★ candy ★ いつか王子様が・・・・・(3)

 

 

イベントのパリ旅行が目前に迫っていた。

今日は仕事の予定も詰まっておらず、私とダイスケはイトウくんも交えて三人、

午後のスタジオでまったりとお茶しながらパリの話でも・・・と思っていたのだが・・・・。

 

そいつは突然やってきて、可愛いワンコ2匹を部屋から追い出した上、当然のような顔でダイスケの隣に座っていた。

何しに来たのかなんて、絶対訊いてやらない。

どうせ “旅行の前に大ちゃんの顔が見たくて” なんてことを平気な顔で言うに決まっている。

それを聴いて、またホケホケ喜ぶダイスケも見たくはない。

私とイトウくんは二人の向かい側に座って、

テーブルのお菓子をつまみながら聞きたくもないバカップルの会話を聞く羽目に陥っている。

 

『ヒロ、髪伸びてきたね』

『うん。 もうここが立たなくなったからね〜』

そう言って頭のてっぺんを触るヒロといっしょにダイスケも髪を触って

『ホントだぁ、でもこの辺はまだ短いね〜』

ダイスケ・・・・・いつも人前では極力ヒロに触らないようにしてるのに・・・・・ 

私とイトウくんは “人” じゃないのね・・・。

『大ちゃん、もうすぐパリかぁ・・・いいなぁ・・・行くの?ユーロディズニー?』

『もっちろん!』

にこにこ笑うダイスケだが、ヒロの視線は “二人もいっしょにいくの?” と、私たちに訊いている。

そりゃ先生が行くんだからお供しますよ、少なくとも私は・・・・・。

イトウくんを見ると、ちょっと苦笑い。

大丈夫、少なくともこのバカがいないんだから、きっと楽しい旅行になるわよ。

『お土産、期待していい?』

甘えた声でダイスケに寄りかかるヒロを見てイトウくんがちょっと引く。

『う〜ん、何がいいのぉ? リクエストある?』

寄りかかってきたヒロの腿の辺りに右手を置いたダイスケが目をハートにしてヒロを見上げる。

そのダイスケの手に自分の左手を重ねるようにしてヒロがダイスケの耳元で何か囁いた。

ふっ・・・』

んふっ・・・て、ダイスケ・・・・、ほら、イトウくんがもっと引いたじゃない。

そんな私たちなんて視界に入っていないダイスケがヒロに囁き返す。

“ホントに?” とヒロが笑えば、ダイスケも笑いながら頷く。

隣に座ってたイトウくんが小さなため息を漏らして立ち上がった。

『お茶でも入れてきますね』

視線は私から外さずに言う。

そうね、見たくないよね・・・・・普段偉そうに喋ってる人が蕩けたバターみたいになってるとこなんか・・・。

イトウくんが席を外してる隙に私はテーブルに身を乗り出して向かい側の二人に小さい声で注意を促す。

イトウくんの前では、ちょっと遠慮すべきなんじゃないかって。

私は、いいけどさ・・・・・慣れてるからね・・・・慣れたくなんかなかったけど・・・・・。

『えぇ〜? 別に何もしてないじゃん、ねぇ、ヒロォ?』

その “ヒロォ〜” と指を絡ませながら何言っても説得力ないよ、ダイスケ。

『イトウくん、知ってるんだよね? オレ達のこと』

知ってるわよ、だからって何してもいいってことにはならないのよ?

『とにかく、もうちょっと離れてよ。常識ある大人なら目のやり場に困らない程度にして』

『オーケー』

ヒロがあっさりとダイスケの手を振り解いて、密着させていた身体を離す。

彼が文句も言わないで言うこときくなんて、なんだか怖い。

急に放り出されたカタチになったダイスケはちょっと不満そうに私を睨みつけたけど。

そこにカップを載せたトレイをもってイトウくんが戻ってきた。

私とヒロが口々にありがとうと言いながらカップを受け取っている中、ダイスケひとりがムッツリ顔。

『大ちゃん、ユーロディズニーは他のとことどう違うの?』

ナイス、ヒロ。

案の定ダイスケは嬉しそうに身振り手振りで説明を始めた。

やっぱり王子、姫のご機嫌取りはお手の物よね。

身体も密着してないし、これでイトウくんも安心してお茶が飲めるわね。

 

しかし、話はいつのまにかディズニーからM**Sへと移っていた。

『ね、イトウくん、あの企画は面白かったよね〜?』

『あ、あれは受けたね』

『パリでも、違うの考えてるんだよね。 イトウくんのアイデアって面白いんだよ、ヒロ』

『へぇ・・・そうなの?』

ダイスケとイトウくんを交互に見てヒロが微笑む。

『うんっ、こないだなんかね・・・・』

ダイスケがイトウくんのここがすごい、あの時は楽しかったと嬉々として喋っているんだけど・・・・・

ヒロの微笑が微妙に固まってて・・・・・ダイスケ、気付いてる?

