・・・ Marking ・・・

*リクエスト内容・・・・・ヒロの腕に噛み付く大ちゃん

 

スタジオのドアの前でヒロはじっと自分の手を見ていた。

正確に言えば右手の甲、手首に近い部分。 そこにはくっきりと紅い噛み痕がついている。

2日前についたそれは、今ではまわりが紫色に変色して見るからに痛そうだ。

痛みはかなりひいているのだが・・・・・・・長袖のシャツからでも見えるそれをなんとか隠せないものかと考えていると突然名前を呼ばれ、

振り返るとアベが怪訝そうな顔で立っている。

『何やってるの? 入らないの?』

『あ、ごめん、邪魔だよね』

そう言ってヒロはドアを開け アベを先に通そうとしたのだが、そのまま彼女に手を引っ張られてスタジオの隅に連れて行かれた。

『どうしたの? それ・・・』

アベの視線はヒロの噛み痕を指している。

さすがに目聡いなと思いながら ヒロは左手で傷を隠して曖昧に笑う。

『まぁ・・・・いろいろと・・・・・』

『いろいろって・・・・・・プレイの一環?』

とんでもないことを言い出したアベにヒロが受けて大笑いする。

『違うって〜』

アベもいっしょになって笑っている。

『そんな女とは さっさと別れた方がいいわよ。 だいたいダイスケが・・・・あ・・・』

アベが急に笑いを引っ込めてヒロに囁く。

『ダイスケになんて言うつもり? その噛み痕じゃヘタな言い訳は利かないわよ』

アベの誤解をどうやって解こうかとヒロが考え込んでるところに仮眠室に使ってる部屋のドアが大きく開いてダイスケが飛び出してきた。

『あ、やっぱりヒロだ〜、声が聞こえたから。 おっはよ〜』

少し寝癖のついた髪を揺らしてヒロのそばまで走ってくる。

『おはよう、大ちゃん』

跳ねた髪を直そうとヒロが手を上げたとたん、その手をダイスケに掴まれた。

『これ・・・・・酷い・・・・・こんなになっちゃったの?』

傷痕を見るダイスケの顔が青ざめる。

『あ・・・うん、でも大丈夫だから・・・・』

『どこが! どうしよう・・・・ごめんね・・・・病院行った?』

『だから大丈夫だって、見た目ほど痛くはないんだからさ』

安心させようと微笑ってみせるヒロの目に、ダイスケの後ろで固まっているアベが映る。

『ちょっと・・・・・それ、アニーがやったの?』

アベの掠れた声にダイスケが振り返る。

『え? 違うよ、アニーがそんなことするわけないでしょ。 だいたいヒロと会わせてないし・・・・』

『じゃ なんでアンタが謝って・・・・・・・あ? まさかダイスケが噛んだ・・・なんて・・・・』

ダイスケが気まずそうに俯くのを見て、アベがあんぐりと口を開けた。

『どうしてそんな・・・・・・・ケンカ?』

『まさか、ケンカなんかしないよ』

『じゃ 何よ』

アベに詰め寄られて、ダイスケは小さい声でボソッとつぶやいた。

『寝ぼけて・・・・』

『はぁ〜?』

『夢の中でお肉食べようとして・・・・ガブッて・・・・それがヒロの手だったんだよね?』

ね・・・と、ヒロと視線を合わせて苦笑いする。

『ね・・・じゃないでしょ! 欠食児童じゃないんだから・・・・・噛み付く?普通・・・・』

『けっしょ・・・・くじ・・・? なに?』

『もう! なんでもいいわよ!』

『あのね、大ちゃん、欠食児童。 つまり・・・』

『ヒロも いちいち説明しないで!』

アベに怒鳴られてダイスケもヒロも首をすくめる。

『ダイスケ・・・・ヒロはよその事務所のタレントさんなのよ? 傷ものにしてどうするの?』

さすがにダイスケも神妙な顔になり、ちらっとヒロを横目で見てSOSを送ってきた。

『アベちゃん、“傷もの”ってのは大袈裟だってば。 そんなに痛くないし、すぐ治るんだから・・・』

そんなヒロの言葉を聴いているんだかいないんだか、アベは腕を組んでダイスケを見る。

『・・・・う〜ん、事務所にお詫びに行くべきかしら? でもなんて言うの? うちのアサクラが噛みましたって?』

小さい身体をますます小さくしているダイスケを見て、ヒロはなんとかフォローしようと口を挟む。

『ほら、ある意味、オレも大ちゃんを傷ものにしたっていうか・・・ねぇ? おあいこってことで・・・』

ダイスケと顔を見合わせて頷きあってる二人をアベが鼻で笑った。

『ふ・・・・、ダイスケなんて もともと傷ものだったわよ』

『え・・・・・そうなの?』

ヒロに疑惑いっぱいの目で見られてダイスケが慌てる。 

『ちょっ・・・・・アベちゃん!何それ!』

『あ〜ら、じゃ清い身体だっていうの?』

『清いって・・・・・そう言われると・・・・』

