駄文集 その2


日記や携帯で書いた駄文をこちらに集めてみました。 2004/07〜2005/07 までの分です(*^^*)
2004/07/07【流花】

■□■ 七夕 ■□■


小さいけれど、色とりどりの飾りと色とりどりの短冊、ダイスケのスタジオには場違いな笹竹。

『キレイでしょ?』

『うん・・・大ちゃんは願い事書いたの?』

『もっちろん!』

『どれ?』

『探してみて・・・』

『うーん・・・・あ、これだ、“アルとアニーが長生きしますように”・・・・あれ?』

その隣の短冊には“予定通りアルバムが完成しますように”

そして、その下には“琢磨ちゃんが優勝しますように”

『琢磨ちゃんって誰?』

怪訝そうなヒロに、ダイスケは笑っているだけ。

“ディズニーランドで1日中遊びたい” “美味しいお肉が食べたい”

『・・・・これって・・・全部大ちゃんの願い事だよね?』

どの短冊を見ても、そんな他愛無い願い事が書いてあるだけ。

『うん。 それは僕専用の笹だもん』

『だもん・・・って・・・・』

『これだけ書けば、ひとつくらいは叶えてもらえるかもしれないでしょ?』

『まぁ・・・・ねぇ・・・・』

苦笑いするしかないヒロにダイスケが身体を摺り寄せて囁く。

『ヒロの願い事は?』

そんな体制で囁かれたら、ヒロの願い事はひとつだけになってしまう。

“大ちゃんが欲しい・・・”

ダイスケの耳元にヒロの甘い掠れ声が届く。

嬉しそうに微笑み返すダイスケの、今夜の予定はとっくに空けてある。



ダイスケの本当の願い事は、仕事部屋に隠すように置いてある笹竹に、たった一枚の短冊。

“ヒロといっしょにいられますように”



2004/07/07suika

◆◇天空◇◆


顔が見えなくたって心が通じていればそれだけで幸せだと言う事に最近気がついた

「会えない、、、会えない、、、」

と、嘆くのではなくて会えない距離も全部自分の糧にしてボク達は大きくなって行こう

今じゃあ 携帯もメールもネットだって身近にあるものだ

それでも時間と気持ちが無ければただの伝達方法にすぎない

そんなものに頼らなくても大丈夫だよと遠くから星が教えてくれる

空に輝く星はただ一つ・・・

見失わないで、君の為に輝くから

そして全ては愛の為に・・・

天空には無数の星

今夜だけでなくそれはいつもソコにあるモノ

例えば、違う場所にいても同じ時間に同じ星を見上げよう

・・・・それが無償の愛の糧


2004/07/11suika

◇◆アベの弱点◆◇愛ちゃんシリーズ


「ねぇ?アベちゃん・・・今日さ早く仕事切り上げても良い?」

ホンの少しの休憩でスタジオから出て来たダイスケが娘をあやしながら私に申し訳無さそうに聞いた

「何?何?その消えそうな声で訪ねるの止めてくれる?私が意地悪してるみたいじゃない」

「だって・・・・ねぇ?」

食用旺盛なダイスケの娘は口の周りをケーキのクリームだらけにして

ねぇ?と聞くママの顔を見ている

そんな小さなものに頼るのも止めてよ・・・

「知ってる・・・旦那様が帰ってくるんでしょ。」

「あれ?ボク言ったっけ?」

言ったっけ?ですって〜〜〜〜すっとぼけんじゃないわよ!

ソロ活動が始まってから、会えないのが不安なのか

ヒロのスケジュールまで逐一報告してるのは誰よ!?

おかげでヒロのマネジャーの林さんより詳しくなってると思う

今朝もスタジオに着くなり娘の顔を覗き込む私に向かって

「やっとやっとヒロが帰って来るんだよ」

って得意満面で報告したのはア・ナ・タ・です

「別に仕事を疎かにして早く帰る事も無いんじゃないの?」

「何で?」

母子して不思議そうに小首を傾げて私を見ている

私も負けずに小首を傾げて見つめ返してやる・・・負けないからね!

「仕事と旦那とどっちが大事なの?ってか、両方大事でしょうけど。

 今日に限ってはどっちなのってあえて聞くわ」

目の前にスケジュール帳を広げて、今日の日付けを指でトントンと叩く

赤ペンで〃締め切り〃って書かれてあるのが見えない訳でもないでしょう?

