* holy night *






目が覚めたら、とっくにお昼をまわってて、お腹を空かせたアニーが僕のあとを着いて回る。

『ごめんね〜、すぐあげるからね』


幸せそうに餌を食べてる彼女を横目に、僕も買い置きのクッキーを囓りながら紅茶を入れる。

ちゃんと食べなきゃと思うんだけど面倒臭い。


昨夜、恒例のディナーショーが無事終わってなんか気が抜けちゃってる。

窓から外を見ると綺麗な青空。

クリスマスなんだから雪でも降ればいいのに・・・。


餌を食べ終わったアニーが足下に寄って来て期待いっぱいの瞳で僕を見上げた。

『はいはい、お散歩行こうか? いいお天気だもんね』

ついでにコンビニで何か食べるものでも買って来るかな。

こんなにゆっくり出来る日はめったにないし、買ってまだ見てないDVD見るとか・・・あ、手をつけてないゲームもあったっけ・・・。

それ以外のことはあえて考えないようにして外出の支度をすると、玄関に先回りして待っているアニーと一緒に家を出た。




街の外観は、まだクリスマスの気配に満ちているけど、道行く人達は祭りの後って顔をしている。

キリストが生まれたのは今日なのに、日本じゃイブがメインになってて、なんか変な感じ。

アニーを外に待たせて立ち寄ったコンビニでおいしそうなパスタを見つけてカゴに入れた。

お菓子や飲み物ばかりでも寂しいしね。


家に帰って、パスタを食べ終える頃には西の空が茜色に染まり始める。

昼過ぎに起きたら明るい時間なんて、あっと言うまだ。

『ゲームでもしよっかな』

誰に言うでもなく呟くと、アニーがキョトンと僕を見る。

『あーちゃんがゲーム出来ればね〜、ヒロなら・・・』

うっかり口にしたその名前に苦笑いする。

何してるのかな・・・・・せっかく考えないようにしてたのに・・・・。

『メールくらいくれればいいのにね〜』

アニーに言ってもしょうがない。

昨日、遅くにお疲れ様のメールはちゃんとくれたんだ。

その時、今日は休みなんだってさり気な〜く教えたのに・・・・ばぁか・・・。

クリスマスに会いたいなんて、小娘みたいなことは言わないけどさ・・・・せっかくのお休みなのに・・・・・。

すると、そんな僕の心の呟きに抗議するように、ケータイが鳴り出した。


ヒロ?


《大ちゃん、起きた?》

挨拶もなしに、いきなり何?

『起きたって、今何時だと思ってんの? 夕方だよ』

《だってさ、どうせ昨日遅くまで打ち上げとかやってたんでしょ? 絶対起きるの昼過ぎだと思ったからさ》

確かに今は昼過ぎ≠ナはあるけれど・・・・

『いくらなんでも夕方までは寝てないって』

《だよね〜》

電話の向こうで笑ってるヒロの声につられて、いつの間にか僕の口元も綻んでる。

《ホント言うとさ、もっと早くにかけようと思ってて待ってるうちに寝ちゃったんだよね、あはは》

あははって・・・・・ヒロらしいけどさ。

《今から行ってもいい?》

『あ・・・うん、もちろん』

《ご飯食べに行く?》

今食べたばかりなんだけど・・・・なんて考えて、ちょっと答えに詰まってると

《出るの嫌? 何か買っていこうか?》

『甘いものがいい!』

ああ、とっさに口に出ちゃう自分が情けない・・・・・ほら、ヒロがクスクス笑ってる。

《OK! そっか、クリスマスだからケーキがいいかな》

『うん・・・・あ、でもヒロはちゃんとご飯食べたいんでしょ?』

《いや、昼飯遅かったからそんなには・・・・・あっ、クリスマスって言えばプレゼント!》

お、何かくれるのかな?

《何くれる?》

・・・・期待した僕がバカだった・・・・。

『なんで、僕があげなきゃいけないのぉ?』

《だって、恋人がっサンタクロ〜ス・・・って言うじゃん? てことはオレのサンタは大ちゃんでしょ?》

『・・・・それって逆もありってことじゃないの? ヒロは何くれるの?』

《ケーキ!》

それかよっ!

《で、大ちゃんは何くれる?》

う〜・・・何か言わないと、とんでもないこと言い出しそうなんだよ、この人は・・・・。

『えっと・・・ヒロがケーキなら僕も何か食べるものでも・・・・』

《よっし! じゃ大ちゃんちにある甘い食べ物ってことで、ね!》

・・・・僕んちにある? 何かあったか? 思わずキッチンの方を見てしまう。

お菓子くらいならあると思うけど・・・・・。

『それって、お菓子とか?』

電話の向こうからヒロの大きなため息。

《だぁいちゃん・・・・そばに鏡あるでしょ? ほらあのミッキーがついた・・・》

『鏡? あぁ、それが?』

正確にはミッキーじゃなくてミニーなんだけどね、あるよ、サイドボードの上に。

《ソレ見てよ、甘い食べ物が見えるから》

はぁ? じっと覗き込んでる僕の顔以外には別に何も・・・・・・

『あっ・・・・』

《わかった? てことで今から行くね!》

『ちょ・・、ヒロ!』


切れてる・・・・・・・。

なぁに? 自分に赤いリボンでも巻いて待ってろってこと?

『ベタ過ぎるだろ・・・』

ブツブツ言いながらも、寝室に行ってベッドメイキングを始めちゃったりする。

そんな僕をアニーが不思議そうに見ている。

『あーちゃん、もうすぐサンタさんが来るんだよ、ケーキ持って・・・』


甘いケーキと・・・・そしてもっともっと甘いキスをくれるサンタクロース。


窓の外に目をやると、1つ、2つと星が輝きだした。

よかった、雪が降らなくて・・・・サンタさんが来られなくなっちゃうからね。

・・・・・さっきまでは雪が降ればいいと思っていたのに。


そんな勝手な僕を笑うように、キラッと星が瞬いた。






---------- end ----------





お約束なお話ですみません(^^;ゞ

二人が素敵なクリスマスを過ごしていることを祈って・・・・。

メリークリスマス☆

                           流花

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