message いつか王子様が・・・・・(7)








ダイスケが窓際に立ってボンヤリ外を眺めている。

そんな気分になるときもあるわよね〜、大人の男には・・・・・って、人がせっかく思ってあげてるのに

ポッキーかじるのやめて欲しい・・・・・。

そして大きなため息・・・・・・・ポッキーかじりながらため息って・・・・器用だわ。

仕事中にこの状態・・・・やっぱりマネージャーとしては注意すべきなのかしら。



『ダイスケ、お仕事は〜?』

『う〜〜〜ん・・・・?』

私の声は聞こえてるみたいだけど、視線はずっと窓の外。

『なぁに? 外に可愛い犬でもいるの?』

『いない』

知ってるわよ! マジで返さないでよ。

『なんなのよ、気分乗らないの? それとも体調悪い?』

『ヒロに会いたい』

間を置かず答えたダイスケの声に、休日出勤で、たった一人パソコンを打ってた女性スタッフの手が止まった。

そりゃ止まるわよね、私は息が止まったわ。


『いきなり何言い出すのよ、吃驚するじゃない』

でもダイスケはケロッとしたものだ。

『なーんで吃驚するの? 会いたいって言っただけだよ? やりたいって言ったわけじゃなし・・・・』


Pi−−−−−−−!


パソコンからすごい音がした。

どこか変なキー押しちゃったのよね? ごめん・・・仕事の邪魔して・・・・。

『ダーイースーケー、頼むから・・・・私一人じゃないのよ』

睨みつける私の肩越しに、ダイスケは女性スタッフに声をかけた。

『あー、ごめんね〜、気にしないでね〜、独り言みたいなものだから・・・』

独り言だったの?! そりゃまた、はっきりくっきり、でっかい独り言ですこと。

『だってさぁ・・・・随分会ってないよ?』

『そんなの、今に始まったことじゃないでしょ? 何年も会わなかったこともあったし・・・』

『そーんな昔のこと持ち出さないでよ』

プッと頬を膨らませても、私には通用しないって。

『連絡ないの?』

『う・・・ん、星が付いてから1回あったけど・・・』

星?・・・・・あぁ・・・・・あれね・・・・。

何気にダイスケと目が合って・・・・・・・ぷっ・・・・・二人同時に吹き出した。

『ひっどいなぁ〜、アベちゃん、何笑ってるの〜?』

自分だって笑ってるじゃない。 

『ヒロもいろいろ楽しませてくれるわよね〜』

『でも、会ってない』

ちょっとぉ・・・・・急に笑いを引っ込めないで。 この子はもう・・・・。

『電話すれば? 会いたいって・・・』

『そしたら、ヒロ来ちゃうよ』

『ハァ?』

会いたいのよね? 来て欲しいんじゃないの?