「・・・分かった。速攻で作るから!愛、見ててね」

クリームだらけの娘を私に渡してダイスケはスタジオに入って行った

ママに置いておかれても慣れっこの小さな彼女に聞いてみる

「ねぇ?・・・どうしてあなたのママはパパの事になると周りが見えなくなってしまうんだろうね?

 長い付き合いなのに」

聞かれても何も答えるわけも無く、小さな手が必死でテーブルの上のケーキを求めている

「あぁ・・・食欲旺盛」

アベが小さなフォークで掬い取って口元まで持って行くと、雛鳥のようにアーーンと口を開けた

パクっと口一杯に大好きなケーキをほうばるとそれはそれは嬉しそうな顔をした

「可愛すぎる・・・愛はケーキが大好きだよね」

なるほど・・・

「ダイスケは愛がケーキを好きなくらいヒロを好きなのね・・・それじゃあ、仕方ないかな」

アベは目の前の天使に教えられた気がした

「親子揃って分かりやすいわよ」

指に付いたケーキを「あげる」と言わんばかりに目の前に差し出す天使に

笑いながらも必死で逃げるアベだった



2004/08/05【suika】

◆◇浴衣の君は◇◆ 愛ちゃんシリーズ


「たっだいまぁ〜!愛!良い子にしてた?パパとお留守番ありがとうね」

お昼寝から覚めてまだ眠い目の愛娘を抱き締めた

「とっても良い子だったよ」

「ただいま、ヒロ」

「おかえり・・・ン、Chu♪」

「でさ・・・今日のラジオだけどさ・・・あれ?何」

「何って?」

「念押し?お祭り今夜行くでしょうに。オレ飲んでたもの吹き出したもん」

「ゴメンね。そう念押しだよ。ヒロ覚えてるかな〜〜って心配だったから」

「ひどいな・・・でもさラジオから自分の名前呼ばれるのって嬉しいね」

「でしょ!でしょ!ヒロが出た時もボク凄い嬉しかったもん」

「そう言えばさっき荷物届いたよ、奥の部屋に入れてあるけどさ」

「届いた?」

3人で奥の部屋に行き届いたものの包みを開ける

固い紙の下から現れたのは〃たとう紙〃に包まれてた仕立て上がったばかりの

男物と子供用の浴衣だった

「わぁお!オレと愛の?」

「うん・・・だって、せっかくお祭りに行くのに普段着って味気ないじゃない。

ボクが作って貰った時に一緒に生地とか選んで作ってもらったんだけど・・・・

 ヒロ怒った?着るのイヤ?」

「イヤな訳ないじゃん。あんまり着た事無いから自信なくて・・・カッコよく着れるかな?」

「ヒロは何着てもカッコイイよ」

「でもさ・・・よくオレのサイズ分かったね。着物って着丈とか袖丈とか・・・諸々あるんだよね」

「そりゃあ・・・ヒロのサイズは全部知ってるから・・・大丈夫」

あまり子供には聞かせたくない話だ

「この前のトークイベントの時は携帯でしか見られなかったから寂しかったよ」

「ごめんね・・・あの後に仕事があって脱がなきゃいけなかったから

 家まで着られれば良かったんだけどね」

「脱いだ?」

「ヒロ・・・・何想像してんの」

♪♪

「ホラッ、着付けの先生が着てくれた!」

「先生?」

急いで玄関まで出迎える

「ハイッ!早かったかしら?」

そこには綺麗な朝顔の柄の浴衣を見事に着こなしたアベが立っていた

「うわぁ!どうしたのアベちゃん、色っぽいよ〜〜〜馬子にも衣装だよね」

命知らずな発言をサラって言ってしまう所がヒロの良い所だ?!

