innocent prince 

 

 

『大ちゃ〜〜〜〜んっ!』

思いっきり抱きつかれて、僕は倒れそうになる。

普通なら文句のひとつも言ってやるところだけど今はライブ直後だからしょうがない。

 

廊下でバンドのみんなと挨拶していたかと思ったら、突然僕が使っている控え室に入ってきて熱い抱擁。

きっと まだ興奮が収まってないんだよね。

アベちゃんのウンザリ顔を横目で見ながら、僕は大人の余裕でヒロを抱き返した。

『ほら、早く着替えて打ち上げに行こうよ』

そんな僕のセリフは王子様のお気に召さなかったらしい。

『やだ・・・』

やだって子供じゃないんだから・・・・・ヒロ・・・・・・・・ヒロッ?

ヒロがゆっくり体重をかけてきて、そのまま僕は後ろにあったソファーに押し倒された。

『ちょっと・・・・ヒロッ・・・・・何やっ・・・・んっ・・・・』

ヒロの唇が僕の言葉を塞いでしまう。

ヒロ〜〜〜! アベちゃんがいるってば〜〜〜!

だけど、僕の思考も、ヒロの唇に吸い取られるように白くなっていく。

 

甘いキスにボンヤリしている僕の瞳を覗き込んでヒロが囁く。

『気持ちよかったね〜・・・・・』

ライブの興奮が醒めていない幸せそうな顔と声に僕も微笑って頷いた・・・・・・が、次の言葉に微笑が固まる。

『もっ・・・・・と・・・気持ちいいことしたい』

言葉と共にヒロの唇が僕の鎖骨のあたりに吸い付き、手が腿を這い上がってくる。

『ちょ・・・ダメだって・・・・ヒロ・・・・ヒロッ・・・・・ヒロ〜〜〜ッ!』

僕の叫び声に飛んできたアベちゃんが、ヒロの襟首を掴んで引き剥がした。

『この、バカッ!』

キスまでは目を瞑っていたアベちゃんもさすがにキレたみたいだ。

『ウチの商品に何する気!?・・・・・あぁっ・・・ダイスケ〜』

僕を横目で見たアベちゃんが情けない声を出す。

その視線に思い当たって横にある鏡を見ると、胸元に薄紅いアザがくっきりと浮かんでいる。

『あらら・・・・・これ、隠れるかなぁ・・・・』

僕の呑気そうな口調がアベちゃんの怒りに油を注いでしまった。

『あらら、じゃないでしょ! もうっ・・・・襟のボタンは上までちゃんと留めてよ?

 ヒロッ! とっとと自分の楽屋に帰ってシャワー浴びて頭冷やしなさい!』

いつもなら、ここで退散するヒロなのに、今日はアベちゃんの声も聞こえないみたいに

僕の隣に座ったままジッと僕を見つめている。

『ヒロ?・・・どうしたの? アベちゃん怒ってるよ?』

『シャワー・・・・』

『うん? シャワーがどうかした?』

『いっしょに入ろ?』

ヒロの爆弾発言に、僕もアベちゃんも一瞬言葉を失う。

『そ・・・そんなのは家に帰ってからにしなさいっ。 ここをどこだと思ってるの? すぐに打ち上げに行かないと・・・』

さすがのアベちゃんも、ちょっとどもり気味。

でもヒロはぜんぜん動じる様子もなくて・・・・・

『いいじゃん、シャワーいっしょでも。 ねぇ、大ちゃん?』

うわ〜ん・・・僕に振らないでよ。 アベちゃんが睨んでるよ。

『う・・・・・うん、でもさ、みんな待ってるからさ・・・・・』

『うん、だから早く入ろ?』

そんな甘えた声出すなよ〜、反則だってば〜、僕が逆らえないの知ってて言ってるよね?

『でも、ヒロ・・・・・・あの・・・・』

やめろ〜、そんなワンコみたいな目で見るのは〜・・・・・・・・・・もうっ!

『ん・・・・と・・・・・、じゃ・・・・さっさと浴びちゃおうか?』

呆れかえった顔のアベちゃんに目だけで謝ると、彼女は大きくため息をつきながら腕時計を見て言った。

『じゃ 10分で浴びてきて。 その間シャワールームは誰にも使わせないようにするから・・・』

『20分。 一人10分だから二人で20分ね?』

にっこり笑って言うヒロに・・・・

『あ〜ら、一応私が見えていたのね。 ダイスケとバナナ以外は見えないんだと思ってたわ』

憎まれ口を叩きながらも、アベちゃんは20分を約束してくれた。

 

 

 

シャワーのお湯よりも熱いヒロの口づけに立っていられなくなりそうで必死にその背中にしがみつく。

長い口づけから解放されて、そっと見上げたヒロの眼が怖いくらいに僕を見ている。

『・・・・・いい?』

訊くより早く、ヒロの指は僕の後ろを探り当てて・・・・

『あっ・・・・・ま・・・・って・・・・』

崩れそうになる身体を捩って、ヒロから離れる。

『・・・・いやなの?』

あ・・・・・そんな怖い顔しないでよ。 嫌なわけない・・・・でも・・・・

『・・・・・ここで?』

きっぱり頷くヒロに、苦笑いを返しながら・・・・

『だって、時間ないよ? 声・・・・も・・・ここじゃ響いちゃうかもしれないし・・・・・』

何を言っても、薄笑いを浮かべたままゆっくり首を振り続けるヒロに、思いっきり甘えた声を出してみる。

『口で・・・・・じゃ、だめ・・・?』

『だめ・・・・』

優しく言いながら、僕を抱き寄せるその体温の熱さに、確かに口では治まりそうもないなと諦めた。

 

