この作品はDistance》と、ちょっぴりLinkしていますので、
未読の方は、先にそちらを読んでいただけたら嬉しいです♪



*** 短すぎる永遠 ***






「んふふ・・・」

一人の部屋で笑っている自分に気が付いた。

別に変なこと考えてたわけじゃなくて、昨日ヒロからもらったネックレスを付けてて漏れた笑い。

誕生日とかじゃなくて大ちゃんに似合いそうだったから買ってきた≠ニ言って

なんでもないことのように、バッグから取り出してくれたのが嬉しかった。

アクセサリーを見てて、僕のことを思い出してくれたんだなぁって。


今まで付けてたネックレスを仕舞おうと引き出しを開けて、ふと、その奥にあるモノに気が付く。

「あ・・・」

ちょっと躊躇ってから僕は、それを手に取った。

小さなスカーフに無造作に包まれていたのは、シルバーのブレスレット。

暁人からの最初で最後のバースデープレゼント、いや、正確には2度目。

最初もらった時は、まだ恋人と呼べる関係じゃなくて、ワンコの写真でも入れてよ≠チて、

オシャレな写真たてをくれたんだけど、アレどこにやったっけ?

自分の冷たさに、ちょっと呆れる。

このブレスレットだって、もらった時は本当に嬉しくて毎日つけてたんだよなぁ。


そういえばヒロに初めて好きだと言われたあの日だって、これをつけてた。

あんなカタチで家を飛び出して、その夜は一睡もしないでヒロの部屋で二人、取りとめもない話をしたっけ。

ヒロは僕の隣で、ずっと手を握っててくれて・・・・

朝方、少し眠くなってヒロの肩に凭れかかった時の、幸せな気持ちは今も色あせていない。


翌日、部屋に戻ると暁人も彼の持ち物も、すべて消えていた。

まるで、そこには最初から僕しかいなかったみたいに・・・・・・・最後まで優しい暁人。

僕は彼の優しさに、少しだけ涙を流した。



そんな暁人も、さすがに僕が身に着けていたものまでは処分できなかったね。

僕は手に取ったブレスレットを見て、ため息をつく。

「どうしよう・・・」

想い出の品ではあるけれど、さすがにつけるわけにはいかないと仕舞っておいたものだった。

かといって、捨ててしまうのも悪い気がして・・・・。

僕は、しばらくブレスレットと睨みあったすえ・・・・・何も見なかったことにして、再び引き出しの奥へと突っ込んでしまった。




『お返し〜? そんなことする必要ある〜?』

ヒロからのプレゼントに何かお返しがしたくて、仕事の合い間に車を出してってアベちゃんに頼んだらこの返事。

そりゃね、ヒロがそんなこと望んでるとは思わないけどさ・・・・なんかしたいんだもん、いいじゃん!

ブツブツ言いながらも連れてきてくれたお店で買い物を済ませ、外に出ると小雨が降っていた。

一足先に出たアベちゃんが車を廻してくれるのを、店の前でボンヤリ待っていて、ふと視線を感じる。

首をめぐらせた先に、思ってもみなかった人がこちらを見ていた。


暁人・・・・・。


あの日以来、一度も会うことがなくて、もう一生会うこともないのだろうと、なんとなく思っていたのに・・・。

どう対応していいかわからず、ただ突っ立っているだけの僕に向かって暁人が微笑みながら近づいてくる。

『久し振り。 元気だった?』

別れてから、まだ2年もたっていないのにひどく懐かしく感じる。

『あ・・・うん。 アキトも元気そうだね』

僕も微笑って答えたけど・・・・そのあとの言葉が続かない。

暁人も同じなのか、僕の隣に来たものの黙って降る雨を見上げている。

その横顔を見ながら、僕は何か違う感じがしていた。

しばらく会っていないからだけではなくて、どこか感じが変わったような気がする。

なんだろう・・・・前と何が違うんだろう。

『ヒロさん・・・・とは、うまくいってる?』

いきなりでビックリしたけど、とても明るく聞いてくれたから、僕もさらっと答えることが出来た。

『うん』

『そっか・・・よかったね』

『うん』

なんかうん≠ホっかりだな・・・・・僕も思い切って聞いてみるか。

『アキト・・・・・恋人は?』

すると、暁人はちょっと困ったように俯いて苦笑いしている。

いない・・・・のかな。 まずいこと聞いちゃったのかな。

『・・・・ごめん、僕・・・』

謝りかけた僕に、暁人が慌てて首を振る。

『違う違う、そんなんじゃなくて・・・』

何か言いかけた暁人の声をかき消すようにクラクションが鳴った。

アベちゃんが来たのかと通りを見渡すと、藍色のベンツが僕らの前にゆっくり滑りこんできた。

『あ・・・・もう行かなきゃ・・・・』

暁人が、その車に向かって小さく手をあげる。

あぁ、暁人の友達なのか。

『うん』

また同じ言葉しか出てこない僕を、暁人がクスッと笑って

『いるよ、恋人』

そう言って、ベンツを指差した。

え? それに乗ってるの?