「・・・・・・・ありがとう」

「ア、アベちゃん!どッちから着せてくれる?ねぇねぇ・・・・」

「こんなの先に着せたらすぐに着崩しちゃうから、ダイスケからね。こんなのは愛より後で良いわよ」

アベに部屋を出るように言われた〃こんなの〃は愛と二人でママの着替えが終るのを待っている

「愛・・・今日ね、もう少し暗くなったらみんなでお祭り行くんだよ。

 花火とかも上がるから楽しみにしてようね」

まだ小さくて記憶に残るかどうか分からないけれど・・・

それでもたくさん美しいものを娘に見せてあげたかった



「出来たわよ。次、ヒロね」

「着替える前に大ちゃん見ちゃダメ?」

「良いけど・・・脱がしちゃダメよ!!そしたら二度と着せてあげないからね」

「アベちゃん・・・冗談言わないでよ。愛、頼むね」

「どうだか・・・・分かったもんじゃないわ!」

どうせ〃可愛い〃だの〃綺麗だよ〃って誉めてキスして抱き締めるに決まってるのだから・・・

♪♪♪

またお客さんが来たようだ

アベが愛を抱いて出迎えるとそこにはダイスケの友人のヤマモト先生と看護師のスズキが

あでやかな浴衣姿で立っていた

「アベさん、お久振りです」

「こちらこそ、いつも二人がお世話になってます。今日は無理言ってすいませんでした」

「いいえ・・・誘って頂いて感謝してます。お祭りってなかなか行く機会がありませんから。」

「あの二人だけだと目立ちますから大勢で行けば子供が混じっていても大丈夫かなって思って。

 ご迷惑じゃなかったですか?」

「とんでもない!先生も愛ちゃんに会える口実が出来て嬉しいみたいですよ。

 あらぁ〜〜〜愛ちゃん可愛い」

アベに抱かれている愛は大きなひまわりの柄の浴衣を着て、同じひまわりの髪飾りを付けていた

「こう言うの着ると小さくても女性って気がしますよね」

「先生・・・鼻の下伸びてますよ」

「スズキさん!で・・・・あの二人は?」

アベは大きくて深い溜め息を吐き出した

「ダイスケに浴衣着せたらヒロも部屋に入って、それっきり出てこないんですよね」

「それって・・・・お祭り行けるんでしょうか?」

3人の頭には同時に『無理!』って言葉が浮かんだ

「私・・・・ちょっと見てきます」

しかし・・・・奥の部屋の前まで行くと、すぐにクルリっと引き返した

「あの二人は放っておいて、愛を連れてお祭り行きましょうか」

「良いんですか?」

「・・・ってか、もう浴衣着せた意味無いみたいなんで・・・・あんのバカ!」

「なるほどね」

玄関を出る瞬間にアベは奥の部屋に向かって叫んだ

「帰る前に携帯鳴らすから、その時は何か着ててよね!!!!」


・・・・・・奥の部屋で何が行われていたのかは  ヒ・ミ・ツ

2004/09/25【suika】

◆◇去りゆく季節◇◆


最大級の台風が近づくと言うニュースがひっきりなしに流れている

夕方、辺りの静けさに「本当に来るのかな?」とちょっぴり思った

しかし・・・夜が更けるにつけ雨と風が酷さを増してゆく

窓ガラスに雨粒がぶつかる音がうるさすぎて部屋に流している音楽も聞こえないほど・・・

それなのにボクとヒロが素肌を合わせる濡れた音はこんなにも耳に響いてイヤらしい

「大ちゃん・・・風、気になる?」

ボクの顔を覗き込むヒロの額の汗がキラキラしている

「少しだけね・・・でも抱き締めてくれたら怖くないよ」

ボクの言葉に微笑みをくれると

すぐにヒロの身体の下に抱き込まれてしまった

「これって違う意味の抱くじゃない?」

「そう?良いじゃん。最後はこうなるんだから」

プウっと膨れながらも下からヒロに抱き付いた

「おっきい〜あったかい〜」

「大ちゃんの髪がくすぐったいよ」

クックックと笑う振動がヒロの裸の胸からボクの胸に伝わって気持ちが良い

「ヒロ〜〜〜大好き。すごく好き。一番好きだよ」

髪を撫でて・・・

指を絡めて・・・

キスをして・・・

会えない時間を埋めよう

ヒロに会える前と会えた後は気持ちが高ぶる

それより・・・もっと高揚するのはヒロに会っているこの瞬間



外の荒ぶる天気など無かったように二人で愛し合おう

2004/10/05【suika】

◆◇運動会◇◆ 愛ちゃんシリーズ

「ヒロ〜〜頑張って!愛〜〜頑張るんだよ!」

ボクは人目も憚らず大声を出して手を振った

「OK!ママに良い所見せようね」

手を振るヒロの隣で、やっと歩きかけた娘が健気な目をしてボクを見ている

少し不安なのだろう、それでもヒロの声に勇気づけられたようにパパの手をしっかり握りしめた

今日、ボク達はボクの妹の子供達が通う幼稚園の運動会を見に来ていた


数日前・・・

『お兄ちゃん・・・愛ちゃんをもっと子供がいる場所に連れて行った方が良いわよ。

大人に囲まれるのは仕方ないけど。子供らしい世界を見せてあげるのは必要だと思うの』

妹の言葉がチクッと刺さった