ヒロの長い指が僕の中にゆっくり挿入ってくる。

『んっ・・・・』

少しの痛みと、それに優る快感に声が漏れそうになるのを、なんとか飲み込んだ。

シャワールームの壁に両手を着いてヒロに背中を向けているから、

彼の表情が見えない不安に、小さく “・・・ヒロ・・” と呟く。

シャワーの音に消されて、聞こえないはずの僕の呟きが聞こえたかのように

ヒロが後ろから僕を包み込むように抱きしめてきて・・・・・

その動きに指が深くなって、また声が出そうになり、唇を噛みしめる。

『声、出していいよ・・・・』

ヒロが誘惑するように耳元で囁くけど、できるわけない。

ゆるゆると首を振る僕に “声、聴きたいな・・・・” と、不穏なことを言ったとたん、彼の指がソコを探り当てる。

『あぁっ・・・・・あ・・・・・ぁ・・・』

執拗に責められて、膝の力が抜けそうになったところをヒロの腕に支えられた。

『だめだよ、これからなんだから・・・・・ちゃんと立ってなきゃ・・・・』

声はとても優しいけど、言ってることは優しくないよ、ヒロ。

指に代わってヒロ自身が、いつもより性急に入ってくる。

時間がないのは・・・・・・わかるけど、あっ・・・・そんなに・・・・急に・・・・・はや・・・・い・・・・ってば・・・・・・。

もっと・・・んっ・・・・・ゆっくり・・・・・やさ・・・しく・・・・・し・・・・て。

『んっ・・・あ・・・・・あぁ・・・・ヒ・・・・ロ・・・・・いやぁっ・・・・』

『いや・・・・なんて・・・言わないで・・・・・ね・・・・受け・・・と・・・め・て・・・・』

喘ぐようなヒロの掠れ声に煽られて、僕の絶頂もいつもより早く訪れて・・・・・・。

 

 


 

 

焼肉屋での打ち上げで、 ヒロが挨拶を済ませた後、何故か僕一人がお肉を焼いている。

そのお肉を横から摘まみ取りながらヒロが嬉しそうに呟く。

『やっぱり、運動の後は肉だよね〜』

それは・・・・ライブのこと? それとも・・・・・

『だったら、ヒロも焼いてよ〜、食べてばっかりいないで・・・』

もぐもぐしてるヒロを見てるのは、好きなんだけど・・・・・ちょっとは言ってやらないと・・・・・ね。

『だぁって、大ちゃんの焼いた肉の方が美味しいもん、絶対!』

う・・・・・・悔しいけど顔が緩んでしまうのが止められない。

『そんなの・・・・・誰が焼いたっていっしょだよ・・・』

照れ隠しに言ってみても、こんな緩みっぱなしの顔じゃ説得力ないかな・・・・。

そんな僕にヒロは人差し指を立てて、チチチッと舌打ちをする。

『違うって。 このお箸の先から大ちゃんの愛が注ぎ込まれてるから美味しさ倍増!』

恥ずかしいなぁ・・・・・・誰も聴いてなかったよね・・・・・・。

ふと、隣を見ると小馬鹿にしたような顔のアベちゃんと目が合ってしまった。

・・・・・穴があったら入りたい・・・・・なんて思ってることは顔には出さず

何か言われる前に、目を逸らしてヒロに話しかける。

『じゃあさ、僕にもヒロの愛が注ぎ込まれたお肉焼いてよ』

『ん? オレの愛ならさっき、注ぎ込んだばっかりでしょ?』

しれっと言い放ったヒロのセリフに僕は絶句して、隣にいたアベちゃんは飲んでいたビールを吹き出した。

『もうっ、ヒロ・・・・・・バカばっかりっ』

『なにが〜?』

知ってか知らずか、ヒロは顔色ひとつ変えずに、お肉を頬張っている。

あぁ、アベちゃんの視線が痛い・・・・・。

『もう、いいっ』

ちょっと拗ねてみせた僕にヒロが不思議そうにこちらを見ていたんだけど、

“あ・・・・” と、何かを思いついた顔をして、ふっと笑った。

なんだろう・・・・すっごく嫌な予感がする。 

ヒロは立ち上がってテーブルを回ると、僕の隣に来て嬉しそうに囁いた。

『ごめん・・・・あれじゃ足りなかったよね・・・・・続きはあとで・・・・ねっ?』

ちっが〜〜〜〜〜〜うっ!!!!!

真っ赤になってる僕をおいて、ヒロは自分の席に戻ると鼻歌混じりで、またお肉に手を伸ばす。

 

・・・・・・・・・僕もいっぱいお肉食べておこう・・・・・・・今夜のために・・・・・・・・・

 

 

 

---------- end ----------

 

 

 

なんていうか・・・・・・コメディーか?(^_^; (題材古くてごめんなさい)

いやいや、可愛いヒロを書きたかったんですよ、獣のヒロではありませんよ、決して(笑)

でも、どんなヒロも大ちゃんは大好きだと思うんですけどね〜(〃▽〃)

最後の・・・・今夜のために・・・・の後に、こっそりハートを入れてください♪

流花

 

 

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