**** 僕の欲しいもの ****
『おたんじょーび、おっめでとー!』
一番大切な友達からの言葉に、僕はにっこり微笑って返す。
『ん、それはさっきから10回くらい聞いたから・・・・で、何くれるの?』
『うわ、可愛くない・・・』
『可愛いって年でもないでしょ?』
そう言って差し出した両手を彼女にパチンと弾かれた。
『プレゼントは彼からもらえばいいじゃな〜い?』
その彼は、メールすらくれないんですけどね・・・・・大きく溜息をついた僕を彼女が笑う。
『はっは〜ん・・・まだ連絡なしか・・・』
『・・・・きっと、まだ寝てるんだよ』
『ええ〜? もうそろそろ夕焼けが・・・』
『うるさい! 寝てるったら寝てるの!』
その時、テーブルの上の僕のケータイが鳴った。
ほらね、ヒロってばタイミングは外さないんだから。
得意げにケータイを取り上げる僕に、アベちゃんが苦笑いする。
『もしもし・・』
《あ、大ちゃん? オレ!》
『うん、おはよう、ヒロ』
《・・・あれ? どうして起きたばっかりだってわかった?》
マジかよ〜・・・・冗談でいっただけなのに。
『ヒロのことは何でもわかるからね』
《う〜ん・・・愛だね!》
はいはい・・・・愛してますとも・・・・悔しいけど・・・・。
《あ、お誕生日おめでとう!》
よかったよ、今日中に言ってもらえて・・・・
『ありがと。 覚えててくれたんだ?』
《もっちろん! オレの愛が見えないかな〜》
残念ながら見えないよ、てか、今はヒロも見えないけどね。
『で、プレゼントは?』
ヒロの愛を無視した僕に、ひっでぇ〜と電話の向こうでぼやきながらも何が欲しいか聞いてくる。
やっぱりまだ買ってなかったか・・・・。
『急に言われてもね〜・・・そういうのはヒロが用意するもんじゃないの?』
《そう? だって欲しいものもらったほうがいいかな〜って思ってさ》
『・・・あぁ・・・・せっかくあげても埃かぶってるんじゃ悲しいもんね〜』
皮肉たっぷりに言ったのに、返ってきたのは笑い声。
《ごめんって謝ったじゃ〜ん。でさ、何がほしいの?》
しばらく二人で、あーでもない、こーでもないと話していたけど、結局思いつかず、あとからメールすることになった。
『プレゼントなんて、しょっちゅうあげたりもらったりしてるんだから、今更なんでもいいんじゃないの?』
『あ・・・アベちゃん、いたんだ?』
突然、声をかけられてビックリした僕に、アベちゃんが呆れた顔を見せた。
『ず〜〜〜〜〜っといましたよ。 すぐト・ナ・リに!』
今、スタジオにはアベちゃん一人だったから、油断してたけど、僕何か、変なこと言わなかったかな。
『気が済んだとこで、そろそろお仕事してくれます?』
追い立てられて、パソコンの前に座ったものの、気持ちはプレゼントから離れない。
何がいいかな〜・・・・僕が今、欲しいモノってなんだろう?
『あ・・・・』
ん〜・・・思いついちゃったけど・・・・それはアリなのかなぁ・・・・。
しばらく考えてみて・・・・試しにメールすることにした。
ちょっぴりドキドキしながら・・・・・でも、ヒロならきっと笑ってくれるよね。
送信ボタンを押して、ケータイはパソコンの隣に置くと、なるべく見ないようにして仕事にかかる。
なのに・・・・
1時間たっても、2時間たっても、鳴らないケータイが気になって仕事にならなくなってきた。
どうしたんだろう? 呆れちゃったかな? まさか怒ってないよね・・・・。
電話してみようかな・・・・そう思ってケータイを手に取ったら、ドアがノックされてアベちゃんが顔を出す。
『ヒロが来たんだけど・・・』
『・・・は?』
僕が立ち上がるより早く、アベちゃんの横をすり抜けてヒロが入ってきた。
『プレゼント持ってきたよ!』
挨拶なんてすっ飛ばして、満面笑顔のヒロが僕を抱きしめる。
『え・・・ちょっと・・・あの・・・』
いきなり抱きしめられて、ちょっとパニック。
『申し訳ないんですけど、ここでラブシーンは控えてもらえる?』
腕を組んで仁王立ちしたアベちゃんに、ヒロが素早く僕から離れて
『それじゃ、お持ち帰りしてもいいかな?』
ケロっと言い放ったけど、アベちゃんがいいとも〜≠ネんて言う筈はない。
『いいわよ』
ええ〜〜〜!!!
僕はもちろん、聞いた本人であるヒロまでが、目を丸くしている。
『なによ? 私を鬼かなんかだと思ってんじゃないの? お誕生日くらい大目に見てあげるわよ』
季節はずれの台風とか来なきゃいいけど・・・・と、心の中だけで思ってアベちゃんに頭を下げた。
『ありがと!』
『これが、私のプレゼントってことで・・・』
え?
『文句ある?』
『・・・・ありません』
やっぱり鬼だ〜・・・・と、再び心の中だけで叫びながら、外出の支度をしてヒロのそばに飛んでいく。
『どこ連れてってくれるの?』
『オレんち・・・・・って、なんだよ、そのガッカリした顔は〜』
『だってさ〜、どこかで食事とか・・・・誕生日なんだし・・・』
『大ちゃん・・・・肝心なこと忘れてない? オレは何しにここにきたんだっけ?』
なにって・・・・・・あっ・・・・
『プレゼント?』
『そう』
アベちゃんの目を盗むようにして、ヒロが顔を近づけて囁く。
『そういう意味で・・・・だよね?』
僕は一気に顔が熱くなるのを隠すように俯いて答える。
『んっと・・・いろんな意味で・・・』
『ふぅ〜ん・・・・・・じゃ、やっぱりとりあえず<Iレんちだね』
耳元で囁いたついでとばかりに、僕の耳に素早くキスをした。
いやんなるくらい、身体がビクッと反応してヒロの失笑を買う。
アベちゃんへの挨拶もそこそこに、二人でスタジオを出たとたん、ヒロが声を出して笑い出した。
『なんだよっ』
照れ隠しにヒロを睨みつけると、笑いながら僕の肩を抱き寄せる。
『嬉しかっただけだよ』
『何が?』
『大ちゃんが早く他のとこにもキスして≠チて言うから・・・』
『そっ・・・そんなこと言ってないよっ』
『いーや、身体中で言ってた!』
『言ってない!』
『うるさい! 恥ずかしいから、とっとと行って!』
いきなり、スタジオのドアが開いて、アベちゃんに怒鳴られた。
うわ・・・聞こえてたのか・・・・。
ヒロが、は〜い≠ニ子どものような返事をして、僕の手を引いて走り出す。
いろんな意味をこめて送ったメール・・・・・・ヒロの部屋で何が待っているのかな。
《プレゼントはヒロが欲しい》
今年の誕生日は楽しくなりそうだ。
---------- end ----------
お約束でごめんなさい m(_ _)m
てか、ヒロの奴ニューヨークだと〜!(怒)
この小説、どうしてくれるんだ!!!。・.°(>_<)゜・.。
流花
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