『今度の日曜日、幼稚園の運動会があるんだけど愛ちゃん連れて来る気ない?』

「えぇ・・・?」

『見に来るだけでも、愛ちゃんには良い刺激になると思うけどな。もちろん〃お義兄さん〃も』

「〃お義兄さん〃って・・・ヒロの事だよね?」

『当ったり前じゃない!他に居る訳?』

妹が面白そうに笑った

「わかった。ヒロに聞いてみるよ」



「どうする?」

「行くよ」

夜遅く帰って来たヒロは真っ先に娘の寝顔を見に行く

ボクは妹に誘われた事をヒロに言ってみた

娘の頬にキスを落してヒロがボクの方を見る

「愛が喜ぶかもしれないじゃん、きっと楽しいよ」

「でも・・・・」

ボクの不安はいつもの事だ

大勢の人が集まる場所へ出てゆく・・・その勇気を出せず躊躇っている

「大ちゃん。これから愛が学校行くようになったら親が出る行事って山ほどあると思うんだ、

そろそろ良い機会かもしれないよ。別に大声で公表する事はしないけどさ・・・少しづつね?」

「うん」

ヒロがボクを抱き締めて髪にキスをした

「愛と同じ。子供扱い?」

「イヤイヤ・・・すんごいキスはこの後のお楽しみでしょ」

「ヒロ!」


運動会当日


晴れ男のヒロが行くからなのか・・・前日まで雨続きの空は真っ青に晴れ渡った

運動会用にカラフルに彩られた幼稚園の門をくぐると妹が待っててくれていた

『すいません〃お義兄さん〃無理言ちゃって。楽しんでいって下さいね。愛ちゃんもいらっしゃい〜〜』

「〃お義兄さん〃ってオレの事・・・ですよね?」

ボクと同じリアクションのヒロを見て彼女の笑いは数分止まらない

妹家族と同じシートに座りながら甥っ子や姪っ子のダンスや他の園児の駆けっこを楽しむ

「幼稚園の運動会なんて・・・て、軽く思ってたけど面白いね。みんな良い顔してるよ。やり遂げてる〜〜〜って感じ」

ヒロが感心してる

愛もスピーカーから流れてくるアイドルの歌や知っている音楽に合わせて手を叩いたり声を合わせたりする

そんな仕草も可愛くて仕方ない

どの父兄も周囲など関係なく良いポジションで自分の子供にカメラレンズやビデオを向ける

きっと親ってのは誰よりも早く自分の子供を見つけられる才能を持っているんだ

ボクもそんな親だと今は自負している


園庭で行われていたダンスが終った

そこへアナウンスが流れる・・・

【この後は小さいお子さんの為の競技です、お父様お母様が一緒で構いませんのでどうぞ皆様ご参加下さい】

『お兄ちゃん。愛ちゃん出したらどう?』

「愛はまだ無理だよ」

『親が抱いて走っても良いんだから。別に順位を競うわけじゃないから、どう?〃お義兄さん〃』

「オレ出るわ、良いよね?大ちゃん」

妙に〃お義兄さん〃と呼ばれるのに気をよくしているヒロ

『決まりね!出場します〜〜!!』

妹が勝手に手を上げる


スタートラインに立つヒロはそこにいる誰よりも一番カッコイイ

愛だってそこにいる誰よりも一番可愛い

そんな2人の家族はボクなのだと思うと何かが吹っ切れるような気がした


「愛、ママがついてるからね!!」

『お兄ちゃん?』

大声で声援を送るボクを訝しそうに見る人は多いだろう

悩みは山のようにある

答えが出ない事柄も沢山ある

でも、娘が健康に育っているのにボクだけが立ち止まっている訳には行かない

側にヒロがいてくれれば、2人で守ってあげられる


軽い笛の音がスタートを告げた

負けず嫌いなヒロがトップを行かない筈は無くて・・・

パパそっくりな娘が頑張らない筈は無くて・・・


当たり前のように一位でゴール

参加賞の飴はボクの掌に宝石のように光っている



愛が自分の脚で軽やかに走れるようになるのは・・・もうすぐ・・・
2004/10/20【suika】

◇◆virgin emotion◆◇


「大ちゃん・・・・抱き締めてくれる?」

「うん」

何も聞かずに   何も言わずに

君はただ抱き締めてくれる

その優しさが辛い時があった

その優しさに甘え過ぎた時があった

その優しさを突き放した時もあった

それでも・・・君は黙ってオレを見ていてくれた

失くした時間を埋めるくらいに君が愛しい

何も言わずに   何も聞かずに

ただオレを抱き締めてくれるその手にすべてを委ねる

今は君だけのオレ

オレだけの君

永遠は長くて  一瞬は儚くて

それでもオレを愛してくれたのは君だけだと信じて歩いていた


立ち止まればそこに君の愛を見つける

無邪気に・・・

無造作に・・・

無機質に・・・

ソコに有り続ける愛は揺るがない

一瞬は自分の為に  永遠は君の為に

生きているのは理由があると誰もが訳知りに言うけれど

それがどんな意味なのか教えてくれる人はいない


オレは分かるよ

生きているのは君に出逢う為だったんだ

そして・・・オレを愛する為に君は生きているんだ

抱きしめられている今だけ自惚れさせてくれないか?