思わず、運転席を見てみたけど暗くてよくわからない。

車に乗り込むときに振り返った暁人は、僕に向かってウインクするとニッと笑ってドアを閉めた。


あっという間に走り去るベンツを見送ると同時に、アベちゃんの運転する車が目の前に止まる。

『ねぇねぇ、今の誰? 知り合い?』

車に乗るなりアベちゃんに聞かれ、僕は笑いながら暁人だと言うと

『へぇ・・・わからなかったわ。 髪型とか服の趣味とか変わったのね〜』

と、驚いているのを見て、やっと思い当たる。

そうか、服の感じがまったく違ってたんだ。

そういえば、髪も以前より長かったような・・・・やっぱり、恋人の好みなのかな? 

合わせるなんて可愛いとこあるんだなぁ。




『前はさぁ、ジャケットとか、パンツも大人っぽい感じが多かったのに、ぜんぜん違うんだよ。

 なんかラフなジャケットで、そういえば中に着てたシャツも襟元のデザインが可愛くて・・・』

スタジオに戻ってから、暁人のことをよく知ってるスタッフ相手に喋っていて、アベちゃんに笑われた。

『何言ってんのよ、私が言うまで、そのことに気付かなかったくせに〜・・・・あ、ヒロ、おはよう』

いきなりアベちゃんが立ち上がって、手をあげた。

ビックリして振り返るとサングラスをかけたヒロが、おはようと挨拶を返す。

ミーティングで来ることにはなっていたけど、予定の時間より随分早い。

『ヒロ、早かったね〜』

『うん、なんか盛り上がってるね。何の話?』

暁人の話、なんて言えなくて一瞬言葉に詰まってたら

『アキトくんの話。 さっき会ったのよ』

アベちゃ〜ん、さらっと言わないでよ、ヒロの前ではあまりしたくないんだから・・・・。

『そうなんだ? 元気だった?』

『私は話してないんだけどね、元気だったみたいよ、ね?』

そう言って僕を見るから、頷くしかない。

ヒロは、たいして興味もないみたいで、ヘェ・・・と流してジャケットを脱いでいる。

ヘェ・・・って・・・・なんだかなぁ・・・・。

妬いて欲しいとは言わないけど、あまりに無反応ってのも、ちょっとショックかも・・・。

それともスタッフの手前、冷静なのか・・・・サングラスに隠れてヒロの真意はわからない。

『でもねぇ、ダイスケったらアキトくんの服やら髪型が変わってたことにぜんぜん気付かなかったのよ〜』

『なっ・・・ぜんぜんってことはないって! ちょっとは・・・・』

気付いたような、気付かないような・・・・声が尻すぼみになっていく僕を鼻で笑いながら

アベちゃんはヒロの脱いだジャケットを受け取ると、その耳元に何事か囁いた。

するとヒロが小さく笑う。

『なに? ヒロ、何言われたの?』

『ん・・・あとで・・・ね』

な〜んでさ! ここでは言えないこと?

