***** 君だけ、だよ・・・・・ *****

 

 

 

『薫・・・さん? お誕生日、おめでとう』

ヒロが笑って手を差し出した相手は、お世話になってる音楽プロデューサーの姪っ子とかで、A*Sのファンらしい。

彼女の誕生日プレゼントにA*Sに会わせると約束してしまったから・・・・と、今日僕のスタジオに連れて来ていた。

彼女は頬を上気させて、嬉しそうにヒロと握手している。

いや、別にヒロがファンと握手したからって、どーってことないさ。

そりゃ、ちょっと綺麗だし・・・・スタイルもいいし・・・・特に胸とか・・・・・。

胸が大きいのはともかく・・・・・その “見てください” と、言わんばかりの服はどうだろう。

ほら、ヒロの視線が明らかに胸元に集中してる。

どーせ僕にはそんなものついてないですから・・・・。 ちょっと不貞腐れて視線を逸らす。

本当なら今ヒロがここにいるはずないんだけど、ちょっとした偶然で・・・・・・

『大ちゃん?』

ヒロの声で、彼女が僕の前に立っていることに気がついた。

『あ・・・・おめでとう・・・』

そう言って差し出した僕の手を両手で握って・・・・でも気持ちが隣に立っているヒロに向いてるのがわかる。

『ちょうど昼時だし、いっしょに食事でもどう?』

プロデューサーのお誘いに、姪っ子くんは、期待に目を輝かせているんだけど・・・・・イ・ヤ・ダ!

『そうですね〜、ヒロどうする?』

なのに笑顔で答える自分が信じられない。 いやいや、大人なんだよ、うん。

『あー、ボクはこの後仕事入ってるんで・・・申し訳ないですけど・・・・』

頭を下げるヒロに、僕の心は落ち着かない。

もともと、ヒロは僕と食事の約束で、ここへ来たはずだったのにプロデューサーに捕まっちゃって・・・・、

仕事があるって口実だよね? 帰らないよね? そう聞きたいのに、こうも人がいっぱいじゃ何も言えやしない。

『そっか・・・僕も仕事たまってるし・・・すみませんがまたの機会に・・・・』

その言葉に落胆する姪っ子くん。 ごめんね、僕のほうがヒロと先約だから。

ヒロを名残惜しそうに見ながら、出て行く姪っ子くんだけど・・・・・また〜、ヒロどこ見てるんだよ!

客人がドアの向こうに消えると、アベちゃんがヒロに手を合わせる。

『ごめんね、ヒロ。 あの人急に来るんだもん、私もびっくりしたわ〜』

謝らなくていいよ、アベちゃん。 ヒロだって目の保養になったみたいだから・・・・。

『お腹空いたんじゃない? また誰かに捕まる前に食べに行ったら?』

『うん、そうだね。 だ・・・・・・大ちゃん?』

何? なんで僕の顔じっと見てんの?

『ダイスケ〜・・・・大人なんだからそんな顔しないでよ〜』

ヒロがくすっと笑って・・・・僕はやっと自分が膨れっ面していたことに気がついた。

『大ちゃん、ちゃんと食事には行けるんだからさ・・・・さっきまでにこやか〜な大人の顔してたじゃん』

笑いながらヒロが車のキーをアベちゃんに見せて

『2、3時間、大ちゃん借りるね』

僕の肩を抱いて、ドアを開ける。

『本当に2、3時間でしょうね〜?』

アベちゃんの声を背中で聞きながら、大丈夫、大丈夫とヒロがキーをチャラチャラさせて手を振った。

 

 