君はオレを愛している

オレは君を愛している


当たり前すぎて言葉になんか出来ないけど

それは  virgin emotion

2004/11/10 【流花】

■□■ お願い・・・ ■□■


遅い夕食も終わり、そろそろ本格的に作業に入ろうとしたとき

テーブルの上のケータイが鳴り出した。

手に取る前からダイスケには予感があって、着信の名を見てやっぱりと微笑む。

『・・・はい』

《あ、オレオレ! 元気?》

耳に心地よい愛しい人の声。

『元気だよ、この間会ったばっかりじゃない』

ダイスケの笑い声の向こうに重なるヒロの笑い声。

《あのさぁ、お願いがあるんだけど・・・・》

『僕に? なに?』

《プリンター、買ったんだよね》

・・・・・もう先は聞かなくても、ヒロが何を言い出すかは想像がついてしまう。

『接続?』

《そう・・・難しいよね〜》

頼りなげな声に思わず頷きそうになったけど

『ヒロ、ちゃんと説明書読んだ? 今のは簡単に出来てるんだよ?』

《そうなんだ?》

読んでないんだね・・・・という言葉は飲み込んだ。

『たまには自分でやったほうが勉強になると思うよ?』

決して、きつい言い方をしたわけではないのに電話の向こうの一瞬の沈黙が重い。

『・・・・ヒロ?』

《・・・・やってくれないの?》

甘えたような声の響きに、ダイスケが勝てるはずもなく・・・・

『いや、そういうわけじゃないけど・・・・・』

語尾が小さくなる。

《じゃ頼める?! いい?》

自分ではまったくやる気なしの発言にも怒れない自分が情けないけど

頼ってくれることは、すごく嬉しくて、つい甘くなってしまう。

『うん、明日にでもそっちに行くよ』

《明日? 今夜は忙しいの?》

待つということが嫌いな恋人は、不満そうに訊ねてくる。

『忙しいっていうか・・・・お仕事あるし・・・・』

少しの沈黙。 そして、大きなため息が聞こえた。

《そっかぁ・・・・・》

でもその声に諦めは混じっていない。

《ちょっと抜けられない? 迎えに行くから》

ほらね・・・・ダイスケが苦笑いする。

『少し、遅くなるけどいい?』

《うん、ぜんぜんいいよ! 何時ごろ?》

壁にかかった時計を見て、ダイスケが時間を告げる。

《わかった。 ピッタリに行くから待ってて!》

嬉しそうな声に微笑んで頷くと、電話の向こうでキスの音。

《愛してるよ!》

『はい、はい・・・』

笑ってケータイを閉じる。


ふと、視線を感じて目を上げるとアベのあきれ返った顔にぶつかって、再び苦笑いする。

『あ、ちゃんとお仕事するから・・・・、ちょっと抜けるだけだよ』

『ちょっと・・・って?』

『だから・・・ヒロんとこまでの往復と、接続なんてすぐだし・・・』

そこまで言ったところで、果たしてヒロがすぐ送ってくれるのかが疑問に思えてきた。

もちろん、アベは疑問どころか確信しているようで、ダイスケを見て鼻で笑う。

『何を接続するんだか・・・・・』

『アベちゃん!』

アベはダイスケの声なんかものともせずに、2匹の従者を従えて事務所へ退場していった。

ダイスケはヒロが来るまでに少しでも仕事を片付けようとキーボードに向かいながら

都合のいいときだけ甘えてくる恋人を、どうやって懲らしめてやろうかと楽しげに微笑んだ。
2005/01【suika】

◆◆◆Love ..you... 〜君に愛されたい〜


「うん・・・はい・・・分かった・・・じゃ、後でね」

ダイスケは受話器を置き、フーと息を吐いた

「どした?何の電話」

冷蔵庫から水を取り出し口を付けながらヒロユキは問いかけた

「ボクじゃないと分からないから、スタジオに来てって・・・」

「そっか・・・じゃあ、送った方がいいよね。良かった、まだ飲んでなくて」

「大丈夫、迎えの車を寄越すらしい。多分、運転手はアベちゃんかなぁ」

ノロノロと受け答えするダイスケは余程行きたくないらしい

それもそうだろう

仕事を終え家に戻りヒロユキと2人きり思い切りイチャイチャしようと思っていたのだから

「行きたくない」

ダイスケは遠慮がちにヒロユキの腰に手を回した

「大ちゃん・・・」

ヒロユキはダイスケの髪にキスをして肩を抱きしめる

「行っておいで・・・オレ、待っているから」

行かなきゃ良いじゃんとも、行くなとも言わない

仕事を途中で放り出す人じゃない事をヒロユキは知っている

「本当に待っててくれる?帰らない?」

「帰る訳無いじゃん。この子達と一緒に待ってるよ」