疑問顔の私に、ダイスケは少しは気を使ったのか、スタッフに聞こえないぐらいの小さな声で言った。

『ヒロはね、僕が会おうって言ったら、どんなに忙しくても都合つけて来ちゃうんだよ・・・・やさしいから。

 そんなことさせたら可哀想でしょ、だから・・・・』

へぇ・・・・ヒロにはそこまで気を使う? 私にもその半分くらい使って欲しいものだけど・・・・。

『忙しくても来てくれるんだ〜〜? ・・・・・それはノロケなの?』

『うん』

やな奴・・・・・・。

『一生ひとりで悩んでれば?』

『あ、冷たーーーい』

アンタが言わせてんのよ。 変なとこで天然なんだから・・・・。

『だから電話して、会いたいでもやりたいでも言ってやればいいのよ!』

『そんな・・・・・ホントにやりにきたらどーすんだよ?』

・・・・・確かに、アイツなら可能性あるわね・・・・・。

『その時は、とっとと済ませて、スッキリお仕事すれば?』

『えぇ〜? アベちゃんがヒロに言うんだよね? “ とっとと済ませろ ” って。 僕は言えないからね!』

『なんで私がそんなこと言わなきゃいけないのよ、ダイスケが言うのよ!』

『やだよ! だいたい僕は、とっとと済ませたくなんかないもん』

その時、背後でけたたましい音がして、ダイスケとふたりそっちを見ると、

かの女性スタッフがバッグと上着を持って立ち上がったところだった。


・・・・・しまったぁ・・・・・・彼女の存在をすっかり忘れてたわ・・・・。


『一区切りつきましたので、お先に失礼させていただきます』

彼女は硬い声で言うと、軽く会釈をしてドアに向かって歩き出す。

『あ・・・・・え・・・・っと・・・・、お疲れ様』

・・・・って、いうしかないわよね・・・・ごめんね・・・・。

ダイスケも私の声に被せるように、彼女に声をかけて見送った後、ちょっと首を竦めた。

『仕事の邪魔しちゃったかな?』

『しちゃったでしょうね〜、すぐそばで、やるだの、とっとと済ませるだの言い合ってりゃね・・・・』

私の言葉にダイスケが不満を洩らす。

『僕はやりたいなんていってないんだからね、会いたいっていっただけで。 変なこと言い出したのはアベちゃんだよ?』

『やだ、私のせいにする気?』


この後、しばらく不毛な言い合いが続いたけど、ダイスケも諦めたのか肩を落として仕事部屋へと去って行った。


なんで、素直に電話出来ないのかなぁ・・・・・・・。

しょうがない、ダイスケの友人として一肌脱ぐとしますか。




陽もとっぷり暮れた頃、ダイスケが “ お腹すいた〜 ” と仕事部屋から出てきた。

ソファーに倒れこんで、ワンコに抱きついてるダイスケの前で私はおもむろにスケジュール帳を開く。

『来月のラジオ収録なんだけど・・・・』

仕事の話を始めた私をダイスケが恨めしそうに見上げる。

『なーにー? イトウくんいないからって話? 一人で大丈夫だって言ったじゃん』

『あら・・・・・そう。 ゲスト呼ぼうかって話があるんだけど・・・・』

ダイスケは、ふーん・・・と気のないそぶりでワンコを撫で続けている。

『そんなさぁ・・・毎月ゲスト呼ぶわけにもいかないだろうし・・・・いいんじゃない、ひとりの方が・・・』

『まぁ、ダイスケがそう言うなら・・・・せっかく事務所に了解取ったのに、残念がるわねぇ・・・ヒロ』

『え?! ヒロ? ヒロがゲストなの?』

突然、起き上がったダイスケにワンコ達が吃驚してソファーから飛び降りた。

『でも、ダイスケはひとりの方がいいんでしょ? 断る?』

『・・・・・・・・・・・・意地悪だね・・・・』

唇をとがらすダイスケを軽く睨みつけてやる。

『意地悪? ヒロの事務所に電話してやったの誰だと思ってるの?』

『アベ様です・・・・・』

ちょっぴり項垂れるダイスケに、スケジュール帳に挟んであった紙を渡した。

『何? これ・・・・』

『ヒロからのFAX』

紙に目を落としたダイスケの顔がみるみる緩んでいく。 見ちゃいられないわね・・・・・。

『ご飯食べに行くわよ!』

キーを掴んで急かすように言うと、ダイスケは大事そうに紙を折ってポケットにしまう。

『アベちゃん・・・』

緩みっぱなしの顔で見ないでよ、私が恥ずかしいって・・・・。

『ありがと・・・・ね』

『どういたしまして。 さ、行くから用意して』

慌てて上着を取りに行くダイスケの背中をみて、私も少しだけ嬉しくなる。


ヒロのことに、素直なんだか、素直じゃないんだか・・・・・・・・・意地っ張りなだけか・・・。

あんなメモ一枚でダイスケを幸せな気分に出来るヒロにも、マネージャーとしては感謝すべきかな。

ホントに “ あんなメモ ” なんだけどね〜。



【大ちゃん、元気? 会えるの楽しみにしてるね! いーっぱい話して、いーっぱい笑って、いーっぱい・・・・しよう!!!OK?】











---------- end ---------









ごめんなさい! ヒロが出てきません!(笑)
ま、たまにはこういうのもアリってことで・・・・・・・・(_ _;)

                            流花
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