いつもの車のいつもの助手席。 これからヒロとお昼ごはん・・・・なのに気分が晴れないのは・・・・。

車を走らせて、1分もしないうちにヒロが小さくため息を洩らす。

『大ちゃん、何怒ってるの?』

『・・・え? 怒ってないよ、どうして・・・』

『自分の顔、鏡で見てみなよ、1.5倍くらい膨れてるから』

嘘・・・・思わず両手で頬を押さえたら・・・・・・ヒロが吹き出した。

『笑うなよ〜!』

『ごめ・・・・ん、だぁって・・・・・』

でも、すぐに笑いを納めて横目で僕を見る。

『食事遅れたから機嫌悪いわけじゃないよね?』

違う・・・・・って、言いたいけど・・・・。

『大ちゃん、黙ってちゃわかんないでしょ。言いたいことははっきり言って』

あまり言いたくないんけど、このまま黙り続けてたら本当にヒロが怒ってしまいそうだから・・・・。

『綺麗な子・・・だったね』

『誰?・・・・あぁ・・・・えっと・・・薫ちゃん?』

へぇ・・・・名前憶えてるんだ・・・・・・。

『・・・・・もしかして、やきもち焼いてるの?』

すごく意外そうに僕を見ないでもらえるかな。

『悪かったね・・・・やきもち焼きで・・・』

赤信号で車を止めたヒロが僕の腿に片手を置いた。

『いや、嬉しいけどさ・・・・見当違いだよ、それ・・・』

ヒロ・・・・手の動きが微妙にいやらしいんだけど・・・・・。

『オレが大ちゃんの前で、他の女の子に色目使うわけないでしょ?』

僕の前じゃなきゃ使うんだ? ・・・・・やめよう、泥沼化しそうだ。

『でも、確実に胸は見てたよね?』

『あら・・・・バレてましたか・・・・しかし、アレは見るでしょ、男なら』

そりゃね・・・僕だって見ちゃったけどさ・・・・。

『でも・・・・ヒロの目はいやらしかったもん』

『だぁいちゃん・・・・・この少年のように澄んだ瞳のどこがいやらしいのかな〜?』

微笑ってるけど・・・・ヒロ、腿をゆっくり擦るのはやめようよ。

真昼間、信号待ちで僕をその気にさせてどーすんのさ。

『こんないやらしい少年なんていないよっ』

ヒロの手を跳ねのける。

『そう? 大ちゃんは・・・身体がいやらしいよね・・・』

『ど・・・・どこが!』

『知りたい?』

食ってかかった僕に、待っていたようなヒロの声。

青信号でアクセルを踏み込んだヒロが、予定していたレストランとは違う方向に走り出す。

『・・・ヒロ? どこ行くの?』

『オレんち。 飛ばせば20分で着くから、待ってて』

『待ってて・・・って・・・・どうしてっ?』

いや、答えは聞かなくても分かってる。 僕がしてやられたってこと。

『とりあえず、ここじゃ大ちゃんの知りたいこと教えられないからね』

やっぱり・・・・・・。

『ヒロ〜! ご飯は? ねぇ・・・』

嬉しそうに微笑って、ウインクを返すヒロに、何を言っても通じそうにない。

 

 

殆ど、引っ張られるようにヒロの部屋に連れて行かれて、僕の抗議はすべて却下。

玄関で靴を脱いだと思ったら、もうヒロの腕のなかにいた。

唇を塞がれて・・・・・そうされることは嬉しいんだけど・・・・玄関先だよ?

でもヒロの温かさが心地よくて、しがみついてしまう。

『ここじゃダメ?』

長いキスの後、ヒロが耳元で囁く。

『え・・・?』

何を焦ってるんだろうとヒロを見上げたら、そんな感じじゃなくて、何か楽しそうなんだよね。

『なんで、ここ? フローリングだよ? きっと痛いって・・・』

僕の言葉に、ヒロが肩を揺らして笑い出した。 また何か言っちゃったかな・・・。

『じゃあ、リビングに行こう』

僕の手を引くヒロは、まだ笑ってる。

『ヒ〜ロ〜、何がおかしいの〜?』

質問には答える気がないらしく、リビングに入るとすぐにカーペットの上に押し倒された。

『ほら、カーペット! 文句ない?』

ん〜〜〜、ヒロ〜そうじゃなくて・・・・

『どうしてベッドに行かないの?』

ヒロは楽しそうに僕の上着を脱がせながら

『たまには気分変えようかと・・・・・いや?』

すっごく厭らしいことしようとしてるくせに、可愛く小首を傾げないでよ。 そりゃぁ・・・

『い・・・やじゃない・・・けど・・・・』

『だよね〜・・・カーペットだし・・・』

そう言って、また笑い出す。 なんなんだよ〜!

 

比喩じゃなくて、本当に舌なめずりしてヒロが僕の開いた胸元に唇を這わせる。

『・・・あっ・・・ん・・・』

時折、強く吸われて声が漏れるのが恥ずかしくて両手で口を塞いだら、ヒロが意地悪く同じところを責めてくる。

『う・・・・・ん・・・・』

それでも我慢してたら涙が零れてきて・・・ヒロが小さく笑ったのがわかった。

胸に意識が集中して、すっかり無防備になっていた下半身にヒロの指が絡んできて、その手を抑えようとして今度は口が無防備になって

『あぁっ・・・・やっ・・・・あ・・・』

一度あげた声は、ヒロの指に追い上げられて止めることが出来なくなった。

着ていたシャツや、ジーンズは辛うじて身体に絡み付いてるような状態で

背中にあたる毛足の長いラグの刺激にさえ、声が出そうになる。

すでに身体は半分溶けたようになってて、でもヒロは執拗に指と唇だけで僕を弄んでいる。

僕の身体は、もうそれだけじゃ物足りなくなってるって知ってるくせに。

『・・・ヒ・・・ロ・・・』

『ん?』

琥珀の瞳が少し意地悪く細められるのを見て、ヒロの魂胆はわかった。

・・・・言わせたいんだね?

