〜 pillow talk 〜






深夜をとっくに回っている部屋の中、

そこだけは、冬の夜とは思えないほどの熱に包まれていた。

『あっ・・・あぁ・・・』

喘ぎというより、もう殆ど掠れて溜息に近い。

『ヒ・・・ロ・・・もぅ・・・だめ・・・』

助けを求めるようにヒロユキの背中にすがり付いても、動きを止めてくれるわけではなく

『ね・・・ヒロ・・・てば・・んっ・・・』

哀願の声も、その唇に封じられる。

今夜は何度いかされたのかと、ダイスケは朦朧とした頭で考える。



二人とも翌日がオフだと決まった時、チラリとダイスケを見たヒロユキの瞳の色でこうなるだろうことは予想していた。

仕事の関係で、もう1ヶ月近く身体を重ねていなかったし、ダイスケだってヒロユキが欲しかった。

その気持ちはヒロユキ以上だったかもしれない。

ただ、ヒロユキに比べて、ダイスケの仕事は前日までびっしりとハードなものだったから体力がついていかなかった。

もうこれ以上は無理だと何度言っても、ヒロユキは微笑って聞いてくれないし、

欲しい気持ちも確かにあって、強く拒むことが出来ないまま、快感に流されていたのだが・・・・限界だった。

『ヒロッ・・・や・・・ってば・・・・・ヒ・・・ロの・・・・バカッ・・・』

その瞬間、ヒロユキが自分の中で弾けたのを感じたダイスケの両腕が崩れるようにシーツに落ちた。



荒い息のまま、ダイスケの首筋に顔を埋めていたヒロユキが、くつくつと笑っている。

『・・・ヒロ? 何笑ってるの?』

訝しげに訊ねるダイスケの声は掠れて、それが妙に艶めいている。

『喉・・・痛む?』

それには答えないで、ヒロユキが心配そうに聞いてくるのに、ダイスケは小さく首を振って否定した。

『だいじょぶ・・・・で、何がおかしいの?』

ヒロユキは、ゆっくりと身体を起こすと、ダイスケの顔を見下ろして、また微笑う。

『だってさ・・・・バカって・・・・オレも経験少ないほうじゃないと思うけど、バカでイッたのは初めてだよ』

そう言って笑うヒロユキの声は、とても心地良いのだけれど、ダイスケの心に小さく引っかかる

経験少ないほうじゃない≠チて言葉。

今更、そんなことを気にしても仕様がないけど、ひとつだけ聞いてみたいことがあった。

ヒロユキがなんと答えるのか簡単に予想はつくのだけれど、それでも一度聞いてみたくて・・・・

でも、いつも聞けなくて・・・・。


『・・・女の子とさぁ・・・エッチするのって気持ちいいでしょ?』

いきなり何を言い出すのかと、ダイスケを見下ろすヒロユキが首を傾げる。

『なのに・・・どうして男の僕とエッチしてんのかなぁって・・・』

『大ちゃん・・・』

『あのっ・・・わかってるよ、好きだから・・・だよね? でもさ、やっぱり不思議なんだよ。

 僕とは仕事のパートナーって関係でいて、恋愛はちゃんと女の子とすればいいのにって・・・。

 その方が何も問題なくて、いろいろうまくいくんじゃないかなぁって思ったり・・・』

そこまで言ったところで、ダイスケはヒロユキの険しい顔に気がつき、後の言葉を飲み込んだ。


バカなことを言ってるのはダイスケにもわかっている。

恋愛なんて思い通りにはいかないものだし、なら女の子にするよなんて、

もしヒロユキに言われたら死にたくなるかもしれない。

でも、ヒロユキがもともとヘテロなのだということが心の隅に引っかかっていて

いつか、女性のもとへ行ってしまうのではないかと、たまに不安になることがある。

そんな不安は男女間の恋愛にだってあることなのに・・・・・。

変なことを聞いてヒロユキを怒らせてしまったかもしれないと謝ろうとしたダイスケに、

ヒロユキの思いもよらぬ言葉が降ってきた。

『それは・・・オレと別れたいってこと?』

『ん・・・えっ?』

あまりにも意外で、ダイスケはとっさに返す言葉が見つからない。

『オレに女と付き合えって・・・そういうことじゃないの?』

怖いくらい低い声のヒロユキに、ダイスケは慌てて首を振る。

『違うって! そんなこと言ってないよ!』

強く否定したつもりが、思うように声が出なくて、曖昧な感じになってしまった。

『いろいろうまくいくって・・・今はそうじゃないってこと? 何がいけない? オレなんかしたかな?』

眉間の皺を深くしたヒロユキの問いかける声に、さっきまでの甘さはどこにも残っていない。

どうしてこんなことになってしまったのか、わからないまま、ダイスケは大きく首を振り続ける。

『ごめん、違うんだ、そんなんじゃなくて・・・・』

なんて言えばいいのだろう・・・・ほんの少し、自分に自信がなかっただけで・・・・

ヒロユキを女の子に取られてしまうのではないかという不安が言わせた戯言なのだとは、ちょっと言いづらい。

どうやって説明すればいいのかわからぬまま、ダイスケはヒロユキの首にしがみついた。

『バカなこと言ってごめん・・・ヒロが好きだよ』

耳元で囁くと、ヒロユキが安心するように小さくため息をついた。

『ヒロが別れたいって言っても、絶対別れてなんてやらないから・・・』

さっきよりも、もっと小さな声で告げた言葉にヒロユキは嬉しそうに頷くと、微笑んだ唇のまま、

ダイスケの想いごとその唇を包み込む。

魂まで吸い取られそうな深い口づけに、もう言葉はいらなくて・・・・。

体力なんて、一欠片も残っていなかったはずのダイスケの身体の奥に、また火が点る。

別れる前に死んじゃうかも・・・・なんて考えがチラッと横切ったけど、

それはそれで本望かも・・・と、熱い波に身を任せた。






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end ----------






すみません、久し振りのUPがコレかよっ!という声が聞こえてきそうな・・・・・。

イチャイチャしているだけの二人です・・・・・(いつもだけど)

今、いっぱいいっぱいの私ですので、これで勘弁してください〜m(_ _;m

                                         流花



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