いつか王子様が・・・・・(6)

 

 

楽しみにしていたカウントダウンのライブが終わった。

もちろん、楽しみにしていたのは私ではなく、ダイスケだけどね。

ウッキーくんもウキウキだったようで衣装にも気合が入っていたような・・・。

そんなライブが終わった楽屋で、なにやらさっきからダイスケがブツブツ言っている。

『何か問題でもあった?』

聴きたくないけど、マネージャーの義務として訊いてみる。

『う・・・ん? 問題ってわけじゃないけど・・・・キス・・・ね・・・』

キス????? その言葉に周りでバタバタとしていた他のスタッフも一瞬動きを止めた。

『キスって?』

さっきよりも聴きたくない気分になってたんだけどね・・・、どうせウッキーの話でしょ。

『また・・・キスしたじゃん・・・』

はい、見てました。 したの? てか、いつものことでは?

『もうしないって約束したんだよね』

不満そうに唇をとがらすダイスケを見て、ちょっと意外に思ってしまった。 嫌だったの?

『そんな約束、いつしたのよ?』

『前のツアーが終わったときに・・・・・人前であれはやめたほうがって・・・』

へえ・・・私の前でやったことなかったっけ? あぁ、人=ファンってことね・・・。

『いいんじゃない? パフォーマンスとしてファンには受けてるんだし・・・』

『“フリ” ならいいと思うけど・・・・ヒロ、ホントにするからさぁ・・・』

再び、スタッフの動きが止まる。 みんな〜、耳をダンボにしてないでお片づけしましょう。

『フリでもホントでも客席からはわからないからいいんじゃないの?』

『そ・・・・っかなぁ・・・・アベちゃんも見ててわからない?』

ん・・・どうだろう? わかるときもある・・・・いや、わからないときもある。 ということは・・・

『そうね・・・わかるわね』

『じゃ、ダメじゃんっ』

ダイスケが怒っていいのか、笑っていいのか複雑な表情で私の腕を軽く突付く。

『そんなの、ヒロに文句言えばいいでしょ、キスするなって』

『や・・・別にキスが嫌とかじゃなくて・・・』

あらららら? じゃなによ?

 

『お疲れ〜!』

その時、能天気な声と共に開け放してある楽屋口からヒロが入ってきた。

『ヒロ、早かったねぇ』

ダイスケが、さっきとは別人の声で話しかける。

『そう? まだ準備できてないの?』

当然のようにダイスケの隣に立ったヒロの手は軽くダイスケの背に回っている。

人前で気安く触るのはオッケーなの? ダイスケ・・・・って、ぜんぜんオッケーな顔してるわね。

これから、HP用のweb映像を撮ることになっているんだけど、少し準備に手間取っている。

『ヒロ〜、ダイスケが何か文句あるらしいわよ』

私が言うのと、ダイスケが慌てて止めようとしたのと、ヒロがダイスケを見たのが同時くらいだった。

『文句? オレに?』

ヒロの不審顔にダイスケは、ちょっと困ったように笑ってみせる。

『文句ってわけじゃなくてぇ・・・・えっと・・・・・・・・・あ、あとでね』

なによ! ブツブツ言ってたじゃない。 はっきり言ってやればぁ?

『ステージでキスしないでって』

ヒロが私からダイスケに視線を移したとき、その顔から笑みが消えていた。

『そんなに、やだった?』

ダイスケも顔色を変えて、プルプルと首を横に振る。

『違うって。そういうんじゃなくて・・・だから・・・』

何か言いたそうなダイスケだったけど、周りのスタッフを気にしてか言葉に詰まる。

それを見てヒロは黙ってダイスケの腕を引くと楽屋を出て行こうとしたので、私が慌てた。

『ちょっと、ヒロ! これから撮るのよ。 どこ行く気?』

『トイレ』

言い捨てて、廊下に出ると明らかにトイレとは別方向へ歩き出す。

ダイスケも黙って引っ張られてないで、何とか言ったらどうなのよっ。

すぐに隣のヒロの楽屋のドアが開く音が聞こえて、一言二言会話らしきものが聞こえたと思ったらドアの閉じる音。

そして苦笑いしながらヒロの事務所スタッフが入ってきた。

『追い出されたんですか?』

『ええ・・・まぁ・・・』

申し訳ありませんと頭を下げられて、いえいえこちらこそと返す。

 

ソロのヒロはきっと扱いやすいのだろうと思うし、ソロのダイスケだって理不尽な我侭は言わない。

それが二人そろうと、ややこしい事になるだけで・・・・。

 

