***** GEMINI *****

 

 

 

セックスの後の煙草が美味しいなんて感じてたのはいつ頃だっただろう・・・・・。

ベッドの中で煙草を咥えたまま、ヒロはぼんやりと天井を見ていた。

初めて入ったシティーホテルの白い天井に何があるわけでもなく、自分が吐き出した紫煙の行方をゆっくり目で追う。

『ねぇ! 聴いてる?』

少し尖った声は、さっきまで肌を寄せていたアキコのもの。 

『もう! ぜんぜん聴いてなかったんでしょ?』

何か喋ってたっけ・・・・。 セックスの後は かったるくて何も喋りたくない。 だからヒロは煙草を吸う。

煙草が美味しいなんて最近は思わない。 手持ち無沙汰な時、口が寂しい時、誰かと喋りたくない時に役に立つから手放せない。

『ヒロって、エッチした後冷たいよね・・・、すぐ寝ちゃったりとか・・・・典型的なダメ男だよ?それ・・・』

*** だめなんだ〜? ***   笑っているヒロの髪をアキコは指先で軽く引っ張る。

『ほら、そうやって笑って誤魔化すのよね〜・・・・・ヒロが女と続かないのわかる気がする』

*** わかっちゃうの? ***   ヒロが少し興味をもったようにアキコを見る。 アキコとも3ヶ月ほどの付き合いで決して長くはない。

サラサラしたロングヘアとエキゾチックな切れ長の目に惹かれて声をかけた。 年齢より大人っぽいところも気に入っている。

『ヒロって・・・自分がやりたくないことってやらないでしょ?』

『?』

『私が動物園行こうって誘っても、一度も付き合ってくれたことないよね?』

*** 動物園は勘弁してよ・・・。 それ以外は付き合ったよね? ***

灰皿に煙草の灰を落とすヒロの指先を見ながらアキコが鼻で笑う。

『それは “ヒロも行きたかったとこ” だからでしょ?』

*** そうかな〜? ***   首をひねるヒロにアキコが大きく頷く。

『そうよ! いやいや付き合ってくれたショッピングだって “彼女に付き合ってやってる自分” ってシュチュエーションが楽しかっただけなのよ』

*** 言い切られてもなぁ・・・・・ ***   どう対処していいのかわからないという顔をヒロが見せるとアキコは小さくため息をついた。

『今・・・・私が別れましょうって言ったら・・・・どうする?』

*** どうって・・・・・そんなこと急に言われても・・・・ ***   考えるふりをして、煙草をふかしてみせる。

『どうして考えるの? 別れたくないって思わないの?』

なんで そんなこと言い出すんだろう・・・・。 今はベッドの中なのに・・・・・。 ベッドの中ではセックスするか眠るか・・・でしょ。

どうして面倒くさい話をしたがるんだか・・・・。 そういうヒロの気持ちは彼の顔を無表情にする。

『ヒロってそういうふうだよね。 自分から誘うくせに・・・・・終わったらどうでもいいの?』

アキコはそう言うとヒロに背中を向けてベッドに潜り込んだ。

しょうがないじゃん、そういう性格なんだからさ・・・・・。 ヒロも煙草を消してベッドに入る。

枕元の明かりのスイッチに伸ばした手が、そこに置いてあったキーホルダーに触れて、カチャリと音を立てた。

ダイスケのプレゼントであるそれを見て、次に彼に会える日はいつだっけ・・・・・と思いを馳せる。

胸の中に温かいものが生まれて、それを抱きしめるようにヒロは目を閉じた。

 


 