言葉に詰まるダイスケにヒロが1歩引く。

『あ、違うよ、ヒロ!違うから!・・・・もう!アベちゃん いい加減なことばっかり!』

青くなったり赤くなったりしているダイスケを見て、アベも少しは気がすんだのか今度はヒロに向かって

『まぁ、清いかどうかで言えばヒロも人のこと言えないしね〜』

と、攻撃を仕掛けてきた。 もちろんそんなことで慌てるヒロではないが・・・。

『あ・・ははは・・、まぁね・・・。 あ、うちの事務所なんて気にしなくていいよ。 どーせ、また酔っ払ったかなんかで、

 どっかの女に噛みつかれたんだろうぐらいにしか思わないからさ・・・』

その言葉にダイスケが反応する。

『・・・・また? ふぅ・・・・ん、そういうことがよくあるんだ?』

フォローしたつもりが墓穴を掘ったらしいと気づいてヒロも苦し紛れの反撃に出る。

『いやいやいや、大ちゃんの恋の数に比べたら少ないと思うよ』

『な・・・・恋って・・・・してないよ!』

『じゃあ、今までのは全部遊び?』

『遊んでなんか・・・・・今までって・・・じゃ、ヒロはどうなの?』

遊びまくってるくせに よくそういうことが言えるものだと、ダイスケが睨みつけると、百戦錬磨のヒロはしれっと答える。

『ぜ〜んぶ遊び。 本気は大ちゃんだけ』

嘘だとわかっていても そう言われたら返す言葉がなくてダイスケは黙ってしまう。

『大ちゃんは違うの?』

『・・・・・・・・・・僕も・・・・・ヒロだけ・・・・』

『よかった・・・』

そういってヒロがダイスケを抱き寄せる。 

なんだかうまく誤魔化されたような・・・・と思ったもののヒロの腕が心地よくてどうでもよくなっているダイスケだった・・・・・が、

『あ! アベちゃん・・・』

この場にアベもいたことを思い出して、慌ててヒロの腕からすり抜けて振り返ったがスタジオの中には二人のほかに誰もいない。

『あれ? アベちゃんは?』

『 “本気は大ちゃんだけ・・・・” ってあたりで、嫌ぁな顔して出てったよ』

『あぁ・・・・・』

そりゃ嫌だよね・・・・と、二人で顔を見合わせて大笑いする。

その時、ダイスケの指先がヒロの傷痕にあたってしまい、ヒロがちょっと眉をしかめた。

『ごめん! 痛かった?・・・・・よね、ホントにごめんね・・・』

まるで自分が痛かったような顔をしているダイスケが可愛くてヒロは再び抱き寄せる。

『ぜんぜん大丈夫だって。 こんなの舐めときゃ治るよ・・・・・・大ちゃん、舐めてくれる?』

ヒロの腕の中でダイスケがクスクス笑う。

『・・・・・治るんなら・・・舐めるよ』

『うん・・・・・・ここじゃないとこで、ゆっくりね・・・・』

そういいながらダイスケの唇に軽いキスをする。

『ん・・・・・・、そこは噛んでないでしょ?』

『そうだっけ? 痛いんだけどなぁ・・・・』

『嘘つき・・・・・・』

呟きながら、ダイスケはヒロの首に腕を回して、ゆっくり唇を重ねる。

めずらしく積極的なダイスケにつられるように、ヒロも口づけを深くしていく。

適当なところでダイスケが離れようとしても、ヒロが背中を強く抱いて唇を離してくれようとしない。

そんなヒロの舌を軽く噛む。

『いっ・・・』

『ごめん・・・・でもここスタジオだから・・・・』

続きはあとでね・・・・と微笑むダイスケに

『大ちゃん、噛み癖がついたんじゃない?』

そう言ってヒロが手の噛み痕を見せると、犬じゃないんだから〜とダイスケが大笑いする。

『でもヒロ、コレがあると女の子と遊び辛いんじゃない?』

『え〜? オレぜんぜん遊んでないから・・・・』

笑って返すヒロの心に、ふと小さな疑惑が湧き上がる。

 

まさか、コレわざと噛んだんじゃないよね・・・・・・浮気防止に・・・・・・。

 

『ヒロ、早くお仕事終わらそうねっ』

見上げてくるダイスケの笑顔を見て・・・・・そんなのどっちでもいいや・・・・・と思う。

この噛み痕があるから、今夜はダイスケに無理が言えるかも・・・・なんて、不埒なことを考えているヒロだった。

 

 

---------- end ----------

 

 

海里さま、大変遅くなってごめんなさい。  こんなんで許していただけますか? 

散々待たせてコレかいっ(ノ-_-)ノ^┻━┻ !!!!  ・・・・・・・と、お怒りにならないでくださいね(T_T)

精進いたします〜〜〜(_ _;)

                                           流花

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