★ magical  いつか王子様が・・・・・(8)





目覚ましの電子音がうるさくて、布団の中から枕元に手を伸ばしても、いつもの場所に時計がない。

あれ〜? 位置変えたかな?

しかたなく起き上がって・・・・・一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。

あ・・・・あぁ・・・・そっか、ホテルだ。

やっと思い出して目覚ましを止めると、大きく伸びをしてベッドから飛び出し身支度を始める。

ダイスケを起しに行かなくちゃ。






昨日は、取材の予定がキャンセルになり時間が空いたので、さっさと帰ろうとした私にダイスケが呟いた。

『まだ早いよね・・・・』

『そうね〜、たまには早く帰って部屋の掃除でもすれば?』

『やだ・・・』

あら? ダイスケさんはご機嫌斜め?

そういえば、今日は朝からどんよりしていたような気がする。

『なぁに? なんかあったの?』

『なにもないよ。 僕は・・・・ね』

『僕はって・・・・僕以外になにかあるの?』

『今日、何の日か知ってる?』

意味ありげに言われてもねぇ・・・・カレンダーを見ても別に何のしるしもついてないし・・・・・・あっ!

『ヒロの誕生日?』

ダイスケが苦笑いを浮かべて頷く。

『何よ、ちょうどよかったじゃない? お祝いに行ってあげたら? どっかで会うとか・・・』

せっかく言ってあげてるのに、ダイスケは大きなため息をつく。

『ヒロ、明日はライブだからさ・・・今日は会えないよ・・・・前からわかってたけど・・・』

『あ・・・そうなの?』

だから今日はどんよりだったわけだ・・・・・。

『プレゼントとか買ったの?』

ふふっと笑ったとこみると、ちゃんと買ってあるらしい。

『まぁ、今日渡せなくても・・・・会おうと思えばすぐ会えるじゃない?』

『ま・・・ね・・・・・・でもさぁ・・・・・つまんない・・・・』

そんなこと私に言われても・・・・・・・何よ? その目は?

『ねぇ・・・・・Dランド・・・・付き合わない?』

『はぁ〜? 今から〜?』

そうきたか! ひとりで行って来い・・・・って、言ってやりたいけど・・・・・その甘えた目はやめなさいって。



結局 負けちゃったのよね〜・・・・私も甘いわ、ダイスケには・・・。



平日だったから、パークも早く閉まっちゃうんだけど空いていたせいで、短い時間なのにダイスケに引っ張りまわされて・・・・・。

挙句、ここのホテルに泊まっていこうと言い出した。

冗談でしょ。 1時間も車走らせれば帰れるのに、なーんで泊まらなくちゃいけないのよ?

『ヒロに会えないから・・・』

わかんないっ! 私にはその理屈がわかんないっ!

『なんかさぁ・・・部屋にいたらヒロから連絡が来るかも・・・・とか期待しちゃいそうで、やなんだよねぇ・・・』

だったら、ひとりで泊まりなさいよ。 どうせ別の部屋なんだから私なんかいてもいなくても関係ないじゃない。

『そんなことないよ。 やっぱりいてくれると心強いっていうかぁ・・・・・』

だから、その上目遣いはヒロ専用にしときなさいって!



そして、再び負けた私は、同じホテルの別の部屋に泊まることになった。

どうせ、同じ部屋に泊まったって何があるってわけじゃないんだけど・・・一応ケジメとしてね。

それにしても、こういうとこはシングルルームがないってのは辛いわよね。

ダイスケはともかく、私ひとりでこのお部屋? もったいなーい!

部屋まで案内してくれたベルボーイに、泊まっていきませんかって言いかけたわよ。

ちょっと私好みだったのよね〜・・・・・って、ダイスケに言ったら

『うん、獲物を前にした雌ライオンって感じだったね』

そう言って笑ったのよ〜、むかつく!

