*** fall to love , fall in love ***

【リクエスト内容・・・・・紅葉狩りに出掛ける二人】

 

『ヒロ・・・』

大ちゃんの声がどこかで聞こえてる・・・・・。

 

『ヒロォ・・・・風邪ひいちゃうよ・・・』

困ったようなその声で、やっと目が覚めた。 

寝ぼけまなこで周りを見回すと、どうやら公園のベンチに座ってるみたいなんだけど・・・。

『30分くらい寝てたんだよ? 寒くない?』

夜目にも鮮やかな黄色いシャツを着た大ちゃんが、隣からオレの顔を覗き込んでくる。

『う・・・ん、大丈夫・・・・』

お酒で身体が温まってるし・・・・・・・・その時自分の身体にかけてある白いジャケットに気が付いた。

『あ・・・ごめん、これ大ちゃんの・・・・・・・大ちゃんこそ寒くない?』

ジャケットを大ちゃんに返すと、代わりにペットボトルを渡された。

『喉、渇いてるでしょ?』

『あぁ・・・サンキュ』

水の入った500mlのペットボトルの蓋を開けると、そのまま一気に飲み干してしまった。

ホントだ、オレ喉渇いてたんだと、今更気づく。

『足りなかった? もう1本買っておけばよかったね・・・・』

『ん? 大丈夫・・・・・、おかげで目が覚めた』

笑って見せると、大ちゃんは安心したように持っていたジャケットに袖を通す。

『でさ・・・・・大ちゃん・・・・ここ、どこ?』

『はぁ?』

そのものすごく吃驚した顔を見て・・・・あぁ、やっちゃったか・・・・と頭を抱える。

『それマジで訊いてる? 憶えてないの? ヒロ』

すみません・・・・・・・、憶えてないんです・・・・・。

確か、ライブの打ち合わせと称した“飲み会”をやって・・・・そこでかなり飲んだんだ・・・・あれ美味しかったんだよなぁ・・・。

それから・・・・・・それから???

『うっそ! お店出たのも憶えてないの?』

『ない・・・・・』

『信じらんない・・・・・。そんなに酔ってる感じじゃなかったよ? ちゃんと歩いてタクシーも拾って・・・』

大ちゃんが呆れながらも説明してくれたのは・・・・

飲んでる時にオレが○○の銀杏並木が色づいてて綺麗だって話し始めて(その辺はちょっと憶えていた)