愛くるしい4個の瞳も見上げている

支度した方が良いんじゃないかな・・・と思うけれど可愛い恋人のこんな姿もいつまでも見ていたい


無遠慮な玄関のベルが鳴る

「ほら、迎えが来ちゃった。オレ出るから支度してきて」

ヒロユキがドアを開けると、そこには見慣れた顔が

「あ・・・やっぱりアベちゃんだ」

「やっぱりって何?」

「イヤイヤ・・・ご苦労様。上がってよ」

「ありがとう、でもゆっくりしてられないの。それより、すっかりワンコと仲良しね」

ヒロユキの両側には当たり前のようにワンコが座っている

アベから見るとワンコ3匹だが・・・

奥からダイスケがジャケットを羽織りながら出て来た

「待たせてごめんね。じゃあ、行ってくるからイイ子にしてるんだよ」

振り返ったダイスケにヒロユキは素早くキスをした

「いってらっしゃい」

ヒロユキは掌をヒラヒラさせ、ワンコたちは尻尾をパタパタさせる

笑いながらドアを閉めるダイスケにアベがポツリ

「一番デカいワンコの躾がなっていないわね」

「そお?でもとっても可愛いよ」

・・・ごちそう様でした
2005/02【suika】

◇満ち潮


冬の海は悲しい色をしている


遙か彼方から白い波が寄せては引き、引いては寄せる

虚ろい行くこの世の愛のように


追いついた君の手をそっとオレの手に重ねよう

指先を伝って鼓動が君に届くようにと願いながら


砂に付けた2人の足跡を悪戯な波が消し去っても

また新しく残せば良い

「ヒロ」

風にかき消されないように君は耳に顔を寄せオレの名を呼んだ

「寒くない?」


「うん、大丈夫」


海風は身体を刺すように冷たい

それでも、繋いだ手の僅かな温もりに縋るように歩く


君しか頼る縁がないと開いていない瞳は何かを映し出す


「…ヒロ、好きだよ」

「オレも」


一際強く吹いた風音にかき消されてお互いの甘い告白は聞こえなかったけれど


いつか気持ちは伝わるものだから…
2005/03/01 【suika】

♪運命の相手♪ 愛ちゃんシリーズ


立派なお雛様飾りの前に愛はチョコンと座っている

別に悪戯するのでも、その異様な光景に驚くでもなく

ボクが飾りをリビングに出した日から最低でも2回はこんなふうに見上げている

ボクはそれを微笑ましく思っているのだが、パパの機嫌がなんとなく悪い

「大ちゃん・・・・」

「何?」

「女の子ってさぁ、やっぱ人形とか好きなのかな?オレは少し怖いんだけど」

「女の子が皆そうとは限らないと思うけど。お雛様は別でしょ・・・

その子の幸せを願って祭るものだし・・・それに喜んでいるのも今だけだよ

・・・でさ、さっきからヒロは何が不満なわけ?」

「え?」

驚く様子に図星だったかとボクは可笑しくなってしまった

「おおかた、お雛様があると愛が遊んでくれないとかナントカって事かな」

緋毛氈の鮮やかさや雪洞の揺らぐ灯りやお人形たちの躍動感

それらに畏敬の念を抱かずにはおられず・・・

遊んで転げまわる事はボクが許していない

そうなると自然と愛も大人しくなってしまう

アクティブ派のヒロはそれが気に入らないのかも知れない

「・・・それだけじゃない。それもあるけどさ」

いつもの歯切れの良さは消えてしまっている

「お雛様ってのは〃夫婦〃で、これはあの二人の結婚式だよね」

「うん」


「いつか・・・・愛も嫁いで行くんだって、お雛様見る度に思うんだ。

まだ早いって怒られそうだけど。そん時、オレ どんな顔していれば良いんだろう」

ヒロの視線が愛に注がれる

それが今で無く・・・もっと先を見つめているのかもしれない

ボクはヒロの隣に座った

「め雛にはお雛、プリンセスにはプリンス、ボクにはヒロがいるんだから・・・・

ボクらの大事な娘に素敵な運命の相手がいなきゃ困るでしょ?」

「運命の相手」

「心から愛して、力一杯守って、いつでも支えてくれる、親よりも大切な、そんな人が現れる事をボクは望んでいる。

いつまでも親は子供の側にいられないんだから」

「大ちゃんは・・・?」

「ボクは見つけた」

ボクはヒロにキスをした

この鈍感で天然で愛らしいパートナー

「そっか・・・オレもとっくに見つけてたんだ」

「ボク達の娘を信じて見守っていこうよ」

もう一度唇をヒロに寄せた時、愛がこっちに歩いてくるのが見えた

パパのキスをママと争うのが愛は好きだ

そんな無邪気な愛の運命の相手は今、ドコにいて、何歳なんだろう?

