*** monologue【H】 ***

 

 

“ ヒロ・・・・ ”

誰かに呼ばれたような気がして目が覚めた。

薄暗がりで見る枕元の時計は、まだ夜明けが遠いことを示している。

静かな部屋の中・・・・聞こえてくるのは隣で眠る彼の寝息だけ・・・。

見慣れた金色の髪が、枕に埋もれている。

可愛いな・・・・と、素直に思う。

自分より年上の、それも男に対して抱く感情ではないとわかっているけれど・・・・・やっぱり可愛い。

さっきまで、オレの腕の中で小悪魔みたいだったのに・・・・寝ていると天使だよね。

天使・・・・・・男が天使に見えるって・・・・かなりイカレてるよな。

自分が、男を抱けるとは思ってもいなかった・・・・・・・でも抱いている。

 

“ なぜ? ”

 

答えはとても簡単だ。

“愛しているから”

愛しているから、天使に見えるんだよ。

わかっているのに・・・・今は、とってもよく理解できるのに・・・・。

それなのに、朝が来て明るい陽の光に晒されるとオレの中に違う感情が湧き上がる。

 

コレハ愛ジャナイ。

 

彼のことはとても尊敬している。

その彼がオレを求めているから、それに応えただけなのだ。

だから、彼を抱いたのは決して愛しているからじゃない・・・・・と。

 

詭弁だ

 

もう一人の自分が嘲笑う。

常識に縛られて、見えているのに見えない振りをしている臆病なオレを嘲笑っている。

でも陽の光は眩しすぎて・・・・・。

肉親の気持ち、友人の気持ち、オレを愛してくれるすべての人の気持ちが・・・・怖い。

だから、自分の気持ちに嘘をつく。

彼の頬に、髪に、その唇に触れたいと想うこの気持ちは愛じゃない・・・・と。

 

 

『・・・・ヒロ・・・・』

眠ったまま、彼が呟く。

オレの目を覚ましたのはこの声だったんだろうか。

 

ねぇ、オレの夢を見てる? 

夢の中のオレはやさしい?

誰に憚ることなく、愛していると言ってくれてる?

 

『大ちゃん・・・・』

小さく呟いて、そっと彼の手を握ると、ふっと・・・・彼が微笑む。

天使の寝顔のまま、蕾がほころぶように・・・・。

 

ふいに彼の顔がぼやけて・・・・・・・涙が頬を伝っていた。

泣いても何も解決しないのに・・・・でも零れる涙は止まらない。

どうすれば強くなれるんだろう。

いろんなものから、彼を守ってあげたいのに・・・・・守られてるのは、いつもオレ。

そして、彼を泣かせているのも・・・・・・・。

 

素直に彼を愛していると言える、この夜が明けなければいい。

ずっと天使の寝顔を見ていられたなら・・・。

なのに我儘なオレは彼の笑顔が見たいと思ってしまう。

その瞳を開いてオレを見つめて欲しい・・・・と願う。

 

こんなオレを彼は待っててくれるだろうか?

いつか、待ちくたびれて去っていってしまうのだろうか?

 

ねぇ、大ちゃん、待っててくれる?

いつか、心のそこから “愛している” と言えるその日を・・・・。

 

 

 

 

---------- end ----------

 

 

 

きっと大ちゃんは待っててくれるよ・・・・・ね?

流花

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