ダイスケはしばらく私の部屋で話してから、10時ごろには自分の部屋に戻って・・・・どうやらおとなしく寝たらしい。





チェックアウトの時間まで寝かせてやってもいいんだけど、お腹空いちゃったしね。

部屋のベルを鳴らすと、バスローブを着た寝ぼけまなこのダイスケがドアを開けてくれた。

まだカーテンが閉まっていて部屋の中は薄暗い。

『あんなに早く寝たのにまだ眠いの?』

また、もぞもぞとベッドに潜り込もうとするダイスケを笑いながらカーテンを開ける。


・・・・・・開けなきゃよかった・・・・・・。


ダイスケが潜り込んだベッドにもうひとつ頭が見えた。

ダイスケが寂しさの余り、出張なんとか・・・いうのを呼んだのかと思って息が止まりそうになったけど、

布団から伸びた白い腕と、その手、そして指輪に見覚えがあった。

『ヒロ? いつ来たの?』

呟く私を無視して、ベッドに二人納まってるけど・・・・・・・・ベッドにふたり?

・・・・って、これ情事の後ってやつ?!

や・め・て・よーーー、ダイスケ〜なんでドア開けるのよーーー!

とっとと退散しようと、窓際から離れた時、この部屋の目覚ましが鳴った。

再び、起き上がったダイスケが時計を止めて・・・・・固まってる私に気がついた。

『あ・・・・おはよ・・・』

あ・・・って、今自分でドア開けたじゃない。 白々しいったら。

『いつ来たのよ?』

ヒロを指差すと、ダイスケが嬉しそうに微笑む。

『昨日、寝ようと思ったらケータイかかってきて・・・・・ここまで来てくれたんだよ』

『今日、ライブだって言ってたじゃない』

『うん・・・だからここから直に東京駅行くって・・・・あ、起こさなきゃ・・・ヒロォ・・・』

私たちの話し声にもびくともせず寝ているヒロをダイスケが揺り起こす。

『ほら、起きなきゃ・・・・迎えが来ちゃうよ』

『迎え? まさかマネージャーにここまで来てもらうつもりなのぉ?』

可哀想なハヤシさん・・・・・てか、ヒロに甘すぎる! ・・・・と、人のことは言えないか・・・・。

ダイスケの声に、シーツから伸びたヒロの腕が声の主を探り当てるように動いている。

肩まで露わになったヒロは何も身に着けていない。 

やーねー・・・・下はちゃんと穿いてる・・・・よね?