そしたら大ちゃんが○○公園のモミジも、きっと今頃は綺麗だって言ったらオレが“じゃ今から見に行こう!”と席を立った・・・・らしい。

で、大ちゃんを店から連れ出して、タクシーでここまで来て・・・・・ベンチに座ったとたん、眠り込んでしまったというサイテーな話。

腕時計を見ると、深夜の1時を過ぎている。

『もうこんな時間なんだ? 帰ろうか?』

立ち上がろうとするオレの腕を大ちゃんが引き止める。

『もう! 何しにここに来たのかわかんないじゃん!』

ああ?・・・・・・ そっか、モミジだっけ・・・・。

改めてあたりを見ると、そこここに色付いた楓の木が目に付く。

普通の公園なのでライトアップされてるわけではなかったけど、所々に立っている外灯に照らされてる楓は綺麗に紅葉していた。

『あぁ・・・・綺麗だねぇ・・・・』

オレの言葉に大ちゃんが笑い出す。

『なに?どうしたの?』

『だぁって、ヒロ今の・・・・・心がこもってないっていうか・・・・ちゃんと見てる?』

そう言ってオレの顔を下から覗き込む大ちゃんは、まだ少しアルコールが残っているのか目の縁がほんのり赤い。

可愛いなぁ・・・・・・・このまま押し倒したいけど・・・・・・・外だから無理か・・・・・・でも、キスぐらいならいい・・・・・・よね。

そんなことを1秒間ほどで考えて、不意打ちのように大ちゃんにキスをする。

びっくりして逃げを打つ大ちゃんの身体を抱きしめて、深く口づけると少しづつ強張りが溶けてオレに体重を預けてきた。

『んっ・・・・』

それでも僅かな抵抗を見せて、鼻にかかった甘い声を出すんだけど・・・・・・それじゃ抵抗じゃなくて挑発だよ、大ちゃん。

オレの腰の辺りを掴んでいる大ちゃんの指の感触も楽しみながら、角度を変えてキスを続けた。

長い長いキスから解放された大ちゃんは、そのままオレの肩に顔を埋めて小さな声でオレの名前を呼ぶ。

『なに?』

『周り・・・誰もいないよね?』

あぁ・・・・恥ずかしいんだ? 幸い深夜の公園に人の姿はない。 いたらオレもキスしてないけどさ。

『あ・・・・見られてる』

その言葉に大ちゃんはビクッと身体を震わせて、オレにしがみついてくる。

『うそ・・・・・・・・ひとり?』

『いや、けっこういる。 真っ赤になってこっち見てるよ』

オレの、のんびりした口調を疑問に思ったようで、大ちゃんが恐る恐るという感じで公園を振り返る。

もちろん、そこには誰もいなくて・・・・・

『ヒロ?』

『ほら、赤くなって見てるでしょ?』

正面にあった楓を指差したとたん、大ちゃんに頭をはたかれた。

『もうっ!殴るよっ!』

いや、殴ってるから・・・・・。 

静かな公園に二人の笑い声が響いていた。

 

 


 

 

 

『それでさぁ、結局ろくにモミジ見ないでヒロんち行ったんだよね?』

先日、店を出たあとの話をスタジオで、大ちゃんは楽しそうに話していた。

もちろん、オレに・・・じゃなくてアベちゃんに・・・・。彼女が聞きたいかどうかは知らないけど。

当然キスの部分は省いてある。

『で、お風呂入る準備をヒロがしてくれて、僕が先に入ったら・・・』

何があったと思う? 大ちゃんがニコニコしながらアベちゃんに問いかける。

『ヒロが裸で待っていた』

アベちゃんの答に大ちゃんは絶句して、オレは爆笑した。

『そんなのあるはずないじゃん!』

赤くなってる大ちゃんをアベちゃんは、どうだかねぇ・・・・と鼻で笑う。

確かに、そういうパターンも今までになかったとは言わないけどね。

『そうじゃなくて! あのね、湯船いっぱいにモミジが浮いてたんだよ!』

大ちゃんの言葉に、アベちゃんが胡散臭そうにオレを見る。

『ほら、バラの浮いたお風呂とかってあるじゃない? あれのモミジ版はどうだろうって思ってさ・・・』

大ちゃんに気づかれないように、モミジ拾うの大変だったんだから・・・・・・・・そんな苦労して作ったモミジ風呂・・・・・。

風呂場から、大ちゃんの歓声が聞こえたときは、やった〜・・・・と思ったんだけどね〜・・・。

『このモミジが身体に張り付いちゃって、気持ち悪いんだよね、ヒロ』

そう・・・失敗だったね、あれは。 見た目は綺麗だったんだけどな。

『ま、ヒロのやることはどっか抜けてるってことね』

アベちゃんに言われても返す言葉がない。 後片付けも大変だったし・・・・。

『そんなことないよ。 すっごく綺麗だったんだからっ』

オレを庇ってくれるのは嬉しいんだけど、アベちゃんにはムダだと思うよ。

『でも身体に張り付いて気持ち悪かったんでしょ?』

『そんなの・・・・ヒロがシャワーで流してくれたから・・・』

『大ちゃん・・・』

それを言っちゃあ・・・・・、オレの制止の声に大ちゃんはすぐに黙ったけれど、時すでに遅し。

『ほぉ〜〜〜〜〜? やっぱりご一緒でしたか?』

ソファーに踏ん反り返るようにして嘲笑っているアベちゃんに大ちゃんが食って掛かる。

『いいじゃん、たまにはそういうこともあるよっ』

『・・・・・たまには?』

アベちゃん、挑発しなくても・・・・・。

『た・・・・・ま・・・・にじゃなくてもいいじゃん!そうだよ、毎回だよっ。 いっつも一緒に入ってるよっ!』

大ちゃん・・・・逆切れ? そんないい加減なこと言って。

『やーねー、男同士でお風呂入って何やってんだか・・・・』

『一緒にお風呂入る人がいないからって僻まないでくれる?』

『なんですってぇ・・・・』

この瞬間、二人の間に火花が散った・・・・・・ような気がした。

言葉のミサイルが飛び交う中を掻い潜って、オレはスタジオの外に出る。

あれが始まるとしばらくは収まらないからなぁ・・・・・。

 

廊下の窓から外を見ると、ビルの狭間の銀杏の木が秋の陽射しに反射して金色に輝いている。

なんだ、こんな近くに紅葉スポットがあるとは思わなかった。

スタジオ内の大戦が終わったら、こっそり大ちゃんを連れ出して見に行こう。

彼の髪にも似た、金色の秋を捕まえに。

 

 

---------- end ----------

 

 

Yukiさん 大変お待たせしました。 こんな紅葉狩りでよかったでしょうか?

うちの二人はどうも風情に欠けるようです(苦笑)

ほら、モミジよりお互いを見ちゃうからっ(笑)

少しでも秋を感じていただければ幸いです(^_^;

                          流花

 

 

 

 

 

 

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