★ 痛い・・・ ★

 

ライブの最中、怪我をした。

ちょっと指を切っただけ・・・・。 ちょっと出血したけど、小さな傷・・・・。

ライブの後半、すごく盛り上がってるとこで、ここで空気を冷ますわけにはいかないから、ずっと笑顔で弾きつづけた。

ヒロと目が合っても “大丈夫だから” と小さく頷いて・・・・。

それが通じたのか、ヒロも変わりなく歌い続けてくれた。

いったんステージから捌けて、手当てして戻ってくる。

ヒロは・・・・・・僕を見なかった・・・・。

 

 

大急ぎで乗った帰りの新幹線。 

僕のいる車両にヒロの姿はない。 隣の車両かな〜と、ドアを見てると・・・・・

『ヒロは隣よ』

アベちゃんが後ろから声をかける。

『べ、別にヒロのことなんて訊いてないじゃん』

アベちゃんを振り返りながら ちょっと不機嫌な声を出してしまった。

あら、ごめんなさ〜い・・・とアベちゃんは笑ってくれたけど・・・・・。

ライブが終わった後にしては あまり機嫌がよくない僕に気を使ってくれているのか

触らぬ神に崇りなし・・・・・とでも思っているのかスタッフは誰も話しかけてこない。

小さくため息をついて暗い窓を見ると、そこには情けない顔をしている自分が映っている。

そんな自分を睨みつけながら、今夜のライブを思い出していた。

 

 

怪我を手当てしてからは何事もなく進行していった。

アンコールの前、着替えに入る時、ヒロが隣に来て

小さな声で“大丈夫?” と訊いてきた。

“うん!” 笑顔を見せると尚も “痛まない?” と顔を覗き込む。

“ありがと、でも かすり傷だから平気だよ” と笑ってみせる。

すると、ヒロも安心したように笑って、僕の肩を叩いて着替えに入った。

・・・・・本当にかすり傷なのかもしれないけれど、痛くないと言ったら嘘だ。

鍵盤を叩くのだから痛みは続いていた。 酷くはなかったけれど。

でもヒロに“痛い”とは言えない。

ライブで気持ちよく歌ってもらうために、どんな小さなことでも心配をかけたくはなかったから。

でも・・・・・・・心配して欲しかった。

なんて矛盾してるんだろう。

 

 

タバコでも吸ってこようかなぁ・・・・とバッグに手を入れた瞬間、どこかに傷をぶつけてしまった。

『痛っ・・・・・』

薬指にまいた傷テープはなんともなっていない。

でも傷がズキズキと痛む。 同じように胸の奥も痛かった。

ジッと指を見て胸の痛みの原因を探る。

いや、探らなくてもわかっているんだけどね。

ヒロが見てくれなかった・・・・・・バカバカしい、たったそれだけのこと。

ステージに戻って階段を駆け上がる僕にヒロは目もくれなかった。

それだけのことで何を子供みたいに拗ねてるんだろう。

『痛い・・・』

ヤケクソのように口に出して言ってみる。

『やっぱり痛いの?』

いきなり降ってきた声にびっくりして顔を上げると、いつの間にかヒロが通路に立っていた。

『大丈夫だって言ったくせに・・・・・』

空いている隣の席に腰を下ろしながら僕の手を取る。

『大丈夫だよ。 痛くないって』

あわてて言う僕をヒロが軽く睨みつける。

『今、痛いって言ってたのは誰?』

『・・・・・・言ってみただけ・・・』

『だぁいちゃん?』

そんな怖い顔されても・・・・・・。

『オレに心配されるのは嫌?』

ぜんぜん嫌じゃない。 でも心配して欲しくない。 あぁ、なんて答えよう。

『ごめん・・・大ちゃんが気を使ってくれてるのはわかってるんだけどさ・・・』

僕の右手を握っているヒロの指が動くたびに傷の痛みがひいていくような気がする。

『ライブの最中もさ、けっこう動揺しちゃって・・・・』

『ヒロが?』

そんな風には見えなかったのに・・・・と ヒロの顔をまじまじ見てると、ヒロは照れたように笑ってみせる。

『情けないよね〜、大ちゃんがステージ捌けてくときも帰ってきたときも怖くて見られなかったんだよね』

『怖い?』

『うん・・・・もし大ちゃんが少しでも痛そうな顔してたら絶対動揺するって思ったもん。 歌詞とか飛んじゃったらかっこ悪いじゃん?』

そんなヒロも見たいかも・・・・と心の隅で思ってしまった自分を叱咤。

『だからさぁ、全部振り払って歌ったんだよね、EDGE。気合い入ってたでしょ?』

『・・・・・そうなの?』

『ひっでぇ〜、気付かなかったんだ・・・』

いや、あの時、僕は僕でいろいろ痛かったんだってば・・・とは言えず、ごめんを繰り返す。

『だ、だってほら、ヒロの歌はいつでもすごいから!』

ナイスフォロー!と自分を褒めたところで、ヒロの意味深な微笑とぶつかる。

『すごいのは歌だけじゃないんだけどね〜』

動揺してた可愛いヒロはどこ? 眼の輝きが肉食獣っぽいんだけど・・・。

『知りたくない?』

『・・・知ってるから・・・・』

ぼそっと答えると・・・・ヒロが鼻で笑う。

『いやいや、まだまだ大ちゃんの知らないすっごいことがあるんだよね』

『え?そうなの?』

しまった、食いついちゃった。 

ヒロはにっと笑って僕の指に軽くキスすると

『時間空いたら連絡して。 すっごいことしようね』

そう言って立ち上がる。

『行っちゃうの?』

『うん、眠っときたいから』

『ここで寝ていけばいいじゃん』

わざわざ戻らなくても、と言う僕の耳元に口を寄せて囁く。

『大ちゃんが隣にいたら興奮して寝れないでしょ』

『・・・・・・・・・ば・・・・・っか・・・・・』

嘘つきーーーと思いながらも顔が赤くなるのを止められない。

おやすみ〜と手を振るヒロの後姿を見送りながら、痛みがすっかりなくなっていることに気づく。

ヒロがキスした指に自分も口付けてみる。

ヒロのせいで痛かった胸もやっぱり治せるのはヒロだけだね。

ふと、窓を見ると締まりのない顔の自分と目が合う。

アッカンベーをし合って、僕も寝ることにする。 ヒロの夢を見よう。 

そして、ヒロの夢に僕が出てくることを願って・・・・。

 

おやすみ

 

 

----- end -----

 

ごめんなさい〜〜〜〜〜m( _ _;)m

大ちゃんの血を見て書いたのがコレです (コレかよ(-_-;)

やっぱ書かなきゃ、何か書かなきゃ・・・って、思って。

え?これなら書かないほうが良かった?(苦笑)

流花

 

 

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