と、駄々をこねるわけにもいかず、ここはおとなしく引き下がってミーティングを始めることにした。




『もう帰らないと・・・』

『えっ、泊まれないの?』

ミィーティングも終わって、やっと二人きりになれたと思ったのに、ヒロの意外な一言にがっかりする。

『うん、明日早いんだ。 出来れば今夜中に帰って寝たいんだよね』

『そっか・・・仕事じゃしょうがないね・・・』

なるべく不満を顔に出さないようにと思っていたんだけど・・・・

『ごめん・・・そんな顔しないで・・・帰れなくなっちゃうよ』

そういって、僕の頬に優しく手を添えるヒロにはお見通しみたいだね。

照れ笑いする僕の瞼にヒロが優しく口づけた。

『今度は、ちゃんと泊まれるように時間とるからさ』

すまなそうに微笑みながらも、すでに片手にジャケットを掴んでいる。

・・・・ちゃんとしたキスもないの? とは言えず、でもなんとか引き止める言葉を捜している。

『あ、そうだ。 さっきアベちゃん何言ってたの?』

僕に背をみせかけたヒロの動きを止めることに成功。

『あぁ・・・アキトくんのこと?』

『アキトのことなの?』

『いや、違うけど・・・・なんか、大ちゃん、アキトくんのこと忘れてたんだよね?』

『忘れてないよ〜、ただ雰囲気が変わってたことに気付かなかったっていうか・・・』

『そうそう、だからねヒロも別れたらすぐ忘れられちゃうわよ≠チて言われた』

そういってヒロは笑ってるけど・・・・アベちゃん、ひっどいなぁ。

『忘れるわけないじゃん!』

口を尖らせる僕をヒロはただ笑ってみている。

『僕なんかより、ヒロの方が忘れっぽい感じだよね。 別れた後に僕が髪を黒くしても気付かなかったり・・・』

『そんなことないよ』

『そうかなぁ、ありそうだけど・・・』

『ないよ』

『・・・すごい自信だね』

軽い冗談のつもりだったのに、きっぱり言い切るヒロに僕は笑うしかない。

『だって・・・別れないんだから忘れるわけないだろ?』

・・・・なに言ってるんだか、この人は・・・・

そう思いながらも、嬉しくて頬が緩みそうになるのを必死で堪える。

『だからさ、もし別れたらって話でしょ』

『別れなんて永遠に来ないんだからもし≠ヘないよ』

・・・・それ、すっごく嬉しいんだけど・・・・

『ヒロ・・・・この世に永遠≠ヘないと思うよ』

精一杯の強がりにも、ヒロはまったく動じることなくにっこり笑うと、僕の頭をポンポンと叩く。

『わかった。 じゃ、大ちゃんとは別れる』

えっ!!!!!!

ビックリして見上げた僕の目にヒロの苦笑いが映る。

『100年後・・・・にね。 それならい・・・・大ちゃんっ?』

僕は、ヒロの首にしがみつくように抱きついていた。

『・・・いやだ・・・』

ヒロの口から、冗談でも別れる≠ネんて言葉は聴きたくない。

『100年じゃ足りない?』

嫌なのは、そっちじゃないんだけど僕はしがみついたままコクコクと頷く。

『じゃ・・・1000年でどう?』

『やだ、もっと・・・』

駄々っ子のようになっている僕に、ヒロは欲張りだなぁ≠ニ笑いながらギュッと抱きしめてくれた。

『大ちゃんのほうが飽きちゃうよ、きっと・・・』

そういって小さくため息を吐いたヒロの唇を、僕は自分のそれで塞ぐ。

ちょっとびっくりしたようなヒロの瞳を確認してから目を閉じると、口づけを深くする。

ヒロの舌をつかまえて絡ませて、やっと気持ちが落ち着いて離れようとしたら、今度はヒロが離してくれなくて・・・。


『・・んっ・・んんっ・・』

やっと離してくれたときには、違う意味で気持ちが落ち着かなくなっていた。

『明日の朝は、ちゃんと起こしてくれるよね?』

ヒロが耳元で囁く。

あれ? だって泊まれないって・・・・

『仕掛けたのは大ちゃんだからね。 コレの責任取ってもらわないと・・・』

僕の手首を掴んで下腹部へと導くと、コレ≠ヘ、すでに僕の手に余るくらいになってた。

『すっごく我慢して、大ちゃんに触らないようにしてたのに・・・・アキトくんの話でオレを煽ったり・・・』

・・・・妬いてくれてたんだ?・・・・

そう思ったら急に気持ちが優しくなって、無理言ってヒロを引き止めちゃいけない気がしてきて

『・・・口で・・・いいなら、ここで・・・』

僕が百歩譲った提案をしたら

『へぇ・・・大ちゃんはそれでいいんだね?』

『やだ・・・』

あぁっ、即答しちゃったよ、僕の正直者っ。

でも、やたらエロティックに微笑うヒロの前で、我慢は出来なかった。



二人の時間は、あと1000年もあるけれど、朝まではとても短いから、僕はヒロの手を取って部屋へと急いだ。







---------- end ----------





最初、Distance》の番外編として書くつもりだったのですが
ちょっと違うぞと、考え直して「Link」作品(なのか?)とさせていただきました。
相変わらずのバカッポーよりも、暁人くんの彼が気になります(笑)

流花




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