スタジオにて ★ 

 

ダイスケのスタジオ【アインシュタイン】には 重苦しい空気が立ち込めていた。

『ダイスケ〜・・・・またぁ?』

仕事部屋から出てきて、ソファーに沈み込んだダイスケにアベの呆れたような声が飛ぶ。

仕事部屋から逃げ出してくるのはこれで2度目。

曲作りが早いと定評のあるダイスケだったが、乗らない時はいつもこの調子だった。

タバコを吸ったり、お菓子を摘まんだり・・・・・なかなか仕事にかからない。

普通ならアベもダイスケの気が向くまで放っておくのだが、今日は・・・・・・。

部屋の隅の椅子に座っているイトウに目で謝る。

S*Rというユニットのギタリストで、ダイスケとは以前組んでたユニットからの古い付き合いになる。

今日はS*Rの曲がそろそろ仕上がるので聴きに来てとダイスケから連絡をもらってここにいる。

そう、呼びつけられたのに待ちぼうけを食わされているわけだ。

『イトウくん、もう2時間も待ってるのよ。 だめなら帰ってもらう?』

アベの言葉にダイスケが苦い顔をする。

『もうちょっとなんだけどねぇ・・・・、なんか今ひとつ違うっていうか・・・・・』

けだるそうに言うダイスケにアベが文句を言いかけたが

『あ、俺ならいいですよ、時間あるし・・・・・もうちょっと・・・・だよね?』

イトウのフォローでアベは言葉を飲み込んだ。

しかし、この調子では深夜になるんだろうな・・・・とイトウも諦めてはいたけれど。

その時、ドアがノックされて、アベの ど〜ぞ〜 の声と共にヒロが入ってきた。

『ヒロ! どうしたの?!』

たった今、けだるそうにしていたダイスケが飛ぶようにヒロの方へ走っていくのを、イトウはポカンと口を開けて見ていた。

『リミックス、出来たって言ってたからMDもらえるかなぁと思って』

『あ・・・・ごめん、まだMDに落としてないんだ』

『そっか・・・、いや、たまたまこの辺通ったからさ・・・・じゃ今度会ったときで・・・』

『あ・・・・あ・・・、待ってて!今MDに落としてくるから!』

そういうとヒロの返事も聞かずにダイスケは仕事部屋に駆け込んでいく。

いつもボンヤリしているヒロが、さすがにこの時は二人の痛い視線に気づいた。

『・・・・・何?・・・・・か不味いことした?俺・・・・』

『いえ・・・・いいんだけどね。 イトウくんすでに2時間待ってるのよ、ダイスケの出来上がりを』

ヒロがイトウを見ると いえ、いつものことだから・・・と笑ってはいるけれど・・・・。

『あ・・・そうなんだ? ごめん・・・大ちゃん止めてこようか?』

そのとたん、アベとイトウがいっしょに立ち上がった。

『やめてよ!』『やめてください!』

ここでダイスケの機嫌を損ねたら、深夜どころか今日中に仕上がらないのは目に見えている。

10分や20分のロスで済むなら・・・・と二人の考えは一致したらしい。

二人のユニゾンにびっくりしたヒロだったが なんとなく空気が読めてきた。

『大ちゃん、機嫌悪いの?』

『そういうわけじゃないんだけど・・・・・・気が乗らないみたい』

『ふ〜〜ん・・・・』

気が乗らないダイスケというのを あまり見たことがないヒロだが、想像はつく。

『変な時、来ちゃってごめんね』

『本当にそう思うなら、なんとかして』

そんなこと言われても・・・・と笑ったヒロの目に途方に暮れたようなイトウの姿が映った。

早く帰りたいオーラを発散させている。 もちろん隣にいるアベもそれは同じだが・・・。

『出来たよ〜〜〜!』

これ以上はないくらい明るい声でダイスケが駆けてきてヒロにMDを手渡した。

『1曲だけでごめんね。あと1曲はもうちょっといじりたいから・・・・あ、ちょっと待っててくれたらやっちゃうけど?』

なんだってー!と言うイトウの心の叫びは幸いダイスケには伝わらなかった。

『何言ってんの、イトウくん待たせてるんでしょ? そっちやらなきゃ』

ヒロに言われてダイスケはイトウに視線を突き刺した。

『何言ったの?』

普段の声より1オクターブは低いダイスケの声にイトウが言葉を詰まらせた時

『ねぇ大ちゃん、明日の夜 ご飯食べに行こうか?』

『え?本当? だって仕事は? いいの?』

ヒロの誘いにダイスケの声は2オクターブほど跳ね上がる。

『俺は大丈夫だけど・・・・・大ちゃんが忙しいかな・・・・ね、アベちゃん』

アベは慌ててスケジュール表を見たが、どんな予定が入っていても(ヒロとご飯)を優先させようと思っていた。

ダメなんて言ったら殺されそうな勢いでダイスケがこっちを睨んでいる。

幸い、急ぎの仕事は入っていない。 指でOKサインを出すとダイスケの視線はヒロに戻った。

何時にする〜?とヒロに聞いているダイスケの甘ったるい声を聞きながらアベとイトウが視線を交わす。

ダイスケのヒロ贔屓は知っていたけれど、目の当たりにするのは初めてのイトウは、

悪いものでも食べたような顔でアベを縋るように見ている。

耐えるのよ、イトウくん! というアベの心の声はイトウに届いたらしく弱々しく微笑んだ。

 

それじゃあ、明日・・・と投げキッスを残してヒロがドアから出て行った。

『何食べに行こっかなぁ〜』

鼻歌でも歌いだしそうなダイスケに

『仕事 終わらなきゃ行けないでしょ?』

アベが釘を刺すと、そだね〜とスキップしながらダイスケは仕事部屋に消えた。

『タカミさんにお礼言っといてください』

イトウの言葉にアベはうんうんと頷く。

なんとか今夜中には帰れそうだ・・・とイトウが一息ついたとき、また仕事部屋のドアが開いてダイスケが出てくる。

『お腹すいちゃった。 なんか食べに行こうよ!』

仕事しやがれっ!!!

イトウとアベのユニゾンの心の叫びがダイスケに届くはずもなく・・・・・

その日、イトウくんはスタジオで朝を迎えることとなる。

 

----- end -----

 

 

すみません、思いついたままに書いてしまいました。

書き始めてからイトウくんのキャラがわからないことに気づきました(苦笑)

いつも以上に駄作です・・・・(_ _;)

暇つぶし・・・・くらいにはなりましたでしょうか(^_^;

流花

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