しばらくして撮影準備の終わったスタッフが手持ち無沙汰にこっちを見た。

『呼んできましょうか?』

ヒロのマネージャーをやっているハヤシさんが気を使って出て行こうとする。

『放っておきましょう。子供じゃないんだからすぐに出てきますよ・・・多分ね』

笑ってみせたものの・・・・・子供じゃないからこそ始末に終えないってこともあるのよねぇ・・・。

ハヤシさんも同じようなことを考えたらしく、笑いながら再び頭を下げた。

『いろいろ面倒かけますけど今年もタカミをよろしくお願いします』

『そんな・・・うちのアサクラこそ、よろしくお願いします』

お互い御辞儀しているうちに なんだか可笑しくなってきて大笑いしているところへ

『あれ〜? なんか楽しそうだね〜』

王子が姫を従えて、入ってきた。

ダイスケの上気したピンク色の頬に突っ込みのひとつも入れてやりたかったけど・・・・

A*Sの活動が少ない今年だから、ちょっと大目にみてやるか・・・。

 

 

2004年、元旦。 まだ仏の心を持つヒロコ・・・・・いつまで続くことやら・・・。

 

 

 

---------- end ----------

 

 

 

え? 新年早々、ラブ度が低い? ご不満でしょうか?

だって、アベちゃんのシリーズだからラブって言われてもねぇ・・・・。

ということで、キスのひとつも見てみたいとおっしゃる方は

下の「オマケ」をご覧ください(^_^;  今年もよろしく♪

                           流花

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* kiss、kiss?kiss!*

 

 

『そんなに、やだった?』

ヒロが怖い顔して言うもんだから、ちょっと慌てた。

『違うって。そういうんじゃなくて・・・だから・・・』

こんなとこで言えないよ、ヒロ・・・。

困った顔をしてる僕の腕をヒロが引っ張って楽屋を出る。

アベちゃんに怒られる〜・・・そう思ってもヒロがどんどん引っ張っていくから何もいえなくて・・・。

すぐ隣のヒロの楽屋からスタッフを追い出すと僕を押し込むように中に入って

閉じたドアを塞ぐようにヒロが立つ。

『・・・・で、だから、の続きは?』

怒ってるわけではないようだけど、ちょっと怖いよ、ヒロ。

『だから・・・・ヒロ約束したよね?』

『約束?』

『うん。ステージでホントにキスはしないって』

ヒロはちょっと考えて、あぁ、したした・・・と笑う。

『なのに・・・約束、破ったよね?』

ほんの少し、睨むようにヒロを見上げて・・・・またすぐに俯く。

『あー・・・それは・・・』

『僕はね、キスが嫌だったわけじゃなくて、僕との約束を破ったヒロが嫌だったんだよ』

そう、僕との約束をそんないい加減な気持ちでしてたのかって思ったら、ちょっと悲しかったんだ。

そりゃさ、そんなたいした約束じゃないけど・・・・・

ヒロが一言謝ってくれたらすぐに許しちゃう程度の約束だけど。

 

『だぁいちゃん・・・』

ヒロの両手が僕の頬を挟んで上を向かせられる。

『その “約束” したとき大ちゃんなんて言ったか、よぉ〜く思い出してみて』

じっと僕の目を覗き込むヒロ。

半年前ライブの楽日・・・・・確か、僕が恥ずかしいから嫌だって言ったら・・・・。

“だったら、もう ぜ〜〜〜ったいしないっ”

ヒロが拗ねちゃって・・・僕が慌てて

“違うってばっ。キスが嫌なんじゃなくて・・・軽くならいいんだけど・・・・・・

ほら、ヒロけっこう力入っちゃってるから僕も構えちゃうっていうか・・・・だから・・・えっと・・・”

“わかった! 本気でしないならいいんだ? 軽くチュッ・・・程度?”

うん、それならいいよ・・・・・って・・・・僕 言ったっけ?

 

『思い出した?』

勝ち誇ったような笑みを見せるヒロに、僕は不満の声を洩らす。

『え〜〜〜? あれが “軽く” なの?』

『軽い、軽い・・・・本気のキスっていうのは・・・』

そういいながら、ヒロの唇が降りてきた。

温かい唇にうっとりしていると、熱い舌が入ってきてゆっくり動きながら僕の舌を探り出して捕まえる。

息が止まりそうなキスに頭がボンヤリして、膝の力が抜けてきた僕をヒロの腕がしっかりと抱きとめた。

 

長いキスが終わっても、その腕に抱かれて彼の鼓動を感じていると、ヒロが耳元で

『ね、これが本気のキス』

と、囁く。

うん、すっごくわかったから・・・もう少しこのままでいさせてと

ヒロを見上げて、目で訴えてみる。

もちろんヒロはわかってくれて、小さくウインクで応えてくれた。

あぁ、やっぱり大好きだぁ・・・・・・と、新年早々、思い知らされる。

 

ヒロがいれば、きっと今年も幸せに過ごせる・・・そう確信しながら・・・。

 

*END*

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送