん、休憩中。 今いい? もう寝るとこだった?”

『いや、大丈夫だよ。 何かあった?』

“別に・・・ヒロの声が聞きたかっただけ・・・”

そう言っといて大爆笑はやめようよ。

『大ちゃ〜ん?』

“ごめん・・・慣れないこと言ったもんだから・・・・こういうのはヒロが得意だよね”

『得意って・・・・・・。 じゃ もう寝るとこ?って、もう一回訊いてくれる?』

“?・・・・・・もう、寝るとこ?”

『いや、君の声を聴かなきゃ眠れないよ』

“はははははは・・・・・・”

『はははって・・・・・傷つくなぁ・・・・』

“違うよ、嬉しくて! でも声を聴いたからって 今寝ないでね”

『まさか・・・・。 で、今日は何の仕事してるの?』

“ん?・・・・・・・・・・・・・・・・ニシカワくんのアルバム曲作ってる”

ん?・・・・のあとの長い(間)が気になる。

『ふぅ〜ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう?』

こちらも(間)で返してみた。

“曲作ってるだけだよ!”

思ったとおりのリアクションが返ってきて、ちょっと笑ってしまう。

『わかってるって。 で、彼はやさしい?』

“ヒロ・・・・・・・・”

あ、声が怒ってる。

『冗談だよ。 ちょっとライバル心がね・・・・』

“ライバル? ニシカワくんと?”

『同じボーカリストですから』

“あぁ・・・・・・、でもヒロのが上手いよ”

『何が?』

“う・た!”

今 歌以外のこと想像したね?

『ありがとう。 そう言ってくれるの大ちゃんだけだよ』

“そんなことないって! ヒロすごく綺麗な声だし”

褒め殺し? 大ちゃんに褒められるのはとても嬉しいけどね。

『まぁ、歌うしか能のないボーカリストですから』

“何言ってんの、詞だって書けるし・・・・曲だって作れるでしょ?”

『あぁ・・・・・曲ねぇ・・・・』

“ソロの曲、出来た?”

それを訊く?

『大ちゃんみたいに才能有り余ってないから・・・・』

“なに言ってんの。 真剣に作ろうとしてないでしょ?”

『はは・・・・それもある・・・かな。 でも難しいよ、ホント』

“そういうもんかなぁ・・・・・・・”

電話の向こうで首を傾げているのがわかるような大ちゃんの声。 

『大ちゃん、歌詞書けって言われたら?』

“あ・・・・・難しいね。 そっかぁ、そうだね・・・・・・・あ・・・”

『大ちゃん?!』

何 色っぽい声出してるの? 誰かいるの?

“ご・・ごめん、アニーが舐めて・・・”

どこを!

“ここんとこ、僕が散歩に行ってないから催促かな?・・・あ、こら、だめだって・・あぁ!”

あぁ!って。 もう・・・・そんな声だすなって!

“ごめんね、ヒロ。 えっと何の話だっけ?”

『忘れてくれていいよ』

“え?・・・あ、作曲だ”

『だから、忘れて。 なんとか頑張ってみるよ』

“う・・・ん・・・・・・・・僕が作ってあげられるといいんだけど・・・”

『はは・・・それじゃA*Sと変わらないじゃん』

“だよね〜・・・・・じゃアレンジだけでも・・・”

『だぁいちゃん?』

“う・・・・・・わかってます。 ヒロのソロ活動には口も手も出しません”

そう言いながらも声が拗ねてるよ、大ちゃん。

『ありがとう、大ちゃんの気持ちはすっごく嬉しいよ』

“でも・・・何も出来ないけどね・・・”

そんな寂しそうな声出さないで、今は抱きしめてあげられないんだから。

『そんなことないよ、励ましてくれるでしょ?』

“頑張れって?”

『う〜ん、出来たら「愛してるよ、ヒロ。 頑張ってね、chu!」ぐらいは言って欲しいな〜』

“・・・・・・・・・・・・”

『誰かそこにいるの?』

“いないけど・・・・・・は・・恥ずかしくない? それ・・・”

『そう?俺は言えるけど』

“ヒロならね〜・・・・・後半だけじゃだめ?”

大ちゃんがこういうの苦手なのは知ってるけど・・・・・・・だ・か・ら、言わせたいんだよね。

『頑張って欲しくないんだ?』

“違うって!・・・・・・・・・・・・・・・・え・・と・・・・”

ほら、言って。 頑張って曲作るからさ。

“あ・・・・愛し・・・・ああ!もう!アルってば、だめ・・・”

 

Pu-Pu-Pu-

 

無常にもダイスケの声はそこで途切れた。

ヒロがその時(あの、クソ犬〜〜〜)と悪態をついたことには目を瞑ってもいいだろう。

彼の現在のライバルはニシカワよりもお犬様であることは明らかだ。

切れた携帯を睨んで、ヒロは大きく溜息をついた。

ヒロの犬嫌いは当分治りそうもない。

 

----- end -----

 

なんだかな〜(^_^;

二人の間の犬ってホント邪魔なんだよね〜。

犬に恨みはないけどね・・・・・ヒロはどうだろう?(笑)

ま、番外編なんて こんなもの。

え?本編もたいしたことないって?

ははははは・・・・・・・・・・・・・・(T▽T)

流花

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