・・・どこかで出会っているんだろうか?
2005/03/15 【suika】

◆◇◆maple syrup【メイプル シロップ】


甘い…

甘い…

舌に乗せると痺れるくらい甘い蜂蜜を嘗めたように


君の唇は甘い…

そして、オレはそれを欲して群がる蜂のように口づける

まだ足りない

まだ足りない

全然、足りない

この身体中が君の蜜で溶かされても

一番大事な部分が君を求めている

知り尽くす事の出来る最高の行為でオレをイカせてくれ

最愛は再愛で

何度でも出逢いを繰り返しながら

君の埋でイキたい


「ダイスケ…ダイスケ…」

「んあ…ヒ…あぁ!」

打ちつける己の雄から脳髄へと駆け登る悦楽の高まりを自覚しながら、目の前の愛しい人の名を呼ぶ


君は思考も定まらず譫言を唇に乗せるだけ

「もうっ…ダメ…やだ…」

オレの身体の下で揺さぶられている君のなまめかしい肢体から目を離すことが出来なくて

唇からこぼれた吐息の一吐きですらオレの精神をとろけさせる


「まだ…まだだから…置いてかないで」


こんな快楽の直中さえ君を失うのが怖いなんて

「ヒロ…何も考えちゃダメだよ ボクの事だけ見てて…」


「うん…全部見せてくれる」


「…感じて、ヒロ」


君の全てに溺れよう

この果てにあるのが幸福じゃなくても

オレには君がいる


汗ばんだ頬に絡みつく君の金の髪

それはオレの全てをとろけさす

甘い蜜の色

2005/04/01 【suika】

◇◆◇二重奏

こんなボクでは彼の…

こんなオレでは君の…


気持ちを理解する事が出来ないかもしれない

気持ちを受け止める事が出来ないかもしれない


愛しているのに

愛しているのに


悲しいまでに狂おしいこの感情の流れ着く場所が


彼であればと

君であればと


朝も昼も夜も

心も体も魂も


願い続けている

囁き続けている


いつか分かるのだろうか

ボク達は一つの運命を背負って…

オレ達は二つの体で産まれてきてしまったと…


だから創り出す音が

だから書き綴る詩が


こんなにも重なり合ってしまうのだと


傷付けあったあの夜も

背中を向けたあの朝も

無駄ではなかったといつか笑いあえるのだろう


好きと言うその前に

嫌いと思うその前に


二つの道を無理に歩くのじゃなくて

交差した場所でゆっくりと話したい


大切にしたい人だから

守ってあげたい人だから


笑い合える場所にいて

支え合える場所にいて

呼び合える場所にいて

求め合える場所にいて

愛しているから

愛しているから


身体が離れていても心だけは離れない

2005/06/23 【suika】

◆◇◆DokiDoki


オレだって毎日の暮らしがあるんだから

いつも、いつも考えている訳じゃないけれど

何気ない場面でこんなに好きだと思う


君が側にいてくれて良かった

優しい香りと柔らかな微笑みと暖かな会話がこんなに心地良いから

君を隣で見つめられる瞬間に感謝したい


君は文字通り「音を楽しんでいる」

それが、オレの心に伝わって詩を書かせてくれた

だから、全てが君に送る歌になる


オレだって沢山友人がいるのだから


いつも、いつも考えている訳じゃないけれど

君より大切だと思う人はいない