『・・・・・だからね・・・って、ヒロ聴いてる?』

*** 聴いてるよ〜 ***   どう見てもぜんぜん聞いていなかったヒロの答えにダイスケが笑い出す。

『いいよ〜だ、どうせDランドの話なんか聞きたくないだろーし!』

さっきまでヒロの腕の中で甘い声を上げていたダイスケはシャワーから戻るなり、 ベッドに飛び乗るとDテーマパークの新情報を話し始めた。

今夜、会ったときから話したくてウズウズしていたらしく、嬉しそうに話し続ける。

止める気はまったくなかったのだが、話の半分は右から左へ聞き流しているヒロだった。

『今月は絶対行きたかったんだけどなぁ・・・・』

ヒロが聴いていなかったことなんか意に介さずといった感じでダイスケが呟く。

今月も仕事が詰まってて行けそうもないのだろうと、ヒロは慰めるようにダイスケの髪を撫でる。

*** 今度、いっしょに行こうか? ***   これまた嘘臭いヒロの言葉にダイスケが苦笑いを返す。

『好きじゃないくせに・・・・・』

ダイスケはヒロの気持ちをよくわかっていて、嫌がりそうだと思ったら絶対に誘ってはこない。

ヒロはダイスケの喜ぶ顔が見られるならDランドもいいかな・・・・・なんて考えているのだが。

先にシャワーを浴びていたヒロに、少し眠気が襲ってきて小さくあくびをした。

『眠い? 明かり消そうか?』

タフなダイスケは まだ眠くはないのだろうと、ヒロが首を振る。

*** 何か話してよ ***   ベッドの中で聴くダイスケの声はとても温かくて心地よいから・・・。

ダイスケはふわっと微笑って、そっとヒロの手を握る。

『ヒロはやさしいね・・・・・』

やさしい・・・?  つい最近 “冷たい” と言われた憶えはあるのだが。

わけがわからないといった顔のヒロを見て、ダイスケが笑みを濃くする。

『興味ない話でも嫌がらずに聞いてくれるし・・・・あ、半分は聴いてない?』

*** 聴いてるってば ***   苦笑いするヒロにダイスケは声を立てて笑った。 

『今だって眠いくせに、僕に付き合って起きててくれてるし・・・』

*** ぜんっぜん、眠くないよ! ***   わざとらしく目を見開くヒロにダイスケは尚も笑い続ける。

そうやって、ずっと笑ってて・・・・・。

ダイスケが笑ってくれるなら、興味のない話を聴くのも平気だし、3日くらい寝なくても大丈夫だ・・・・とヒロは思った。

『そんなふうに やさしいから女の子にもモテるんだよね』

笑いながら言ってるのに ほんの少しダイスケの声が翳る。  

女の子のことなんか気にしなくてもいいのに・・・・・。 

ヒロと向かい合うように座っていたダイスケを抱き寄せると、まだ笑みの残った顔でヒロを見上げてくる。

*** オレはやさしくなんかないよ ***   そう言いながらピアスに口づける。

『やさしいよ。 僕が知ってる誰よりやさしい・・・。』

くすぐったそうに身を捩りながらもダイスケの腕はヒロの背中に回っている。

 

『それは大ちゃんだからだよ』

 

何か言いたそうなダイスケの唇を自分のそれで塞いで、ゆっくり押し倒す。

今留めたばかりのパジャマのボタンを外してゆくヒロの手をダイスケが押さえた。

『・・ちょっ・・・ヒロ、何やってるの!』

応える代わりにダイスケの胸に落とした唇が悪戯を始める。

『あ・・・・ヒロってば・・・寝るんじゃ・・・・な・・・・ぁ・・・』

甘さを含んだダイスケの抗議の声はヒロの眠気を吹き飛ばしていた。

そう・・・大丈夫、ダイスケが悦んでくれるなら3日くらい寝なくても・・・・・・。

 

“それは大ちゃんだからだよ” 

なにげなく言った自分の言葉の重さにヒロ自身が気づくのは、まだまだ先のお話。

 

 




---------- end ----------

 



 

またまた なんて中途半端な・・・とお思いになったかもしれませんが・・・書きたかったの。

何が書きたかったのかわかっていただけたでしょうか(^_^;(不安)

今更ですが、思ったことが文章に出来ないもどかしさをひしひしと感じる今日この頃(泣)

                                          流花

 

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