『ちょっ・・・・ヒロッ・・・だめだって・・・』

その腕に捕まえられたダイスケがベッドの中に引きずり込まれそうになっている。

『起きてよ・・・アベちゃん見てるって』

人聞きの悪い! “見てる” じゃなくて “見せられてる” の間違いよ。


アベちゃんという言葉に反応したのか、ヒロが眠そうな目をこちらに向けた。

『あれ・・・・・なんで?・・・・』

なんではこっちのセリフです。

『ライブなんでしょ? こんなとこまで来て・・・・大丈夫なの?』

『だよね・・・僕もそう言ったんだけどね・・・』

言い訳がましいダイスケに、ヒロが笑いを洩らす。

『来てくれなきゃ死んじゃう〜・・・くらいの声だしてたくせに?』

『だしてないっ!』

真っ赤になってるダイスケを見て、ヒロの言い分もあながち嘘ではないらしいと思う。

『で、オレが殺されちゃった・・・・みたいな?』

ほぉ〜、そんなに? ダイスケを見ると思いっきり首を振って否定のポーズ。

『そんなの! セーブしないヒロが悪いんだよ!』

『違う、違う、大ちゃんが誘ったから・・・』

ヒロがベッドに起き上がりながら、目は何か着るものを探しているようだ。

どうやら何も着ていないわね・・・・こいつ。

隣の “使われていない” ベッドの上に放り投げるように置いてあったバスローブを取って渡してやると

『サンキュ・・・・夕べは大ちゃんが離してくれなくてさぁ・・・オレ倒れるように寝ちゃったから・・・』

独り言のように言いながらベッドの上でバスローブを羽織るヒロの頭をダイスケがはたく。

『嘘ばっかり! 僕は誘ってないし、そんなしつこくも・・・・ない・・・・』

私の目を気にしたのかダイスケの語尾が弱くなっていく。

気付いてくれてありがとう。 痴話喧嘩は私のいないとこでやってね。

『そ・・・そんなことより、ヒロ早くシャワー浴びた方がいいよ、時間になっちゃう』

『オッケー!』

これ以上ダイスケを虐めることを諦めたのか、ヒロが勢いよくベッドから降りる。

『あ、大ちゃんのおかげで腰が・・・・・・・!』

『ヒローーーッ!』

ダイスケの投げつけた枕を器用にかわしてヒロはバスルームに飛び込んだ。



『なんにせよ、楽しい夜だったようで・・・・おめでと』

転がった枕を拾いながら皮肉を言ったところで、ダイスケの笑顔は揺るがない。

『プレゼントは渡せたの?』

『ん? スタジオに置いてきちゃったから・・・・・でも・・・』

でも?

『そんなのなくても、僕がいればいいって・・・・』

けっ! いかにもヒロがいいそうな言葉だわ。 それをまた、嬉しそうに私に報告するダイスケの神経も信じられない。

・・・・信じられないといえば・・・・

『ねぇ、ヒロがいるのに、どうして私を部屋に入れたの?』

わざわざ中に入れる必要はなかっただろうに・・・・という疑問にダイスケは薄く微笑むだけで答えようとしない。

私は長年の付き合いから、ひとつの答を見つけ出す。

『・・・・・・・・見せ付けたかった・・・・とか?』

笑みを濃くしたダイスケに、あきれた私は天を仰ぐ。

『趣味悪いわよ、ダイスケ・・・』

でも、自分の膝を抱えて喉の奥で笑い続けるダイスケが幸せそうで、それ以上は何も言えなくなってしまう。

『ごめんね・・・・だってヒロ来てくれたんだよ? 忙しいのにこんなとこまで・・・・なんか嬉しくてさ・・・・

 見せ付けるっていうか・・・・見せびらかしたかったのかな・・・』

『ほーら、僕のヒロはやさしいでしょう・・・って?』

悪びれもせず頷くダイスケに、私は苦笑いするしかない。

『そのかわり、アベちゃんも彼氏が出来たら、いっぱい見せ付けて良いから・・・・ね?』

ね?・・・・って言われても・・・・どこかにいるはずの私の王子はガラスの靴の持ち主を探す気があるのかしらね・・・・。


その時、部屋にケータイの着信音が響いた。

『あ、ヒロのだ。 きっとお迎えが来たんだよ』

ベッドから抜け出したダイスケがヒロの上着をさぐって鳴ってるケータイを取り出すと、バスルームをノックする。

『ヒロ・・・・いい?』

おっと、退散しなくちゃ・・・・いくらダイスケの自慢の彼でもヌードを見る趣味はないから。

『支度が済んだら部屋に来てね!』

言い捨てて、ドアを出た私の背中にダイスケがボソッと呟く声が聞こえた。

『いっしょに大阪、行きたいな・・・・』

ええ〜〜〜〜〜?!  振り返ったとき、すでにドアは閉まった後で・・・・・・。



もちろん、そんな無茶はしなかったけど・・・・・いつかしでかしそうで・・・・


マネージャーとしては、頭が痛い今日この頃・・・・。










----------
end ----------










ヒロの本当のスケジュールなんざ知ったこっちゃありません!(笑)
「だったらいいな」小説ですから(^^;ゞ
これの「夜のお話」読みたい方が4名以上いらっしゃったら執筆します!←(なぜ4名?)

※ この作品はかおりさんから戴いたキリリクの中の
  「寝起きドッキリ」をヒントに書かせていただきました。
  ありがとうございました(*^^*)

                                        流花
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送