離れていても近くにいる気がする


朝の光に

昼の雑踏に

夜の静けさに


全てに君が隠れているのを、オレだけが見つけて手を伸ばせば届くのだろう

奇跡とか運命とか あんまし信じないオレだけど、

唯一…君に出逢えたのが運命なのかもしれない

基本的には他人だから全てをさらけ出したり全てを打ち明けたりはしないけれど


会えない時間がこんなにも淋しいと知った


君がオレの隣にいてくれて

笑い合える日々を積み重ねていこう


毎日・・・君と瞳が合う瞬間のドキドキは忘れたくない

2005/06/27 【流花】

■□■ 機種変更 ■□■


『大ちゃ〜ん! これってさぁ・・・・』

リハーサルも順調に始まったある日、

休憩しているダイスケの元にヒロがケータイ片手に近づいてきた。

『なぁに〜?』

『これ・・・フォルダに入れるにはどうするの?』

ヒロからケータイを受け取ったものの、自分のとは機種が違うので、よくわからない。

『フォルダ、どこ?』

『どこって・・・・どこだろう?』

『ヒロォ〜』

笑いながらヒロを見上げるダイスケに、ヒロが首を傾げてみせる。

『同じF**Aじゃん。 わかんないの?』

そんなもんわかるか!

相手がヒロじゃなきゃ言ってるのだろうが・・・・・・。

『ごめん、機種違うからさ・・・・簡単にはわかんないよ』

『なんだ〜・・・F**Aにすれば教えてもらえると思ったのになぁ・・・』

それで、F**Mにしたの? 

喉まで出かかった言葉を飲み込んだダイスケだったが、

顔は、勝手に綻んでしまう。

『あ! いいこと思いついた』

声をあげたヒロに、ダイスケは苦笑いをみせる。

長年の付き合いから、ヒロのいいこと≠ェあてにならないことは知っていたから。

『大ちゃんさぁ、オレと同じ機種に変更すればいいじゃん!』

『はぁ?』

『そしたら、いろいろ教えてもらえるし・・・』

得意げなヒロにダイスケが慌てる。

『ちょっと・・・・僕、まだ変更しなくても・・・てか、なんで僕が変えなきゃいけないの?』

『だって、オレ変えたばっかりだよ? オレのが新しい機種でしょ?』

それはそうだが・・・・・・。

なぜ、ヒロに教えるために、わざわざ同じ機種にしなきゃいけないのか納得がいかない。

考え込んでるダイスケの顔をヒロが仔犬の顔で、下から覗き込む。

『だめ?』

『う・・・・』



さて、ダイスケはヒロの誘惑に勝てるのでしょうか?


2005/07/13 【suika】

◆◇◆夏のCinderella


君はもう知っていると思うけど・・・

オレの全ては君の為だけに存在する

髪が風になびけば君を誘い始める

瞳が映す残像は君の姿だけ

鼻梁が捉えるのは君の香りだけ

唇を寄せたいのは君の頬だけ


友情と愛情を隔てるボーダーラインをすんなりと飛び越えた訳じゃない


時々、惑わされたりするけれど

それでも・・・・

やっぱり、君の側に居たいんだ


君は知っているんだろうか?


この手は大ちゃんを抱き締める為にあるんだよ


12時を過ぎても逃げたりしないで・・・

ガラスの靴は脱ぎ捨てれば良いから

オレの腕の中で熱帯夜を踊り明かそう

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