come home






『また時計見た』

ウツさんの指摘に、オレは苦笑いを零す。

4〜5人座っているテーブルは盛り上がっていて、自分のことなど誰も気にしてないだろうと思っていたのに

ウツさんの目は意外に鋭い。


『またってほど見てないですって』

『いいや、もうさっきから3回は見てるね!』

どうだ、参ったかといわんばかりの態度がおかしくて笑い出す。

『なーにがおかしいんだよ』

ペシッと頭を叩かれた。


ウツさんに誘われてやってきた店には、彼の友人達も来ていた。

みんな楽しい人たちばかりで、普通なら帰りたいなんて絶対に思わないのに・・・・



出掛けに突然かかってきたダイスケからの電話。

今夜、時間空いたんだ。 今から行っていい?

思わず天を仰いだ。 

なんというタイミングの悪さ。

ウツさんとの約束が・・・と説明すると、ため息混じりの声が返ってくる。

そっか・・・先約アリじゃしょうがないね

ごめん・・・

ううん、僕が突然だったからさ・・・・

楽しんでおいでよと笑ってるけど、さっきのため息が本音だよね。


大ちゃんもおいでよ!

名案だと思ったんだけど

僕は誘われてないから

あぁ、そんなとこ、妙に頑なだよね。


じゃ、なるべく早く引き上げて連絡するよ

ウツといっしょだったら、朝まで離してくんないよ

・・・・・そっかな・・・・・でも連絡する!

期待しないで待ってるよ

そういって、あっさり電話を切った彼が、本当に期待してないかといえば、これがそうじゃないんだ。

絶対、待ってたりするんだよ。

なぜか、そういうことだけはわかっちゃうんだよなぁ・・・・って、期待させるようなこと言うオレが悪いんだけど。



だから、もうすぐ深夜を廻るこの時間、落ち着かなかったりする。



『誰かと約束でもあるの?』

隅のほうに座って、さりげなく聞いてくるけど、興味深々な目だよ、ウツさん。

『う・・・ん、時間があったら行くかも・・・って言ったんで・・・・』

『こんな時間から?』

『・・・まぁ・・・』

『仕事関係じゃないよね?』

『あ、違います』

『仕事じゃなくても束縛するんだ、ダイスケって』

『や、束縛とかじゃなくて、オレが行けるかもって言っちゃったんで・・・』

『や〜っぱ、ダイスケかぁ・・・』


しまった・・・・・・。


ニヤニヤ笑っているウツさんに、オレも笑うしかない。

『そっかぁ・・・尻に敷かれてるんだぁ?』

『だから、違いますって』

『じゃなんだよ? ダイスケとなんか、しょっちゅう会ってるだろ? 今夜ぐらい俺に付き合えよ』

そう、普通の恋人同士なら、もっと頻繁に会っているんだろうけど・・・

『それが・・・あんまり会えなくて・・・今夜もたまたま時間が空いたらしくて電話かかってきたんで・・・』

『いつもデートとかしないの?』

『しませんよ〜』

『でも、仕事で会うだろ?』

『仕事はデートじゃないでしょ、スタッフとかいっぱいいるし・・・』

あれ、オレってば愚痴ってる?

『なるほどねぇ、もっと二人っきりで会いたいってこと?』

いまさら違いますなんて白々しいことも言えず、照れ笑いを見せるしかない。

『じゃ、こうやってヒロを引き止めてる俺って、完全な悪者なんじゃないの?』

『違いますよ〜』

あ、また言っちゃった。

『今頃ダイスケは、俺のこと恨んでるんだろうなぁ』

『そんなことないですって!』

『でも、今夜帰さなかったりしたら?』

・・・・・ちょっと恨むかな・・・・・とは、口に出せないけど。

『あ、黙った。 そっか、俺も恨まれたくはないから・・・・藁人形とか作られたりして・・・』

まさか・・・・でも、それ面白い。

『大ちゃんならネットとかで買っちゃいそうだよね』

『売ってんのかなぁ?』

『さあ? でも買ったら説明書通りに釘打っちゃうかも・・・』

『いいや、ダイスケは犬に喰わせるかもしれない・・・』

大笑いしながら、結局、大ちゃんを酒の肴に、それからしばらく話し込んじゃって、

解放されて店の外に飛び出した時は、かなり遅くなっていた。


すぐに、ケータイを取り出す。


ヒロ?

弾むような彼の声に、無理言って抜けてきてよかったって思う。

今から帰るけど・・・・そっち行こうか?

来てくれるの?

うん、タクシーだから30分くらいでいけると思うよ

わかった、待ってるね

すぐ行くから


『すぐ行くから〜』

後ろで復唱され、びっくりして振り返る。


『はっずかしいなぁ、甘い声出しちゃって・・・・カエルコールかよ・・・』

『ウツさん! なんでいるんですか?』

『これ、お前んだろ?』

ウツさんが差し出したのは、オレのサングラスだった。

『あ・・・すいません・・・』

『いえいえ、こんなものより早くダイスケにキスしたいんだろうけどさ』

『そんなこと・・・』

なくもないけど・・・・。

『男とキスしたいってのがいまひとつわかんないんだよな〜』

『ですね・・・・』

笑ってるオレを怪訝そうに見つめる。

『ですねって・・・したいんだろ?』

『大ちゃんは・・・・特別っていうか・・・可愛いでしょ?』

あ・・・そんな呆れた顔しなくても・・・。

『ほら、タクシー来たよ、早く可愛い大ちゃん≠ニこ行ってやれよ』

笑いながらオレの背中を押す。




すぐに帰るから・・・・


君のおかえり≠チて声を聞くために・・・・。


そして、笑顔の君にただいま≠チてキスするために・・・・。





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 end ----------





Dちゃんは声だけの出演でした(笑)

ウツってどんな人かよく知らないので、イメージ違っても勘弁してください(^_^;

                        流花

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