これが、後5分早かったら、意地でも言うもんかって思えたんだろうけど・・・・・もう・・・・・限界。

『ヒロォ・・・』

思いっきり甘えた声でヒロを見つめてみたけど・・・・

『ん〜? ヒロ・・・の続きは?』

そう言って、その長い指で知り尽くした僕の敏感な部分を意地悪く突いてくる。

『あっ・・・・やぁ・・・ヒロ、ヒロ・・・』

『はい?』

『・・・・し・・・い・・・』

『え? 聴こえないよ?』

絶対、今度仕返ししてやる〜!!!

『ヒ・・・ロが・・・欲し・・・い・・・』

涙目で訴える僕に、ヒロが満足そうに微笑む。

『認めるね?』

何が? って顔でヒロを見る。

『大ちゃんの身体がいやらしいってこと』

あ・・・・・・・・・それか〜・・・・・・・認めるもんか!

心の中ではそう思っても、身体はヒロを求めてて、僕の言うことなんて聴きやしない。

何度も頷く僕に、ヒロは嬉しそうに入ってきた。

息が止まるくらいの充足感に眩暈すら覚える。 そして後は堕ちるだけ・・・・・。

上げ続ける声は、いつのまにか裏返ってて・・・自分でも聞き慣れないその声を普通なら恥ずかしく思うのだけど

そんな余裕を与えてくれるほど、今日のヒロはやさしくない。

でも、そんなヒロに僕の身体は素直に悦んでて・・・・・やっぱりヒロのいうとおり “ いやらしい ” のかも・・・。

裏返った声さえ、嗄れるころ、やっとヒロは僕を解放してくれた。

 

 

『大ちゃん、すーごい色っぽい・・・』

ヒロの声に、ものすごく乱れた格好でリビングに転がっている自分に気がついて慌てて起き上がる。

『犯された後・・・・って感じだよねー』

『感じじゃなくて、まさに犯された後だと思うけど?』

シャツを掻き合わせながら僕が言うと、ヒロが目を丸くする。

『違うでしょ? 大ちゃんが誘って、犯されたのはオレのほうだと思うけどなぁ・・・』

『なっ・・・・・・・僕がいつ誘った!?』

『玄関で・・・・』

『それはヒロのほうじゃん!』

『違う、違う、大ちゃんがオレの背中にしがみついて、しようって』

『言ってない!』

『心の声が聞こえたんだよね〜』

どんな耳してるんだよ!

『あ、だから玄関でしようって言ったの?』

呆れた僕に、ヒロはまったく動じる様子は見せない。

『大ちゃんだって、してもいいって思ったでしょ?』

だーかーらー・・・・・

『僕は嫌だって言った』

『フローリングが痛いからね?』

『・・・・・うん、まぁ・・・』

『大ちゃん、それって、玄関が嫌なんじゃなくて、フローリングが嫌なんだよ。

 だったら、玄関にふかふかのカーペットが敷いてあったら、オッケーだったってことだよね?』

・・・・・・・・・・・・・・・・う・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『場所を選ばない大ちゃんの身体って・・・・オレは好きだな〜』

何も言い返せずに黙っていたら、ヒロは僕を抱き上げて、上機嫌でシャワールームへ向う。

『お腹すいた』

ヒロの腕の中、照れ隠しに言ってみる。

『あーんなにいっぱい、オレを食べたくせに・・・・』

食べてない! 食べた! 言い合う声が、シャワールームに響き渡った。

 

 

結局、昼食はとれなかったので、遅くなったらアベちゃんに怒られるのを覚悟で夕食をとるために近くのレストランに入った。

向かい側に座ったヒロが僕を見つめて・・・・・ 

“ 大ちゃんがいやらしくなるのは、オレ限定にしといてね ”

なんて、言うものだから飲んでた水に咽てしまった。

いやらしくないもん・・・・・と、頬を膨らませたけど・・・・・・ヒロにしか聞こえない小さな声で囁く。

 

“ ヒロだけ・・・・だよ ”

 

その答えにヒロはウインク付きの極上の笑みを見せた。

 

 

 

---------- end ----------

 

 

 

キリ番32000をゲットされたさんへ捧げます。

続きかどうかは微妙ですが、楽しんでいただければ・・・・と思います♪

                              流花

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送