イトウくんも気付いた様子はなく、ダイスケと楽しそうに喋っているから邪魔はしたくない。

それにヒロのご機嫌が良かろうが悪くなろうが私の知ったこっちゃない・・・・・とは思うのだけど

彼の不機嫌はダイスケに被害が及ぶことが多いし、それは結果的に私に跳ね返ってくるわけで

放っておくわけにもいかなくて・・・・・

『ヒロ、この飴、けっこう美味しいのよ。 食べた?』

私は目の前にあったキャンディーのトレイをヒロの方へ押しやりながら、つま先で軽くイトウくんの足を突付く。

いきなり話の途中に割り込んだ私にダイスケはキョトンとしていたが、察しのいいイトウくんは・・・・

『あ、あぁ・・、これね、美味しいよね』

わざとらしいほどの笑顔で賛同してくれた。 ありがとう・・・・。

ヒロが私を見て、ふっと微笑んでキャンディーをひとつ摘まむ。

・・・・・・・その微笑は何?・・・・・・

アナタの微笑みは企んでいるのか、無邪気なのか見分けがつかないのよっ。

『これ、何かなぁ・・・大ちゃんは食べた?』

私に向けた微笑をそのままダイスケに向けて、首を傾げてみせるヒロに邪気はなさそうだけど。

『ううん・・・多分食べてない。 何味かな?』

ダイスケが見つめる中、ヒロがキャンディーを口に放り込む。

『あ・・・・』

『え? 何? ねぇ何味?』

『スイカ・・・・かな』

『そんなのあるの〜? 美味しい?』

頷くヒロにダイスケはキャンディーの皿をかき回して同じものを探しいてるようだけど見つからない。

多分、最後の一個だったのよ、あきらめなさい。

“食べたかった〜!” とダダをこねるダイスケを3人で笑ってみていると、

突然、ヒロの腕がダイスケを抱き寄せて、そのまま口づけた。

『んっ・・・・』

聴きたくもないダイスケのくぐもった声に私は慌てて下を向く。

あ・・・イトウくんは・・・・と、隣を見れば泣きそうな顔の彼と目が合う。

二人で見つめ合って、視線でお互いを慰めた。

『・・・もぅ・・・・ヒロってば・・・・あ、美味しいね〜スイカ味』

すっとぼけたダイスケの言葉にそちらを見ると、どうやらヒロのキャンディーはダイスケに移動したらしく

口の中でキャンディーを転がしながら上機嫌な顔でヒロを見ている。

『これ、僕が食べちゃっていいの?』

『うん・・・・・なんだったら返してくれてもいいけど』

そう言って顔を近づけてくるヒロにダイスケが笑い転げる。

ダイスケ〜〜〜、アナタが幸せなのはわかるけど

ほら、イトウくんが帰りたいって顔になっちゃったじゃない。

『大ちゃん、今日、まだ仕事あるの?』

聴いてきたのはイトウくんならぬ、ヒロだった。

『別に・・・・急ぎのはないよね?』

やっと私の存在を思い出したらしいダイスケに聴かれて、私も渋々頷くしかない。

『じゃさ、ご飯食べに行こ?』

ヒロの誘いを、その腕に抱かれたままのダイスケが断れるはずもなく

『うん・・・二人・・・だけで?』

ダイスケが私とイトウくんを気遣って言ってくれてるのはわかるんだけど

はっきり言って御一緒したくないんですけど・・・・ねぇイトウくん?

『二人でも、みんな一緒でもオレは構わないけど・・・』

そう言いながら、ヒロがダイスケの髪に軽くキスを落とす。

おぃおぃおぃおぃ・・・・・。

『僕はこのあと予定入ってるんで・・・』

軽くかわしてイトウくんがそそくさと帰り支度を始めた。

やだ、置いてかないでよ、こんなとこにっ。

『私も久しぶりに早く帰って部屋の掃除でもしようかな』

バタバタしている私たちをよそにスタジオの一角にはピンク色の空間が出来上がっている。

 

すでにスタジオを出て行ったイトウくんの後を追って私が二人の前を通った瞬間に

ダイスケの甘えたような声が耳に入ってしまった。

『何食べたい〜?』

大ちゃんが食べたい・・・・とか言ったら殺すぞ!

『・・・・知ってるくせに・・・・』

聴いたこともないような甘いかすれ声。

ヒロ〜〜〜、どこから出してるんだ、そんな声!

思わずそっちを見たら、ヒロがダイスケの耳朶に、耳朶に・・・・・いっや〜〜〜!!!!!

『お先にっ!』

後ろも見ないでドアから飛び出した私は可愛い2匹と共に家路を急いだ。

 

*

 

次の日、スタジオの仮眠室のベッドのシーツが、なぜかクリーニングに出されていたことには目を瞑った。

しかし、ちゃんと食事はしたのか少し心配になって訊いてみる。

『昨日はご飯食べに行ったのよね?王子様と・・・』

『う〜〜ん?』

ダイスケはどこか焦点の合ってないような目で窓の外をボンヤリ見ている。

お願い、こっちの世界に戻ってきて。

『昨日はぁ・・・・・いろいろあって食べてない』

いろいろ? いろいろって何よ? ご飯も食べずにいろいろ?

シーツ替えなきゃいけないいろいろ?

やめよう、考えたくない。

『ご飯食べさせてくれる王子様がいいな、私は・・・・』

ぼそっと洩らした私にダイスケがヘラッと微笑って言った。

『ご飯よりいいものくれるんだよ、うちの王子は・・・・』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

むかつく〜〜〜〜〜!!!!!

いいもん、パリで金髪碧眼の美青年を見つけてくるから!

待っててね、王子様、今から姫が参ります〜。

 

ついに王子をこちらから迎えに行くことを決意したヒロコ、ある秋の日。

 

 

 

---------- end ----------

 

 

イチャイチャした二人が書きたかった・・・・ただそれだけなのに

なんか、微妙に違う気がするんですが・・・・どうでしたでしょうか?(^_^;

流花

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